夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

コロナ危機「感染拡大予防策は放り投げ、目先の経済再開だけに舵を切った政府」

2020-10-04 15:46:58 | 政治
 安倍路線を継承する政府は、10月からGoTo事業を拡大しはじめている。10月1日からGoToトラベルに東京発着枠を追加し、中旬からは外食産業向けのGoToイートを始めようとしている。また、海外からの入国制限も全世界からに緩和される。これらの措置が、すべて社会経済活動の再開を目的にしたものであることは疑いの余地はない。
 勿論、これらの政策の背景にあるのは、多くの国民の生活困窮である。外食業界、旅行業界、その他さまざまな業界で働く人びとの直面している厳しさは、テレビや新聞で毎日のように報じられている。
 一方、ウィルス感染の方は、第2波のピークを8月初旬に越えたかのようにも見えるが収束の気配はなく、地方ではいくらか収まりつつあるが、東京で1日200人前後の新規感染確認が続き、前週を上回る推移をしているように、首都圏、大阪圏など大都市圏では高止まりの状態が続いているのである。
 では、こういう状況で今後どのようなことが予見されるのか?
 まず、GoTo事業などの経済回復への効果は極めて限定的と言える。例えば、GoToトラベルでは、旅行業界においては、8月の高級ホテルなどの客数は増加したが、大多数の中・低価格のホテル・旅館には客数が伸びず、恩恵が及んでいないと報道されている。また、GoToイートもそれに関わる予約サイトが潤うだけで、飲食店にはこれまた恩恵が少ないという予想がもっぱらである。
 感染拡大をそのままにして、経済回復だけを図るのは本末転倒
 確かに、10月からのGoToトラベルの東京発着追加で、いくらかは旅行業界は潤うだろう。また。その他のGoTo事業でも限定的とはいえいくらかは回復する。しかし、政府は感染予防の注意を払いながら行動しろと言うが、どんなに気を付けても、人と人の接触を増やせば、感染は拡大する。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は 「感染拡大が収束しないうちに経済活動を再開させれば大きな災厄 を引き起こす」(8月31日)と警告した。その警告どおりにヨーロッパ、英国、フランス、スペインでは経済再開、行動制限緩和を行った後の9月以降、感染が急拡大している。これらの国では、、ロックダウンを伴う厳しい行動制限が4~5ヶ月ほど続いたので、それに対する反動から、多くの国民が急激な自由な行動を再開したのである。日本でも、急な経済再開は感染の急拡大をまねく恐れは充分にある。
 そもそも、経済の回復に最も必要なのは、安心感である。それにはウィルスを完全に封じ込めるのは無理だとしても、感染が徐々に縮小しているか、または少なくとも拡大していない、ウィルスの実行再生産数が1未満でなくてはならない。そういう状況でなけれれば、少し回復した経済は人びとの不安感から、また元の状態に戻ることが充分考えられる。
 旅行業界で言えば、東京発着枠追加で旅客数は増加するだろう。しかし、それは東京のウィルスが全国に拡大するという危険性をはらむのだ。そのことで、全国的に感染確認数が増えれば、人は旅行に慎重になり、結局旅客数は減ることになる。
 経済停滞の原因は感染拡大にある。それを抑えずに回復措置を講じるのは本末転倒なのだ。家が火事ならば、家の建て直しに入る前に、火を消さなければならない。
 GoTo事業に使う数兆円の予算は、ウィルスを抑え込むためのPCR検査の拡充や困窮する人びとへの直接支援の追加、赤字経営に陥っている医療施設の補助に使うべきなのだ。
 名古屋商科大学 原田泰 (前日銀審議委員)は「感染収束に至らない局面でのGoToキャンペーンは感染自体の急増を招くだけで歳出の無駄。」「経済が回復したとしても、感染もV字回復する。」「他の使途のために財源を取っておくべきだった。」(ロイター8月3日)と言ったが、まさにそのとおりである。
 
 
 
 
 
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