朝日文庫 2003年
佐野女史の本は全部読んだ、と思っていたが、この本の
取りこぼしがあったようだ。
このエッセイの中で心に残ったのは、「食べて下さい、残
して下さい」だろう。実の父が病気になり、実にうまそうな
うなぎを買いに走らされる。父上はうなぎ屋の娘がげっそり
していたのが、しばらくして行ってみると、ぷっくりとしてい
るのを見てからうなぎ信奉者なのだ。そのうなぎを父上は
食べるわけだが、洋子女史の分はない、なにせボンビーだ。
そして、父上の様態が悪化していくと、半分残す。残したのは
子供たちが分けて食べるわけだが、うなぎはほんとにうまいが
父上の病気が悪くなっていくことも気がかりだ。食欲と、親への
心配の気持ちがないまぜになって、実に切ないエッセイだ。
そこに、子供ながらに、佐野女史がよく表れていると思う。
つれないけど、かわいいやつ、そんなひとだね。……合掌。
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