「思いは重い」というテーマにピッタリなのが東慶寺です。この東慶寺は1285年に北条時宗の菩提を弔うために時宗の夫人である覚山志道尼が建てたと言われています。「思い」の一つ目は、覚山尼の時宗への思い。二つ目は、その覚山尼の不法の夫から不憫な妻を救いたいとするひたむきな思い(縁切寺法)。
時代は下り、三つ目は、1333年鎌倉幕府滅亡時に四世である了道尼の大鐘を持って伊豆に落ちのびた無念な思い。
四つ目は、後醍醐天皇の息女用堂尼の弟である護良親王への思い。ご存じの通り、鎌倉宮に祀られている護良親王は1335年に足利直義に殺されました。用堂尼はその菩提を弔うため鎌倉に下ったとされています。
五つ目は、十七世旭山尼の姉である太平寺住職青岳尼は里見義弘が鎌倉に攻めてきたとき、義弘と千葉に渡ってしまいました。まさに恋の逃避行です。そのとき青岳尼は太平寺の本尊聖観音菩薩像を一緒に持ち出しました。それを鎌倉に取り戻そうとしたのが旭山尼です。
六つ目は、豊臣秀頼の息女 二十世天秀尼の思いです。天秀尼は豊臣家が滅亡したとき生き延び、東慶寺に入ります。年齢は13歳位。どんな思いで住職となり勤めたのか?そして徳川家康に縁切寺法を認めさせた、その強い心。
七つ目は、夏目漱石の釈宗演への思い。漱石は30歳前に円覚寺塔頭の帰源院に参禅し、その20年後に、ここ東慶寺で釈宗演と再会しています。
東慶寺に入ると、何か包まれるような気持ちになります。魂の存在を信じるわけではないのですが、いくつも積み重なった「思い」がそうさせるのかと・・・。不思議な空間です。