和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

徒然草の愉しみ。

2009-12-05 | 古典
不幸にして、学生の時に徒然草の楽しみをしらずに過ごしてしまい。いまになって読み始めている私であります。といってもパラパラでしかないのが恥ずかしい。
ということで、ここには徒然草好きの方々の言葉あれこれ。

橋本治著「これで古典がよくわかる」(ちくま文庫)に

「やっと『徒然草』の出番です。『やっと』と言っても、べつに『徒然草』が日本の古典の最高峰というわけじゃありません。『やっとそのままでも読める古典が出てきた』ということですね。・・・兼好法師の文章は、よく『近代の日本語の先祖』というような言われ方をします。つまり、兼好法師の文章は、現代人でもそのまんま読めるんです。『でもオレは読めない』なんてことは言わないでください。この『読める』は、『読める人だったら読める』ということなんですから。この文章の構造は、我々の知っている現代日本語とほとんど同じものですね。・・・」(p185~186)

三省堂の新明解古典シリーズ10「徒然草」監修桑原博史
そこの第百五十五段「世に従はん人は」の解説に
「第百三十七段とともに、本格的な評論と言うべき内容で・・・・書いたりしなければならなかったところに、筆者の不幸があり、読者の幸福がある。幸福とは、『徒然草』を読むことのできる幸福である。」(p227)
なんていう言葉がさりげなく挿入されております。

そういえば、ドナルド・キーン著(大庭みな子訳)「古典の愉しみ」(宝島社文庫)のはじまりは
「僅か数ページで日本の美学の全貌を説明しつくし、数百年にわたって育てられてきた日本人の美意識について語るのは難しい。日本文化の中核になっている日本人の美意識を抜きにして日本文化の特徴を語るのはさらに困難なことである。私は日本人の特質を一冊の書物『徒然草』に関連して書いてみようと思う。・・・・」(p8)と第一章「日本の美学」をはじめておりました。


困ったことはお受験でした。古典に嫌悪のバリアーを張りめぐらせる役目をはたしているようであります。それもついでに書いときましょう。

串田孫一著「古典との対話」(筑摩書房)

「私達は、『枕草子』や『方丈記』などそうであるが、学校時代に教科書の中でこの『徒然草』にめぐり合っている。それだけであればいいが、試験の問題として出る可能性に脅かされながら、これに苦しまされたという記憶を持っている。これは思えば非常に不幸なことであって、せっかくのめぐり合いがそのためにそれで終わってしまう。
専門の国文学者は、前にも書いたようにそれが研究の対象となってしまい、『徒然草』との自由な付き合いが出来にくくなっている。それを考えると、好きなようにこの本を読める立場にある私達は恵まれていると思わざるを得ない。」(p110)

う~ん。試験・受験の弊害もありますが、
それじゃ、学生のころに徒然草を愉しんじゃった方はどうなるか。
嵐山光三郎さんはそういうタイプでした。

「高校二年で『徒然草』だったように思います。最初に『徒然草』に出会ったときは、やたらにおもしろくて、目からうろこが落ちるようでした。『なるほどなあ。』と感心して、兼好が書いている一節を引用して、先生や親をからかったものです。ところが、いざ試験になると、まるでだめでした。作品を鑑賞してしまうあまり、分析力に欠けました。試験問題の文中に線が引いてあり、その部分はなにをさすか、とか、あるいは文法の問題がでると、とたんに頭がこんがらかってくるのでした。・・・・
『人間の努力やいとなみは、春の日の雪だるまを作るようなものだ。』と説かれると、『そうかそうか、つまり勉強しなくていいんだな。』とか『試験でいい点をとるのはくだらないのだ。』とか思えてくるのでした。じつにいいことを教えてもらったと思ってサボっていると『きょう、そのことをしようと思っていても急用でだめになり、一生なにもできない。』という個所がでてきて『一瞬の怠りが一生の怠りなり』と叱られてしまう。
ぼくは『徒然草』を一章読んではうなり、さらに一章読んでは絶望し、また一章読んではひきずりこまれ、その結果、世捨て人にあこがれてしまい、試験ではまるで解答きないという結果に終わりました。・・・兼好の無常観は、じつは乱世の自立精神に裏うちされたもので、裏があるのですが、そのことに気がつくのは、ずっとあとのことでした。・・・」(講談社少年少女古典文学館「徒然草・方丈記」あとがき)

こちらは、こちらで大変だったようです。
どうやら、徒然草読解にも先達の道案内人が必要なようです。
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