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カーメン・ランディ/セルフ・ポートレイト

2007年07月18日 21時50分19秒 | JAZZ
 カーメン・ランディを知ったのは、前にロルツ・アレキサンドリアのところにも書いた、80年代後半にCBSソニーがシリーズで出した「ブラン・ニュー・スタンダード・ボーカル from New York」の一枚だった。このシリーズは新旧ボーカリストが起用されていた訳だけれど、もちろんカーメンは「新」の方の引っ張り出されていたのだろうが、とにかく貫禄もテクニックもあり、新人離れしたシンガーという感じはしたものの、なにしろこのシリーズ私にはロルツ・アレキサンドリアとシーラ・ジョーダンのアルバムが良すぎたせいで、他はあまり好んで聴いたためしがなかった....というのが正直なところだ。このアルバムは94年に出たものだが、その間、日本ではほとんどアルバムは出ていなかったと思うので、もしかすると本邦再デビューといったところだったのかもしれない。ひょっとすると、このアルバム自体、JVCで作った和製洋楽ジャズかもしれないが....。

 ソニーから出たアルバムは、シリーズのコンセプトもあったのか、比較的小規模でシンプルなコンボをバックに、調度クラブ歌手みたいなノリ歌っていたが、本作はシダー・ウォルトンのピアノ、ジョン・クリイトンのベース(もしくはネイザン・イースト)、ラルフ・ベンランドのドラムスというピアノ・トリオをベースにけっこうバラエティに富んだ編成、そしてアレンジで作られていた、かなりゴージャスな仕上がりだ。なにしろ1曲目の「スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モースト」からして、実にムーディなストリングスが入っているし、3曲目の「マイ・フェイヴァリット・シングス」ではアニー・ワッツのブロウしまくるサックスがフィーチャー、7曲目のお馴染みのジョビンの名曲「トリステ」ではギル・エヴァンスっぽいウッドウィンドがフィーチャーされた、かなりハイブロウなボサノバ・アレンジが聴かれるといった具合で、ソニーで出たアルバムとは対照的なバラエティに富んだ仕上がりになっているのだ。

 彼女のボーカルは、とにかく正統派としかいいようがないジャズ・ボーカルで、豊かで弾力のある声、安定したピッチを持ち、ジャズ的な崩し方も堂に入ったもので、とにかく新人~中堅とは思えない風格があり、安心して聴いていられるのがいい。また、数曲収められたオリジナル作品ではフュージョンやブラコン風なエッセンスも取り入れるなど、今への配慮も抜かりないあたりは、新世代らしい芸達者ぶりだ。ついでにかけば、この人時折見せるフィルセットも美しく、この隠し味的な魅力になっている。
 という訳で、久しぶりに聴いたらけっこう拾い物的な魅力があったアルバムであった。個人的にはゴージャズなストリングをバックに歌った作品に魅力を感じる(ラストはストリングスをバックにお約束?の「ウーラウンド・ミッドナイト」だ)、コンテンポラリーなアレンジで仕上げた曲もなかなかだ。Walkmanにでもいれて、繰り返し聴いてみようかな。
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