日本の感染確認例が3月22日現在で1,069例となった(クルーズ船を除く)。このことを日本のテレビも新聞も感染者が1,069人になったと表現する。厚生労働省はどう書いているかと言えば、「例」と使いながらも、「感染症の感染者は**人」と書いている。はっきりと書けば、これは完全にフェイクである。事実は、感染が確認された症例が1,069なのであり、感染者ははるかに多くいると想像されるからである。日本の厚生労働省もマスメディアも、平気で嘘を書いており、誰もそのことを指摘しない。
感染確認例は、中国語で「病例」、英語ではconfirmed case(s)であって、海外メディアはすべてこのような表記になっている。決して、infected peopleなどとは表記しない。これは当然なことであって、例えば、確認例には陽性の者が陰性となり退院し、その後の再度陽性になった者も2例と数える。感染した人は1人だが、2例と数えるのだ。そもそも、既に完全回復した者は感染者ではないが、確認例の中に含まれる。それを感染者と言うのは、昨年インフルエンザに罹った者もインフルエンザ感染者とするようなものだ。確認例を感染者と言い換えるのは、宇宙の星の数を肉眼で数えて3,000個なら、宇宙の星の数は3,000個だというようなものだろう。
確認例を感染者と表現しても、検査して陽性になった者の数だと誰でも分かるはずだと、日本のメディアは言うだろう。しかし、事実に即して言うなら、確認例のはずの「感染者」が独り歩きし、あたかも、現在日本での感染している人数のように扱われることがあるのだ。
政府の専門家会議の発表がそれである。この専門家を自称する集団は平気で確認例を感染者と表現している。「新規感染者の増加を抑えらえれいる」と真顔で言い放つのだ。この集団の言う「新規感染者」とは、濃厚接触者と海外からの往来者(帰国者)、それに医師が強硬に検査を要求する者だけ検査し、陽性反応を示した事例のことである。発熱し、疑いのある者は検査をされていない。これでは、なぜそれだけが、「新規感染者」などと呼べるのか、まったく分からない、非論理的、非科学的なものと言わざるを得ない。検査をしていない感染者は、それ以外に数倍はいる可能性があるにもかかわらず、である。その非論理的な数字に基づいて、「急激な感染拡大を示す状況は認められていない」などと言っているのだ。
確かに、この「新規感染者」を統計学的なサンプルだと考えれば、ある程度の傾向だと考えることもできる。しかし、サンプル数が少なければ、また、サンプルに作為的意図が入れば、信頼度の高い統計的推論もできないのは明らかだ。
また、専門家会議の一人岡部信彦が「急激な感染拡大を示す状況は認められていない」という根拠に、「原因不明な肺炎での死亡が増えたという話は聞いていない」からと言っている(朝日新聞 3月19日、25日)。しかし、インフルエンザに起因する死亡も医師がインフルエンザで死亡したと報告しなければ、分からないのだ。だから、WHOは超過死亡という概念で、実態に近い死亡数を把握しようとしている。現場の医師がCOVID-19によると疑わなければ、通常の肺炎による死亡と扱われる。「原因不明な肺炎での死亡が増えた話を聞いていない」と言うが、岡部信彦は川崎市の健康安全研究所の所長でしかない。全国で調べたわけでもなく、ただ単に岡部の耳に入っていないというだけで、何の根拠にもならないのだ。
日本での検査数は韓国の10分の1と、諸外国と比べ著しく少ない。百万人あたりの検査数ではイタリアの15分の1(オックスフォード大学、Our World in Dataによる)に過ぎないのだ。このような少ない検査数による「感染者」が実態を表わすとは、科学者なら考えないだろう。
アメリカの例で言えば、3月4日までの1日の感染確認例が数例だったものが、その後徐々に増え、3月15日には1日に1,000例を超え、3月23日現在では、累計で33,000例にまで増加した。これは、3月4日までは感染者がいなかったものが、その後突然、感染者が増加したというのではない。感染者は確認される以前からいたのである。突然確認例が増えたのは、検査を大幅に増やしたからである。当たり前のことだが、検査を日本と同じように増やさなければ、確認例は増えることはない。逆に言えば日本でも、アメリカ並みに検査数を大幅に増やせば、確認例も爆発的に増える可能性は否定できないのだ。
WHOは「test,test,test」と徹底した検査が必要だと言う。直接的の目的は、検査で感染者を特定し、感染経路を遮断するためであるが、感染の実態を正確に把握するためでもある。それに真っ向から逆らっているのが、専門家会議なのである。
検査数が少なければ、確認例も少ない。感染者と感染確認例を同一に扱えば、感染者は少ないと言い放つことができる。しかし、実態は不明としか言いようがない。
恐らくそのことは、専門家会議もなかば気づいているのだろう。だから、「オーバーシュート」なる海外ではほとんど使われない言葉を使用して、今後、爆発的感染拡大が起こる可能性はある、と言わざるを得ないのだ。実態が不明だから、何が起こるか分かりません、というのが彼らの本音なのだと思われる。
専門家会議といっても、政府の一部の機関でしかない。政府は検査数をアメリカ並みに増やすという方針はとっていないので、その範囲でしかものを言えないのだ。残念ながら、お上の方針には逆らえない下級公務員の役割しか担えないのである