詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(95)

2024-04-10 20:50:45 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「眠り」。魅力的な行が多い。そのなかから、中井独特の「語感」をもった行を選ぶとすれば、

でも きみの影が伸び縮みしつつ他の影の間に消えるのを見ていた、

 「でも」は非常に口語的だ。一方「……つつ」はどちらかといえば文語的(書きことば的)だ。「でも」と書き始めたひとは、たぶん「伸び縮みしながら」と書くと思う。「伸び縮みしつつ」を優先させるひとなら、「でも」ではなく「しかし」と書くのではないか。
 私の印象では、この一行は、なんとなく「ちぐはぐ」である。
 しかし、それがおもしろい。
 この詩のタイトルは「眠り」だが、書かれていることはけっして「眠り」ではない。「半覚醒/半眠」という「はざま」の雰囲気がある。正反対のものが出会って、「半分」のところ(中間点?)で動いている感じ。それが「でも」と「……つつ」の出会いに、なんとなく似ている。
 こういうことは、書いている私がいうのも変なことだけれど、この私の「似ている」と感じる印象は、私の文章を読んでいるひとに伝わるのだろうか。疑問を抱えながら、私は書いているのだが、でも、詩というのはそんなものかもしれないなあ。
 こういう印象を引き出す「訳」は、中井以外ではありえないだろなあ、と思う。「文体」を統一したくなるのがふつうなのに、あえて、文体を乱すことで、「意味」だけではないものを伝える。表現する。
 少し(かなり)乱暴な言い方になるが「意味/内容」ならば「正確」に伝えることはできても(翻訳はできても)、「文体(の持っているニュアンス)」で伝えるのはとてもむずかしい。その「むずかしさ」が刺戟的である。そこには、確かに「他人」がいる、という印象がある。


**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、googlemeetを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(googlemeetかskype使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
1回30分、1000円。(長い詩の場合は60分まで延長、2000円)
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。

お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする