生命哲学/生物哲学/生活哲学ブログ

《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

MERSと医療の商業化

2020年05月05日 22時11分37秒 | 新型コロナウイルスSARS-CoV-2
MERSと医療の商業化

 「 MERSが国家レベルの災害となった原因について、韓国の市民社会団体は、 根本的な問題は医療を産業とみなす韓国歴代政府の「医療の産業化政策」にある と考える。 韓国では1989年に全国民健康保険が導入されて以来、医療需要が増加。人 口当たりの病床数は、OECD平均の2倍超と爆発的に成長した。増えた病院の ほとんどは民間病院で、規模や収益性を競争した結果、年間収益が1兆ウォンを 超える超大型の「ビック5病院」が生まれた。その先頭が「サムスン」と「現 代」の財閥。一方、国公立病院は80年代後半に約25%を占めたが、現在5%にま で縮小している。 民間病院は先端装備の購入や利益を追うだけで、患者の安全や医療人の補充に は関心がない。救急室は救急患者のためのスペースではなく、入院待ちの患者が 滞在する空間になっている。看護師数はOECD平均の3分の1に過ぎないた め、患者の家族が世話をしなければならない。 また、総合病院が重症患者を診察し、町の医院・病院が軽症患者を診察すると いう患者依頼システムが崩れた。がん患者の五割以上が、ソウルのいくつかの超 大型病院に集中しているのが現実だ。 結局、サムスン・ソウル病院の救急室は、救急患者の治療のためのスペースで はなく、一人のMERS患者が80人を感染させる感染スペースになった。一日当 たり外来患者が8000人を超え、病床数が2000の超大型病院に対する防疫 措置を、政府は最初から諦めた。わずか5%しかない国公立病院ではMERS患 者を隔離する「陰圧隔離病室」が不足しているため、感染初期から患者の入院施 設を手配しづらかった。 それだけではない。地域の拠点病院が絶対的に不足しているため、感染の疑い があっても受診できる病院がなく恐怖と混乱が広がった。さらに、「医療は産業 だ」と唱える政府が国民の健康より病院の被害を懸念して、感染者が発生した病 院名を公開しなかった。 人命の被害は言うまでもなく、政府発表だけで見ても経済被害はGDPの0・ 2%~0・4%に及ぶ。医療の産業化政策が、「病院が病気を作り出す」という 逆説的な現実を生むとともに、経済の活性化はおろか、大きな停滞を招いた。 パク・クネ大統領は、「MERSの感染拡散問題後も医療産業化政策をすすめ る」と宣言した。安倍政権もまた、医療産業化政策をすすめていると聞く。韓国 でのMERSの感染拡散問題を他山の石にしてもらいたい。 この事態の教訓は、医療分野で財宝を追い求める医療産業化政策は、花を咲か せるどころか疫病と灰だけを残したということ。」
https://www.min-iren.gr.jp/?p=24695
[受信:2020年5月5日(火曜)。]