田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ズートピア』と『ボーダー』

2016-06-07 08:49:31 | 新作映画を見てみた

どちらも相棒物語



 骨子は、純朴な田舎者が都会に出てきて…という『スミス都へ行く』(39)などの古典的なパターンを踏襲しながら、主人公を女性ウサギにすることで、フェミニズムやマイノリティ差別といった問題を巧みに盛り込んでいる。

 大筋はウサギのジュディの成長物語と、ジュディとキツネのニックによるバディ(相棒)ムービーなのだが、その中に、コメディ、ちょっとしたミステリー、乗りのいい音楽など、さまざまな要素を混在させて楽しませてくれる。ナマケモノ、ヤクなど動物たちのキャラクター設定の妙、練られた脚本とCGの融合がお見事。『トイ・ストーリー』シリーズ以外の、ディズニー、ピクサーアニメはちょっと苦手なのだが、これは別。大いに楽しんだ。



 ところで、相棒刑事ものと言えば、いささか遅きに失した感もある、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの本格的な共演作『ボーダー』(08)をテレビで見た。『ゴッドファーザーPARTⅡ』(74)はもちろん別撮りだし、『ヒート』(95)は“合成共演”のうわさがあった。

 原題は「Righteous Kill=正義の殺し」だが、この場合「ボーダー」という邦題も決して悪くはない。法で裁けぬ悪党に刑事が制裁を加えていくというストーリーは、正義と悪の、あるいは精神の正常と異常の境界(ボーダー)を描いているからだ。ただ、老いた二人がシリアスな犯罪ものを演じる姿は見ていて痛々しい感じがする。そうか、パチーノの方が三つ年上なのか…。

 こんなことなら、前半に「あんたたちレノン&マッカートニーみたいだな」という楽しいセリフがあったが、コメディ調、あるいは、ほのぼのタッチの相棒もので押した方が良かったのではという気がした。そうすれば、『世界に一つのプレイブック』(13)のデ・ニーロと『Dearダニー 君へのうた』(15)のパチーノのような、愛すべきダメ親父同士の競演が楽しめたかもしれない。

 後輩刑事のジョン・レグイザモとドニー・ウォールバーグ、部長刑事のブライアン・デネヒー、妙に色っぽい女性刑事のカーラ・グギーノなど、脇役にも見るべきところはあったが、何しろジョン・アブネットの演出がしまらない。

コメント
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