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「在日米軍基地」を読む

2024-01-31 | A 読書日記

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『在日米軍基地 米軍と国連軍、「2つの顔」の80年史』川名晋史(中公新書2024年)を読んだ。

日本に米軍基地はいくつある? 

嘉手納、普天間、佐世保、横田、座間、横須賀、横田、あと三沢か・・・。直ちに浮かぶ基地名はこんなところ。呉、岩国、厚木、朝霞もそうかなと、もう少し浮かぶ。

本書の「はじめに」には**防衛省のデータによると、2021年時点で日本には130の基地がある。**(ⅱ頁)とある。

なに? 130?

米軍基地について無関心な私でも国連軍の存在は知っていた。だが、カバー折り返しの**世界で最も多くの米軍基地を抱え、米兵が駐留する日本。米軍のみならず、終戦後一貫して友軍の「国連軍」も駐留する。**という本書紹介文を読んで驚いた。そうなのか・・・。在日米軍や米軍基地のことはメディアで報じられることがあるが、在日国連軍のことはどうだろう、新聞でも目にしたことがない。

折り返しの紹介文の後半は**本書は新発見の史料をふまえ、占領期から朝鮮戦争、安保改定、沖縄返還、冷戦終結、現代の普天間移設問題まで、基地と日米関係の軌跡を追う(後略)**と続いている。そして**「日本は基地を提供し、米国は防衛する」という通説を覆し、特異な実態を解明。戦後史を描き直す。**と結ばれている。これはもう読むしかない。

先日書店の新刊本のコーナーでこの新書を手にして、上の紹介文を読んで、買い求めた。米軍基地の歴史的経緯について何も知らないというのはまずいだろうと。

本書の章立ては次の通り。これで内容の凡その見当がつくかもしれない。

第1章 占領と基地 ― 忘れられた英連邦軍
第2章 朝鮮戦争 ― 日米安保と国連軍地位協定
第3章 安保改定と国連軍
第4章 基地問題の転回と「日本防衛」
第5章 在日国連軍の解体危機 
第6章 普天間と辺野古 ― 二つの仮説
第7章 凖多国間同盟の胎動
終 章 二つの顔

第6章 普天間と辺野古 は基地問題の「今」。本書に現行の辺野古基地建設計画を示す図が掲載されている(199頁)。また既に1965年以降、米海軍で現行計画とよく似た計画が立案されていた、とのことで、マスタープラン1966 全体図も掲載されている(203頁)。

なぜ「最低でも県外」は実現できなかったのか。**本書の分析と仮説にしたがうならば、鳩山政権下で生じた普天間移設、とりわけ国外移設政策が頓挫した原因は、根本的には普天間が国連軍基地の地位にあることである。そして、普天間の移設先は1965年以降の経緯からしても、米国にとっては辺野古以外にありえない。普天間の移設を実現するための必須の条件は、国連軍基地としての普天間の機能を維持することにある。**(231,2頁)

知らないことばかり・・・。もう少し基地の問題に、いや、基地のことだけでなく、国際情勢にも関心を持たなければ。

巻末に掲載されている参考文献(英語文献を含む)は細かな活字で8頁、注記は20頁にも及ぶ。本文は実に緻密な記述だ。


※ 引用文中、下線引きは私がしました。