母親とバトルしたミエであったが、結局母の勝利に終わった。
「それ全部解くまで寝ちゃダメだからね!」
問題集の前に座らされたミエは、悔し涙を滲ませながら唇を噛む。
母親はかかってきた電話を取りにリビングへ向かった。
ボスッ
「もー最悪・・」
全部うんざりだし・・やりたくない・・
怒られるのも、受験問題集も、外出禁止も、もう飽き飽きするほど憂鬱だ。
はぁ・・
ミエは、願い事を叶えるために数えていた飛行機のことを思い出した。
頑張ったのになぁ・・何機数えたか忘れちゃったから、無効になっちゃったのかな
遠い空を飛ぶ飛行機に、「天才になりたい!一度見たら全部覚えちゃうとか!」と願掛けしていた。
しかし何機数えたか忘れてしまったら、またふりだしに戻って数え直しなのだ。
そして願掛けをしてるのは、ミエだけではない。
お母さんも頑張ってお寺通いしてるみたいだけど、
あんま効果ないし・・
母の願いも虚しく、ミエの前途は未だ不鮮明だ。
そして”願掛け”をきっかけにして、ミエは田舎でのことを思い出した。
[そういえば田舎に行った時、石の塔にお願い事したけど、
霧がかかったようなイメージの向こうで、小さなミエが言う。
「・・したい」
「・・やらせてくれ」
まだ高い声のチョルがそう言ったのを、ぼんやりと思い出した。
パッ
すると、向かいのチョルの部屋の電気が点いた。
カーテンが閉まっていないので、中の様子がよく見える。
キラン
[ファン・ミエ、ネバーダイ]
そう、戦いはまだ終わっちゃいない。
ミエはここから、もう一度顔を上げる——・・・。
<視線>
「ただいま」
「おかえり、チョル」「おーい私ゃ透明人間か?」「父さんおかえり」「あぁ」
チョルは両親に挨拶を済ませ、自室に入った。
どこ置いたっけ?後で探そ
つーか名札の話しそびれたな
まぁとりあえず注文はしたし、来たら渡せばいいか
チョルは着替えをしながら、ミエのことをぼんやり考えていた。
もしかして模試のストレスでおかしくなってたのか?
「私は成績落ちたのに!」
まるで他人事のようにそう口にするミエが浮かぶ。
流石にそれはないと思いたいチョルだが・・・
その時ふと、視線を感じた。
ちょっと!見たよん!
目に入って来たのはそんな文字と、
窓越しに目を丸くする、ファン・ミエその人であった。
「あ・・・」
チョルが持っていた上着を、徐々に徐々にと上へ上げていく。
「あ・・・」
「あ・・・」
「あ・・・あ・・・」
「え・・??」
それは嵐が起こる前の静けさ・・・。
第七十話②でした。
チョル!!なんて良い体・・こんなところにラッキースケベがあったなんて・・
しかしミエちゃん、そのカンペとタイミングが最悪の合い方をしちゃったね・・
これは嵐がくる・・!
第七十一話①に続きます!!