北野進の活動日記

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志賀再稼働をもくろむ安管協・専門委員会設置

2012-07-12 | 志賀原発
 本日午後1時半からの開催された石川県原子力環境安全管理協議会(安管協)で専門委員会を設置することが確認された。

 いままで安管協は国と北電の報告の追認機関に過ぎないから組織を強化しろと散々言ってきた。具体的改革案まで添えて申し入れをしたこともある。
 それでも、安管協はが十分役割を果たしてきた、組織を見直す必要はないと突っぱねてきたのが県の立場だった。
 3.11以後もその姿勢は1ミリたりと変わっていなかった。

 さて、なぜいま専門委員会の設置か?
 何を専門的に審査する専門委員会か?

 安管協開催前の午前11時から原子力安全対策室に対して、緊急の申し入れをおこなった。
 

2012年7月12日
                                               
石川県知事 谷本正憲 様
安管協会長 竹中博康 様                            

                     命のネットワーク
                    「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団
                     原発震災を案じる石川県民
      
安管協・専門委員会の設置に関する要望書


 去る6月26日、知事は県議会予算委員会において、原子力環境安全管理協議会(安管協)の下に、安管協の議論に資するための専門委員会を設置し、志賀原発の再稼働前に県として安全の確認をする方針を示しました。
 しかし、北陸電力が再稼働の申入れをしていない段階で、県議会において再稼働を前提とした質疑応答が行われることは、いまだに収束にはほど遠い福島原発事故の悲惨な現実に目を閉ざすものと言わざるをえません。しかも福島原発の過酷事故の現場では、放射線量があまりに高いため、原子炉周辺機器や配管の損傷状況を調査することはまだ不可能で、その実施の目途さえたっていません。事故炉の状況を検証できなければ、事故原因の究明も道半ばです。原因究明が不十分では、確実な再発防止策はたてられません。志賀原発は福島第一原発と同じ沸騰水型であり、とくに1号機の格納容器は福島第一原発と同じマークⅠ型であることを考えると、現時点で志賀原発の再稼働について言及するなど論外です。
 今まで国も電力会社も、福島原発の事故の主因は想定を超える大津波による電源喪失であると主張してきましたが、先に公表された国会事故調査委員会の報告では地震起因説が示されています。したがって、地震によって機器・配管がどのように損傷したのかを検証するのはもちろんのこと、耐震設計指針の見直しも必要になります。「津波が過酷事故の原因」という仮定に基づく北陸電力の緊急安全対策は、県の安管協において「妥当である」として了承されていますが、地震の影響が否定できないことが明らかになった以上、北陸電力の緊急安全対策も、当然、再検証が求められます。
 2007年3月に臨界事故隠しが明らかになった際にも安管協の下に専門委員会が設置されましたが、会議は三回開催されただけで、しかもその内容は北陸電力の説明をほぼそのまま追認するもので、専門委員会としての報告書も作成されていません。このような専門委員会では、安全性の確認を十分に行なうことはできず、県民の原子力に対する不安や北陸電力に対する不信感を払拭することは到底できません。これから設置されるようとしている専門委員会が、県民の安全・安心を保障するための、率直な 議論と真摯な検討の場となるよう、以下、要望いたします。

要 望 項 目


1)専門委員会の設置目的は、志賀原発の安全性の確保のためであることを明確
 にすること。
  その上で、再稼働を前提とすることなく、北陸電力の緊急安全対策について
 十分な再検証を行なうこと。 
  あわせて、原子炉が停止中、定検中の地震・津波による被害についても評価
 すること。

2)委員の人選については、過去に原子炉メーカー等から利益供与を受けた者は
 除外すること。
  後藤政志氏、石橋克彦氏など、再稼働に慎重あるいは批判的な立場で原子力
 安全・保安院の意見聴取会員を務めているような専門家、および富来川南岸断
 層について再調査の必要性を指摘している変動地形学の専門家・渡辺満久氏な
 どの参加を求めること。

3)専門委員会は、北陸電力や規制当局からの説明を聞くだけでなく、独自の調
 査権限をもたせること。

4)専門委員会は公開し、傍聴については、現行の10名の人数制限を撤廃する
 こと 。
  会議での配布資料は、会議開催後すぐにホームページなどで公開すること。

5)議事は録音し、また議事録を作成し、文書で公開するだけでなく、ホームペ
 ージなどでも公開すること。
  専門委員会としての結論は報告書として、記録に残すこと。

6)専門委員会における検討の内容は、安管協で報告するだけでなく、県民に対
 しても説明するために公開討論会などの場を設けること。
                                 以上


 野田内閣の支離滅裂な再稼働ありきの暴挙によって大飯は再稼働された。
 なし崩しに志賀も再稼働されるのではないかとの危機感が強まる中、6月県議会で急きょ浮上した専門委員会について、再稼働に向けた議論をするの場にするのではなく、安全性の強化につながる専門委員会にするよう求めた要望書である。
 
 県は再稼働を前提としたものではないという。安管協の組織を強化する恒常的な委員会とするそうだ。

 ならば結構な話ではないかと思うかもしれないが、原子力工学、地震工学、放射線化学、電気工学、地質学の専門家を10人程度集めて何を議論するのか。

 実は何を議論するのかまだ決まってないという。
 これから北電の対応や国の審査結果のうち、重要なものについて、専門的、集中的に審議するのだという。
 年に何回会議を開くかも決まっていない。
 一方で8月中にも初会合を開く予定とマスコミは報じている。
 
 実は安管協の専門委員会設置は2回目となる。
 申入書にもあるようにあの2007年に発覚した臨界事故隠しについて、北電の再発防止対策が妥当かどうか審議されたらしい(議事録もなければ報告書さえ残されていないので審議したかどうかさえ確認できない)。
 それはともかく、臨界事故の再発防止対策の妥当性を検討するならば原子力工学、特に制御棒の関係を専門的に議論できる人が必要だ。そこには地質学の専門家は入る必要はない。
 また、事故隠しの再発防止では、企業の隠ぺい体質を改革できるコンプライアンスの分野の専門家が必要であり、今回あげられている専門家はほとんど役に立たない。
 このように専門委員会で専門的、集中的に審議するのなら課題を明確にして、その課題に沿った人選をするのが当たり前である。

 これから課題を考えます。委員の人選はそれとは別に前もって10人程度選びます、と言われてもこれがなぜ安管協の組織強化なのか私にはさっぱりわからない。

 来月には第一次のストレステストの評価が完了する。9月にあらたに発足する予定の規制委員会がその結果をいつ了承するかはわからないが、大飯再稼働で明らかになったように、再稼働は需給問題でもなく、安全性の確立が前提でもなく、電力会社の経営救済対策である。政府のその方針を踏まえるなら原子力規制委員会の「お墨付き」も遠くはないだろう。

 今日の申し入れ、そして安管協の審議を傍聴し、「なぜ今専門委員会か?」「何を審議するのか?」の答えは、国の動きを先取りした県の志賀再稼働への道筋づくりだと確信した。

 今回の再稼働は、3.11を経てこれまで何回となくあったトラブルによる運転停止と同じように扱うわけにはいかないとの思いから、県(安管協)として臨界事故隠し並みに専門委員会を設け、専門家による審議という県民向けのをパフォーマンスを仕組んだだけのことである。

 原発は、そこに核燃料がある限り危険である。再稼働などとんでもない。
 今日の要望書に記載された事項を真剣に受け止め、現在直面する危機から県民を守るために最大限の取り組みをするのか県の責務だと改めて訴えたい。

【画像はこちらから】
 安管協・専門委員会
の設置に関する要望書 提出。


石川県原子力環境安全管理協議会

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