涼麻が行く ~白犬ウエスティの のんきな生活~

ウエストハイランドホワイトテリア(ウエス、ウエスティ、白犬)の涼麻(りょうま)のことを中心にいろいろと

『天球の歩き方 計算編』#2 〜夏の大三角形は直角三角形か〜

2017年06月11日 00時01分27秒 | 星空・気象

白鳥座のデネブ、琴座のベガ、鷲座のアルタイルで、夏の大三角形

米海軍の教育資料"Star Identification"によると、「アルタイルからベガに進み、90°曲がるとデネブに至る」という道案内があります。

つまり、夏の大三角形は、頂点ベガで直角となる三角形だと説明されています。

実際は、3つの中でベガが最も明るいので、ベガからスタートすることも多いわけですが、周囲を見渡してアルタイルとデネブを探すとき、「ベガで直角になる」という手掛かりは非常に有用です。

また、容易に三角形を見つけられたときでも、時刻や方角によっては、「あれ?どれがどれだっけ?」と迷った際に、ベガで直角になっていることを知っていれば便利です

確かに、目測では、ほぼ直角に見えますが、実際は、どうなのでしょうか。

 

1. 直交座標系で計算

まず、xyz-直交座標系で計算してみます。3つの恒星の赤径α及び赤緯δは、下記の通りです(元期 J2000.0)。

ベガ:(αa, δa)=(18h 36m 6.3364s, +38° 47′ 1.2802″)

デネブ:(αb, δb)=(20h 41m 25.9151s, +45° 16′ 1.2802″)

アルタイル:(αc, δc)=(19h 50m 46.9986s, +8° 52′ 5.9563″)

これらを直交座標系で表すと、次の通りです。

ベガ:(xa, ya, za)=(0.1223, -0.7699, 0.6264)

デネブ:(xb, yb, zb)=(0.4556, -0.5362, 0.7106)

アルタイル:(xc, yc, zc)=(0.4592, -0.8748, 0.1542)

ベガ〜デネブの角距離はOAとOBの成す角なので、前々回と同様に、内積の関係からθAB=23.9934°です。

同様にして、デネブからアルタイルの角距離はθBC=38.0139°、アルタイルからベガの角距離はθCA=34.2860°が得られます。

3辺のうち、最も短いベガ〜デネブ間の角距離をdとしたとき、デネブ〜アルタイル間の距離はθBC÷θAB=38.0139°÷23.9934°=1.58d、アルタイル〜ベガ間はθCA÷θBC=34.2860°÷23.9934°=1.43dとなります。

三角形の頂点ベガにおける角度は、平面OABと平面OACのなす角度です。これは、2つの平面の法線ベクトルがなす角度と等しい。平面OABの法線ベクトルは、ベクトルOAとベクトルOBの外積なので、これも前々回と同じように計算すれば、(a, b, c)=(-0.2112, 0.1985, 0.2852)が得られます。同様にして、平面OACの法線ベクトルを求め、2つのベクトルの内積を計算すれば、ベガにおける角度φ=81.7124°が得られます。

同様にして、頂点デネブ、アルタイルにおける角度は、それぞれ、φ=64.8439°、φ=40.7968°となります。

3つの頂点の角度の和は、81.71°+64.84°+40.89°=187.4°です。平面上の三角形の内角の和は必ず180°ですが、球面上の三角形の場合、内角の和は必ず180°より大きくなります。

 

この結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。

 

別の場所、別の日時で、もう1枚

以上の計算から、頂点ベガにおける角度は81.7°であり、直角より若干、小さめだということが分かりました。

まあ、目測では、直角っぽくみえる範囲だと思います。

 

2. 極座標系で計算

前章では、直交座標系を利用しましたが、もちろん極座標系でも計算できて、球面三角法における余弦定理を使えば、もっとシンプルに解けることになります。

ベガとデネブの距離角θABは、前回と同様に「球面三角法における余弦定理」を用いて求めます。天球上の点A、B及び天頂から成る三角形に余弦定理を適用すると、

cosθAB=cosδacosδb+sinδasinδbcos(αab)

となり、θAB=23.9934°が得られます。同様にして、デネブからアルタイルの角距離及びアルタイルからベガの角距離は、それぞれ、θBC=38.0139°θCA=34.2860°となります。

次に、三角形の頂点ベガの角度φAは、天球上の点A、B、Cから成る三角形に余弦定理を適用すれば、

cosθBC=cosθABcosθCA+sinθABsinθCAcosφA

となるので、φA=81.7124°となります。

同様にして、デネブ及びアルタイルにおける角度は、それぞれ、φB=64.8439°、φC=40.7968°です。

以上の計算結果は、前章の直交座標で求めた結果と、ちゃんと一致しています

極座標系の計算でも表計算ソフトを用いて計算しています。

 

その他の『天球の歩き方』はこちらへどうぞ

Summer Triangle

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『天球の歩き方 計算編』#1補... | トップ | 『天球の歩き方 計算編』#3 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

星空・気象」カテゴリの最新記事