小水力発電の助成制度
9月議会で、小水力発電のみどり市内での施工について質問しますので色々調べ始めました。全国では2700箇所もの施工実績があるようです。
【1】中小水力開発促進指導事業
この事業には、下記の3つの事業があります。従来のハイドロバレー計画開発促進調査もこの中に含まれています。窓口は、NEF (財団法人新エネルギー財団)の水力本部 調査部になります。
(1) 中小水力開発促進指導事業基礎調査(水力開発促進調査:自家消費目的) (従来のハイドロバレー計画調査に相当) (2) 中小水力開発促進指導事業基礎調査(水力開発促進調査:売電目的) (3) 中小水力開発促進指導事業
■中小水力開発促進指導事業基礎調査(水力開発促進調査:自家消費目的) ◇対象者:地方公共団体 ◇補助率:100% (全額国庫補助) ◇補助内容:発電計画の概略設計、自家消費の検討、事業計画の策定等 ◇応募時期:12月応募開始、1~2月締め切り ◇出力規模:特に明示されていませんが、上限は実質1,000kW程度で、下限は数十kW程度です。 (数kW程度の経済性のないものは、採択されない傾向にあります)
業務は主に電力土木関係のコンサルタント会社に委託され、「ハイドロバレー計画ガイドブック」に基づいて調査されます。
【利点】 ○地方公共団体は、財政負担がないため応募し易く、また新エネへの取組みを内外にアピールできる。 ○電力土木業界は、業務が確保でき、また専門家の減少を防止できる。 【問題点】 ○実際に導入までこぎ付けたケースが非常に少ない ○これにより、ガイドブックや実際の設計に存在する矛盾点や問題点がいつまでも是正されない。 ○また、コンサルタントは実際の建設工事や運用を経験する機会がないため、技術が向上しない。 ○ガイドブックに基づく画一的な調査であるため、アイデアや工夫に欠け、狭い視野の設計となっている。 せっかく本補助事業で調査設計しても、実際に導入されなければ何の意味もありません。導入に至らない理由として、①地方自治体、およびコンサルタントの実現しようという努力と執念が足りない、②調査する側の論理で事業が進められるため、地方自治体でその後のフォローが出来ない、などと言われています。
■中小水力開発促進指導事業基礎調査(水力開発促進調査:売電目的) ◇対象者:発電事業者、地方公共団体等 ◇補助率:100% (全額国庫補助) ◇補助内容:発電計画の概略設計 ◇応募時期:12月応募開始、1~2月締め切り ◇出力規模:特に明示されていません。 (数kW程度の経済性のないものは、採択されない傾向にあります)
■中小水力開発促進指導事業 ◇対象者:地方公共団体等 ◇補助率:50% (全額国庫補助) ◇補助範囲:実施設計、施行監理等(工事発注できるまでの設計レベル、および施行監理等) ◇応募要領:NEF、水力本部調査部へ問い合わせ下さい。
この事業は、「同、基礎調査事業」による概略設計が終了した後、引き続き行なわれる実施設計や建設工事の施工監理等の業務について補助するものです。 なお、地方公共団体が事業主体の場合、次に述べる「NEPCの補助金」の「地域新エネルギー等導入促進事業」でも同じ補助を受けることが出来ます。
【ハイドロバレー計画で建設された小水力発電所】
熊本県上益城郡山都町(旧清和村)清和発電所(190kW) 出典:エネ庁Webサイト
【2】 NEPCの補助金
(NEPC:一般社団法人 新エネルギー導入促進協議会)
小水力の建設では、最も良く使われる補助金です。H19年度までは、「NEDOの補助金」と呼ばれていたものです。経済産業省の中小水力発電設備導入に対する助成制度で、NEPCが窓口になります。ずばり水力発電設備の導入そのものに対する助成制度なので、農水省関係の助成制度などと比較すると設備に対する制限がなく、非常に使い易い補助金です。 1,000kW以下の水力発電設備の導入に関しては、次の2種類あります。
(1)地域新エネルギー等導入促進事業 (2)新エネルギー等事業者支援対策事業
これらは、2007年度から1,000kW以下の水力が「新エネルギー等」の仲間入りしたため、従来の「中小水力発電開発補助金補助事業」の助成制度から分離され、従来から風力や太陽光などの新エネルギーに適用されていた助成制度が適用されることになったということです。 ちなみに、1,000kWを超える水力に関しては、引き続き、従来の「中小水力発電開発補助金補助事業」の助成制度を利用することができます。(ここでは省略します)
■地域新エネルギー等導入促進事業
◇対象者:地方公共団体、非営利民間団体(NPO、公益法人、土地改良組合など) ◇補助率:最大1/2 (第三セクターなどの場合、地方公共団体の出費比率により補助率が変わります) ◇補助範囲:実施設計費、機器購入費、工事費、諸経費 (基本設計が終了していれば、実施設計も含めて補助範囲に含めることが出来ます) ◇補助対象期間:原則単年度事業ですが、最長4年間までOKです。 ◇公募時期:3~4月頃、NEPCのホームページで公募の案内があります。 ◇公募回数:年1~2回です。(都度確認する必要はありますが、近年はほとんど年2回です) ◇注意事項: (1) 恒久設備に対する補助制度です。実証研究などの仮設的な設備は補助対象外です。 (2) 詳細、および申請書類等については、NEPCの公募要領を参照して下さい。 (3) 事前準備が重要です。公募開始後に各所との調整を始めるようではとても間に合いません。 事前調整の主なものは; ①水利権を取得していること。 ②地域住民や利害関係者の同意を得ていること。 ③予算処理(資金調達)が出来ていること。 ④系統連系協議を行なっていること、などです。 なお、これらに関する同意書、議事録などの証拠書類の添付が必要です。
■新エネルギー等事業者支援対策事業
◇対象者:民間企業 (一般電気事業者、特定規模電気事業者なども含む) ◇補助率:1/3以内 (1件あたりの年間補助金の上限額は10億円です) ◇補助範囲:実施設計費、機器購入費、工事費、諸経費 (基本設計が終了していれば、実施設計も含めて補助範囲に含めることが出来ます) ◇補助対象期間:原則単年度事業ですが、最長4年間までOKです。 ◇普及啓発事業:実施する必要はありません。 ◇公募時期:3~4月頃、NEPCのホームページで公募の案内があります。 ◇公募回数:年1~2回です。(都度確認する必要はありますが、近年はほとんど年2回です) ◇注意事項: (1) 恒久設備に対する補助制度です。実証研究などの仮設的な設備は補助対象外です。 (2) 詳細、および申請書類等は、NEPCの公募要領を参照して下さい。 (3) その他については、「地域新エネルギー等導入促進事業」とほぼ同じです。
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土地改良事業として、農業の生産性を高めるための設備(ダム、頭首工、水路など)の新設や改修に対して、助成する制度があります。小水力発電設備がメインになる訳ではなく、農業施設の付帯設備として小水力発電設備も含んでも良いということです。発電出力の上限はありません。ただし、発電出力は、農業施設負荷容量を超えない範囲などという制限もありますが、発電設備としては系統連系して全量売電も可能です。現在、このあたりは緩和される方向です。 この事業には、次の3種類あります。(カッコ内は、負担金の割合)
(1)国営かんがい排水事業(国70%、都府県25%、地元5%) (2)都道府県営かんがい排水事業(国65%、都府県17.5%、地元17.5%) (3)都道府県営農村振興総合整備事業(国50%、都府県25%、地元25%)
事業主体は、いずれも国や都道府県となりますが、導入後の管理は地元の土地改良区などに委託される場合があります。これらの事業の調査、計画、設計などは各都道府県の土地改良事業団体連合会(「水土里ネット」)などが担当します。
【農水省補助で建設された小水力発電所】
那須野ヶ原土地改良区百村第一発電所(30kW) 大淀川左岸土地改良区広沢ダム小水力発電所(640kW)
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環境省の補助は、地球温暖化対策事業として、今後大いに拡大される方向にあります。いろいろなメニューがありますので、常にウォッチしておく必要があります。
■小水力発電による市民共同発電実現可能性調査業務 2009年度に実施された環境省の委託業務(100%国費補助)です。2009年度は、18の地方自治体が採択されま した。
◇対象者:地方自治体 ◇補助率:100% ◇補助内容:市民参加型の小水力発電の可能性調査 ◇補助対象期間:単年度事業です。
■地球温暖化対策ビジネスモデルインキュベーター(起業支援)事業
2007年度に小水力発電が「新エネルギー等」の扱いになったことにより、小水力についても補助の対象になったと思われます。2007年度は、千葉市水道局と東京発電(株)殿の小水力発電共同事業に適用されました。 小水力発電計画全てに適用される訳ではなく、地球温暖化対策の新たなビジネスモデルとして成り立つ可能性が高い先見性・先進性の高い事業について支援する目的で補助されるものです。補助率は、50%です。 2007年度に採択された発電所は次の2箇所です。 ①水道局幕張給水場内の幕張発電所、最大出力350kW ②千葉市水道局妙典給水場内の妙典発電所、最大出力300kW
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地球温暖化防止に向け、二酸化炭素の排出を抑制するため、新エネルギーを利用した道路関連施設費を補助する制度を設けています。これにより、地方公共団体の負担を軽減し、新エネルギーの積極的な導入を促すこととしています。 補助率は50%です。補助の対象は、水力発電設備の他に、この電源を使用したトンネル照明、街灯、誘導灯、ロードヒーティングなども含まれます。 申請窓口など、詳細については不明ですが、国交省の道路局などに問い合わせれば判ると思います。
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合併特例債とは、合併市町村が、まちづくり推進のため市町村建設計画に基づいておこなう事業や基金の積立に要する経費について、合併年度及びこれに続く10カ年度に限り、その財源として借り入れることができる地方債のことです。 合併特例債によって充当できるのは対象事業費のおおむね95%で、更にその元利償還金の70%が普通交付税によって措置されます。
この合併特例債に該当する事業については、いろいろ制限がありますが、小水力発電建設にも活用できます。 小水力発電計画を申請する上での重要なポイントは次のとおりです。(要は、申請書類の書き方次第です)
(1) 公益事業ではなく、あくまで市町村の経費のコスト削減により財政の健全化を図る目的ということを前面に掲げる。 (2) 余剰電力の売電収入は収入として扱うのではなく、需給調整の手段として扱う。 (市町村の施設の電気料金を超えない範囲の収入であれば、差し引きで、電気料金の削減と捉える)
小水力発電所建設の場合、NEPCの補助金と組合わせ、50%をNEPCで賄い、残りの50%を合併特例債で賄うと、市町村の負担は約17% 〔=総額100%-NEPC50%-(50%*対象95%*償還70%)〕となります。 申請窓口等詳細については、都道府県の総務部に問合せしてください。
【合併特例債により建設された小水力発電所】
北杜市村山六ヶ村堰水力発電所 (320kW)
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「グリーン電力基金」とは、自然エネルギー普及のための応援基金で、一般からの寄付金と、電力会社からの寄付金を利用して、自然エネルギー発電設備へ助成金として配分している制度です。窓口は、電力会社の供給地域毎に、以下のようになっています。 水力発電については、最近まで助成の対象になっていませんでしたが、(財)広域関東圏産業活性化センター「GIAC」が水力発電についても積極的に助成するようになりました。 他の地域については、まだ実績はありませんが、これから期待できると思います。 詳細については、それぞれのWebサイトの「グリーン電力基金」を参照してください。
○ (財) 北海道地域総合振興機構(はまなす財団) http://www.hepco.co.jp/ato_env_ene/environment/green/green.html ○ (財) 東北産業活性化センター http://www.ivict.or.jp/greenfund/index.html ○ (財) 広域関東圏産業活性化センター http://www.giac.or.jp/green/index.html ○ (財) 中部産業活性化センター http://www.ciac.or.jp/green/index.html ○ (財) 北陸産業活性化センター http://www.hiac.or.jp/index2.htm ○ (財) 関西情報・産業活性化センター http://www.kiis.or.jp/greenpow/gre00.htm ○ (財) ちゅうごく産業創造センター http://www.energia.co.jp/green/ ○ (財) 四国産業・技術振興センター http://www.tri-step.or.jp/green_fando/green_fando.html ○ (財) 九州地域産業活性化センター http://www.kiac.or.jp/green ○ (財) 南西地域産業活性化センター http://www.niac.or.jp/green/index.html
【グリーン電力基金により建設された小水力発電所】
田園調布学園高等部・中等部 3.6kW 東京都 森ヶ崎水再生センター西施設 4.0kW (出典:GIAC Webサイト)
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2004年、三井物産は、ディーゼル車排ガス規制の装置のデータを捏造する不祥事を起こしましたが、これを償うべくCSR経営の一環として、2005年に設立された基金で、NPOなどの非営利団体を対象としています。 小水力発電設備に適用されたケースはまだありません。NPOなどが普及活動や実証研究として小型水力発電設備を導入する場合に利用できると思います。 詳細については、下記のWebサイトに全部載っていますので、参照してください。
○三井物産環境基金 http://www.mitsui.co.jp/csr/fund/about/index.html
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