中野系

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ラバーソウル/ビートルズ

2005年06月01日 | CD
もっとも好きなバンドを問われれば迷わずビートルズと答える。ではそのビートルズのアルバムを一枚だけ選べと言われたら、少し迷って選ぶのがこのラバーソウル。

デビュー後発売した5枚目のアルバムが「ヘルプ」。もしビートルズがこの5枚のアルバムだけ残し解散していたならば、60年代特集でたまに思い出されるナツメロバンドで終わっていたのではないだろうか。このアルバムまでは「抱きしめたい」的な曲が中心の「アイドル」であったわけだし。

バタフライ・エフェクトではないが、この5作だけで解散していればジョン・レノンもあのようなことにはならなかったかもしれないし、毎年夏には日本ツアーで全国くまなく回ってくれるバンドになっていたかもしれない。(これが果たして心から喜べることなのかは微妙なところ)

話が少しそれてしまったが、その後のビートルズへの転換期ともいえる、非常に重要な作品がこのラバーソウル。このアルバムにはイエスタディ、レット・イット・ビーのような超メジャー曲は少ないのだが、各曲、地味ながら粒だったものが多く、いわゆる捨て曲がない。

ビートルズといえば「サージェントペパーズ~」がしばしば「ロックの頂点」等々、彼らの最高傑作として評されることが多いけれど、面白いのは最近、その反動からか「それ以外」のアルバムを評価するのがツウ、という風潮が一部では見られるようになってきたこと。
こういう場合、だいたい「ツウ」な人が選ぶのがラバーソウルかリボルバー。音楽なんて好みの問題、正解はないと思うけど、これら中期のアルバムがビートルズの音楽的に非常に充実していた時期、という点においてはツウもそれ以外の人も意見の一致するところだと思う。

ラバーソウルのどこが好きかといえば、ポップバンドとしての前期、ロックバンドとしての後期。それらの狭間でちょうど良い具合にその両者が融合している感じ、だろうか。個人的にはヘルプまでがポップアルバム、リボルバー以降がロックアルバムに分類されると思っている。で、ラバーソウルはその中間。ロックとは?と議論する勇気と知識は自分にはないので、あくまでも「個人的」な意見として、に留めるが。

もうひとつ特筆すべきは歌詞。アイドルとして「君が好きさ」一辺倒の世界から前進し、彼ら独自の「詩的」な世界を展開し始めるのもこのアルバムから。これまでのストレートな内容から、言葉の遊び、コノテーション等々、ある意味ビートルズらしさ、が前面に出てくるのがちょうどこの時期。

村上春樹でもおなじみの「ノルウェイの森」もこのアルバム収録。彼のエッセイでも言及されたことがあるが、実はこのノルウェイの「森」というタイトルは歴史的な誤訳ではないか、との声もある。原題は「Norwegian Wood」。単数形であること、歌詞の内容的を考えるとノルウェイの木でできた家具、としたほうがしっくりするのは事実。ただ、前述のようにこの歌の歌詞自体、多分に含みと言葉の遊びがあるので、確実に誤り、ともいえないところがまた面白いところ。

ベスト盤的なものだけでなくもう少しじっくりビートルズを、と考えている方がいれば、以上のようにまずこのアルバムを手にとってみることをお勧めします。そのあとアルバム発売順にリボルバー、サージェントペパーズ~と聴いていくのがより良いか、と。

ちなみにこのブログ、最初は「In My Life」というタイトルにしたかったのだけれど、調べたら既に使われていたのでこんな名前にしてしまいました。本当に余談だけど。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (cayenne)
2005-06-04 00:17:18
トラックバックありがとうございます。

ラバーソウルのよさにはつい最近気付きました。それまでなんとなく聴いていたのが、ある日ミッシェルを聴いているときにハッとこのアルバムのすごさに気が付いたのでした。それからはとりこです。
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re:はじめまして (1967er)
2005-06-04 13:32:55
こちらこそ、はじめまして。



ラバーソウルは本当によいですよね。



一枚を選べば、でこのアルバムにしたのですが、リボルバーも同じくらい、よいアルバムだと思います。

この時代のビートルズは本当にすばらしいですよね。
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「ノルウェイの森」の訳の新説 (tomonofu)
2005-07-07 01:24:25
村上春樹がロック誌に10年前に

「ノルウェイの森」の翻訳に関する

おもしろい説を載せてましたので、

TBします。

大人の意見でジョンの思想の奥深さを感じました。
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