今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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連休はPEN系でもの巻

2024年05月03日 13時00分00秒 | ブログ

私は連休は関係はないのですが、お取引のカメラ店様もお休みになって、何となくもったりとした雰囲気ですね。連日ローライフレックスが続いてストレスが溜まっていましたので、では箸休めにPEN系でもやりましょうかと思ったのでしたが・・塗装のきれいなPEN-Wと初期型のPEN-Sですが、何故か気になるPEN-Sから見て行きましょうかね。

PEN-Sの発売は1960年6月とのことですが、この個体#1424XXは1961年2月の製造になると思いますので初期型ですね。その割には汚れ放題ではありますが、外観はきれいで、あまり使用はされなかった個体と思います。ただし、経年によりファインダーは思いっきり曇っています。巻き上げが2回に1回ミスをします。

初期型の特徴。スプロケットがアルミアルマイト、スプールはグレーです。

 

ピントリングは固着気味でヘリコイドクリスは抜けています。

 

 

内部もホコリの混入が多く、巻き上げダイヤルカバーの留め孔片方が折れています。

 

初期のシボ革は硬化が進んで剥離がしにくいですが、それだけではなく古い時代の個体ほど接着が強固なのです。ストロボのターミナルはネジ式ではなく半田付けです。

 

先にファインダーを清掃しておきますが、曇りが激しいレンズは清掃だけではクリアーにならないケースが多いです。この個体もそうでした。光学研磨をしておきました。

 

ダイカスト本体は古いモルトの接着剤などを完全に除去してから洗浄してあります。

 

じつは問題のシャッターユニットです。各部を分解して点検をしていくと・・

 

あ~ダメだ。地板にクラックが入っています。これはコパルシャッターの持病で、使用過程で鏡胴部分を激しく打撃した個体や、工場で組み立て時にヘリコイドの雌側を地板に強く締め過ぎた個体に発生します。ダイカストの肉厚が薄く強度が足りないのでしょう。私の印象では初期の個体に多く発生している気がしますが・・これは修正が出来ません。地板の交換が必要です。箸休めと思って始めたの・・

結論的に製造時期の近い当方のシャッターを選択しオーバーホールをして使うことにしました。但し、ハウジングのチャージリンケージに摩耗があってリンケージの作動がスムーズでない傾向があったため、オリジナルのハウジングを使用しています。

本体にシャッターを搭載して、駒数ガラスの再接着とファインダーを取り付けたトップカバー側を取り付けます。シャッターの調子は非常に良いと思います。

 

初期型であまり使われなかったようですが、シャッターの持病が出てしまった残念な個体。シャッターユニットは製造時期によって部品の設計変更を受けていますが、今回は製造月が近くのユニットを使いましたので整合性は取れています。

次はPEN-W #1032XXで昭和39年9月(1964) 東京オリンピック開催の前月に製造された個体。こちらも外観も良くレンズの状態もまぁまぁと、あまり使われなかった個体です。よって、あまり書くことはない予想です。

本体の洗浄から組み立てて行きます。

 

 

シャッターユニットも消耗がありません。あっという間(実際は工数は掛かります)に組み立て終了。

 

ファインダーのレンズを分離して清掃をしました。カバーを接着します。

 

 

レンズですが、一般的には後群のバルサムが劣化しているものが多数ですが、この個体は、ほぼ合格点です。珍しい。ただし、前群に汚れが見えます。

 

前から見るとね。これは汚れではなくコーティングのカビ痕というのかな? 残念ながら拭いても取れません。

 

前側のレンズを分離します。黄ばみはバルサムの劣化ですべての個体にあります。しかし、曇りはありません。

 

このように張り合わせています。

 

 

後玉は良いので撮影では期待できます。外観の塗装状態も良く、現存の中では良い方の個体でしょうね。2台に共通点はあまり使われなかった個体という点。PEN-Sの初期型で状態の良いものは少ないので貴重な個体です。

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