「いやなんでこいつと!!」
二人が声をハモらせてそう言った後、場は非常に微妙な空気になっていた。
呆然とするジョンウク。
同じくジョハン。
そしてこの人・・。
全員、言葉を失くしたのだった・・・。
<違うって>
雨は本降りとなり、雨粒がザーザーと地面を叩く音があたり一面に響いていた。
ゲームセンターの中は騒がしい。
しかしチョルとミエの周りだけ音が無くなったかのようだった。
はっと口を噤むチョルと、
同じく息を呑むミエ。
目が合った二人は、やはり同時に逸らした。
パッ
そしてそんな様子を注視していたのはジョハンである。
ハッ!
なんだか怪しいこの二人・・と言わんばかりのリアクションのジョハン。
ミエは必死でジョハンからも目を逸らした。
するとこちらにも二人を注視している人物が・・。
ホンギュが冷静に聞く。
「なんだ?なんでちゃんと話さねーんだ?」
「えっ、まさかマジで?」「うっ・・・」
ミエは赤面していくのを自覚しながらも、なんとか否定の言葉を口にした。
なんでもないような態度でチョルに声を掛ける。
「いや・・そうじゃなくて・・あ・・あんたもなんとか言いなよ・・す・・好きだなんて・・」
しかしそこで、思い浮かんだのはこの場面だった。
「愛する・・・・ミエ」
目が、合う。
あの時後ろを向いていたあの人と、今ミエは真っ直ぐ向き合っている。
「あ・・・」
<だから分かってよ!>
「・・・・・」
徐々に下を向いていくミエの頬に、タラタラと汗が流れている。
「・・・違・・」
呟くように言いながら、今までのさまざまなシーンが頭の中で駆け巡った。
「ほら見て!あんたの彼氏が・・!」
あれはまだ春の始まりの頃、校門でチョルが高校生と揉めていた時。
ユンヒがふざけてそんなことを言っていたこともあった。
「ちょっと止めてよ!そういうこと言うな!」
あの時は何とも思ってなかったそんな言葉も、
ジャケットを脱ぐ頃になると少し変わった。
「二人は付き合ってたりする?」
「へっ?」
けれどミエにとってチョルと噂になるのは、”恋愛”よりも”からかい”が多かったので、
その辺りの境界が曖昧だった。
チョルと行った発表だって、「ダビデとゴリアテみたい」などと先生から言われ、
クラスメートからは笑われ、散々だったのである。
「違う違う、違うってば・・みんな何言ってんの??」
ミエはなんだかイライラしてきた。
隣でいつまでもブツクサ文句を言っているベ・ホンギュもうざったい。
・・そんであいつはマジでどうしたっていうの?
「ベ・ホンギュ、お前いい加減に止めろ」
「お前この豆と一緒にいて楽しいのかよ?!こいつの何が良いんだよ!
第七十八話①でした。
えーっと・・もう一度聞きます、ホンギュさん。
「チョルの彼女ですか???」