劇団りゃんめんにゅーろん稽古日誌

劇団りゃんめんにゅーろんの愉快な日々。

別の人生   

2007年04月22日 | 森陰アパートメント
み群杏子。
久しぶりに参加した昨日の稽古。音楽が入り、全編を通して見ることができました。綿密に計算された高木さんの演出は、行動線をきっちりと整理して舞台化してくれています。それにぴったりとはまった東條さんの音楽。その音が入ると、舞台の世界にスムーズに入っていくことができます。
「ここではないどこか」を考えることがあります。ここではないどこかに行きたい。ここではないどこかで暮らしたい。そこでの人生。もうひとり私。私の書く楽しみは、たいていの場合、そこから始まります。森陰アパートメントも、私にもまた別の人生があれば、こんなところで暮らしてみたいなあと思いながら書いた作品です。
登場人物のひとりに、かなめさんという老嬢がいます。飯尾さん(通称ロッテさん)が素敵に演じてくれています。そのかなめさんに、「実現しなかった過去にも、思い出はあるのかしら?」というせりふがあります。そのせりふを言うときの、かなめさんの表情、「ある」と答える大作さんの表情、実現しなかった思いが、その一瞬にこめられています。それがあるから、最後に二人がやっと見つめあうことができる場面が生きてきます。その時のかなめさんの顔は本当に少女のよう。稽古をみていた私は、その瞬間、かなめさんになっていました。で、稽古なのに、涙が出てきました。どうやら私はこの物語のなかでは、かなめさんに、感情移入をしているらしいのです。ちょっとびっくりです。
昨日は本番の衣装も一部見ることが出来ました。今回、衣装係を引き受けていながら、ずぼらをかましていたので、半分は役者さんまかせの衣装になってしまいました。
宏一郎役はぜひこの人にと、何度もラブコールを送って出てもらった藺森さん。衣装選びひとつをとっても、彼は私の世界をちゃんとわかってくれています。朗読会のシーンでノアさんの演じるユリストは本当に素敵。ノアさんのライブにはぜひ行ってみたい。ロッテさんのヘアスタイル、大作さん役の杉本さんの浮世離れした白衣姿、こまちゃん役のえびはらさんが大きなテディを抱いている幸せそうな表情、飄々とした作務衣姿が不思議ムードのダル谷さんは坂本さんならでは。みんな素敵、素敵の氾濫です。りゃんめんのメンバーもがんばっています。後少しで本番です。私は本番の客席で、こっそりと、別の人生を楽しみたいと思っています。