梅雨の真っただ中、夜散も蒸し蒸しです
それでも、今日の涼麻、張り切って、いつもの2倍ほど、歩きました
帰宅して、エアコンの効いた部屋で、目々が点&ベロ全開
スイカをあげたら、よろこんで爆食
晩ごはんも食べようね
梅雨の真っただ中、夜散も蒸し蒸しです
それでも、今日の涼麻、張り切って、いつもの2倍ほど、歩きました
帰宅して、エアコンの効いた部屋で、目々が点&ベロ全開
スイカをあげたら、よろこんで爆食
晩ごはんも食べようね
秋の大四辺形は、ペガスス座のβ星シェアト(2.42等星)、α星マルカブ(2.48等星)、γ星アルゲニブ(2.84等星)、アンドロメダ座のα星アルフェラッツ(2.06等星)を頂点とする四角形。
いかんせん、難点は、いずれも2等星以下と暗いこと
春のアークトゥルス、夏のベガ、冬のオリオン座と比べると、なんともねえ
とはいえ、秋の夜空の道案内としては有用なので、今回は、四角形の形状を確認してみます。
1. 4つの恒星の位置
計算では、マルカブ、アルゲニブ、アルフェラッツ、シェアトを、それぞれ恒星A〜Dとします。
それぞれの赤径RA及び赤緯Decは、下記の通りです(元期 J2000.0)。
恒星Aマルカブ:(RA, Dec)=(23h 04m 45.65345s, +15° 12′ 18.9617″)
恒星Bアルゲニブ:(RA, Dec)=(00h 13m 14.15123s, +15° 11′ 00.9368″)
恒星Dアルフェラッツ:(RA, Dec)=(00h 08m 23.25988s, +29° 05′ 25.5520″)
恒星Dシェアト:(RA, Dec)=(23h 03m 46.45746s, +28° 04′ 58.0336″)
2.各辺の長さと各内角の計算
まず、4辺の長さを求めます。【基本計算式1】を用いれば、
マルカブ〜アルゲニブの角距離θAB=16.5161°
アルゲニブ〜アルフェラッツの角距離θBC=13.9518°
アルフェラッツ〜シェアトの角距離θCD=14.2088°
シェアト〜マルカブの角距離θDA=12.8796°
と計算されます。6辺のうち最短であるシェアト〜マルカブの角距離を1とすると、各辺の長さの比率は、以下の通りとなります。
マルカブ〜アルゲニブ(辺AB):1.2823
アルゲニブ〜アルフェラッツ(辺BC):1.0832
アルフェラッツ〜シェアト(辺CD):1.1032
シェアト〜マルカブ(辺DA):1.0
次に、4つの内角を計算します。マルカブにおける内角φAは△DABに【基本計算式5】を適用して求めます。同様に△ABC、△BCD、△CDAに対して計算していくと、
マルカブにおける内角φA=88.7919°
アルゲニブにおける内角φB=83.2695°
アルフェラッツにおける内角φC=94.7050°
シェアトにおける内角φD=96.8533°
となります。
今回の計算結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。
特徴的な点は、辺DA<辺BC≒辺CD<辺AB、φA, φB<90°、φC, φD>90°となっている点です。
このことから、秋の大四辺形は、大雑把に言うと、マルカブ〜アルゲニブを底辺とする台形に近い形をしていることになります。
5つの【基本計算式】をこちらで紹介しています
その他の『天球の歩き方』はこちらへどうぞ
Great Square of Pegasus
最近の涼麻、あまり長くは歩かないので、どうしても抱っこが多くなります。
そうなると、父子で遠出するのは、ついつい気が重く
でも、たまにはお出かけしないとね
というわけで、今日は、城南島海浜公園へ
ここでは、羽田空港を離発着する飛行機を間近でみることができます
到着した時間帯は、横風用のB滑走路を運用していたので、目の前を飛行機が横切っていきます
ちなみに、A滑走路やC滑走路の運用時は、公園の真上を旋回していきます
海岸部には砂が入れられて、砂浜状に整備されています。
シーサイドデッキ(?)の上をテケテケ
都心部の眺望も、まずまず
今度は、夜景を撮りにきても、いいかもしれませんね
こちらは、D滑走路から離陸して旋回中の飛行機
こちらは、B滑走路へ向けて降下中
そして、間もなく、着陸(赤い誘導灯設備の奥がB滑走路)
飛行機がわらわら
ラッシュアワーのため、飛行機が次々と登場します
ワンコも多いので、ご近所散歩より、たくさんご挨拶できます
前回、城南島を訪れたのは、なんと7年4ヶ月も前だったようです
よもや、そんなに久しぶりだったとは。
近いんだから、もっと連れてきてあげないとね
春の大三角のうち、アークトゥルスとスピカは比較的明るいので、天球を歩き始める際には頼りになります。
アークトゥルスとスピカの右側にデネボラ(正中したとき)があるわけですが、反対側には蠍座のアンタレスや天秤座があります。
アンタレスは赤く明るいので目立ちますが、その手前にあるはずの天秤座は、α星ズベン・エル・ゲヌビが2.8等星、β星ズベン・エス・カマリが2.62等星と暗いため、都会ではまず見つけられません。
ズベン・エス・カマリは双眼鏡を通してみると青白いのですが、眼視だと「緑色と表現される事がよくあり、これは肉眼で見える唯一の緑色の恒星である」という興味深い星です。
"A Celestial Atlas"によれば、ズベン・エス・カマリは、アークトゥルスとスピカで正三角形を構成する頂点のあたりにあるようです。
Detail of Plate 29, "A Celestial Atlas" by Alexander Jamieson, Public Domain courtesy of Wikimedia Commons
3つの恒星アークトゥルス、スピカ、ズベン・エス・カマリ(それぞれ恒星A、B、Cと呼ぶ)赤径RA及び赤緯Decは、下記の通りです(元期 J2000.0)。
アークトゥルス:(RA, Dec)=(14h 15m 39.67207s, +19° 10′ 56.6730″)
スピカ:(RA, Dec)=(13h 25m 11.57937s, -11° 09′ 40.7501″)
ズベン・エス・カマリ:(RA, Dec)=(15h 17m 00.41382s, -9° 22′ 58.4919″)
まず、3辺の長さを比べてみます。【基本計算式1】を用いれば、
アークトゥルス〜スピカの角距離θAB=32.7929°
スピカ〜ズベン・エス・カマリの角距離θBC=27.5528°
ズベン・エス・カマリ〜アークトゥルスの角距離θCA=32.3185°
と計算されます。アークトゥルス〜スピカの角距離を1とすると、スピカ〜ズベン・エス・カマリの角距離は0.84021、ズベン・エス・カマリ〜アークトゥルスは0.98554です。
したがって、この三角形は、スピカ〜ズベン・エス・カマリを底辺とする二等辺三角形に近いといえます。
次に、3つの内角を比較します。【基本計算式5】を用いれば、
アークトゥルスにおける内角φA=52.5239°
スピカにおける内角φB=66.5254°
ズベン・エス・カマリにおける内角φC=68.3118°
この結果から、ほぼφB=φCとみれば、やはりスピカ〜ズベン・エス・カマリを底辺とする二等辺三角形に近いといえます。
今回の計算結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。
さて、いつかどこか空気のきれいなところで、眼視で「緑色の星」をみつけてみたいものです
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Spring Triangle to Libra
牛飼い座のアークトゥルス、乙女座のスピカ、獅子座のデネボラの3つを繋ぐと「春の大三角形」ですが、これに猟犬座のコル・カロリを加えると「春のダイヤモンド」
「冬のダイヤモンド」は六角形ですが、「春のダイヤモンド」は四角形です。
「冬のダイヤ」は明るい星たちなので見つけやすいことに比べ、「春のダイヤ」はデネボラが2.13等星であるとともにコル・カロリに至っては2.88等星と、ちょっと暗い
なので、どこにコル・カロリがあるかの道案内は有用です。
"A Celestial Atlas"によれば、このコル・カロリは、北斗七星のη星アルカイドと獅子座のβ星デネボラを結ぶ直線上にあるようです。
Detail of Plate 29, "A Celestial Atlas" by Alexander Jamieson, Public Domain courtesy of Wikimedia Commons
アルカイド、デネボラ、コル・カロリの位置(それぞれ恒星A、B、Cとする)は、赤径αと赤緯δを用いて、以下のように表されます(元期 J2000.0)。
恒星A アルカイド:(α, δ)=(13h 47m 32.43776s, +49° 18′ 47.7602″)
恒星B デネボラ:(α, δ)=(11h 49m 03.57834s, +14° 34′ 19.4090″)
恒星C コル・カロリ:(α, δ)=(12h 56m 01.66622s, +38° 19′ 06.1541″)
アルカイドとデネボラを結ぶ直線(=天球上の大円)は、大円G1の方程式を
とおくと、【基本計算式2】を適用して、a=0.3501、b=1.8816です。
大円G1と直交し、コル・カロリを通過する大円G2の方程式のパラメーターは、【基本計算式3】を用いれば、a=-0.9932、b=-0.7163となります。
大円G1とG2の交点Qは、 【基本計算式4】を用いて、
交点Q:(α, δ)=(12h 55m 37s, +38° 22′ 42″)
です。この交点Qはコル・カロリがあると期待される位置です。
この交点Qと実際のコル・カロリの間の角距離は、【基本計算式1】より、θQC=0.101°です。この値は非常に小さく、コル・カロリは、アルカイドとデネボラを結ぶ直線上にあると言って、ほぼ差し支えないと思います。
アルカイドからコル・カロリまで距離は、【基本計算式1】より、θAC=14.3550°で、またコル・カロリからデネボラまでの距離は、θCB=27.9753°です。27.9753°÷14.3550°=1.9488倍≒1.95倍となるので、コル・カロリは、アルカイドからデネボラへ向かうの間の1/3あたりにあるということになります。
以上の計算結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。
写真では、ほぼピッタリ直線上にコル・カロリがある感じですが、なぜか、Jamiesonの図板では、それほどピッタリに描かれているわけでもありませんね。
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Spring Diamond, Diamond of Virgo
Alexander Jamieson(1782-1850)が1822年に出版した"A Celestial Atlas"には、26枚の美しい星座絵が収録されています。
それらに加え、主要な星の探し方に関する図板が一葉、収載されています。
この図板によると、北斗七星のδ星メグレズとγ星フェクダを結んだ線を延ばすと、その先に獅子座のレグルスが見つかるようです
Detail of Plate 29, "A Celestial Atlas" by Alexander Jamieson, Public Domain courtesy of Wikimedia Commons
今回も、球面上の三角法を用いて確認してみることにします。
メグレズ、フェクダ、レグルスの位置(それぞれ恒星A、B、Cとする)は、赤径αと赤緯δを用いて、以下のように表されます(元期 J2000.0)。
恒星A メグレズ:(α, δ)=(12h 15m 25.56063s, +57° 1′ 57.4156″)
恒星B フェクダ:(α, δ)=(11h 53m 49.84732s, +53° 41′ 41.1350″)
恒星C レグルス:(α, δ)=(10h 8m 22.31099s, +11° 58′ 1.9516″)
メグレズとフェクダを結ぶ直線(=天球上の大円)は、大円G1の方程式を
とおくと、【基本計算式2】を適用して、a=1.4140、b=1.9475が得られます。
大円G1と直交し、レグルスを通過する大円G2の方程式のパラメーターは、【基本計算式3】を用いれば、a=-0.0232、b=-0.4966となります。
大円G1とG2の交点Qは、 【基本計算式4】を用いて、
交点Q:(α, δ)=(9h 58m 11s, +13° 2′ 13″)
です。この交点Qは、レグルスがあると期待される位置です。
この交点Qと実際のレグルスの間の角距離は、【基本計算式1】より、θQC=2.713°が得られます。この値は、ちょっと大きいものの、一般的な双眼鏡の実視界が7°程度であることから、まあまあ許容できる範囲(7°÷2=3.5°>2.713°)であると考えられます。
メグレズとフェクダの間の距離は、【基本計算式1】より、θAB=4.5313°で、またフェクダからレグレスがあると期待される位置までの距離は、θCQ=46.6801°です。46.6801°÷4.5313°=10.3017倍≒10.3倍となるので、レグルスを探すときは、メグレズとフェクダの間の距離の約10倍の位置を探せばよい、ということになります。
以上の計算結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。
ここで、あらためてJamiesonの図板を見てみると、メグレズからフェクダを結んだ後、レグルスに向かうときに、若干、折れ線になっていますね。
これぐらいの誤差を含んでいる道案内だと分かっていれば、十分に役立ちますね。
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Big Dipper to Regulus
天球上の目印として重要な北極星
北斗七星から探す方法と並んで、小学校で習ったのがカシオペヤ座から辿る方法
Wikipediaによれば、「W字形で表現されるカシオペヤ座の5星のうち、片側2星の延長線と反対側2星の延長線の交点と中央の星とを結んだ線上、W字の上側にある。中央の星からの距離は、先の交点と中央の星との間隔の約5倍である」とあります。
さて、今回もどんな感じか計算してみます。
1. 5つの恒星の位置
カシオペヤの、β星カフ、α星シェダル、γ星ツィー、δ星ルクバー、ε星セギンを、それぞれ恒星A〜Eとします。
それぞれの赤径RA及び赤緯Decは、下記の通りです(元期 J2000.0)。
カフ:(RA, Dec)=(00h 09m 10.68518s, +59° 08′ 59.2120″)
シェダル:(RA, Dec)=(00h 40m 30.44107s, +56° 32′ 14.3922″)
ツィー:(RA, Dec)=(00h 56m 42.5317s, +60° 43′ 0.265″)
ルクバー:(RA, Dec)=(01h 25m 48.95147s, +60° 14′ 7.0225″)
セギン:(RA, Dec)=(01h 54m 23.72567s, +63° 40′ 12.3628″)
2. 道案内にしたがって計算してみる
2.1 シェダルとカフを結ぶ直線及びルクバーとセギンを結ぶ直線
シェダルとカフを結ぶ直線は、恒星AとBを通過する大円です。大円G1の方程式を
とおくと、【基本計算式2】を適用すれば、a=-1.7156、b=1.0004が得られます。
同様にして、ルクバーとセギンを通過する大円G2の方程式のパラメーターは、a=-0.7874、b=-2.7772となります。
2.2 2つの大円G1とG2の交点
2本の直線の交点は、大円G1とG2の交点です。この交点を点Qとすると、【基本計算式4】を用いれば、
交点Q:(RA, Dec)=(00h 55m 13s, +54° 59′ 4″)
となります。
2.3 交点Qと恒星Cを結ぶ直線
交点Qと恒星Cを結ぶ大円の方程式のパラメーターは、【基本計算式2】を用いれば、a=11.6898、b=-53.5555となります。
2.4 交点Qと恒星Cの間の角距離
交点Qと恒星Cの角距離は、【基本計算式1】より、θQC=5.7356°が得られます。直線QCに沿って、θQCの約5倍、延長すればポラリスがあるというわけです。
2.5 ポラリスから直線QCにおろした垂線の足
直線QCを延長していって、ポラリス:(α, δ)=(2h 31m 49.09456s, +89° 15′ 50.7923″)に最も近付く位置を点Rとすると、【基本計算式3】から、
交点R:(RA, Dec)=(04h 39m 36s, +88° 45′ 44″)
となります。
2.6 ツィーから約5倍のあたりにポラリスがあるか
ツィーからポラリスがあると期待される点R(=直線QC上でポラリスに最も近い点)までの角距離は、【基本計算式1】より、θCR=28.6028°です。この距離は、θQCに対して、28.6028°÷5.7356°=4.9869倍≒4.99倍となり、「約5倍」という道案内は、非常に正確です。また、北斗七星からポラリスを探すときの「5.33倍」よりも、圧倒的に「5」に近いことが分かります。
2.7 ポラリスがあると期待される位置と実際にポラリスがある位置の距離
点Rと点Pの間の距離は、【基本計算式1】より、θRP=0.7266°と求まり、この値は、一般的な双眼鏡の実視界が7°程度であることから考えて十分に小さいと考えられます。また、北斗七星からポラリスを探すときの差異「1.92°」と比べても、はるかに小さく、正確だといえます。
以上の計算結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。
2.8 W字形からポラリスへ向かう方向
「カフとシェダルを結ぶ直線」と「セギンとルクバーを結ぶ直線」の成す角は、球面三角形AQEに【基本計算式5】を適用して、φAQE=86.3911°です。
「カフとシェダルを結ぶ直線」からポラリスへ向かう直線は、球面三角形AQPに【基本計算式5】をすればφAQP=52.1417°、「セギンとルクバーを結ぶ直線」からポラリスへ向かう直線は、同様にして、φEQP=34.2494°です。
もちろん、φAQP+φEQP=52.1417°+34.2494°=86.3911°=φAQEです。
3. まとめ
カシオペヤからポラリスを探すとき、個人的には、なんだかスッキリしないことが多いという印象をもっていたのですが、計算してみると非常に正確な道案内であり、北斗七星の場合に比べても、はるかに優秀だということが分かりました。
カシオペヤからポラリスに向かうときの難しさは、ε星セギンが3.37等星と暗いためにδ星と結ぶ直線の方向をつかみにくいこと、さらに「W」の形状が線対称になっているわけではないこと、などが要因ではないかと思います。
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Cassiopeia to Polaris
今回は、冬のダイヤモンドの形状について、調べてみます
冬のダイヤモンドは、オリオン座のリゲル、大犬座のシリウス、小犬座のプロキオン、双子座のポルックス、馭者座のカペラ、牡牛座のアルデバランを繋いでできる六角形で、都会でも大気の状態が落ち着いている夜ならば、容易に見つけることができます
ただ、六角形を結んでいく際に、ポルックスかカストルだったかなと、迷うことがあります。
ポルックスは1.14等星、カストルは1.58等星で、ポルックスの方が1.5倍だけ明るい注1ので、明るい方(正中したとき、左側の方)のポルックスを選べばよいわけですが、なぜか、カストルの方を選びたくなるのです。
注1) 10^{(1.58-1.14)/5*2}=1.50
1. 6つの恒星の位置
計算では、リゲル、シリウス、プロキオン、ポルックス、カペラ、アルデバランを、それぞれ恒星A〜Fとします。
それぞれの赤径RA及び赤緯Decは、下記の通りです(元期 J2000.0)。
リゲル:(RA, Dec)=(5h 14m 32.27210s, -8° 12′ 05.8981″)
シリウス:(RA, Dec)=(6h 45m 8.91728s, -16° 42′ 58.0171″)
プロキオン:(RA, Dec)=(7h 39m 18.11950s, +5° 13′ 29.9552″)
ポルックス:(RA, Dec)=(7h 45m 18.94987s, +28° 01′ 34.3160″)
カペラ:(RA, Dec)=(5h 16m 41.35871s, +45° 59′ 52.7693″)
アルデバラン:(RA, Dec)=(4h 35m 55.23907s, +16° 30′ 33.4885″)
2.各辺の長さと各内角の計算
まず、6辺の長さを求めます。【基本計算式1】を用いれば、
リゲル〜シリウスの角距離θAB=23.6732°
シリウス〜プロキオンの角距離θBC=25.7014°
プロキオン〜ポルックスの角距離θCD=22.8459°
ポルックス〜カペラの角距離θDE=34.2370°
カペラ〜アルデバランの角距離θEF=30.6899°
アルデバラン〜リゲルの角距離θFA=26.4930°
と計算されます。6辺のうち最短であるプロキオン〜ポルックスの角距離を1とすると、各辺の長さの比率は、以下のとおりとなります。
リゲル〜シリウス(辺AB):1.0362
シリウス〜プロキオン(辺BC):1.1250
プロキオン〜ポルックス(辺CD):1.0
ポルックス〜カペラ(辺DE):1.4986
カペラ〜アルデバラン(辺EF):1.3433
アルデバラン〜リゲル(辺FA):1.1596
うーん、辺DEや辺EFが、少し長めなのですね。冬のダイヤモンドは均整のとれた正六角形ではなく、カペラが、ちょっと離れているようです。見た目には、結構、バランスのよい六角形と思っていましたが
次に、6つの内角を計算します。リゲルにおける内角φAは三角形FABに【基本計算式5】を適用して求めます。同様に計算していくと、
リゲルにおける内角φA=134.3932°
シリウスにおける内角φB=104.2132°
プロキオンにおける内角φC=152.2901°
ポルックスにおける内角φD=127.9156°
カペラにおける内角φE=90.7941°
アルデバランにおける内角φF=144.2187°
が得られます。相対する内角の値は近い(134.4°と127.9°、104.2°と90.8°、152.3°と144.2°)ようです。
以上の計算結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。
ちょっと歪んだ六角形ですね。
ここで、相対する辺の平行度合いを調べてみましょう。
実は、観測者からみたとき、天球上にある異なる2本の直線(=2つの大円)は、どうやっても平行にはなりません。なぜなら、異なる2つの大円は必ず2点で交わってしまうからです。これは、平面上のユークリッド幾何学とは異なる非ユークリッド幾何学の特徴のひとつです。
でも、私たちが、天空の星々を繋いだとき、平行っぽく見える部分があるのも確かです。そこで、ここでは、例えば、辺CDと辺AFが平行に見えるかどうかを、「線分ACと線分FDの長さが同じくらいか」によって判定することにします注2。おそらく、私たちは、そんな感じで平行性を認識していると思います(左図)。
注2) 点A及び点Fから直線CDにおろした垂線の足を、それぞれ点Q、点Rとし、線分AQと線分FRの長さを比較するという方法もよいかと思います(右図)。
それぞれの線分の長さは、【基本計算式1】を用いて計算します。
線分ACの長さ:38.5111°、線分DFの長さ:45.0128°
線分BDの長さ:47.0537°、線分EAの長さ:54.2081°
線分CEの長さ:51.1243°、線分FBの長さ:46.0228°
計算結果は以下に示すように、線分の比率が1.11〜1.17と、そこそこ1に近く、相対する辺同士は結構、平行っぽいということが分かります。
3. ポルックスの代わりにカストル
試みに、ポルックスの代わりにカストルを結ぶと、どんな感じになるか計算してみました。
カストルの赤径RA及び赤緯Decは、次の通りです(元期 J2000.0)。
カストル:(RA, Dec)=(7h 34m 35.87319s, +31° 53′ 17.8160″)
第2章に示した一連の計算で、恒星D(ポルックス)をカストルに入れ替えて計算してみると、六角形の形は次のようになります。冬のダイヤモンドでは、各辺の長さの比が最大1.5倍の差があったことと比べると、ポルックスをカストルに入れ替えた六角形では、各辺の長さの差は1.3倍以下に収まっており、より均整のとれた六角形だといえます。
「冬のダイヤモンド」と「ポルックスをカストルに入れ替えた六角形」について、6辺の長さの平均値μ、標準偏差σ、変動係数CVを計算してみると、
冬のダイヤモンド:μ=27.27°、σ=5.11°、CV=18.7%
ポルックスをカストルに入れ替えた六角形:μ=27.20°、σ=3.90°、CV=14.3%
となり、6辺の長さの差異が是正されていることが、定量的に確認できます。
カストルに入れ替えた六角形について、相対する辺の平行度を計算し直すと、下図のように線分の比率が1.08〜1.12になり、これらの値は冬のダイヤモンド(1.11〜1.17)より1に近づいており、平行度合いが増していることが分かります。
4. まとめ
冬のダイヤモンドは、ちょっとカペラが遠くに離れている六角形です。ポルックスをカストルに入れ替えると、均整のとれた六角形に近づきます。夜空を見上げて、冬のダイヤモンドの六角形を紡いでいこうとするとき、ポルックスかカストルか道に迷いそうになる原因は、ここにあったのかも知れませんね。
5つの【基本計算式】をこちらで紹介しています
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Winter Hexagon, Winter Diamond
春の大三角、夏の大三角ときたら、次は、やはり冬の大三角ですね
オリオン座のベテルギウス、大犬座のシリウス、小犬座のプロキオンは、いずれも明るい星なので道に迷うことは、まずあり得ませんので、今回は、冬の大三角形が正三角形かどうかについて調べてみます
Wikipediaによると「おおいぬ座α星シリウス、こいぬ座α星プロキオン、オリオン座α星ベテルギウスの3つの1等星を頂点とする三角形である。形は正三角形に近く、三角形の中を淡い天の川が縦断している」とあります。
さて、どうでしょうか。
冬の大三角形を構成する3つの恒星ベテルギウス、シリウス、プロキオンの赤径RA及び赤緯Decは、下記の通りです(元期 J2000.0)。
ベテルギウス:(RA, Dec)=(5h 55m 10.30536s, +7° 24′ 25.4304″)
シリウス:(RA, Dec)=(6h 45m 8.91728s, -16° 42′ 58.0171″)
プロキオン:(RA, Dec)=(7h 39m 18.11950s, +5° 13′ 29.9552″)
まず、3辺の長さを比べてみます。【基本計算式1】を用いれば、
ベテルギウス〜シリウスの角距離θAB=27.1045°
シリウス〜プロキオンの角距離θBC=25.7014°
プロキオン〜ベテルギウスの角距離θCA=25.9620°
と計算されます。3辺のうち最短であるシリウス〜プロキオンの角距離を1とすると、ベテルギウス〜シリウスの角距離は1.0546、プロキオン〜ベテルギウスは1.01014です。
3辺の長さの差は数%以内ですから、冬の大三角形は正三角形と言って差し支えないでしょう。
春の大三角形も正三角形なのですが、3辺の長さの差が約4%以内であることと比べると、冬の大三角は、かなり正三角形である度合いが強いといえます。
次に、3つの内角を比較します。【基本計算式5】を用いれば、
ベテルギウスにおける内角φA=59.6697°
シリウスにおける内角φB=60.6076°
プロキオンにおける内角φC=65.0647°
と得られます。3つの内角は、目視レベルであれば、ほぼ同じでしょうから、やはり正三角形だとみてよいでしょう。
細かくみると、ほぼφA=φBなので、冬の大三角はベテルギウスとシリウスを底辺とする二等辺三角形ともいえます。
興味深いことは、春の大三角も冬の大三角も、ほぼ正三角形であり、正確に言うと二等辺三角形であるという類似点です。
冬の大三角の内角の和はφA+φB+φC=185.3°です。春の大三角は189.3°でしたから、冬の大三角の方が、小さいということが分かります。
球面三角形の内角の和は180°より大きくなります。また、球面三角形の面積が小さくなるほど、内角の和は限りなく180°に近づいていきます。計算方法は割愛しますが、春の大三角と冬の大三角の面積比は、(189.3°-180°)/(185.3°-180°)=9.3°/5.3°=1.75倍です。
今回の計算結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。
5つの【基本計算式】をこちらで紹介しています
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Winter Triangle
1. はじめに
春の夜空を彩るオレンジ色のアークトゥルスと青いスピカ
アークトゥルスは0等星なので、都会でもハッキリと見えますし、1等星のスピカも慣れてくれば見つけられます。
あと、デネボラが見つかれば春の大三角形なのですが、このデネボラが2等星なので、都会で見つけるには、結構、厳しいものがあります
条件の良い日に、「このあたりにあるはず」という感じで、じっと眼が慣れるのを待っていて、ようやく見える程度です。
そういった意味で、春の大三角形の形状を頭に入れておくことは有用です。
ちなみに、Wikipediaによれば「アークトゥルスとスピカ、それにしし座β星デネボラを結ぶと、大きな正三角形ができる」と記されています。
一方、"Star Identification"では「アークトゥルスとスピカのところで同じ角度になる三角形の頂点にデネボラがある」と説明されています。つまり、アークトゥルスとスピカを底辺とする二等辺三角形だということになります。
さて、実際は、どんな感じになっているでしょうか。
2. 基本計算式
今日は、まず、星の道案内に必要となる5つの基本方程式を整理しておきます。
一連の計算では極座標系を使用することとし、恒星の位置(α, δ)は、赤経RA及び赤緯Decを用いて、次式のように表します。
ここで、δを90°からの補角で表す理由は、星の高度を示す際に、極座標系では天頂からの偏角を用いて表すことに対し、赤緯は水平面からの仰角を用いるという違いがあるためです。
3つの恒星A、B、Cの位置は、極座標系(α, δ)で、それぞれ、
と表わします。
赤経は「時 分 秒」で、赤緯は「度 分 秒」で提供されていますので、計算に際しては、それぞれ「度」に換算します。電卓であれば、そのままでも計算できますが、表計算ソフトなどコンピューター上で計算する場合はラジアンに換算(360°→2π)します。
【基本計算式1】2つの恒星A、B間の角距離
天球上の2点A(αa, δa)、B(αb, δb)間の角距離θABは「球面三角法における余弦定理」を用いて求めます。
天球上の点A、B及び天頂から成る三角形に余弦定理を適用すると、
となるので、右辺のδa、δb、αa、αbに数値を代入することでθABを求めることができます。
【基本計算式2】2つの恒星A、Bを通過する大円
大円の方程式は、
と表せます。天球上の2点A(αa, δa)、B(αb, δb)を通過する条件から、係数a、bは次式で求めることができます。
観測者からみたとき、この大円は2つの恒星を結ぶ直線です。
【基本計算式3】2つの恒星A、Bを通過する大円と直交し、恒星Cを通過する大円
天球上の2点A、Bを通過する大円G1:a cosα+b sinα+cotδ=0と直交し、点C(αc, δc)を通過する大円G2の方程式を求めます。
大円G2の方程式をa’ cosα+b’ sinα+cotδ=0としたとき、係数a'、b'は次式により求められます。
大円G2は、観測者からみたとき、恒星Cから恒星A、Bを結ぶ直線上におろした垂線を表します。
【基本計算式4】2つの大円の交点
大円G1:a cosα+b sinα+cotδ=0と大円G2:a’ cosα+b’ sinα+cotδ=0の交点Q(αq, δq)は、次式から求めます。
交点Qは、観測者からみたとき、恒星Cから恒星A、Bを結ぶ直線上におろした垂線の足です。
2つの大円の交点は、空間上で相対する2点が存在しますが、ここでは、必要な方の1つを選びます。
【基本計算式5】3つの恒星A、B、Cから成る球面三角形の頂点Aにおける内角
天球上の3点A(αa, δa)、B(αb, δb)、C(αc, δc)から成る三角形の頂点Aにおける内角φA(=∠BAC)は、「球面三角法における余弦定理」
から、次式を用いて求めます。
以上に示した5つの基本計算式を使えば、たいていの計算はできるようになります
3. 春の大三角形
春の大三角形を構成する3つの恒星アークトゥルス、スピカ、デネボラの赤径RA及び赤緯Decは、下記の通りです(元期 J2000.0)。
アークトゥルス:(RA, Dec)=(14h 15m 39.67207s, +19° 10′ 56.673″)
スピカ:(RA, Dec)=(13h 25m 11.57937s, -11° 9′ 40.7501″)
デネボラ:(RA, Dec)=(11h 49m 3.57834s, +14° 34′ 19.409″)
これら3つの恒星の位置を極座標系で表すと、
アークトゥルス:A(αa, δa)=(213.9153°, 70.8176°)
スピカ:B(αb, δb)=(201.2982°, 101.1613°)
デネボラ:C(αc, δc)=(177.2649°, 75.4279°)
となります。
3.1 3辺の長さ
天球上の点A(アークトゥルス)と点B(スピカ)の間の角距離は、【基本計算式1】を用いれば、θAB=32.7929°が得られます。同様にして、点B(スピカ)と点C(デネボラ)の角距離はθBC=35.0642°、点C(デネボラ)と点A(アークトゥルス)の角距離はθCA=35.3096°となります。
3辺のうち最短であるアークトゥルス〜スピカの角距離を1とすると、スピカ〜デネボラの長さは1.06926、デネボラ〜アークトゥルスは1.07675です。
3辺の長さの差は約4%以内なので、ほぼ同じだとみなせば、春の大三角形は、ほぼ正三角形だと言えそうです。
細かく言えばθAB≠θBC≒θCAなので、ほぼ二等辺三角形だと言った方が、より正確だと思います。
3.2 3つの内角
次に、球面三角形ABCの頂点A(アークトゥルス)における内角は、【基本計算式5】を用いて、φA=64.9559°です。同様にして、頂点B(スピカ)及び頂点C(デネボラ)における内角を計算すると、それぞれ、φB=65.7135°、φC=58.6618°が求まります。
すでに3辺の比較で説明したように、3角の値をφA≒φB≒φCとみれば、ほぼ正三角形ですし、φA≒φB≠φCとみるならば、ほぼ二等辺三角形です。
前回も記しましたが、球面上の三角形の内角の和は180°より大きくなります。確かに、春の大三角形では189.3°>180°となっています。ちなみに、球面三角形の面積が小さくなるほど、内角の和は限りなく180°に近づいていきます。
3.3 まとめ
春の大三角形は、3辺の長さがほぼ等しいので、目視では正三角形だと言って差し支えないと思います。また、頂点アークトゥルスとスピカで同じ角度になる二等辺三角形だという説明も、非常に正確だと言えます。
今回の計算結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。
4.おわりに
今回は、基本計算式のうち【基本計算式1】と【基本計算式5】の2つだけを用いて計算することができました。
残り3つの【基本計算式2】〜【基本計算式4】は、北斗七星から北極星を探すときのような計算の際に使います。
まだまだ、確かめてみたい位置関係(星の道案内)がありますので、引き続き、調べていきたいと思います。
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Spring Triangle
白鳥座のデネブ、琴座のベガ、鷲座のアルタイルで、夏の大三角形
米海軍の教育資料"Star Identification"によると、「アルタイルからベガに進み、90°曲がるとデネブに至る」という道案内があります。
つまり、夏の大三角形は、頂点ベガで直角となる三角形だと説明されています。
実際は、3つの中でベガが最も明るいので、ベガからスタートすることも多いわけですが、周囲を見渡してアルタイルとデネブを探すとき、「ベガで直角になる」という手掛かりは非常に有用です。
また、容易に三角形を見つけられたときでも、時刻や方角によっては、「あれ?どれがどれだっけ?」と迷った際に、ベガで直角になっていることを知っていれば便利です
確かに、目測では、ほぼ直角に見えますが、実際は、どうなのでしょうか。
1. 直交座標系で計算
まず、xyz-直交座標系で計算してみます。3つの恒星の赤径α及び赤緯δは、下記の通りです(元期 J2000.0)。
ベガ:(αa, δa)=(18h 36m 6.3364s, +38° 47′ 1.2802″)
デネブ:(αb, δb)=(20h 41m 25.9151s, +45° 16′ 1.2802″)
アルタイル:(αc, δc)=(19h 50m 46.9986s, +8° 52′ 5.9563″)
これらを直交座標系で表すと、次の通りです。
ベガ:(xa, ya, za)=(0.1223, -0.7699, 0.6264)
デネブ:(xb, yb, zb)=(0.4556, -0.5362, 0.7106)
アルタイル:(xc, yc, zc)=(0.4592, -0.8748, 0.1542)
ベガ〜デネブの角距離はOAとOBの成す角なので、前々回と同様に、内積の関係からθAB=23.9934°です。
同様にして、デネブからアルタイルの角距離はθBC=38.0139°、アルタイルからベガの角距離はθCA=34.2860°が得られます。
3辺のうち、最も短いベガ〜デネブ間の角距離をdとしたとき、デネブ〜アルタイル間の距離はθBC÷θAB=38.0139°÷23.9934°=1.58d、アルタイル〜ベガ間はθCA÷θBC=34.2860°÷23.9934°=1.43dとなります。
三角形の頂点ベガにおける角度は、平面OABと平面OACのなす角度です。これは、2つの平面の法線ベクトルがなす角度と等しい。平面OABの法線ベクトルは、ベクトルOAとベクトルOBの外積なので、これも前々回と同じように計算すれば、(a, b, c)=(-0.2112, 0.1985, 0.2852)が得られます。同様にして、平面OACの法線ベクトルを求め、2つのベクトルの内積を計算すれば、ベガにおける角度φ=81.7124°が得られます。
同様にして、頂点デネブ、アルタイルにおける角度は、それぞれ、φ=64.8439°、φ=40.7968°となります。
3つの頂点の角度の和は、81.71°+64.84°+40.89°=187.4°です。平面上の三角形の内角の和は必ず180°ですが、球面上の三角形の場合、内角の和は必ず180°より大きくなります。
この結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。
別の場所、別の日時で、もう1枚
以上の計算から、頂点ベガにおける角度は81.7°であり、直角より若干、小さめだということが分かりました。
まあ、目測では、直角っぽくみえる範囲だと思います。
2. 極座標系で計算
前章では、直交座標系を利用しましたが、もちろん極座標系でも計算できて、球面三角法における余弦定理を使えば、もっとシンプルに解けることになります。
ベガとデネブの距離角θABは、前回と同様に「球面三角法における余弦定理」を用いて求めます。天球上の点A、B及び天頂から成る三角形に余弦定理を適用すると、
cosθAB=cosδacosδb+sinδasinδbcos(αa-αb)
となり、θAB=23.9934°が得られます。同様にして、デネブからアルタイルの角距離及びアルタイルからベガの角距離は、それぞれ、θBC=38.0139°、θCA=34.2860°となります。
次に、三角形の頂点ベガの角度φAは、天球上の点A、B、Cから成る三角形に余弦定理を適用すれば、
cosθBC=cosθABcosθCA+sinθABsinθCAcosφA
となるので、φA=81.7124°となります。
同様にして、デネブ及びアルタイルにおける角度は、それぞれ、φB=64.8439°、φC=40.7968°です。
以上の計算結果は、前章の直交座標で求めた結果と、ちゃんと一致しています
極座標系の計算でも表計算ソフトを用いて計算しています。
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Summer Triangle
はじめに
先日は、xyz-直交座標系で計算してみましたが、今回は極座標系で計算してみました。
もちろん、全く同じ計算結果が得られます。
1.各恒星の位置
前回と同様に、各恒星の位置は赤径αと赤緯δを用いて、以下のように表します(元期 J2000.0)。
メラク:(α, δ)=(11h 01m 50.47654s, +56° 22′ 56.7339″)
ドューベ:(α, δ)=(11h 03m 43.67152s, +61° 45′ 03.7249″)
ポラリス:(α, δ)=(2h 31m 49.09456s, +89° 15′ 50.7923″)
2.「メラク」と「ドューベ」を含む大円G1
観測者から観たとき、メラクとドューベを結ぶ直線は、天球上の大円に存在します。大円の方程式は、天球と原点Oを含む平面(ax+by+z=0)が交わる部分なので、下記の式と連立して解けば得られます。
すなわち、
となります。メラク、ドューベの位置を極座標で、それぞれ(αa,δa)、(αb,δb)と表すと、
なので、これを連立して、a、bについて解けば次式が得られます。
3.「ポラリス」を含み大円G1と直交する大円G2
ポラリスを含む大円G2の方程式をa'、b'を用いて表すと、
大円G1と直交する条件から、
これらの2式を連立して、a'、b'について解くと、
4.「ポラリス」があると期待される位置
ポラリスがあると期待される位置Q'は、大円G1と大円G2の交点です。2つの大円の交点は計算上、南北2か所にありますが、ここでは、当然、北天側の点(δq>0)を求めます。下記の2式を連立して、
αq',δq'について解くと、
が得られます。
5.「ポラリス」は「メラク」と「ドューベ」の直線上にあるか
以上の計算から、ポラリスがあると期待される位置Q'は、(α, δ)=(18h 5m 45s, +88° 36′ 46″)が得られます。実際にポラリスがある位置との角距離θは、球面三角法の余弦定理を用いて求めます。天球上の点C, Q'及び天頂から成る三角形に余弦定理を適用すると、
cosθ=cosδccosδq'+sinδcsinδq'cos(αc-αq')
となるのでθ=1.92°が得られ、この値が実用上、十分に小さいことは、前回、評価した通りです。
前回、ポラリスがあると期待される位置として考えた点Qは天球上にはなく、今回の点Q'は天球上にある点が違いですが観測者から観たとき、点Qと点Q'は重なってみえます。そのため、「ポラリスと点Qの角距離」と「ポラリスと点Q'の角距離」は等しくなります。
6.「ポラリス」は「メラク」と「ドューベ」を結ぶ距離の約5倍の位置にあるか
前章と同様に球面三角法における余弦定理を利用すれば、メラクとドューベの角距離はθAB=5.374°、ドューベ(点B)からポラリスがあると期待される点Q'までの角距離はθBQ'=28.648°となり、両者の比はθBQ'/θAB=5.33倍が得られ、これも前回と同じ計算結果です。
7. まとめ
前回はxyz-直交座標系を用いて、今回は極座標系で計算してみましたが、当然といえばそれまでですが、両計算で同じ結果が得られました。
直交座標系を介さずに極座標系のみで計算した方がシンプルになりますが、逆三角関数で解を選ぶ際に間違えないように注意する必要があります(表計算ソフトは、複数の解が存在しても1つの解しか示してくれませんので)。一方、直交座標系は、解を取り違えたときでも直感的に分かりやすいという利点があります。
まあ、しばらくは、使いやすい方を使うか、もしくは双方を用いてダブルチェックするなど、フレキシブルに考えていきたいと思います。
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はじめに
小学生の頃、北斗七星の柄杓の先、大熊座β星Merak(メラク)からα星Dubhe(ドューベ)への直線を延長すると、その先に北極星(ポラリス)があると習いました。
Wikipediaによると、「α星とβ星を結んだ線をα星側に5倍ほど延長するとポラリスに突き当たる」と記載されています。
その他、多くの書籍やHPで同様に「5倍」との記載が見つかります。
Navigational Starsを活用して天球を歩き回るには、一連の道案内が、実際のところ、どの程度の精度で語られているのかを知っておく必要があります。
そこで、今回は次の2つについて計算してみました。
メラクからドューベへ向かう直線上にポラリスがあるか
メラクとドューベの距離の5倍ほどの位置にポラリスがあるか
1. 各恒星の位置
恒星の天球上の位置は、赤径αと赤緯δによって表されます。
赤経は春分点を0hとして反時計周りに24hまで、赤緯は天の赤道を0°として南北±90°まで(北天側が+、南天側が−)で、これらの組み合わせで全天球を網羅します。
Wikipediaによると、メラク、ドューベ、ポラリスの位置は、それぞれ、
メラク:(α, δ)=(11h 01m 50.47654s, +56° 22′ 56.7339″)
ドューベ:(α, δ)=(11h 03m 43.67152s, +61° 45′ 03.7249″)
ポラリス:(α, δ)=(2h 31m 49.09456s, +89° 15′ 50.7923″)
です(元期 J2000.0)。
厳密に言うと、恒星の位置は歳差及び章動によって、時々刻々変化していて、毎正時の正確な位置を"Nautical Almanac"等によって知ることができます。ここでは、現在の平均的な位置として上述の値を用いることにします。
3つの恒星の位置を、以降の計算のため、xyz-直交座標に変換すると、
メラク:(xa, ya, za)=(-0.5359, 0.1390, 0.8328)
ドューベ:(xb, yb, zb)=(-0.4591, 0.1150, 0.8809)
ポラリス:(xc, yc, zc)=(0.0101, 0.0079, 0.9999)
が得られます。
ここで、xyz-直交座標系は、観測点(地球)を原点Oとし、原点Oから春分点へ向かう直線をx軸、夏至点へ向かう直線をy軸、天の北極へ向かう直線をz軸とします。
なお、極座標から直交座標への変換には下記の公式を用いています。
天体の位置を表す際の赤緯はxy平面から見上げた仰角であることに対して、極座標系ではz軸からの偏角であることに注意が必要です(「極座標のδ」=90°−「赤緯δ」です)
rは天球の半径ですが、ここでは任意の値で構いません(計算結果には影響しないのでr=1とします)
2. 観測者と「メラク」と「ドューベ」を含む平面
私たち観測者の位置を原点Oとし、天球上のメラクの位置を点A、ドューベの位置を点Bとしたとき、この3点を通過する平面pは、ax+by+cz=0で表されます。
この平面pの法線ベクトル(a, b, c)は、2つのベクトルの外積で与えられます。
観測者は、この平面p上にいるので、この平面上に存在する恒星は直線上に乗っているように見えます。
点C(ポラリス)が、この平面に乗っていれば話は簡単なのですが、実際は、多少、ずれているわけです。
3.「ポラリス」があると期待される位置
天球上のポラリスの位置を点Cとし、点Cから平面pにおろした垂線の足を点Qとします。
この点Qは、平面p上で最も点Cに近い点で、ポラリスが存在すると期待される位置です。
この垂線の方向ベクトルは平面pの法線ベクトル(a, b, c)と一致するので、垂線の方程式は、
と表わされ、この直線と平面pの方程式を連立して解けば、交点Qの座標(xq, yq, zq)が求まります。
ごりごり計算して整理すると、
となります。
4.「ポラリス」は「メラク」と「ドューベ」の直線上にあるか
ポラリスの位置(天球上の点C)は、
ポラリス:(xc, yc, zc)=(0.0101, 0.0079, 0.9999)、(α, δ)=(2h 31m 49.09456s, +89° 15′ 50.7923″)
でした。これに対して、平面p上でポラリスがあると期待される場所(点Q)は、前章で求めた解の各パラメーターに実際の値を代入すれば得られて、
点Q:(xq, yq, zq)=(0.0006, -0.0242, 0.9994)、(α, δ)=(18h 5m 45s, +88° 36′ 47″)
となります。
両者のxyz座標を比較すると、そこそこ近いように思えます。極座標で比べると、赤経が値の差が大きいようにみえますが、これは、点Cと点Qが天の北極に近く、xy方向のわずかな差異が赤経に大きく影響してしまうためです。赤緯は近い値です。
では、2点の位置関係は、実際のところ、どれほどであるか、角距離(離角)θで表してみます。
θは、OQとOCの成す角なので、内積の関係を用いると、
となります。各パラメーターに代入すると、θ=1.9183°が得られます。
この値は非常に小さく、ポラリスは、ほぼ、メラクとドューベを結ぶ直線上にある、と言えそうです。
例えば、眼視時の視野角を40〜50°と考えれば、ポラリスが±20〜25°の範囲にあれば見つけられるわけですし、一般的な双眼鏡で実視界として7°程度を想定すると±3.5°以内の星は視野に入るわけで、θ=1.92°という値は、実用面では直線上にあると言える値です。
それでは、「5倍」という説明はどうなのでしょうか。
5.「ポラリス」は「メラク」と「ドューベ」を結ぶ距離の約5倍の位置にあるか
前章の通り、メラクからドューベへ真っすぐ進めば、ポラリスを見つけることができるわけですが、どれくらい、進めばよいのかというと、「5倍ほど」ということになっています。
実際は、どれほどなのかを計算してみましょう。
メラク(天球上の点A)とドューベ(点B)の角距離は、OAとOBの成す角なので、先ほどと同じように計算すると、θAB=5.3740°です。
ドューベ(点B)からポラリスがあると期待される点Qまでの角距離は、同様に計算してθBQ=28.6483°となります。
両者の比はθBQ/θAB=5.33倍ですから、「5倍ほど」という話は、目測で観望することを想定すれば十分に正確だと言えるでしょう。
6. まとめ
メラクからドューベへ向かう直線上にポラリスがあるか
ぴったり直線上というわけではないが、差異は角距離で1.92°と小さく、実用上は、ほぼ直線上にあると言える。
メラクとドューベの距離の5倍ほどの位置にポラリスがあるか
メラクとドューベの距離の5.33倍の位置にあるので、ほぼ5倍の位置にあると言える。
これらの結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので、あくまでも目安です)。
このような、カメラで撮影した画像をもとに実測しようとしても、射影方法や歪曲収差の特性に関する知識に基づいた補正が必要なので、結構、難しいと思います。実際、この写真でもDubheからPolarisまでの距離は間延びしています。
今回の記事で示した一連の計算は、ちょっと複雑なのですが、一度、表計算ソフトに組み込んでしまえば、あとは、対象となる恒星の赤経・赤緯を入力するだけです。
近いうちに、北斗七星からレグルスへの道案内や、夏の大三角形の形状などを調べてみたいと思います
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Big Dipper to Polaris
【2017/6/5追記】天球上にない点Qを登場させたことによって、計算がややこしくなってしまっていることに気づきました。扱うすべての点が天球上にあれば、球面三角法を使えるので、もっとシンプルにできそうです。早々に計算し直してみます(同じ結果になるはずですが)。
と思いましたが・・・意外に面倒さ加減は変わりません。しばらく、xyz-座標系で計算を進めることにします
【2017/6/10追記】極座標系で計算してみたところ、まぁ、当然ですが、全く同じ結果が得られました。
だいぶ気温があがってきて、扇風機が必要な季節になってきました
お散歩では、日陰を歩けば涼しいのですが、直射日光は結構、暑い
すっかり、初夏ですね
公園や植栽では、色とりどりの花が開いています。
この週末で印象に残ったのは、赤紫色のムラサキカタバミ、黄色いビヨウヤナギ
さて、今日のお昼ごはんは、またまたお好み焼き
前回、卵と鰹節を忘れたのでリベンジです。
今日も豚バラはないので、代打「ベーコン」
卵黄を入れて「豚玉」
卵黄だけを使うと、卵白が残ってしまうので、これはラップをかけて冷蔵庫に入れておこう、と思ったのですが、ここで、ひらめいて
泡立てて、タネに投入してみました
で、両面焼いて、できあがり
今日は、鰹節も忘れずに
「いただきまーす」
ふわっと仕上がって、大成功
昨晩の夜散で、今年はじめて出会ったアルタイル
夜半になって、涼麻家のベランダ側に巡ってたところを
画面下側に向かって翔んでいます(片翼は隠れています)
↓クリックすると説明入りの大きな画像が開きます↓
5D2+EF24mmL2, f1.4, 1/6s, ISO1600
Navigational Star #51:鷲座のα星アルタイル、0.77等星
Navigational Starsとは、陸地が見えない外洋を航行する際の航海術「天測航法」において、太陽・月・惑星とともに用いられる58の恒星(19の1等星と39の2等星)です