角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

老後の模範像。

2008年06月17日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズLグループ25cm土踏まず付き〔4500円〕
茶色基調のふくろう和柄プリントをベースに、合わせはグレーです。ふくろうがメインの和柄プリントなんですが、ゴチャゴチャ感がなんともイイですね。合わせも落ち着いた色調で、シブい草履になりました。

下半期実演初日を終えました。天気も上々、気温も少し暑いかなくらいでとってもイイですね。ただJRの乗り放題チケット期間にしては、お客様の数が幾分寂しいかも知れません。無理もありませんね、首都圏から角館へ来るには宮城・岩手を通らなければいけませんから。

下半期実演最初の“お嫁入り”は、一昨日のブログでご紹介した「小花プリントに三色合わせ」の草履でした。
お買い上げは仙台市からお越しのご夫婦、奥様は70歳代とお見受けしましたが、こちらの草履を選ばれるだけあって可愛い印象のおばさまです。選択肢をふたつ残してこちらに決めたのは、ご主人の勧めでした。奥様にはいくつになっても可愛い草履を履かせたい、老後の夫婦像としてお手本と思います。

仙台と聞いてやはり気になったのは先日の地震です。『被害はなかったですか?』とお訊ねすると、『そうねぇ、飾り棚からずいぶんモノが落ちたわ。これから帰って片付けしないとねっ』。
あらら、地震の片付けより旅行が優先ですかっ!?

でもこうして肝が据わったご年配者は、やはり「模範」と言えるんじゃないでしょうか。『ガタガタ言ったってはじまらないわよぉ』みたいな度量、見習いたいもんです。

「岩手・宮城内陸地震」の余震確率は、今もマグニチュード5以上で90%だそうです。被災地へお見舞いを申し上げると共に、『それでも旅行には行くわよっ』とおっしゃる方々を笑顔でお迎えしたいと思います。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

深イイ話。

2008年06月16日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
織物風の和柄プリントをベースに、合わせは紺です。6月8日の「今日の草履」と同じベース生地なんですが、やはり合わせを紺にすると「昔」のイメージが深まると思います。私は好きですねぇ、こういう配色。

島田紳助さんが出演する番組のひとつ「深イイ話」、なかなか面白いですね。わが家ではほぼ毎週観ている気がします。紹介されるエピソードのひとつひとつが「イイ話」なんですが、単純に「イイ」ばかりでなく「尊敬」に値する話がときにあります。
私が最近とあるニュースで知った話は、まさにそんなエピソードでした。

茨城県取手市に暮らす70歳代の女性は20数年前、病気の母上の介護と同時にご自身も病を患っていました。家族はふたりだけですから収入がありません。女性は市へ生活保護申請をし、受理されました。
数年後母上が他界されたのを機に、手に職をつけるため勉強をはじめます。少しずつでも収入が得られるようになった女性は、生活保護の取り消しを自ら申請したんですね。

それから20年、現在はフツーに年金ももらえる状態になった女性は、あることを決意します。
当時生活保護費受給にあたり、親身になって相談にのってくれた市の職員へ電話し、自宅へ来てもらいました。そして見せたものが預金通帳、『あれから20年、コツコツ貯めたお金がここまでになりました。このお金をぜひ市へ寄付したいんです』。その額は百万円でした。

驚いたのは市の職員です。後のコメントに、『いまどきこれほど律儀な人がいるなんて…』と語っていました。そして念願の寄付を済ませた女性のコメントは、『これでようやく肩の荷が降りました』。

この話を知って、女性の想いに一番心を打たれたのはそうなんですが、もうひとつ思ったのは市の職員ですね。20数年前女性が生活保護申請をしたとき、こちらの職員の対応がことのほか良かったんでしょう。女性が20年もの間この気持ちを持ち続けてこられたのは、困ったときに出逢った「人の心」と思うわけです。

「寄付」の心は女性の律儀さが大きいと思うんです。でもそれだけなら市の窓口誰でもイイわけですよね。その話をしたいためにその職員へわざわざ電話したことに、職員の過去の「仕事」が見て取れます。当時職員の年齢は30歳の若者、他人が20年間も忘れられない仕事をしたとは頭が下がります。おそらくですが、彼もまた誰かに助けられた経験があるんじゃないですかね。

明日から公開実演再開です。さすがにこれほどの「深イイ話」はそうそうないでしょうが、実演席でのお客様とのおしゃべりを、「楽しく」「大切に」したいものです。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

公開実演、再開です!

2008年06月15日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
黒基調の小花プリントをベースに、合わせはエンジです。この春にも小花プリントをご紹介しましたが、こちらの生地はまた新たな別の生地です。なんとも可愛いですね。
春の小花プリントも数日で完売しましたので、おそらくこちらの草履もなくなるのが早いと思います。

合わせを替えてもうひとつご紹介します。



エンジ・緑・黄色を使った配色Ⅱパターン、カラフルな可愛らしさのある草履ですね。こちらの生地を使った草履は、おおむね5足でおしまいとなります。

さて、このような新柄を携えて、いよいよ下半期の公開実演を開始させたいと思います。開始日はあさって17日、会場はいつもの西宮家米蔵イベントホールです。
これから観光シーズン閉幕の十二月初旬まで、長くお休みする予定はありません。と言うことは、体調管理がことのほか重要になりますね。例年、盛夏から九月のお祭りが終わる頃に疲労のピークがやって来ますが、日々を楽しみながら乗り切って行こうと思います。

明日からはJR東日本の乗り放題チケット、七月下旬からは夏の行楽シーズン開幕、八月は竿灯祭りをはじめとする夏祭りとお盆、そして大曲の花火、九月は角館祭典、十月中旬からは紅葉シーズン。
角館にお越しの際は、いつでも西宮家へお立ち寄りください!!

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

揺れましたぁ。

2008年06月14日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
赤基調のうさぎ&桜花プリントをベースに、紫を合わせた配色Ⅱパターンです。こちらも可愛い草履に仕上がりました。経験則から言えば、こうした配色は中年のおばさまがお選びになりますね。

発生からずーっと報道されている、「岩手・宮城内陸地震」。今日は双子が学校、三女は卓球の練習試合へカミさんの運転で出掛けました。私とフクだけが家に残り、ちょうど草履を編んでいたときです。いやぁ、揺れましたよ。
ひとまず外へ出て揺れのおさまりを待ちました。時間にして30秒くらいと思います。

角館は昔から地震に強いと云われてて、実際私が知る範囲では地震被害と言うのを知りません。秋田沖地震では多数の被害者が出ましたが、それは津波によるものでした。そのときも私は町内を運転中で、それほどヒドい揺れには思わなかったものです。それが今日は明らかに大きな揺れでした。速報によると角館は震度4だそうです。わが家は田んぼを埋め立てた造成地に立っていますから、それより揺れが大きく感じるのかも知れません。

秋田県北秋田市を会場に、明日から「全国植樹祭」が開催されます。これにまつわる逸話を先日のラジオで聞いたんですが、私の聞き間違いでなければ不思議な話ですよ。
昭和43年、当時の田沢湖町でこの植樹祭が開催されています。その直前に「十勝沖地震」が発生し、被害の甚大さから昭和天皇が植樹祭へのご出席を断念されたそうです。陛下のお手植えが実現されず、これを残念に思ったときの知事が皇居へ出向き、陛下が庭に植えられた一本の杉を秋田へ持ち帰ったそうです。もちろんその杉の木は今も田沢湖畔にあり、当時を知る人たちが思い起こしているというエピソードだったんですね。
明日の植樹祭へ陛下のご出席が叶うのかは分かりませんが、四十年も前の逸話がまた繰り返されたようでなんとも不思議に感じます。

今日の地震でも死亡者が出ていますし、その被害は甚大と言えるでしょう。植樹祭が滞りなく開催されることを願いながら、直面の課題は新幹線の復旧なんです。あさってから「大人の休日倶楽部」の乗り放題期間がはじまります。この春からお客様の数が心細い角館人の心は、今も続く余震のように揺れているんじゃないですかね。
私も間もなく実演再開を考えていた矢先でしたぁ。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いつか、夢ふたたび。

2008年06月13日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
ピンク基調の金魚プリントをベースに、合わせはエンジです。これまでピンク基調と言えばもっぱら桜プリントばかりでしたが、このたびは金魚プリントが入荷しました。こちらも可愛い草履と思います。

このところの角館は、連日県内最高気温を記録しています。今日はいくぶん涼しげですが、昨日までは27℃や28℃が毎度でした。
本来であればそろそろ「路上ライブ」を決行したいところなんですが、まだ昨年六月の直射日光が記憶から離れません。ほんとに去年は金魚になりたいくらいの暑さでしたからねぇ。

自宅作業で聞く「人の声」は、相変わらずラジオです。いつも聴く秋田放送のワイド番組、ある花屋さんが提供しているコーナーは「お花のプレゼント」。お世話になっている人や感謝したい人へ、リスナーに代わって花束を届けてくれるコーナーなんですね。
今日は25歳と28歳の子どもがいるお母さんが、かつてその子たちを自分に代わって育ててくれたという80歳に近い「おばちゃん」に宛ててでした。

お母さんとおばちゃんはかつて同じ会社に勤務していて、ちょうどお母さんが二人目の子どもを妊娠したときにおばちゃんが退職したんだそうです。お母さんは三歳の子どもとお腹に赤ちゃんを抱え、このままでは仕事が続けられないなぁと思っていました。
そんなとき退職したばかりのおばちゃんが、『私が子どもたちをみてあげるから、あなたは仕事を続けなさい』と言ってくれたそうです。

その後下の子どもが大きくなるまで、ふたりの「育ての親」はおばちゃんと言います。誰かが子どもたちへ『一番好きなのは誰?』と訊くと、決まって『おばちゃん!』と答えたそうですから、ほんとに子どもたちも大好きな人だったんでしょうね。
お母さんはその後18年間会社勤務をまっとうしましたが、子どもが理由の欠勤は一度もなかったそうです。子どもたちにとっては「大好きな人」、お母さんにとっては「恩人」と言えるんじゃないでしょうか。

平成14年、私が代表として立ち上げた「子育てサポートはっぴぃ・マム」は、活動開始から六年目に入っています。当初から頭に描く活動のひとつが、今日のラジオの「おばちゃん」でした。なんらかの事情で保育園に入られない子どもを預かり、いわゆる親代わりを務めるというものなんですね。
でもサポーター会員の多くが若いお母さんたちで、自身の子育てのうえに他人の子どもまでは無理でした。中にはお義母さんの協力を得られて、赤ちゃん専門に託児してくれた会員もいましたが、やはり現実はそう甘いものではなかったです。

描いた活動には到底及ばないとはいえ、共に立ち上げた会員たちの「志」は決して嘘ではありません。『今は出来ることから少しずつ…』を合言葉に励んでいると、退会した私にも聞こえてきます。
十年後か十五年後、会員の多くが自身の子育てから離れるでしょう。そのとききっと「はっぴい・マム」には、地域の「おばちゃん」がいっぱいいると思うんですね。

そしてやがてはわが家も、そんな仲間に入れて欲しいものです。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ひとつの覚悟。

2008年06月12日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
紫基調のうさぎ&桜花プリントをベースに、合わせは同系の紫です。当地の生地屋さんにも、「うさぎ」「桜」といったプリントが案外多くあります。それでも今日のベースのような地色ははじめて見ました。可愛くもお洒落な配色と思います。

ここ数日マスコミを賑わせているのが、「秋葉原通り魔事件」。悲惨です、言葉になりません。『人生がイヤになった』のはひとり、『なんでここで死ななければいけないの?』が複数、こんな理不尽がありますか。
犯人の出身地は青森県、環境は秋田県とまず同じでしょう。25歳の若者が持つ、大都会への「羨望」は少し分かります。もしかして彼は、都会に暮らしているというだけでその人たちを「勝ち組」と思ったのでしょうか。ほかのみんなが幸せで、不幸なのは自分だけと思ったのでしょうか。だとしたらもう少し歳を重ねて欲しかったです。やがて分かることでした。

ラジオ番組のコメントで、『日本人は人ごみに対する警戒感が薄い』と言ってました。ひとまず意味は分かるとして、では一体どうやって警戒すれば良いのでしょう。常に四方を気にしながら、キョロキョロ見回して歩くのか。それこそ挙動不審でしょうね。
この五年間で、通り魔的事件が30件発生しているそうです。家の中にいれば安心かと言えば、空き巣や強盗事件はその何倍でしょう。つまりは、生きることにひとつの「覚悟」が要るんでしょうね。

話は飛ぶのですが、今度の日曜日に「年代別野球大会」が行われます。角館に暮らす昭和30年会から39年会までの10チームが、トーナメント制で親睦を深めます。
出身は角館でも今は他地域に暮らす人が大勢いますから、どのチームも人が余っている年代はありません。それはわが37年会とて同じ、今年はとりわけ参加できる人が少ないんです。

八人まではなんとかなりましたが、野球という種目は九人いなければダメだそうです。角館人には「棄権」という言葉がありません。なんとしてもあとひとり、名前を挙げられたのは草履職人でした。
もう何年も野球のユニフォームなど着ていませんし、まず「走った」というのが最近いつだったか思い出せない始末です。朝から晩まで草履を編むだけの生活が続く草履職人に、「運動」を超える「スポーツ」なんて普段には考えられません。

通り魔ほどではないですが、私にとっては案外大きな「覚悟」なんです。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

それ、おがしべっ!?

2008年06月10日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
黄色基調の大漁旗プリントをベースに、合わせは青です。なんともカラフルな色合い、これはたくさんの大漁旗がプリントされているんですね。合わせは碧い海をイメージしてみました。
このベース生地は5足分ほどありますから、Lグループ男性用も編んでみます。

最近周囲で起こった、それ、おがしべっ!?
その壱・・・最近の晩飯でのこと。
てっきりカミさんへ話し済みと思っていた話題が、カミさんははじめて聞いたと言います。どうしても何日か前の晩飯で話した気がする私が粘ると、カミさんは娘たちへ『今の話、みんなは聞いだったが?』。
しばし考える娘たち、すると長女が思い出したように、『あっ、最近とーさんの声聞いでねがったでぇ』。

少なくとも毎日晩飯は一緒に食ってます。それ、おがしべっ!?

その弐・・・これはしばらく前の晩飯でのこと。
次女が高校入学後、どうしてもケータイが欲しいと言います。ケータイは結構なお金がかかることは次女も知っていますし、カミさんへ塾代わりの教育講座を受けたいとも言っていたそうです。
カミさんが次女へ、『あの勉強も結構高いんだよ』と言うと、『もう勉強なんかしないからケータイ買って!』。

これがまさしく本末転倒。それ、おがしべっ!?

その参・・・自他共に「酒豪」を認める知人女性。
お酒が大好きなこちらの女性は、ほぼ毎日晩酌しているそうです。その理由は、『だって毎日飲まないと家族が心配するものぉ』。

家族は彼女の健康を飲酒で確認しているとの主張。それ、おがしべっ!?


その四・・・とあるニュースから。
未成年者に対する販売規制から、タバコの自販機は「タスポ」というカードが必要になりました。これの申請には顔写真なんかが必要で、面倒臭がりの草履職人は未だに作っていません。そんなふうに思っている人がことのほか多かったようで、タスポの普及率は依然低いとか。
売上が激減したあるタバコ小売店は、自販機に店主のタスポをぶら下げて自由に使わせているそうです。

それでイイならなんで顔写真ですかっ。それ、おがしべっ!?

その五・・・双子の娘と同級生の子を持つ母親との会話。
実演席でときに言われる言葉、『ふたつ買ったらいくらか安くなる?』。応えはいつも一緒、『はははっ、それはないですねぇ』。

保護者仲間の母親と高校にかかる費用が話題にのぼり、『ウチなんてひとりでもヒーヒー言ってるのに、一度にふたりじゃたいへんだべぇ?』。私が応えた言葉は、『んだがらよぉ、ふたり分なんだがら少し割引あってもイイねがなぁ』。

それ、いっちばんおがしべっ!?
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大きかった“副産物”。

2008年06月09日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
赤基調のおたふく・ひょっとこプリントをベースに、合わせは紺です。ときおり見える黒がおたふくさんの髪ですね、面白い草履と思います。この配色であれば男性でもOKじゃないですかね。

末娘も中学生となったわが家、予定通りPTA活動の第一線からは退いています。それでも部活動だけは、親が結構な部分を下支えしなければいけないようです。
三女は卓球部へ入りました。これから数々計画されている他校との練習試合、わが家も「配車」のひとりとして割り当てられています。

親の会が一致団結の下に取り組んでいる部は、案外子どもたちの戦績にも好影響があるんですね。これまでもそんな部をいくつか見聞きして来ました。私が運転手で出掛けることは少ないでしょうが、カミさんを含めて出来る限りの協力は惜しまないつもりです。

双子の娘が小学校時代から一緒の親とは、なんと言いますか、「同志」に近い想いがありますね。当時からの保護者仲間とは、今でも日常にスーパーや街中で出逢います。互いの子どもが話題になると、よく言われる言葉が『あの頃は楽しかったよねぇ』。
高校生になったわが子との接点は、少なくとも学校を舞台にしては皆無に等しいです。“手が掛からなくなれば金が掛かり出す”、先輩の誰もが言ったこの言葉を実感する昨今、まして当時を懐かしく思い返すんでしょう。

この言葉は親からだけではありません。西宮家には案外学校の先生がお客様としてお越しになります。そんな中にかつて同じ時期に同じ空気を吸った先生もいて、やはり同じことを言うんです、『いろんなことをしたよねぇ』。
確かに苦労もありましたが、過ぎてしまえばみんな楽しいことだらけ。昨日のブログに共通しますね。

旧三校が統合して生まれた「新角館小学校」、今年四月に開校されています。わが家はきっと足を踏み入れる機会はないと思いますが、在校生とPTAは新たな一歩を踏み出したところでしょう。
先月のこと、知人である小学校PTAの母親から聞かされた言葉に、「そういう時代なんだろうなぁ」と「その意味が分かっているのかなぁ」のふたつを感じました。それは学習発表会バザーの廃止。

私たちが何年も取り組んできた「学習発表会PTA企画」には三つがあって、その最たるものが「バザー」でした。うどん、そば、ラーメン、おにぎり、お菓子、ジュース、こうしたものを我々の手で販売して収益を得るものです。中でも麺類はその道のプロであるPTA会員を中心に、作るのも親たちでした。昼の休憩時間になると長蛇の列ができ、それは賑わったものです。

バザーを中心とした三つの企画の合計収益は、毎年40万円を超えていました。この全額を公的予算で賄いきれない、学校備品や活動費に使っていたんですね。
風邪が流行りだすひとつの原因が教室内の乾燥、これを防ぐため各教室に「加湿器」を設置したのもこの収益金でしたし、スキー教室で使う子どもたちのゼッケンを購入したのもこのお金でした。夏休み中のプール監視員の日当、これもこの収益から支出したことがあります。本来学校予算の中に組み込まれるべき使途であっても、“ない袖は振れない”わけです。

学校が使える公的予算など、たかが知れています。大阪府の橋下知事に対してある教師が、『子どもたちが良くならないのは、学校にお金がないからダっ』と進言した話がありました。もちろんお金ですべてが解決されるなどとは思いませんが、この教師の言葉に違和感もまたありません。それほど学校というところには予算がないんです。

バザーはずいぶん昔にときのPTAが開催していました。それが「O-157」や「カレーヒ素事件」で消極的になり、やがて一度廃止になっています。それから数年が経過し私たちの代になって、当時のPTA会長が学校の予算不足を憂慮したことから提案されました。もちろん私もその趣旨に賛同したひとりです。
「われわれの手で学校にお金を…」の想いからはじまった数々の事業が、新たな小学校ではひとつも継続されないことに決まったんですね。

もちろんすでに意見を申し上げる立場にありませんし、ときの事情もあるでしょう。昨今さらに多忙感を極める親たち、確かにバザーは「手の掛かる」事業です。
これが「そういう時代なんだろうなぁ」と「その意味が分かっているのかなぁ」のふたつの意味なんですね。

収益とまた別に、そうした活動がやがて「楽しかった記憶」になることを、時代が過ぎてからしみじみ感じています。町のスーパーや西宮家で出会うかつての「同志」、この人たちとの思い出がことのほか大きな“副産物”となりました。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「昔は良かった」ワケ。

2008年06月08日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
織物風の和柄プリントをベースに、合わせはエンジです。下半期実演に向けた新柄第一弾のこちら、東京の仕入れ部長が選んでくれた数々の中で、こちらの和柄プリントをまず一番に編んでみたいと思いました。「古き良き時代」とでも言いますか、草履職人もまたこうした「和」に惹かれる年齢になって来たんでしょうかね。
このベース生地には合わせが紺もイイですね。むしろ紺のほうが「昔」っぽくなるように思います。

「古き良き時代」というのは何年前を指すのか、もしかしたら人それぞれに違うのかも知れません。まず思い浮かぶその時代を「三丁目の夕日」としたとき、今冬45歳を迎えている私は僅か記憶に残す年代と思います。旧角館小学校が現在の樺細工伝承館の位置にあった時代の卒業生ですし、春には大勢の観光客で賑わう檜木内川を泳いで遊んだ最後の年代です。
本当にのどかだった時代には青春を謳歌していない、また「新人類」と呼ばれた人たちよりは先輩という中途半端な年代かも知れません。

そんな時代に育って社会に出た私は、大先輩たちがよく言う『昔は良がったなぁ…』という言葉に、少なからず抵抗感を持っていました。その「良かった昔」の実像が判然としませんでしたし、先輩たちも一体ナニがどう良かったのか具体例も言いませんでした。
へそ曲がりを自認していた私は、『昔がそんたに良かったワゲねぇべ。昔だったらとっくに死んでる歳だねがよっ』ってなことを陰で思っていたんですね。

先日のテレビで、人間の記憶の「比率」が解明されたというのをやってました。それは、「楽しかったこと」「悲しかったこと」「どちらでもないこと」の比率が、年齢や国を問わずほぼ等しいというわけなんです。中で大きく比率を占めるのが「楽しかったこと」、実に60%だそうですよ。
これを考えれば『昔は良がったなぁ』が解明されます。人間は「楽しかったこと」「良かったこと」を一番多く記憶しているんですね。

そう言われれば確かにそうかも知れません。少年期から社会人へ、そして独立から草履職人になるまで、いや昨日のことさえ思い出すのは「楽しかったこと」ばかり。
『昔は良かった…』は、『イヤな思い出はだいたい捨ててしまった…』ということなんでしょうね。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真似から個性へ。

2008年06月07日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ土踏まず付き〔4000円〕
茶色基調の花柄プリントをベースに、合わせはエンジです。賑やかなプリントですが、色調が落ち着いているせいかうるさくありませんね。中高年のおばさまにいかがでしょう。
この配色は二足限定でおしまいです。

今日大仙市大曲で草履作りに励む、もうひとりの生徒さんが材料購入に訪れました。『夏に向かって頑張ろうと思って…』と30足分お持ち帰りです。
すでに売り物に達する技術を持っているんですが、来ると必ず私の草履と見比べて『なんだが違うんだよなぁ…』。さらに腕を上げたいための言葉なんですが、まったく同じにする必要はないといつも応えています。

私の実演は「おしゃべり」がひとつの要素です。するとときに失言や余計なひとことも生まれるわけですが、こちらの意図と違った解釈をされる場合もあります。気に留めることなく流せる話題も多いのですが、『しまったぁ』と感じることもありました。

あるとき実演をご覧のご夫婦。奥様がとても関心高く、出来るものならご自身もやってみたいとおっしゃっていました。奥様がさらに感心してくださったのは、『ここに来てくれれば、いつでも編み方の勉強が出来ますよっ』の私の言葉です。奥様は『心が広いのねぇ』と笑っておいででしたが、それを聞いたご主人が『はははっ、出来るものならやってみろってことだよねぇ』。
つまり私が編み方を平然と公開しているのは、『見学くらいで簡単に編めるワケがない』という気持ちがあるからというわけですね。

こちらのご主人がひとつ正解なのは、見学だけではマスターできないという点でしょうか。トップページの「よくあるご質問④」にも記載の通り、編み方そのものは見学と家庭学習でそう遠くなく理解できると思います。ただし「美しい草履」とするためには、編み方を覚えてからのほうがはるかに長いんですね。それは草履そのものの「形」であったり、「配色」であったり、「デザイン」であったり。

そしてこれまでの生徒さんすべてに話したのは、『全部私の真似をする必要はない』ということなんです。基本的な編み方を、まず真似からはじめるのはイイです。世の中すべてのモノは、ある程度「真似」からはじまっています。やがて編み方をマスターしてからの長い道のりには、自分だけのオリジナルを設けるのが望ましいと思っているんです。そうすれば編みあがった草履に対する「可愛さ」が一層でしょう。

先日のテレビに、とある著名なフランス料理のシェフが出ていました。シェフはご自身が開発したオリジナル料理のレシピを、惜しげもなく本に書いて出版しているんですね。
司会の島田紳助さんが、『そんなん読んだって作れるワケがないと思ってますやろ?』とシェフに訊いて笑いを誘っていました。するとシェフは、『仮に私と同じレシピで作っても、同じ味にはなりませんよ。料理は作るその人その人によって味が変りますからね。でもそれがイイんですよっ』。

心を込めて作った料理、心を込めて編んだ草履、たとえレシピは同じでも作る人によって変る「味」「形」「色」。これらすべてが個性だから面白いんでしょう。
私が編み方を公開するひとつの理由は、『まず真似てみませんか?』ということですかね。

昨日東京の仕入れ部長から、また新たな布地が到着しています。明日からの「今日の草履」は、またまた“個性だらけ”をご紹介しますよっ。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする