角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

師走を迎えました。

2012年11月30日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ26cm土踏まず付き〔五阡二百円〕
茶の唐草を準定番としてから、もうずいぶんの数を編みました。小さなサイズで編むと女性用にも好まれ、大きいサイズでは奥様がご主人へ選ばれるケースも多いです。茶色というのは女性に受けるのかもしれません。

今日で11月も終わり、明日からいよいよ師走に入ります。トップページの実演スケジュールカレンダーも更新しました。
師走というのは、一年で最もお客様の少ない月と思います。一年の節目として仕事や家庭も気忙しいですから、まず一般的には「旅を愉しむ」という気持ちに遠いかもしれません。

ましてや今年は衆院選があります。お客様はさらに静かでしょうが、その分を補って余りある候補者と支援者、そして選挙カーの音でしょうね。
もちろん選挙は大事ですから、候補者の声はよく聞きたいと思っています。そして貴重な一票を投じることとしましょう。

それにしても一年の最後が選挙で終わるのも寂しい気がします。角館の観光に携わる一人として、また角館の草履職人として、ラスト一ヶ月をしっかり務め上げたいものです。
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五十歳の若造。

2012年11月28日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡八百円〕
紺系でまとめた純和風の配色は、広く男性に好かれます。まず一般的で無難という印象があるわけですが、「絣」や「藍染」といった日本古来の布地に紺が多いんですね。
広く男性に愛されるのは、そうした和の伝統に因るのかもしれません。

ひとりのおばあちゃんが、ふらりと米蔵へ入って見えました。人様の前で草履を編む私に興味が湧いたのか、『おや~、面白れぇごどしてるなぁ。あんたはどこの人?』。
逆にこちらから、『母さんは角館どご詳しいんシか?』と訊いてみると、『角館で暮らして今年88歳ダ、町のごどは全部分がるっ』。

風呂敷の大きい人に悪い人はいません。しばしおしゃべりしたのですが、ほんとに楽しいおばあちゃんでしたよ。
私の手を止めさせたのが気になったのでしょう。『このめんこい草履、ひとつ買って行ぐがっ』と、ミニ草履をお選びでした。100円玉一個をお釣りに渡そうとすると、『それはあんたサあげる』。

おばあちゃんにしてみれば、私の年齢など子供以下。息子か孫へ駄賃をあげる感覚なんでしょうね。おばあちゃんを「母さん」と呼んだ褒美か、もしかしたら草履を生業としている“若造”へ労いのチップだったのかもしれません。
『大事に使います。ありがとうございましたっ』と言うと、おばあちゃんの笑顔もピークでした。

草履職人なんてことを仕事にしていると、お年寄りとのおしゃべりは日常茶飯事です。今日のおばあちゃんのように友達みたいな会話になることもあれば、大先輩が私に対して半ば敬語で話し掛けられることもあります。みなさん異口同音におっしゃるのは、『いい仕事に就いたね』。

50歳も間近にお客様からお小遣いをいただけるんですから、こんないい仕事はほかにないでしょう。
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日本のクリスマス。

2012年11月27日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
黒と黄色は相性がバッチリなうえ、ベースの黄色い花柄がなんとも可愛いですね。連想ゲームじゃないですが、黄色と言われればすぐに「レモン」を思い浮かべてしまいます。今日の草履を編んでいるあいだ、幾度となくレモンのすっぱさが口の中に現れました。

70歳ほどのお母さんと、40歳ほどの息子さんがお越しです。息子さんは埼玉県にお住まいで、ご実家が大仙市大曲。お二人で角館にある菩提寺を訪ね、ついでの散策とのことでした。

息子さんが角館草履に関心を示され、試し履きに納得のご様子。配色見本を熱心に眺め、定番配色①でオーダーとなりました。すぐにお母上へ、『お母さんも好きな色選んでよ、俺がプレゼントするからっ』。お母上は嬉しいながらも、一瞬遠慮がちにしています。

すると息子さんが「今日の草履」を指して、『お母さんは黄色っていう感じじゃないもんなぁ』。せっかくならご自分で色を決めたいお母上は、出来たばかりの定番配色①をお選びでした。仲良し母子は配色も一緒、思いがけない「クリスマスプレゼント」になってくれたようです。

今日の角館は、今季最も寒い一日となりました。朝から雪混じりの強風で、いかにも冬の様相です。冬の風物詩として定着してきた、「角館冬のイルミネーション」も始まりました。立町ポケットパークはお正月まで電飾で彩られます。

角館草履にも「クリスマスプレゼント」の言葉が、ちらほら聞かれるようになってきました。まず一般的な印象で、クリスマスに草履なんて発想はおおよそ場違いですよね。それがここ数年、プレゼントに角館草履をご利用のご愛用者が増えています。今日まですでに5件ほどのご利用がありました。

ご自分用かプレゼント用かに関わらず、しばらくのあいだお買い上げ袋を「クリスマス用」に変更しました。さらにプレゼント用の場合、草履の右足に「サンタシール」を貼ってお届けしています。



クリスマスには「長靴」が定番ですから、日本のクリスマスに「草履」は案外的外れじゃないのかもしれませんよ。
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素朴な田舎の冬。

2012年11月25日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔五阡円〕
紺地の麻の葉プリントには、懐かしさを覚える和の情緒があります。組み合わせを辛子色にしたことで、尚のこと素朴さが感じられる配色になったんじゃないでしょうか。「田舎の草履」はこれでこそ良いように思います。

『また来ちゃいましたぁ』。笑顔でそう言いながら私の目前に立っていたのは、昨日お立ち寄りくださった女性二人旅です。昨晩当地に宿泊し、二人で角館草履の話をしてくれたのでしょう。うちのおひとりが、『やっぱり欲しくなっちゃって…』。定番配色④でオーダーと相成りました。

福島県郡山市のおふたりは、桜も観たいと思ったものの、まずはこの時季にしたそうです。桜まつりの人出をお話しすると、『そっかぁ、そりゃあそうよねぇ』。桜を観るためには人も見なければならないわけで、そこらへんは正直に伝えておいたほうが良いと思うんですね。

続けて『これからの冬も観光客は多いんでしょ?』と訊かれました。これもウソはいけませんから、正直に激減する旨をご説明すると、おふたりはとても意外な表情をされたんですね。「雪化粧した武家屋敷を観るため、たくさんの人が押し寄せる」、どうやらそんな想像を巡らしていたようです。

実は先月のこと、埼玉県からお越しのおじさまと同じ話をしたものです。今年の6月あたりに初めてお会いし、そのときは仕事のついでに立ち寄られたと記憶しています。角館を気に入ったと言うおじさまは、時間を見つけてはカメラ片手に散策されていたんですね。

そのおじさまが思い出したように私に訊くのは、『そうそう、角館って冬は人が来ないってほんと?』。
小正月行事のいっときや、温泉旅のお客様がある程度はいますが、いわゆる観光シーズン中のゾロゾロ人が歩く姿はありません。おじさまはいかにも不思議そうに、『そんなものかねぇ』。

四年前の12月、世界遺産の白川郷を訪ねる機会に恵まれました。そのときの様子は2008年12月15日のブログに綴っています。
白川郷のように冬の集客が定着している観光地を、角館人の多くは羨ましいと思うでしょう。もちろん私もその中のひとりですが、どこか最初から諦めている自分もいるわけです。

先の郡山市の女性おふたりも、そして埼玉県のおじさまも、それぞれ『雪が積もる頃にまた来ますよっ』と言ってくれました。真冬の角館に、なにか特別な歓迎セレモニーがあるわけではありません。しんしんと降り積もる雪に、静かで素朴な田舎の冬を愉しみたい。そんなふうに思ってくれたら嬉しいですね。

できるだけ休まず実演を勤める。私に出来ることはこれくらいですか。
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冬の温泉旅。

2012年11月24日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡四百円〕
黒基調と黄色はよく合います。バラエティの中にこの配色は不可欠で、まず年齢と無関係に選ばれていく印象ですね。可愛らしさを備えたお洒落な草履と思います。

天気予報ではずいぶん脅かされましたが、寒い中にも安定した空となりました。雨も雪も降らず風も静かだと、気温の低さに反して案外過ごし易いものです。体感温度に著しく影響するのは、どうやら「風」ですね。

お若い男女カップルに『結構寒いでしょ?』と訊いてみると、『南から来たのでこの寒さも心地いいですぅ』。
暑さも寒さも「非日常」であれば、それでさえ旅の愉しさになるのでしょう。『雪が見たくて来ました~』とおっしゃるお客様が必ず見えるのは、それが非日常だからですね。

福島県からお越しのご家族旅。50歳代半ばと思しきご夫婦に、20歳代後半と思しき娘さんの三人旅です。お母さんが草履実演を関心高くご覧でしたが、一通りのご説明を終えたところで米蔵の中へ入って行かれました。その10分後、『やっぱり気になって戻って来ましたぁ』。お選びの草履は昨日の「今日の草履」です。

当初乳頭温泉を目指した旅も、主だったホテルが軒並み満室で宿泊は諦めたそうです。それでも日帰り入浴だけは諦めきれず、明日お出掛けになるとのこと。今秋の角館も人出はまずまずですが、田沢湖の温泉もずいぶん賑わっている様子ですね。

乳頭温泉郷や田沢湖高原温泉郷は、これからの冬場もお客様が多いです。昼は静かな角館を散策し、夕方にはまた温泉宿へ戻る。そんな老若男女と今冬も出会うでしょう。
ただ冬場は事故も増えます。昨冬の玉川温泉では痛ましい事故がありましたし、路面凍結による交通事故は日常茶飯事です。愉しい旅が一瞬で暗くならないよう、くれぐれも用心して欲しいものです。

そうそう、田沢湖高原温泉郷のマスコットキャラクター「オモテナシ三兄弟」が、横浜市へ旅をして事故に遭いました。事故といっても展示用ぬいぐるみの盗難なんですが、こうしたことも旅には注意が必要でしょう。「オモテナシ三兄弟」のブログに詳細が綴られています。早く見つかってくれるといいですね。
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褒め言葉が活力。

2012年11月23日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
ベース生地の金プリントが、とても神々しく映えます。エンジとの組み合わせがセオリーとは思いながら、紺との相性もばっちりですね。シックでお洒落な草履と思います。

『草履作りをゆっくり見たいと思って…』。ご夫婦でお越しの奥様が、笑顔でそう言うと丸太椅子に腰を下ろしました。少しお話して思い出したのは、何年か前にご自分で編んだ布草履を持参されたおばさまなんですね。その当時で100足以上の実績があるおばさまの布草履は、それまで見た中でかなり上手いと思ったものです。

そのときの会話をおばさまも憶えていて、『上手だって褒められたんですよっ』。
当たり前の話ですが、人は褒められると嬉しいものです。そのときのことを忘れませんし、褒めてくれた人に対しても悪い印象は持たないでしょう。おばさまはあれからずーっと編み続けていて、フリマなどで人気になっているんだそうです。

『少し前にも来たんですけど、お客さんがいたのでそのまま帰ったんですぅ』。今日はその日の分もゆっくりと見学され、イ草材料をお求めでした。今度は布草履でなく、角館草履を持参されるかもしれませんね。

仙台市からお越しのご夫婦旅。ご主人が角館草履をとても気に入ってくださり、試し履きのうえで定番配色④をお選びでした。すかさず奥様もお気に入りを選ばれ、早速今夜から履いてくださるそうです。
これから角館散策というご夫婦は、『帰りに寄るので、この草履預かっててもらえますか?』。よくある話なんですね。

夕方立ち寄られたご夫婦は、『お土産屋さんに布草履売ってるじゃないですか。触ってみたらここの草履と全然違うんですよね~』。お二人異口同音に角館草履の履き心地を褒めてくれました。
何年編んでも、何足編んでも、褒められるのは嬉しいものですよ。これが明日への活力じゃないですかね。
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今秋と来秋。

2012年11月22日 | 地域の話
三日間お休みをいただいたおかげで、今年も冬を迎える準備がほぼ整いました。自動車の冬装備から自宅周囲の雪囲い、庭に樹木のある家庭ではその保護もこの時季の仕事です。脈々と続く土地の暮らしであり、雪国の風物詩ともいえるでしょう。

観光地角館の様子はと言いますと、天気の悪い平日の人出はもう「冬」ですね。お休み中も何度か町内を通りましたが、散策を愉しむ姿はめっきり減っています。それでもツアーの昼食予約はこの時期も堅調なようで、ちょっと嬉しくなる情報でした。

2012年も残すところ、あと一ヶ月余りです。一年の総括にはまだ早い気がしますが、角館の一大イベント「桜まつり」からここまでの様子を振り返ると、まず震災の後遺症はほぼ消えたと思っていいんじゃないでしょうか。

基本的な不景気やデフレの影響はもちろんあるにしても、東北に人が戻っていることは素直に喜びたいと思いますね。桜の季節は元より、夏も秋も一定の賑わいを見せてくれました。11月は天気の悪さに商いは不振だったものの、人出はそれなりにあったと思います。

来年の話など鬼に笑われそうですが、特に秋については今年より賑やかになると思っているんです。ひとつにJRと自治体が合同で繰り広げるイベント、「デスティニーキャンペーン」が本番を迎えるんですね。今年のプレキャンペーンでも効果が見えていますから、来年の本番に期待するのは当然でしょう。

そして「秋田県種苗交換会」が仙北市で初開催されます。県外にお住まいの方々には耳慣れないと思いますが、簡単に言えばめちゃくちゃ大きい秋の収穫祭です。10月下旬から11月上旬の一週間、会場に足を運ぶ人数は延べ100万人に近いとも云われる大イベントなんですね。

秋田県に暮らしながら、角館や田沢湖を訪れたことのない人も多いはずです。県種苗交換会という一大イベントに際し、ついでに観光を…と考える人は当然いると思うんですね。これはまたとない絶好の機会になるんじゃないでしょうか。

あえてもうひとつ挙げれば、2014年4月から消費税が8%になる予定です。こうしたことも、来年の消費に後押しとなるのでしょう。
その消費税やTPPを争点とした衆院選が、年の瀬師走に行われます。結果次第では、農業の祭典秋田県種苗交換会にも影響があるかもしれませんよ。

やはり来年の話は鬼が笑いそうですから、まずは明日からの実演再開を考えることにしましょうかね。
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草履職人の公募制。

2012年11月19日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔五阡円〕
男性向けに、奇をてらわない率直な「赤い草履」を編んでみました。プリント柄で組み合わせを愉しむのも角館草履なら、今日の草履のようにシンプルな配色も角館草履と思います。むしろ王道はこちらかもしれませんね。

「今日の草履」は昨日のブログでご紹介の通り、茨城県からお越しくださったご夫婦旅のご主人がお選びです。赤は元気やエネルギーの象徴ですから、これからもお元気でお仕事に遊びに励んでくださいね~。

仕事に励まなければならないのは、角館の草履職人も例外ではありません。腰の痛みはまず差し障りないところまで回復したのですが、寒さが厳しくなるにつれ少し心配なところもあります。
明日からの三連休は、冬を迎える準備のためでした。腰に良くない積雪が、もう間もなくですよ。

実演でときに訊かれる質問が、『職人さんは他に何人かいるんですか?』。昨日も岡山県からツアーでお越しのおじさまに訊かれました。いわゆる生業としているのは私ひとりを伝えると、どうしても跡継ぎだとか後継者の話題に行き着くんですね。

このブログにもときどき登場するように、わが家には三人の娘がいます。長女と次女は専門職の学生ですし、高校二年の三女はかねてから『ゼッタイ草履なんて編みません!』と言っています。もっとも三女の不器用さを見ていると、職人仕事ができるとはとても思えませんね。

ずいぶん前のブログにも記しましたが、田舎では商いを継ぐ人がどんどん減っています。何代も続く老舗や活況を見せる一部の事業所を除くと、「子供に継がせたくない」と思っている人がより多いんじゃないでしょうか。

そうした中でお客様のほうから「後継者」をご心配いただくのは、本当にありがたいことだと思うんですね。昨日ご注文フォームからオーダーを賜った千葉県の常連さんは、『家に帰って草履をはくとホットします。もう欠かせません』というメッセージをお寄せくださいました。
わが家の娘たちでは無理としても、やがて真剣に考えさせられるときが来るかもしれません。

世の中衆議院選挙の話題で賑やかです。民主党は自民党との違いのひとつに、「世襲禁止」を声高に訴えていました。子どもが親の仕事を見て育ち、やがて自分も…と思うなんていい話と思うんですがね。自民党もその点は気にしていて、子供であっても「公募制」を経て公認しているようです。

あと十年も経って、身内に誰一人として草履を編む人がいなかったら、試しに「公募」してみましょうかね。あんなにタイヘンそうな代議士に応募する人がいっぱいいるんですから、草履職人にだって一人くらいの応募はあるかもしれませんよ。
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ちょっと遅れた花嫁。

2012年11月18日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡八百円〕
先回の「今日の草履」は緑で統一しましたので、今日は緑に紺のプリントを合わせてみました。先回は男性がお選びくださいましたが、さて今度はどのようなお客様か。面白いことにお若い奥様がお持ち帰りです。

こちらの奥様は茨城県からのご夫婦旅。木枯らしが吹く角館に、つい今しがた到着されたそうです。ご主人もご自分用をお買い上げくださいました。ご主人の草履は次回の「今日の草履」でご紹介しましょう。
こちらのご夫婦も今夜は温泉にお泊りとのこと。やはり今ごろは湯上りの角館草履でしょうか。

青森県上北郡からお越しのおばさま二人旅。共に草履に関心が高く、草履談義に花が咲きました。特に先ツボの当たる指の股が「首のツボ」を知ると、ひとりのおばさまが『それで謎が解けたわよっ』。日常のお仕事にパソコンを利用しているおばさまは、和服で草履を履いた際に痛みを感じていたそうです。
『草履の細工が悪いと思ってたら、悪いのは私の体だったのね』の言葉に大笑いしましたよ。

とても仲良しで天真爛漫なお二人は、昨夜「強首(こわくび)温泉」にお泊りでした。角館から車で小一時間と比較的身近な場所の割には、これまであまり名前の出ない温泉です。私もそこに関心があって、『なんでまた強首温泉を選んだんですか?』と訊ねてみました。

するとお二人の顔がそれまで以上の笑顔になって、『還暦の記念にドレス姿の写真を残すためよっ』。こわくびホテルはこのサービスが有名だったんですね。
ケータイの画面に、麗しいドレス姿を見せてもらいました。「ちょっと遅れた花嫁」をイメージさせるその画像に、思わず『あららっ、やっちゃいましたね』と言ってしまいました。

『奥さんを連れて一緒に行ってきたらイイわよ~』とお二人。ドレス姿が“ネタ”になるのは、やはり還暦を迎えてからですかね。
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旅人の想い。

2012年11月15日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡八百円〕
唐草以外の緑系がなくなっていたので、明るい緑のいらかプリントを仕入れてみました。爽やかな印象が男性向きにも思えましたから、サイズは男女どちらにもOKの24cmです。そして早速のお持ち帰りは、東京からお越しの男性。軽く「ガッツポーズ」ですかね。

こちらの男性はご夫婦旅でした。ちょうど一ヵ月後に定年退職を迎えるとのことで、奥様とふたり「退職記念旅」というわけです。
かねてから偏平足を気にしているご主人に対し、奥様が角館草履をずいぶんお勧めでした。『記念になるんじゃない!?』の言葉で、「今日の草履」を選んだご主人です。

すかさず奥様が、『じゃあ、私はこの色ということで…』と定番配色⑧をお選びです。
するとご主人、『はぁ!? なるほど、そういうことね…』。ご主人へずいぶんお勧めくださると思ったら、どうやら奥様ご自身も欲しかったわけですね。
今夜は角館温泉花葉館へご宿泊とのこと。そろそろ湯上りの角館草履でしょうか。

昨日のブログにも触れたように、日々ご夫婦との出会いがあります。遠く県外から旅をされているご夫婦もあれば、秋田県内から散策やお買い物で訪れるご夫婦もあります。距離の長短と無関係に、二人で出掛けること自体がひとつの「想い出」になるんですね。

盛岡市からお越しのおばさまひとり旅。実演席で足を止められたので、『寒くなりましたね』とお声を掛けました。おばさまは、『こんなに寒くなっても(実演を)やってるんですか?』。おそらく気候の良い時季に、一度はお会いしているのでしょう。
少し気になったのは、お気遣いをいただいた言葉なのに、どこか雰囲気が暗いことでした。

角館草履のご説明やら世間話が進むと、『そうねぇ、私も履いてみようかしら』と編んだばかりの定番配色①をお選びです。ここでも気になったのは、明らかに笑顔が少ないんですね。草履に関心がなければまず長居しませんし、ましてお買い上げになるわけがありません。これまで笑顔なしに配色選びをされたお客様を、私はすぐに思い出せませんでした。

お釣りをお渡ししながら、『お住まいはどちらなんですか?』と訊ねてみました。そこからの答えで、笑顔の少ない沈んだ空気の理由が判明することになります。

『盛岡なんですけど、角館は毎年主人と一緒に桜を観にきていたんです。秋田市に5年くらい暮らしましたから、秋田県はいろんなところに出掛けました。その主人が今年の6月に亡くなりまして、少し落ち着いた今、二人で歩いたところを訪ねているんです』。

そのお話を私に聞かせると、目から一筋の泪がこぼれました。おばさまの年齢を推測するに、60歳代前半とお見受けします。どのようなご病気なのかは訊けませんでしたが、「天寿を全う」というには早すぎる死だったでしょう。
『また必ず遊びに来てくださいね』。さすがの私も、この言葉ひとつだけで多くは語れませんでした。

一年を通じた実演では、多くのお客様と出会います。人それぞれに角館を訪れる「理由」があるわけで、それは想い出を作る旅もあるでしょうし、想い出を辿る旅もあるでしょう。受け入れる側の私たちがケースに応じてどうこうなどはできませんし、必要もまたないと思います。ただ、旅人にはいろんな想いがあることを、しっかり肝に銘じておきたいものです。
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