u2の不定期更新日記

感じたことを思いつきで書いてみます。

級友との約束4

2017年03月07日 03時04分48秒 | Weblog
2 珍しい訪問者3

「ひょっとしたらアメリカやロシアなんかの秘密兵器でしょうか?」
「もちろん、我々も外国がらみのことは考えたさ。でも高出力レーザーにおいては、日本の技術は最先端で、一軒家に入るくらい小さくするのは絶対に無理なんだそうだ。産業スパイも考えたが辻田さんにしても会社で機密を扱う部署にいるわけでもないし、そうした行動は全く確認出来なかった。でも事件の時に辻田さんの部屋に辻田さんともう一人誰かがいたことだけは確かだ」
「辻田は犯人ではなく、凶器を持った犯人に連れ去られた可能性もあるんじゃないですか?」
「もちろんその可能性はある。だから重要参考人として行方を探しているのさ」

「今思い出したんですけど、一度だけ辻田と二人だけで昼飯を食べたことがありました。その時珍しく辻田がいろいろ話してくれたんです。大学入試前の予備校の合宿中に隣の家から火事が起きて、両親が亡くなって家族がいないこと、家の敷地を売っても、家のローンやなんかで残ったのは大学の入学金と4年分の学費くらいしかなくて、家賃や生活費のためにバイトをしなければならないとか。あいつけっこう苦労したんですよ」 「そうとう苦労したみたいですね。会社での評判もとても良いですよ。温厚で知識が広いと。政治経済から文化芸術まで何でも詳しくて、雑学博士なんてあだ名もあったみたいです。」
「辻田さんと特に親しかった人はいましたか?」
「辻田は普段授業にほとんど出てこなかったし、特に親しかった人は思い付かないです。でも誰からも嫌われるタイプじゃなかった。むしろいつもニコニコしていて憎めない奴でした。バイトが忙しいみたいだったので、バイト先の人の方が親しい人がいたかもしれませんね」
「辻田さんは何のバイトをしていたのですか」 「全く聞いていません」
「実はこの事件は特殊な上に全く進展がないので、今月にお宮入りになる予定です。上の方もやっかいなことに巻き込まれるのも嫌なので、事実上なかったことにしたいみたいなんです。今日お宅に伺ったのも一応周辺の調査をしたというアリバイづくりみたいなものです。だからくれぐれも他言無用にしてくださいね。」
そう言って坂上さんは帰っていった。
自宅に帰る途中、歩きながら考えた。あの辻田が事件に巻き込まれたなんて驚きだ。でも誰も知らない秘密を知った気分で少し優越感に似た感じがした。