角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

がんばろう!東北-角館の桜-

2011年03月29日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
緑基調の女の子プリントをベースに、合わせは緑です。
色違い三種が届けられていた女の子プリントは、こちらの緑で最後になりました。赤系のような鮮やかさはないものの、落ち着いた緑は心が癒される気がしますね。日本人に愛されそうな平生地はこちらになります。



東京では桜の開花宣言が出されたというのに、当地角館は二日連続で雪の朝を迎えました。気温が高いのですぐ融けるのですが、間もなく四月というときに10cmもの積雪を見ると、さすがに気が滅入りますよ。ひとつ胸をなでおろすとしたら、この雪が被災地である太平洋側に無縁ということですね。

まず平年であれば、東京が開花して一ヵ月後に角館にも開花が訪れます。四月が好天に恵まれると予想して、今年の見頃は四月下旬から五月上旬になりますか。であれば典型的な、いつもの角館のお花見ですね。
今年のお花見がいつもと大きく違うのは、ご承知の通り東日本大震災です。新幹線の全面復旧が四月下旬と言いますから、これが僅かに見える希望の光でしょうか。

いよいよ角館の桜まつり日程が発表されました。甚大な震災被害を考慮し、今年は「まつり」の言葉を使わず、“がんばろう!東北 角館の桜”と題するそうです。会期も少し短めの4月22日から5月5日、桜のライトアップ時間も短めに終わるようですね。

世の中の出来事と無関係に、今年も可憐な花びらをつけるでしょう。歌舞音曲を良しとしない空気は分かりますが、それはあくまで人間の話。桜たちには思いっきりその花を広げてほしいものです。そして東北人の、日本人の心の癒しとなってくれることを、切に願っています。
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県外への一時避難。

2011年03月27日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
ブルー基調の桜花プリントをベースに、緑を三箇所に配してみました。
派手な明るさはありませんが、これはこれでお洒落感が引き立ちますね。どちらかと言えば中高年のおばさま向きでしょうか。

三月ももう4日しかないんですね、今年度も残り僅かとなりました。長女と次女それぞれに角館を離れる日が決まり、身の回りの片付け等でさらに忙しなくなっています。十八年間を過ごしたふるさとを離れ、独り暮らしがはじまるまで数えるほどの日数しかありません。当の本人はどんな気持ちでいるのか、私が見る限りなにほどの変化もありませんね。それはそれで逞しくも感じます。

三十年前、高校を卒業すると同時に私もいっとき東京に暮らしました。上京して一ヶ月間は独身寮のある新宿区高田馬場、その後五ヶ月間は多摩ニュータウンのマンション建築現場に泊り込みです。最初の一ヶ月間は、カルチャーショックも手伝ってホームシックを経験しました。角館からいきなり新宿ですから、これも無理のない話しと思います。その後の多摩ニュータウンはほんとになんにもないところからのスタートでしたから、案外腹が据わりましたね。

東日本大震災の被災者で、ひとまず県外に暮らすというケースが多くなっています。福島原発に近い住民はまとまった人数で県外移動していましたし、津波で家を失くした住民も避難所生活が長くなればなるほど、「ひとまず県外で…」という人が多くなるのでしょう。大勢で励まし合いながら…というのも分かりますが、やはり長くなってくるとプライバシーが課題になります。

新聞やテレビで、被災された方に暫時空き家を提供するニュース記事を見ました。ホテルや旅館も良いのですが、できるものであれば一軒家を望むという人も当然いるでしょう。
すぐに思いついたのが、昨秋亡くなった叔父が暮らしていた家です。取り外しているガスさえ手配すれば、すぐに暮らせる状態なんですね。
希望される方がいるかどうか分かりませんが、ひとまず市の窓口へは登録しました。

秋田県内へ避難して来られた方がテレビインタビューに応じていて、感謝の言葉の最後に涙をこらえて言ったのは、『一日も早く帰りたいです』。
津波によってどんなに悲惨な姿になろうとも、ふるさとはふるさと。やがて帰る場所だと思うんです。県外への一時避難は、ふるさとが本格的に復興へ動き出すまで力を貯める時間でしょう。ゆっくり休んで欲しいものです。
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華麗なる転身。

2011年03月24日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ピンク基調の豪華な桜プリントをベースに、エンジを三箇所に配してみました。
艶やかで華やかな桜プリントですね。今日の角館も雪が混じる冷たい風が吹いています。春を待ち焦がれるこのときに、「今日の草履」が恨めしくも感じますよ。

『すべて無くなっちゃった』。東日本大震災の津波に家を流されてしまった被災者が、何人かこの言葉を使っていました。「すべて」の中にはいろいろな意味が含まれていて、それは家族であったり家であったり、現金や貴金属のような資産であったりするでしょう。もしかしたらそういう目に見えるものばかりでなく、ふるさとのにおいや遠い想い出だって含まれるでしょうね。
同時にもうひとつ思うのは、「仕事」なんですね。いわゆる生業としての仕事。その業種や年齢によっては、やり直しが極めて困難な場合もあるんじゃないでしょうか。

最後まで決まっていなかった長女の進路が決まりました。青森市の短大に進みます。昨日学校を訪ね、アパートも決めてきました。そのアパートの経営者である社長さんがとても面白い人で、こういうのもなにかの縁かなぁと感じています。
社長さんは電子部品の工場を経営しているのですが、近年の海外生産品に価格面で対抗できず、会社としての行く末を案じていたそうです。

そんなとき思いついたのが学生向けのアパート経営。会社の敷地面積に充分なゆとりがあったことと、近くに大学・短大・専門学校等が点在する立地に目をつけたわけですね。
社長さん曰く、『ウチはねぇ、ゼッタイ不動産屋さんと組まないの。細かいサービスも私とカミさんがすることで、すぐに対応できるし余分な費用も要らないんですよっ』。
説明を20分ほど聞いているだけでも、社長さんがいかに今の仕事に楽しさとやりがいを感じているかが分かりました。まさに“華麗なる転身”と言えるんじゃないですかね。

角館草履の公開実演では、『どうして草履を編むようになったの?』の質問がたびたびあります。トップページのよくある質問⑦にも記載していますが、『へぇ~、華麗なる転身だねっ』という言葉を、これまで何度か聞かされました。「華麗」なんて言葉が私に似合うと思えませんし、草履職人という職業も「華麗」とはちょっと縁遠い印象でしょうか。
ただ、「やりがいを持って楽しく」がその評価を得られたならば、それはそれでありがたく頂戴して良い言葉かもしれません。

東日本大震災で職を失くし、復興と共に新たな生業を求める方々におかれましては、やがて“華麗なる転身”と言われる日が訪れますことを強く願いたいと思います。

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東北観光の行方。

2011年03月22日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
エンジ基調の和柄プリントをベースに、合わせはエンジのいらかにとんぼプリントです。
同系色を合わせた落ち着きと共に、互いの和柄がとても良い雰囲気と思います。とんぼプリントにエンジの色が、「日本の夕焼け」をイメージさせますね。
和が生きたベース生地はこちらになります。




今日の角館も寒さが和らぎ、お日様の光がとても心地よい一日です。それでもまだ少し風が冷たいですね。外仕事に従事されている方々は、春がまだ先に感じるかもしれません。
週間予報を見ても、まだ雪マークが連続して出ています。桜の開花予想第一報は「例年より早め」と出ていましたが、おそらく結果として誤りじゃないでしょうか。

東日本大震災発生から十日を数える昨日は、春彼岸の中日でした。本当であればお墓参りの姿があちこちで見られたであろう被災地は、今日一日を生き延びるだけで精一杯でしょう。家が流されたということは、多くの仏壇も流されたことです。日常に手を合わせている人であれば、なおさら墓前を訪れたいと思ったでしょう。とは言えこれだけの非常時、赤の他人が口出しする話じゃないですけど、今はご先祖様よりご自身を守って欲しいと思います。

この地震が甚大な被害に及ぶことは、発生して間もなくに推測できました。それはもちろん幾度となく映し出される津波の映像や、死者・行方不明者の人数、あるいは避難所での過酷な生活を見聞きしたからです。
しかし被害がそこだけで収まらないことも頭をよぎりました。それは東北観光の行方なんです。東北の玄関である福島県や、東北最大都市仙台を抱える宮城県が被災地ですから、さらに北へ位置する当地が受ける影響は計り知れません。

これは全国規模で伝えられていないと思うのですが、東北地方の観光地に、現在宿泊客はほとんどいないでしょう。それは角館もまったく同じで、街中はもちろん武家屋敷通りでさえ散策と思しき人影はほとんどありません。
桜まつり開幕まで、おそらく一ヶ月を切ったはずです。これからの一ヶ月で燃油や道路事情は回復すると思いますが、新幹線の先行きがまったく読めません。なによりそのときの日本の空気が、「旅行」を許すかどうかですね。

こればかりは神仏に手を合わせても、どうにもなりません。
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せめて救援物資。

2011年03月19日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤基調の月見うさぎプリントをベースに、合わせは紺の井桁プリントです。
赤と紺の相性がバッチリなのはもちろんのこと、この二つを組み合わせるとカッコいい配色になると思っていました。男性用サイズでも、この組み合わせはとても人気が高いです。

少し久しぶりに太陽が見えた今日の角館です。地震以来灯油節約のためストーブの設定温度を低くしているのですが、今日はその設定でさえ寒く感じませんでした。灯油の減りも少なく、やはり暖かいと助かります。それでも灯油は買いにさえ行けば、無条件にポリ容器ひとつは売ってもらえます。対して皆困っているのはガソリン。一体いつスタンドが開くか分からないうえに、情報を得て訪ねてみても、ひとり二千円分くらいしか売ってもらえません。馴染みのスタンド店員さんが言うのは、『オイルショックよりヒドいな』。

地震発生当初は、「被災地を思えばこれくらいのガマンができなくてどうする」の気概もウソではありませんでしたが、一週間を過ぎて一向に改善されない状況では、愚痴のひとつも出て当たり前でしょう。ご存知の通り秋田県という田舎では、自家用車がなければどこへも行けないというのが実情です。当地で仕事をするための「ガソリン」は、言うなれば生きていくための「水」に匹敵するかもしれません。

当初秋田県などに燃油が不足しているのは、「被災地優先」が理由と聞かされていました。ところが報道で見聞きするに、どこの避難所も灯油がなくて暖房機が使えない話をしています。食料等援助物資が山のように発送されていても、避難所ではおにぎり一個に苦労している話をします。正直、『なんのこっちゃ!?』と首を傾げるしかありません。

角館で燃油供給が回復するのは、おそらくそう遠くないと思います。地元民の誰しもこの状態が一年も続くとは思ってませんから、愚痴のひとつで耐えられるのだと思うんです。
対して被災地の復興は、数ヶ月から一年以上かかるんじゃないでしょうか。人が過酷な生活に耐えられるのは、「先が見えるから」です。来る日も来る日も同じレベルから脱しないとすれば、次第に持久力がなくなってしまうでしょう。せめて全国から寄せられた救援物資が滞りなく届けられるよう、今はこれを強く願っています。

避難所で毛布に包まっている、80歳のおばあさんが言ってました。『あたしみたいなのが死なずに、若い人たちが大勢死んでしまった。生き延びたって、嬉しいことなんてなんもないよ』。
一刻も早く灯油が届き、暖かい食べ物が届き、新しい下着が届いて欲しいです。同じ人間として、『生き延びたってなんも嬉しくない』などと言わせたらいけません。
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災害と感動。

2011年03月18日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ピンク基調の月見うさぎプリントをベースに、合わせは赤基調のうさぎ&麻の葉プリントです。艶やかで美しい春をイメージさせるうえに、暖かさも感じますね。
今日の角館も冬の寒さでした。本来であれば春に向かって秒読み…という時期なんですが、気候はさっぱり春に向かいません。さらに地震の影響が、角館観光の先々に不安を与えています。

東日本大地震発生から一週間が経過しました。民放では一部通常番組が再開していますが、おおかたの番組では昼夜を問わず被害状況が伝えられています。300年に一度とも云われるこの災害をなにかと比較するには、48年ほどしか生きていない私では不足です。しかしながらあえて推測するならば、関東大震災や広島・長崎の原爆投下に匹敵するんじゃないでしょうか。よもやこのような惨事を、リアルタイムで見るとは思いも寄りませんでした。

過酷な被災地を伝える傍ら、これほどの災害でも感動があるものです。まず海外の日本人に対する評価ですね。「どうして日本では略奪が起きないのか」「どうして整然と配給が待てるのか」「過酷な避難所において、なぜ冷静にいられるのか」。海外メディアにはこれらが「感動」として映るようです。
おそらく日本人に言わせれば、「困ったときはお互い様」。昔から日常に云われてきたこの言葉ひとつで片付くでしょう。

「困ったときはお互い様」、わが家も昨日募金を携え出かけてきました。車のガソリンも残り少ないですし、灯油も購入制限が続いています。こんなときこそ歩いて暖まろうということで、地震以来町内の用足しはすべて徒歩にしました。家族五人で町を歩くことも、おそらくこの先そうはないはずです。
2キロほど離れた地元紙角館支局に着くと、すぐあとから何人もが募金に訪れました。何人かのお顔を拝見しましたが、どなたも肩肘張らず、「自分のできることをするだけ」というお顔に見えましたね。

手前味噌ながらひとつ朗報です。三女が角館高校に合格しました。トリプル進学の中でも一番心配していた三女の合格は、地震の映像で曇りがちになる家族の顔に明るさをもたらしました。朝の募金が夕方にひとつ幸せをくれたと考えるのは、いささか打算的でしょうか。
次女の仙台行きなどまだまだ課題はありますが、ひとつひとつクリアして本当の春を迎えたいものです。

※燃油制限等社会環境が復旧されるまで、今しばらく公開実演は休止とさせていただきます。
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地震と家族。

2011年03月16日 | 地域の話
日が経つにつれ犠牲者の数が増え、宮城県警本部長が発言した「宮城県だけで犠牲者1万人」が現実味を帯びてきました。本当に言葉を失う数です。
青森県から千葉県までの太平洋側は、かつてサラリーマン時代の担当区域でした。平成の大合併で自治体名が変わったところを除けば、被災地すべての市町村名が耳慣れた土地です。雪が少ない温暖な気候のせいか、人が住みやすく比較的大きな町が並んでいる印象でした。しかしこのたびの地震では、そんな人口の多さがそのまま犠牲者の数にも表れたことになります。

ひとまず実演の休みに入った14日から、自宅で草履を編む時間もテレビをつけています。節電の奨励は知っていますが、やはり情報はなにより重要ですね。照明を落とし、ストーブの設定温度を12℃まで下げて、外を歩くときの服装でテレビに目をやりながら草履を編んでいます。
テレビに出てくる映像で痛ましいのは、家族の消息を訪ね歩く人々でしょう。地震発生時刻が平日日中ですから、被災時には家族と離れていた人が多いようです。まったく様子が分からないのも心配ですが、逆に被災時一緒にいた肉親が波にさらわれる姿を目撃した人もいました。

14日午前、草履コーナーを撤収しようとしていたとき、一組のご夫婦とお会いしました。実は角館滞在中に地震と遭遇し、自宅へ帰るに帰られない人が数十名いたようです。こちらのご夫婦はまさにそんな旅行者で、ご自宅は仙台市若林区とおっしゃいます。報道に何度も出てくる被災地ですね。
『仙台の娘が、角館が安全だったらそこから動かないでって言うんです』と奥様。肉親である娘さんにしてみれば、ご両親が地震被害のない秋田県へ旅行していたことを幸いと思ったのでしょう。

予定であれば、明日が次女の仙台引越しの日でした。アパート業者さんと連絡を取り合うに、しばらくの間仙台行きは無理のようです。
ふと思ったのは、この地震が引越しのあとだったらどうしたでしょう。暮らし始めたばかりの馴染みの薄い土地で、壊滅的な地震被害に遭遇する。安否の連絡も取れず、角館で心配するだけの家族。考えただけでもゾっとします。

地震のあった日から、暫時就寝場所を一階の居間に移しました。五人が眠るには窮屈な広さですが、全員すぐに避難するにはベストと思います。
五人がひとつの部屋で寝起きするなんていうのは、この先一生を通してもうないでしょうね。双子の娘たちが家を離れる春に、東日本大地震が「家族」というものをあらためて教えている気がします。
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未曾有の大惨事。

2011年03月14日 | 地域の話
3月14日、午後四時を回りました。東日本大地震発生から72時間余りが経過し、角館は表立ったところで混乱はありません。しかし生活内部はと言いますと、ガソリン・灯油の供給制限、スーパーの商品不足が深刻です。そして余震、わが家のパソコンが二階にあるせいもあって、こうしてキーボードを叩いている今も小刻みな揺れが分かります。

予定していた実演スケジュールを若干変更しました。ひとまず今日から18日までお休みします。灯油の供給制限に伴う暖房調整が理由のひとつなんですが、なにより観光で散策される人影がほぼ皆無です。新幹線は走らない、高速道路には乗れない、なによりガソリンがないのですから当然でしょう。

地震発生時、わが家の五人は秋田市におりました。秋田駅前の立体駐車場4階でこの地震と遭遇したわけですが、普段にいる場所でないためか、地震の大きさが瞬時には判断できませんでした。それでも大事をとって階下に下り外へ出ると、駅前広場には300人ほどが避難していました。そこではじめて地震の大きさを理解できたわけです。

通常の二倍の時間をかけて角館まで戻ると、やはり秋田市同様電気が絶たれていました。それでも水道とプロパンガスは問題なかったため、食事に窮することはなかったですね。偶然にも前日スーパーで購入していたカップ麺が、早速活かされることになりました。
ひとつ誤算だったのが「乾電池」。ラジオそのものは安物が三つもありながら、買い置きしていた乾電池はもうずいぶん前に消耗されていました。こういうときに情報がないのは、なんとも歯がゆいものです。

そんな事情でこの地震の様子は、翌朝長女を試験会場へ送り届ける車中のラジオで知ります。『津波で町が壊滅…』という言葉を、生まれて初めて聞きました。「町が壊滅」からイメージされるとしたら、「日本沈没」の映像か「ゴジラシリーズ」の対決シーン、いずれ現実に起こる事象とは異なります。

停電の中ひとまず試験を終え角館に戻ると、電気が復旧していました。そしてはじめて東日本大地震の映像をテレビで見ることになります。
絶句しました。言葉を失いました。なにに向かってか分かりませんが、悔しくて涙が出そうになりました。「未曾有の大惨事」、言葉で事象を表すとしたら的確かもしれません。しかし被災者ひとりひとりの気持ちを表現するのに、月並みな言葉では叶わないでしょう。

この地震の影響で、三女の公立高校合格発表が二日間遅れます。たったそれだけの遅れでも、トリプル進学のわが家には結構なロスなんですね。
仙台市での新生活が決まっている次女は、あと数日のうちに引越しを予定していました。仙台市内のライフライン復旧が遅れていることを思えば、この引越しもひとまず取りやめざるを得ません。

でもこの地震で大きな被害を受けた方々と比較したら、わが家なんぞなにほどの障害でしょうか。大きなことはできませんが、僅かばかりの義援金を送るつもりです。

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僕の前に道はない。

2011年03月09日 | 家族の話


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
朱色基調のとんぼプリントをベースに、合わせは紺基調の女の子プリントです。
赤系と紺系の相性の良さはもちろんですが、双方の和柄がなんともうまく合っているような気がしますね。ベースの背景には、いらかプリントが施されています。水面に遊ぶとんぼというのは、誰しもふるさとを思い起こすのではないでしょうか。
幼き日を思い出しそうな和柄のベースはこちらです。




相変わらず寒さから抜け出せない角館です。日差しこそ真冬とは異なりますが、雪が混じる上に最高気温が2℃とか3℃しかありません。それでも桜前線の予報では、今年も例年より幾分早いと報じられていました。三月も中旬を間近にこの気温ですから、本当に桜が早いとするならば、三月下旬あたりから連日高気温になるんでしょうかね。

草履職人となってからの大きな課題のひとつは、「座りっぱなし」です。これはときに、初対面のお客様にもご指摘をいただくことがあります。朝から夕方まで実演席に座りっぱなし、昨秋からタバコをやめたためさらに動かなくなりました。人の行動として基本的且つ原始的なものが「立つ・歩く」でしょうから、私の場合は運動不足の言葉さえまだマシに聞こえますよ。

去年の十二月に入ってすぐのこと。三女の高校受験日まであと百日となった朝から、角館神明社へお参りに行く決意をしました。「お百度参り」にあやかったのもありますが、やはり私自身の運動不足解消が大きかったと思います。
わが家から角館神明社までは早足5分程度の距離しかないのですが、社殿までの石段がなかなかキツいんです。20分程度の朝のウォーキングが日課になろうとしていたころ、例の入院があったわけです。

その後しばらく休んでいたのですが、先月の終わりから再開しました。ここ数日朝に僅かな積雪があって、まだ誰も踏んでいない神明社の石段の雪に第一歩を記すのが、密かな楽しみに感じています。
明日は三女の卒業式。春休みで気持ちがたるまないよう、卒業式の翌朝から三女が私と一緒に歩くことになっています。一日も早い春を願いながら、誰も踏んでいない神明社石段の雪の第一歩を、三女にも経験させてやりたいと思いますね。

「僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る」。新たな一歩の始まる春が、もう目の前です。
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明日は啓蟄。

2011年03月05日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ27cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
エンジ基調の昔看板プリントをベースに、合わせはエンジです。
先月東京の仕入部長から届けられた布生地の中に、またまた面白いプリントが入っていました。男性用サイズに赤系の在庫がなかったので、いっそのこと27cmで編んでみたのですが、なかなかお洒落な色調になったと思います。面白いベースの平生地はこちらです。




「啓蟄」を明日に控えた角館は、また冬に逆戻りの天候です。ここ数日とても気温が低い上に、降雪もありました。さすがに三月ですからドカ雪ということはないのですが、「名残り雪」にしてははっきりと降りましたか。
明日からまたしばらくグズついた天気が続くようです。一日の長女と次女の卒業式も悪天候、そして八日に控えた三女の卒業式も予報では雪マークですね。どうも年度末行事は天気に恵まれません。

そんな天気もどこ吹く風、旅を堪能しているおばさまたちはいたって元気です。昨日は東京からお越しの女性家族が、角館草履をことのほか気に入ってくださいました。おばさまと二人の娘さん、そして5歳ほどの女の子のお孫さん四人旅です。それぞれにお気に入りをお選びのうえ、お土産にも一足お買い上げ。肩が凝りそうな寒い日に、なんとも嬉しいお客様でした。

今日は盛岡市の常連さんが、『この人に草履を見せてあげたいと思って…』とご友人を伴ってお越しです。ご自身が愛用されていれば、『あの人ならきっと喜ぶはずだわっ』というのが分かるのでしょう。見事的に当たったとでも言いますか、ご友人はプレゼント用を含めて6足のお買い上げでした。

昨日ほどではないにしても、今日も寒い一日です。そんな日にこれだけ気に入っていただければ、そのときばかりは寒さを忘れますよ。もっともおばさまお二方に『寒くないですか?』と訊いてみたら、『ぜんぜ~ん、大丈夫よっ』。
考えてみれば、寒さに弱かったらこの時期の角館散策は考えませんよねぇ。明日は啓蟄、寒さにちょっと弱いおばさまたちも、もうすぐ散策が億劫でない季節になります。
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