老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

液状化する世界と日本の生き方(4);イスラム国攻撃の未来

2014-09-29 16:18:04 | 安全・外交
イラク国内のイスラム国拠点に対する空爆参加国は、米・仏・ベルギー・オーストラリア・サウジアラビア・カタール・オマーンなど。これに英国が加わる。これらの国が異口同音に語っているのは、目的を達成するには数年かかるという認識である。

これは、イスラム国というのが、これまでのテロ組織と決定的に違う組織だという事を示している。報道されている事から分かる事は、彼らは「国家」並みの統治組織を構築している。最高指導者バグダディの下で集団指導体制を敷き、評議会(内閣のようなもの)や支配地域を区分けして、知事も任命している。当初のISILには、そのようなノウハウはなかったが、フセイン体制下のバース党残党や軍人たちが加わり、フセイン体制下とよく似た統治をしている。

これを徹底的に排除するのは、きわめて難しい。テロ集団が、民衆の中に入り込んでいる。つまり、イラクやシリアの民衆の日常生活を破壊しなければ、完全な排除はできない。これを可能にするのは、地上戦以外にない。米国がまた泥沼の戦争に巻き込まれる可能性が増している。

これに対する警告がグローバル誌の「Why the Military Campaign Against ISIS Will Fail」(Jean-Pierre Lehmann)に乗っているそうである。

・・;
「米国の仕掛けた有志連合は、失敗である。これを理解するためには、歴史を考える必要がある。究極的には、イスラム国の存在は、西洋のキリスト社会と違って、社会改革が出来ていないことによる。
・・・中略・・
アラブでは、自由、知識、女性の位置が欠乏しているし、これを改善することもない。昔と同じである。大きな都市は世界的な位置にいるが、それ以外は昔のままである。というより、逆戻りしている。

このため、アラブを改善することは無理である。欧米の介入は、すべて失敗する。介入は、事態をより悪くする。イスラム国への戦闘地獄への門になる可能性が高い。

アラブから離れる、同じ意味の何もしないことであるのだ。欧米は、自己を守ることで、イスラム国への戦闘に入るべきではない。そして、我々ができることは難民への人道的な支援であり、それを行う必要があるのだ。」
・・・
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/260923.htm

要するに「アラブに手出しをすると碌な事はない。大やけどするだけ。手を引いて、人道支援などに徹せよ。」という主張。過去の歴史を考えると、これは説得力がある。

では、それが何故出来ないのか。イラクで懲りたはずなのに、米国は今回もシリア空爆に踏み切り、ずるずると泥沼に入り込もうとしている。これはテロの脅威だけでは説明しきれない。シリア空爆の本当の理由は何か。

①一つはテロターゲットを各国に分散し、米国の危険性を軽減する。
②これが最大の理由⇒石油・天然ガスパイプラインの確保。これについては以下の記事に詳しいので参照ください。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/---a251.html
③産軍複合体(ネオコン)の要請⇒覇権国家としての米国の権威の確立

オバマ大統領の国連での演説には、このような米国の本音は一切語られない。参加各国も一切語らない。当事国のシリアのアサド大統領も語らない。それどころか、有志連合国が空爆している地域にはシリア機は飛来せず、その他の地域に戦力を振り向け、支配地域の拡大を図っている。この強かさが、陰謀渦巻く中東で生き抜いていく知恵なのだろう。

様々な情報を総合してみると、イスラム国殲滅は難しい。と言う事は、かなりの確率でテロが世界に拡散する。テロ行為は、ウイルスのように伝染し、拡大し、変異を遂げる。人間、一度テロリズムに手を染めると、その方法手段はエスカレートし、限りなく残虐になる。埴谷雄高が喝破したように【革命運動と犯罪組織は紙一重】なのである。過激な思想、行動ほどその可能性が高い。

つまり、世界が今問われているのは、このような過激な思想・行動にシンパシーを見出す若者が世界中に広がっているという事実。これはとりも直さず、今現在世界を席巻している新自由主義的世界観に対するアンチが世界に満ち満ちているという事を示している。さらに言えば、米国流二枚舌外交に対する不信感が膨れ上がっているという事実。西欧流デモクラシーに対する不信感も膨れ上がっている。もう少し書くならば、それらの背後にある国際的金融機関や大資本の限度を知らない欲望の拡大がある。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-9d15.html

このような世界に対するアンチテーゼは、様々なところから噴出している。ロシア・中国を中心とした上海機構の世界銀行に代わる新たな銀行の設立。先日国連で決議されたヘッジファンドに対する非難決議等々。米国一国覇権主義に対するアンチが噴出し始めている。オバマ大統領の優柔不断な姿勢も米国覇権力の低下の表れだろう。

思想的にいえば、一度は死んだと思われたマルクスの思想が見直され始めている。フランスの経済学者のトマ・ピケティが、アメリカ社会を刺激的に分析した本が話題を呼んでいる。「21世紀の資本論」である。モスクワの社会主義が崩壊したのに続いて、遂にアメリカの資本主義も、というのであろう。富の再配分に失敗したアメリカである。
 
毎日新聞に米中間選挙の特集記事が掲載されているが、その副題が【分断社会】と書かれている。政治が、1%に牛耳られ、何事も1%制度に変革させられたアメリカ。アメリカを代表する世界的大財閥・ロックフェラーへの怒りは、市民の間で渦巻いている。この記事は、1%と99%に分断された社会が抱える現実を分析している。

9月28日に興味深い記事が掲載された。南部ジョージア州のフルトン郡が分裂の危機に瀕しているという。裕福な北部3地区が次々に郡から独立、新たな市を建設したというのである。その理由が「納税と恩恵」がつり合わぬ、と言う事。これは、ヨーロッパの独立志向の地域と酷似しているが、似て非なるものと言わざるを得ない。

ヨーロッパの場合は、経済的理由も大きいが、独自の文化・言語・人種など歴史的要因も大きい。米国の場合は、富裕層の経済的要因が突出している。米国では、このような富裕層のみの地域が拡大しており、その地域を守る警備も厳重。明確に他の都市地域と線を引いている。ブッシュ政権時(息子)、大幅に米軍を本土に配備した。一説には、内戦に備えている、と言われていた。つまり、このような1%の富裕層の地域を守るという意味だろう。わたしたちは、米国の政策を見る時、その背景にあるこのような思想をきちんと見なければならない。

今回のイスラム国に対する有志連合の空爆の背景にある覇権国家維持の思想は、1%の富める者たちのための政策であり、彼らのいう【正義】は、1%の正義であり、その裏には、恐るべき【不正義】【腐敗】が付きまとっている事を忘れてはならない。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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