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次世代スパコン凍結

2009年11月14日 03時13分58秒 | Weblog
まだ正式に決まったわけではないのだが、神戸の次世代スパコンプロジェクトが中断(実質は中止)される可能性が高くなってきた。情報の多くが非公開でトラブル続きの次世代スパコンプロジェクトが見直し対象となるのは理解できるものの、代替となる科学技術政策の新提案や新展開なく単に中断するというのは自爆行為に等しく責任放棄としか見えない。

それはそれとして思うことが幾つかあって、

1: 現行の 50TFlops 程度のスパコンでも管理、運用に苦労しているのに、その 200 倍もの規模の 10PFlops 巨大スパコンの安定した稼働や運用が本当に出来るのだろうか? 汎用の Intel や AMD 系の CPU ではなく、新しい CPU 上でバグが無く、性能を引き出すことが出来る OS や コンパイラ、それに各種ライブラリの提供が出来るのだろうか?

2: 一方でユーザは巨大スパコンの性能を引き出すことができるソフトウェアを開発することが出来るのか? 少し開発方針を考えてみようと思ったが、公開情報が少なく不明な点だらけなので考えるのは止めた。現在のスパコンはノード、CPU, コアと階層構造になっているが、大規模なデータをどのレベルで分割して、かつ資源の衝突が少ないように多数のコアをどのように同時に走らせるかという問題の解決が必要。
ちなみに SDPA, SDPARA の現バージョンと次期バージョンはこのような問題の解決を意識して開発を行っている。

3: 魅力的かつ一般の人にも実行する意義が理解しやすいスパコン上でのアプリケーションを複数提示出来なかったことが、今回の中断の主原因であるように思えるし、そもそもスパコンの用途(つまり主となるアプリケーション)を決めてから、スパコンの設計や仕様の決定に入るべきではなかったのか? 現在の状態ではスパコン不要論が出て来ても当然であろう。

SDPA プロジェクト自体は次世代スパコンプロジェクトと無関係なので中断されても直接の被害は無いが、ソフトウェアを開発しても実行するスパコン自体が日本から無くなりそうなので、今後は海外での実行場所を見付ける必要がありそう。


次世代スパコン「凍結」、富士通の戦略に影響も

行政刷新会議の仕分け作業で13日、次世代スーパーコンピューター開発計画について2010年度分の事業は「凍結」とされた。12年に完成をめざして進めてきた開発が中断されれば米欧や中国などが開発を競うなか、世界最高速の性能をめざす競争で出遅れは必至だ。スパコンを使う国内産業にも影響が及ぶ可能性がある。米国でも政府が次世代スパコンの開発資金を負担。中国なども開発を急いでいる。現在、日本最速のスパコンは世界22位。米国が1、2位を独占する。日本は次世代の開発でトップ浮上をめざしていたが、計画が中断されればさらに引き離される見通し。

【事業仕分け】最先端科学も“敗北” 「スパコン世界一」を否定 ノーベル賞受賞の野依氏憤慨

政府の行政刷新会議の13日の仕分け作業は、次世代スーパーコンピューターの開発予算に事実上の「ノー」を突きつけた。議論の方向性を決定づけたのは「(コンピューター性能で)世界一を目指す理由は何か。2位ではだめなのか」という仕分け人の発言。結局、「科学技術立国日本」を否定しかねない結論が導かれ、文科省幹部は「日本の科学技術振興政策は終わった」と吐き捨てた。
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