さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

地域再生のために 新書斜め読み

2017年01月05日 | 暮らし
 箱根駅伝は、青山学院大学の優勝となったが、駅伝で勝った学校はその年の受験生の数が増えるのだそうだ。直前の模試の偏差値で志望校を決めたり、話題性で何となく受けてみようかと思うのは志願者の自由だが、有名でなくても、偏差値が低くても学生の教育に熱心に取り組んでいる大学はたくさんある。そういう静かに見えないところで営々と行われている努力というものを、私は日本の教育に携わる人々の良心の在りかを示すものとして、大切に思っている。

私は文学一方でやって来た人間ではあるが、昨年は多くの新書類を読んで経済・社会のことを少しばかり勉強してみた。そうして気がついたことがある。今後の日本社会をどうしていったらいいのかということについて、聞くに値する提言や、方策を提示している識者や専門家は、この国に結構たくさんいるのに、それが政策なり行政の施策なりに、うまく掬い上げられていないということだ。せっかくの知恵や創意というものを、宝の持ち腐れにしている。これは、「もったいない」。

 新しい話題を追いかけるのに急な人たちは、何年か前に出版された良書をばかにしないで、落ち着いて読み返してみるといいと私は思う。たとえば、

神野直彦『地域再生の経済学』中公新書

などはどうだろうか。第五章には、地方自治体が自己決定権を取り戻し、歳出入のフリーハンドを獲得することが必要だと書いてある。これを本当にやれれば、山積する諸問題が理想的に解決し、無理に経済成長しなくても人々の暮らしは質的に向上するだろうと私は思う。

 牧野知弘『空き家問題』祥伝社新書

には、都市の宅地の問題の基本が相続の話などもからめながらわかりやすく説明されている。類書は多いが、私はこれを先に手にしたのだった。これを読んだ後に、

 早川和夫『居住福祉』岩波新書

を読めば、政治や行政が何をしなくてはならないかが、わかる。それから、農業に関しては、

神門善久『日本農業への正しい絶望法』新潮新書

が秀逸だ。「平成検地」をして、農地とそうでない土地との見分けをしっかり行い、土地利用に関する情報公開を徹底せよ、と言っている。

 要するに、地方都市とその近郊の土地利用の在り方を抜本的に洗い直し、見直せば、日本の土地を持たない若者たちの負担は軽減され、また、将来世代によりよい生活環境を残していくことができる。少子高齢化の問題の解決や、地方の活性化につながる。

これに、私はその所論に全面的に賛成ではないが、

金子勝『資本主義の克服 「共有論」で社会を変える』集英社新書

のような本を叩き台にして、いろいろな立場から議論を重ねていけばいいのではないだろうかと思う。

あとは防災に関して出された多くの新書の中に、立ち読み程度なので書名はあげないが、町づくりについての提言を含めたいいものがたくさんある。






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