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創発と還元主義

2012年08月11日 00時00分56秒 | 生物哲学
2012年8月11日-1
創発と還元主義

鍵語:創発、還元主義、構成的還元主義、説明的還元主義、理論還元主義、エルンスト マイア Ernst Mayr。

 下記に、Blitz, D. "Emergent Evolution" (1992) の「(d) The Autonomy of Biology: Ernst Mayr」の一部を訳出する。

******* はじまり

 Mayrは自身の生物学の哲学では創発を採用したけれども、還元主義のいくつかの形態には反対しなかった。『生物学思想の成長 Growth of BIological Thought』(1982)では、構成的還元主義 constitutive reductionism、説明的還元主義、そして理論還元主義を三つの明確な型として彼は考察した。有機体〔生物体〕の構成要素は物質的であり、無機的化合物の構成要素と同じ本性だと、構成的還元主義は主張した。Mayrはこの型の還元主義を受け入れ、その、有機物と無機物との間の区別は、物質の問題ではなくてむしろ編制 organization の問題だという見解を受け入れた。
 説明的還元主義は、生物学的存在者は、その基本的構成要素(有機体の場合には高分子)に分析されない限りは理解できないと主張した。Mayrは、或る主要な場合で、つまり、CrickとWatsonの遺伝子をその基礎であるDNAへと分析するという場合で、このアプローチ〔接近〕が成功であったと認めた。しかし、Mayrは『生物学のすべては分子生物学である』(1982: 60)というもっと進んだ主張は退けた。より高い準位のシステムは自律的単位であるという事実、そして或る程度それなりに、より低い準位のシステムからは独立しているという事実を、それは無視しているからであった。そのうえ、説明的還元主義は、進化の歴史的次元を十分に考慮することはしない。そのことは、説明的還元主義の生物における適用への二番目の制限である。
 Mayrは、最初の二つの型の還元主義にはいくらかの信用を与えたのに対して、生物学は物理的および化学的諸理論の特殊な事例だと示すことができるという『理論還元主義的』主張は退けた。
[Blitz 1992: 162-163。試訳 20120810。]

******* おわり/