中野系

この銀河系の中心、中野で考えること

ランド・オブ・ザ・デッド

2005年09月10日 | 映画
基本的にホラー映画は好きでないのけれど、唯一の例外が「ゾンビ」もの。この類の映画には当然ながら「むしゃむしゃ」シーンが付きものだが、それ自体が好きなわけではない。不気味な存在にじわじわと追われ、小さな世界に閉じこもる閉塞的な状況。たぶん、この部分が好きなのだ。ホラー、というよりはSF的な部分に惹かれている。

ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ DAWN OF THE DEAD」(78年)が個人的にゾンビ映画で最も好きな作品。この映画はまさに上記のようなパターンの典型、街中に溢れたゾンビから逃れたメンバーが、アメリカの典型的なショッピングモールに閉じこもってなんとか生き延びようと努力する話。最近あらためてDVDを借りてみたが、いまみても充分に楽しい。

さて、今回のランド・オブ・ザ・デッド。このゾンビ界(どんな世界だ)の大御所、ロメロ監督の最新作ということでゾンビファンからはかなり熱い注目をあつめている。上記「ゾンビ」の続編ということにはなるが、直接的にストーリー、人物が絡んでいるわけではない。

すでにゾンビにより壊滅的な状況に至った人類が、河に囲まれた要塞都市に立て篭もり、そこではカウフマン(デニス・ホッパー)という支配者を中心とした、貧富の差激しい、人類の「残り火」のような社会が成立している。そして当然ながらこの閉じられた社会へも徐々にゾンビが侵食していく、というのが話の概要。

基本的にロメロ監督のゾンビシリーズには文明批判が織り込まれ、それが他のゾンビシリーズと一線を画している、ということになっている。78年版ゾンビでは「ショッピングモール」というのが「消費文明社会」の象徴であるし、今回の要塞都市は自閉的な今のアメリカ、という解釈も充分に可能だろう。

ただ、難しいことを抜きに今回の映画を語ると、このようなテーマは「どうでもよいので」もう少し、ゾンビものとしての基本を充実させてほしかったところ。せっかく強固な要塞都市という面白い状況設定をしたのだから、この中での平穏な生活と、それが徐々に侵食され崩壊してく様をじっくりと描いて欲しかったのだ。金と権力に固執する支配者の描写を入れてしまったばかりに、この辺が非常に薄くなってしまった、というのが個人的な感想。

今回の映画においてはゾンビ達が徐々に学習能力を持ち、組織化し始めるという新機軸もあるのだけれど、この設定はなくても良かったと思う。ゾンビは人の姿をしていながら人にあらず。この状態で常にうろうろしているのが良いのだ。

「わっ」っと驚くシーンはたっぷりあるし、残酷なシーンが好きな人には充分に「むしゃむしゃ」も用意されている。にもかかわらず、ホラーとしても、ゾンビとしても微妙に中途半端な映画になってしまった、という気がした。

★★☆