検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

翌檜(アスナロ)神社1  連載小説56

2012年07月22日 | 第2部-小説
 「いや知りません。名前は小説で書かれているのを知っている程度で、見たことはないです」
「この先に、アスナロ神社があるんですよ」
「それは珍しい」
「鳥取県智頭は杉の産地で、杉神社がありますがアスナロを祭っている神社はここだけです。アスナロの大木があります。少し、寄ってみますか」
「それはぜひお願いします」
「その前に、ここに植林されているのはヒノキです」というと、松本は車を道の傍らに止めると車を降りた。将太と公平もあとにつづく。

「これがヒノキの葉です」
 ヒノキの葉は杉のトゲトゲした葉と違って平べったく、扇のように広がっている。松本は葉の1つをもぎ取ると将太に手渡した。
「アスナロと見比べてください」
 アスナロ神社は苔むした小さな石段を登った上にあった。粗末な祠のような拝殿が色あせて建っていた。広くない境内に草がまばらに生え、片隅に小さな滑り台とブランコがあった。子どもがくるような場所でないと思う場所に遊具はあるのはなんとも不思議であった。拝殿の右に石柵で囲われた細い木があった。幹周りは先ほど見たヒノキの半分ほどしかない。樹高は見た感じ4階建て建物ほどはあるかと思った。
「これがアスナロです」と松本がいった。

 ヒノキは今しがた見てきたばかりだ。それと目の前にあるアスナロとどこが違うのか。注意して見ると全体がふさふさとして葉が多いようだ。と、葉が麓から吹き上がる風にあおられて、ユラユラとゆれた。その様は団扇をゆったりとあおぐのに似ていると思った。
「全体に葉が多いように思いますね」
「そうです。そうです。アスナロは樹齢が経つほど葉の幅が扇のように広くなるんですよ。先ほどのヒノキの葉と比べると違いがわかりますよ」
 松本にいわれて将太は手にしたヒノキの葉とアスナロの葉を見比べた。アスナロの葉はヒノキより広がって大きく、節々が太かった。だがそれも注意して見比べたからわかったのでもし教えてもらわなければ分からないだろうと思った。

(左:アスナロ、右:ヒノキ)

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