角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

2015年も宜しくお願いいたしますm(__)m

2014年12月31日 | 製作日記




今年最後の今日の草履は、彩シリーズ26cm土踏まず付き[五阡二百円]
「招き猫」をベースに、途切れることなく繋がり続ける「唐草」を組み合わせました。色調に統一した赤は元気とエネルギーを表し、さらに厄と災いを除けてくれるとされます。自分自身にもまたお客様に対しても、商いをしていてこれを願わない者はいません。平生地はこちらです。




いよいよ大晦日を迎えました。今年最後の更新です。更新回数は今日を含めて2085回ですが、ではこれまで何足の「今日の草履」をアップしたのか。さすがに九年間を数えるのはやめました。ひとまず今年一年を数えてみたら182足なんですね。一年間に編み上げる草履のおよそ15%に相当します。「今日の草履」は基本的にオリジナル配色だけですから、ほかの85%はほぼ定番配色ということになりますか。中でも定番配色①の「紺の唐草にエンジ」は全体の30%近くに達します。

定番配色の比率が高い理由には「生産力不足」と「通販」が大きく影響しています。冬場にひたすら在庫を作り溜めても、桜まつりとゴールデンウィーク、そして母の日が終われば在庫がほぼ枯渇するのがこれまででした。するとその後はオーダーが主になります。配色イメージをお伝えいただく「おまかせ」はあるものの、多くは定番配色のサンプル写真から選んでいただくことになります。通販もこれに準じるわけですね。

定番配色は元々人気の高い色調ですし、オリジナル配色と比較して品質になんの違いもありません。冬場にたくさんの在庫があっても、あえて定番配色をお持ち帰りになるお客様も少なくないくらいです。ただ作り手としては、様々な配色を見てほしい願いをいつも持っています。一日4足、一ヶ月100足、一年1,200足の生産量は、これから加齢と共に減ることはあっても増えることはないと思います。

桜まつりが開幕する四月半ばまで、ひたすら在庫作りに専念して参ります。比較的お近くにお住いの方々には、ぜひとも冬のうちに角館草履をご覧いただきたいと願っています。初夏から晩秋しかお立ち寄りになっていないお客様であれば、その違いにきっと驚かれるはずです。
冬の角館は、「寒い」「ツラい」ばかりではありません。温泉、旨いもの、冬行事など、ならではの風情をきっと愉しんでいただけるでしょう。彩豊かに咲き乱れる角館草履の数々も、冬場ならではと存じております。

2014年は誠にありがとうございました。来たる2015年も、どうぞ宜しくお願いいたします。皆さま良いお年をお迎えくださいm(__)m
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今年もあと二日です。

2014年12月30日 | 家族の話




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き[四阡四百円]
こちらはお若い女性の和服姿をイメージしてみました。成人式の振袖が思い浮かべられますね。当地のような雪深い町では、成人式をお盆に合わせます。ですから成人式での振袖姿を見ることができません。いささか残念なれど三人の娘を持つ身とあれば、その費用によっては助けられたのかもしれません。
平生地はこちらです。






26日のドカ雪により、角館の積雪量は1mを超えたようです。秋田県南部で比較対象となる大曲や横手を一歩引き離しました。もちろんなにも嬉しくはありません。その後今日までの三日間は落ち着いていたものの、いよいよ明日からまた寒波襲来とのこと。元日と2日はちょっと怖いですね。
と言ったところでここは秋田県内陸部、いまさら雪が嫌いで始まるものはなにもありません。「変えられないものはそのまま受け入れよう」、雪もまたこの人生訓に当てはまると思っています。

今年も残すところ二日間となりました。恒例の餅つきも終わり、神棚の掃除も済んで、新年を迎える準備が整いつつあります。「神」も拠り所が綺麗になって餅が飾れれば喜んでくれるでしょう。六日間連続で草履を編まないのは年末しかありませんから、この時間で一年分の「紙」を整理しました。ほとんど捨てて構わないものばかりです。「拾う神と捨てる紙」ですね。

年末らしくこの一年を振り返ってみますと、「角館草履発売十年」「累計販売数一万足」「ブログ更新二千回」が大きな節目になりました。どれも始めた当初は思いも寄らない数字です。「千里の道も一歩から」、何里進んだのかは終わってみなければ分かりません。2015年もその通過点の一年に過ぎないわけですから、初心を忘れることなく励みたいと思っています。

わが家として一年を振り返ると、娘三人全員が社会人となった年でありました。三人が学生時代、経済的な理由でこの日をどんなに待ち望んだかしれません。でもこうして実際に訪れてみると、なにほど楽になった印象ってないもんですよ。むしろ扶養家族が減って税金が跳ね上がりました。
そして年末年始の顔ぶれも変わっています。仙台に暮らす次女は年末から元日まで仕事が続き、新年は一泊二日で帰省です。三女も元日は夜勤といいますから、昨年までのように家族全員が揃う年末年始はもうないかもしれません。

私は来年も元日から草履実演を始めます。家族の動向はどう変わっても、ひとまずこれは続けたいですね。明日の大晦日は元日に向けて草履を展示しますから、まるっきりのお休みは今日が最後。雪よせさえ要らない今日一日を、存分に休ませていただきましょう。
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わが家のトップニュース。

2014年12月29日 | 家族の話




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き[四阡四百円]
こちらも和服の女性をイメージしたものです。ちょっと年代が上がり、老舗料亭の女将といった印象でしょうか。金色の帯が風格を感じさせますね。
職業は別として、角館には和服姿で散策される女性の姿がよく見かけられます。お着物には二十代であれば二十代の、七十代であれば七十代の美しさがあるものですね。平生地はこちらです。






今年も残すところあと三日ですか。いまさらですが時の経つのは早いものです。テレビや新聞では今年起こった出来事を振り返り、「10大ニュース」のように報じています。中には「そんなこともあったね」と思い起こすのもありました。今年の出来事なのにもうずいぶん過去のような気がして、これも時の移ろう速さかもしれません。

わが家も365日分の「いろいろ」があったわけですが、一昨日三女がやってしまいました。




信号待ちの車に追突、北国の雪道ではありがちです。双方にケガのなかったのは救いですが、相手方は九月に購入したばかりの新車でした。ほんとに申し訳のないことです。一年の最後にこれがあったことで、いきなり十大ニュースのトップに躍り出ましたよ。
大晦日から正月三が日は十年に一度の大寒波と云われます。運転技術の未熟な若者ばかりでなく、私たちも車の運転には注意が怠れません。

今日を含めてあと三日のうちに、三女の事故を超えるニュースが起こらないことを願うとしましょう。
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議員の品格。

2014年12月27日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
一昨日の実演最終日に編み上げた草履は、和服の女性をイメージしたものです。和柄の美しさをベースにも帯にも表してみました。ちょっと色調が豪華ですから、高級クラブのママさんを思い浮かべますよ。あれっ、考えたらそういうお店に入ったことなどありませんでしたぁ(^_^;)
平生地はこちらです。






実演席には昔から私を、あるいはわが家を知る方も訪れます。すると決まって訊かれるのが娘たちの現在なんですね。実演最終日の一昨日も馴染みのおばさまに訊ねられました。娘たちの年齢を教えると一様に驚かれますよ。私も含めて自分の加齢は皆忘れているわけです。
娘たちの職業もよく訊かれます。長女は保育士、次女は看護師、三女は介護士を伝えると、『ほほぅ、それだばみんなここで仕事できるなっ!』と言ってくださる方もおります。

私もそれが一番嬉しいと思っています。娘たちと一緒に暮らせるからではなく、故郷で働けるという点ですね。仕事で故郷に恩返しができますし、なにより暮らすだけでその分の消費が生まれます。町に若者がいるだけでも悪いことはありません。
今のところ三人の中で次女だけが仙台市に暮らしています。新米看護師時代は少し大きな病院で修行したほうがいいとの判断でしたが、それもさほど遠い将来ではなく角館に戻るでしょう。

二週間ほど前の地元紙に、「品位」と題する記者コラムが掲載されていました。わが家と目と鼻の先にある市立角館総合病院は、老朽化のため新築移転が決まっています。その建設費の見直しを答弁する議会内で、ある議員の発言が問題視されたんですね。角館病院で働く看護師さんたちの、患者さんへの対応に不満が出ている件を例えて言ったのが、『調子外れのホステスばかり。私ならそんな店に行かない』。
この議員の発言が「品位」として書かれたわけです。

今年は全国で政治家の発言や対応が問題視された一年でした。都議会の「産めないのか」発言、兵庫県議の「号泣謝罪」、政務調査費の乱用に至っては一体何人の議員が該当するんでしょう。それでもこれまではどこか「ヨソの話」という感覚でいましたが、よもやこの仙北市議会でもこんな発言をする議員がいるとは思いも寄りませんでしたよ。これだけ腹立たしい気分になるのは久しぶりのことでした。

角館病院看護師の患者対応には、私もかねがねそんな噂を聞いておりました。私の身内が入院した際も、言葉づかいや言葉選びに若干の粗さを感じたものです。そりゃあ秋田市の大学病院あたりと比較すれば違いはあれど、世間から一斉非難を浴びるほどとは思えません。仮にそうした事実があったとしたら、改善すべく手立てを講じるのも議員の務めじゃないんですかね。少なくとも議会の場で出来の悪いホステス呼ばわりは、「品位に欠ける」を超えると思ったわけです。

当該議員が好むクラブにもキャバレーにもおねえちゃんにも、世間はまったく関心を持っていません。けれども地域医療に関心を持たないわけにはいきません。次女がやがて当地で看護師をするときに、こういう議員はいなくなっていてほしいと切に願います。議員をお辞めになったら、和服が似合うママのいる高級クラブで働いてみたらいかがでしょうか。
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2014年の草履実演が終わりました。

2014年12月25日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ27cm土踏まず付き[五阡四百円]
本日をもちまして2014年の草履実演を終了しました。この一年も実に様々な旅人と出会い、実演をご覧いただき、またお買い上げを賜りました。区切りの今日の草履は、途切れることなく繋がり続ける「唐草」と「大入」を組み合わせています。商いを生業とする者にとって、願うのはこの一点に尽きるのではないでしょうか。平生地はこちらです。






今年の実演日数は320日、昨年より若干少なく終わりました。以前のブログにも触れましたが、手の疲労を思うとこれくらいが限界かもしれません。あと一ヶ月半余りで迎える52歳は社会的に老体とは言えないまでも、出来るだけ長く職人生活を続けるための工夫は必要かと思っています。
さて320日間で何人の旅人と出会ったのでしょうか。数えることは不可能でも、出会いを思い出すためにこのブログがとても役立っています。毎年の年末休暇で読み直してみる時間は、なかなか心地よいひとときであります。大晦日までの六日間は草履を編みませんが、ブログ更新は出来るだけ続けて参ります。

まずは今年一年、誠にありがとうございました。角館を訪ねてくださったみなさま、草履実演をご覧くださったみなさま、草履をお買い上げくださったみなさま、通販でご注文をくださったみなさまへ、あらためて御礼を申し上げます。12月13日のブログで触れた通り、2015年2月に迎える52歳は、私にとって少しばかり思い入れのある歳です。特段何が変わるというのではなく、いつも通りに務め上げて参ります。

2015年もどうぞ宜しくお願いいたします。そしてみなさまにとって、より良き一年となりますことをご祈念申し上げますm(__)m
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似顔絵界の「神」。

2014年12月23日 | 実演日記




今日の草履は、仙北市の女性のオーダー草履です。お世話になった男性へのクリスマスプレゼントで、ご希望配色は「おまかせ」でした。贈り先の男性がお医者さんと聞き、ちょっと豪華に見える金色をベースにしたのがこちらです。数日前に編みあがっていたのですが、イヴに届くようあえて昨日郵送しました。男性のイヴが素敵な夜になってくれたら嬉しいですね。

秋田県にお住いの方であれば新聞・テレビ等でご存知かと思いますが、一昨日秋田市拠点センター・アルヴェにおいて「第四回東北にがおえサミット」が開かれました。東北内で活躍している似顔絵師六人が集い、売上の一部を被災地募金とするイベントです。参加した似顔絵師やスタッフの中に知人が複数いて、陰ながら私も応援していました。

かねがね思っているのは、似顔絵が究極の「パーソナルギフト」ではないかということなんです。「貴方のためだけに描いたもの」は、世の中に比較対象が存在しません。ユーザーにとってこんな嬉しい贈り物はないわけで、似顔絵をギフトとして捉える時代がもう来ていると感じていました。
その点において私の草履もカテゴリーで同一と思っています。定番配色を設けてはあるものの、オリジナル配色でのオーダーは日常にあります。お客様は「私の色」にとても大きな満足を見せてくれるわけですね。

昨日のこと、参加した似顔絵師の中でよく知るmarikoさんが、一人の男性を伴い訪ねてくれました。その男性には見覚えがあります。以前facebookで見かけた仙台市の「がんじーさん」なんですね。彼を私の記憶にとどめさせたのは、東北で初めて似顔絵専門店をオープンさせたという点でした。まさに「ギフト」を視野にいれているからこその常設店と感じたものです。

二十九歳の若さながら、東北の似顔絵業界で「神」と謳われるがんじーさん。その所以は高校生時代から始めていたキャリア、東北で初の専門店開設、似顔絵教室やカルチャークラブでの指導力など多岐に渡ります。けれども彼と話していて私が一番に感じたのは、真摯な態度と優しい人当り、そして似顔絵に対する高い志でした。さらに故郷を愛する心が素晴らしいですし、商いの視点においてもしっかりと考えをお持ちです。同業者が「神」と呼ぶのも納得でしたね。

彼は描きあげた似顔絵を、必ず自身のお店で直接手渡すことを原則としています。それはお客様が自身の「顔」に初めて遭遇する場面に、自分も立ち会いたいからにほかなりません。これは私も実によく分かるのですが、その場面が作り手にとって最高の瞬間なわけです。たとえば「今日の草履」を手に取った男性のお顔は、もしかしたら私が一番見たいかもしれませんよ。多くの似顔絵師が席描きにこだわるのは、皆その瞬間がたまらなく好きだからでしょう。

全国に様々なイベントがあるにもかかわらず彼が積極的に出掛けようとしないのは、お店に訪ねて見えるお客様を大切にしているからです。このたびの「にがおえサミット」だけは特別な思い入れがあるようで、かなり例外的とのことでした。彼が言うのは、『私は暮らしている仙台のお客様を大切にしたいんです。東京や大阪にはその土地の似顔絵師がいますから、商圏を広くは考えていません。むしろ仙台にいろんな似顔絵師が生まれてくれたほうが嬉しいですね』。将来ライバルになるかもしれない似顔絵師創出に尽力しているのですから、業界の伸びしろを確信しているのでしょう。

彼にひとつ面白い情報をいただきました。仙台市に延寿院というお寺があって、そこは「足の健康」を祀っているといいます。創建当時の住職が名だたる健脚の持ち主で、そこが由来となり「足」や「履物」にまつわる訪問者が後を絶たないのだそうです。草履、ワラジ、スリッパ、長靴まで奉納されているといいますから、次回仙台訪問の際に必ずうかがうことにします。そこから程近い彼の似顔絵ショップにもぜひ足を運びたいものです。

今年も間もなく終わりを迎えるときに、またひとり面白い御仁と出会えました。今年も多くの出会いに恵まれ、あっという間に過ぎた気がします。26日から年末休暇に入りますから、今年の草履実演も残すところあと二日。明日はクリスマスイヴ、最終日はクリスマスなれど、外は真冬日の寒さで人影はまばらです。サンタからの贈り物と思える出会いは、がんじーさんが最後かもしれませんね。


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伝建群選定の皮肉。

2014年12月22日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き[五阡円]
三日間のお休みが明けての第一作は、「フクロウ草履」を編んでみました。「不苦労」の語呂合わせで縁起物とされます。そのうえバックが紅白幕のようにも見えますから、さらに縁起が良いかもしれません。素材の量を考えると、おそらく2足で終わりになると思います。平生地はこちらです。




お休み中は仙台市の次女の元を訪ねていました。19日の朝、コンビニから買って来た河北新報を開いてみると、今年九月「伝統的建造物群保存地域」に選定されたばかりの宮城県村田町の記事が載っています。宮城県では初なんだそうですね。この「伝建群」はかねてより角館も選定されており、記事にも角館のことを「地域の歴史文化を大切にして、なおかつその魅力を発信することで地域のブランド化に成功し、交流人口の増加につなげている」と書かれてありました。

角館に暮らす一人として、予期せぬ褒め言葉に遭遇したようで嬉しかったです。さらに宮城県は東北内からの宿泊比率が高いデータから、「村田町もまずは東北の観光客にターゲットを絞ったプロモーション戦略を採ってみたらどうだろう」とあります。少し離れた土地からは、角館が一つのお手本に映るのかもしれません。そこでその日の予定を急きょ変更し、村田町を訪ねてみることにしました。















整然と建ち並ぶ店蔵の数々は、伝建群に相応しいと感じ入りました。藩政時代「べに花」を江戸や大坂に売っていた商家なんですね。現在の貨幣価値で30億円に及ぶ販売額と云いますから、角館の伝統工芸「樺細工」を凌ぐのは間違いないでしょう。蔵の風格からは当時の隆盛が感じられます。
この蔵通りへ立ち寄る前に、東北道インターを降りてすぐの「村田町歴史みらい館」という建物に入ってみました。

藩政時代は伊達正宗の子どもが城主の「村田城」があった土地です。しかし展示品や歴史解説にもそのことはほとんど触れられていません。とにかく「商売繁盛」に関わる資料ばかりなんですね。それだけこの町は「べに花」の商いに栄え、人々が潤ったのでしょう。現在も残る「七福神祭り」の由来は、ある盗賊団が七福神の格好で商家に押し入り、その姿に縁起を感じた主がむしろ金品を差し出したことが始まりとのこと。面白いですね。

さて蔵通りですが、おそらくかつては商店街が形成されていたと思います。しかし現在、160mに及ぶ通りに商店の姿はほんの僅かでした。ちょっと一休みの飲食店もありません。隣接する仙台市の繁栄に大きく影響されたのは想像に難くなかったです。
ただし現在もいろんなお店が立ち並んでいたとしたら、おそらく伝建群の選定には至らなかったのではないでしょうか。個々の建造物を有形文化財に指定はできても、一定の面積で選定される伝建群にはなりえません。

かつて商いに栄えた土地がその衰退によって伝建群の選定要件を満たしたとしたら、私にはいささか皮肉に感じられましたね。選定から未だ三ヶ月、これからいろんな施策でPRが始まると思います。蔵通りに人の流れが生まれれば、一本隔てた道にでも新たな商業施設が建つかもしれません。元来持った「商人魂」に火がついたら、東北内の伝建群として角館の強敵になるんじゃないでしょうか。
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厳寒期の到来です。

2014年12月17日 | 実演日記




今日の草履は、仙北市内の女性のオーダー草履です。男性舞台俳優さんへのプレゼントで、ご希望配色は「おまかせ」でした。
贈り先の俳優さんは「客演」と呼ばれる、言わば助っ人さんだそうです。技量を買われ舞台を盛り上げることを使命としていますから、タイトルを「大入請負人草履」としました。そうした布地がまたあるんですよ。少し奇抜な色調が俳優さんらしくも感じますね。平生地はこちらです。




明日から三日間のお休みをいただきます。一ヶ月ノンストップで草履を編み続けると、やっぱり手に疲労感が生まれます。草履職人となって十年が過ぎ、累計一万足をゆっくり超えました。始めの頃にはなかった症状が現れるのも無理はないのでしょう。仕事ですから多少の無理は承知のうえでも、この手が壊れてしまえば一巻の終わりです。これからも月に3日~5日程度のお休みは必要かもしれません。

少し早すぎる厳寒期の到来に困惑しています。「大寒波」「爆弾低気圧」「暴風雪警報」。雪国には耳慣れた、しかしとても怖い気象情報が出されています。今こうしてキーポードを叩いていても、唸るような風の音に二階は若干揺れますよ。今夜から降雪も増すといいますから、明朝はまた雪よせから一日が始まるでしょう。

雪の「大入」はあまり歓迎できません。
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今昔入りまじり。

2014年12月16日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
今月入荷した新柄の中に、可愛らしい「こけしプリント」が入っていました。こけしはまさに「和」の象徴ですから、組み合わせはひとまず赤の唐草です。可愛くもしっかり「和」が感じられますね。
早速お選びは秋田市のご夫婦。共にご愛用者で、このたびはご友人の退院祝いにお求めくださいました。在庫があるとこうした急なご入り用に対応出来ます。ご縁に感謝ですね。こけしプリントの平生地はこちらになります。




記念日続きというわけでもないのですが、今日12月16日は角館草履のホームページを開設した日です。トップページにもあります通り、2005年12月16日に初公開しました。満九歳の誕生日というわけですね。同時にこのブログを始め、今日の更新が2077回目となりました。今年六月の販売累計一万足と同様、九年前は思いも寄らなかった数字です。

「ネット社会」と云われるようになって久しいわけですが、ホームページを持っていることで少なからずお客様には安心感があるようです。実演席でもよく聞くのが、『じゃあネットで注文ができるのね』の言葉なんですね。履き潰してのお買い換えや、ご家族で欲しい方がいたとき、あるいはどなたかへの贈り物にしたいときに離れた土地からでも気軽に入手できる。今さらですが、これが通販の良さでしょう。

また一方で、そうした世界とは無縁に暮らしている方も多いです。角館草履のお客様にはご高齢者もいますから、今なおご注文はお電話の方も少なくありません。少しだけネットの世界をご存じの方で、『今ホームページを見ながら電話しているんですけど…』というのは「今昔入りまじり」で面白いと思いますね。私も一度だけあるホームページを見ながら電話したことがありました。

そもそも角館草履が「今昔入りまじり」ですよ。かつてのワラ草履が、美しさと健康効果を携えて現代によみがえる。世の中すべて今昔それぞれに良いところがあるのでしょう。ただし「モノを売る」の基本・原点は、いつの時代も対面販売と心得ています。ネット通販はあくまでお客様の便宜と考え、実演での対面販売をこれからも私の本分としてまいります。
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著作権認定日。

2014年12月13日 | 製作日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き[四阡四百円]
ちょっとシブ目の22cm草履を編んでみました。11月29日の「今日の草履」で泉ピン子さん風をご紹介していますが、すぐにお選びのおばさまがおりました。そこで組み合わせを変えてみたのがこちらです。華やかで美しい草履たちの中に、ときにこうした趣も必要なのだと思います。

また寒波襲来です。今日は脅かされたほどの降雪はなかったものの、真冬日かそれに近い気温までしか上がりませんでした。まだ冬の始まりで体が慣れていないせいもあり、一段と寒さを感じます。週間予報ではこれからが大雪の恐れでしたね。17日は暴風雪警報が出されそうで、いよいよ本格的な厳寒期が訪れようとしています。

展示パネルの草履も徐々に増えてきました。売れ筋サイズはほぼ揃いましたから、これからは現品のお持ち帰りも叶いそうです。在庫のなかった秋のご来店のお客様に冬の再訪を促した手前、展示パネルが埋まったのは一安心です。だからというわけでもないのですが、18日から20日までの三日間をお休みさせていただくことにしました。その後21日から25日まで務め、26日から大晦日まで年末休暇に入ります。新年はこれまで通り元日スタートであります。

今日12月13日は、角館草履に「著作権」が認定された日です。八年前の平成18年12月13日は、ある意味角館草履の「誕生日」ともいえるでしょうか。そして今日は、昭和56年に他界した親父の誕生日でもあります。存命なら87歳を迎えるはずだったんですね。著作権認定と親父に関わるブログは、2007年1月16日に綴っています。
かねてから平成27年という年を、少しばかり感慨深く思っていました。私が来年二月に迎える52歳は、親父がこの世を去った年齢と重なるからです。

息子が父親の、娘が母親の享年に達するというのは、どなたでも少なからずそうした感慨があるんじゃないでしょうか。比較的若く亡くしていればなおさらかもしれません。平成27年は気持ちの上で一つの区切りになるような気がしています。樺細工職人で生涯を終えた親父が生き切れなかった52歳の一年を、倅ががむしゃらに働いてみようかと思っています。
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