いよいよ、ギリシャのデフォルトが現実味を帯びた。
※デフォルト(英語: default)とは、何もしないこと、あるいは成すべきことが成されないことを意味する。表記ゆれによりデ(ィ)フォ(ー)ルトとなる。各分野で異なる意味をもち、異なる訳し方をされている。
デフォルト (金融) - 債務不履行。本来履行されるべき債務が履行されなくなること(支払われるべき金が支払われない等)を指す。例えば、国、政府、企業など債券の発行体が、利払いや元本の償還を行えない状態に陥ること。
ウイキペデイア:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%88
今日の新聞一面は、この記事で埋められている。しかし、ギリシャのシリザ党チプロス政権が、何故、このような選択をしているのかについては、どの新聞を読んでも判然としない。以前から指摘されているギリシャの公務員の多さ(勤労者の1/4)、給料の高さ、年金の高さ、労働生産性の低さなどを列挙している。チプロス政権が国民の緊縮政策嫌悪感情に乗っかって成立したという事情を考慮しても、デフォルトの危険を冒してでも、緊縮政策解除を貫く理由が分からない。各紙の主張通りなら、チプロスという首相、馬鹿か、愚鈍としか言いようがない。【馬鹿に権力を持たせてはならない】見本としか思えない。
ところが、田中宇によると、今回のデフォルト、全く逆の側面が見えてくる。以下、彼の主張をわたしなりに、要約してみたい。・・
『1』国際金融システムの狙い⇒米国債とドルを頂点とする国際金融システムと、米国の金融覇権を守る。⇒世界経済における米国以外の領域を先に金融危機に陥らせることで、世界に散らばる巨額資金がリスク回避のため米国の金融市場に戻らざるを得なくなるよう仕向けている。⇒中国などの新興市場諸国の株式・債券及びギリシャ危機。
『2』ギリシャ危機⇒6月に入り、ギリシャ政府がIMFへの債務を決められた期日に返済できずデフォルト(債務不履行)に陥らされる可能性が増した。⇒ギリシャのチプラス政権は、IMFのやり方(債務の多い国を救済する名目で借金地獄に陥れ、その国を支配する)を非難⇒ギリシャ国民や南欧諸国の人々の支持を取り付ける⇒経済問題を政治問題に転換⇒EUなどと交渉
『3』ギリシャ政府⇒6月に入りIMF・ECB(欧州中央銀行)、EUからの借金を払えない⇒6月5日IMFに対する3億ユーロの借金返済できず⇒同日、IMF・ECB・EUから借りた資金の中に返済すべきでない違法なもの(ギリシャ前政権と債務者が違法に決めた債権債務)がないか調べる「真相究明員会」創設⇒真相解明まで返済停止
『4』6月17日⇒「真相究明委員会」が、IMFなどトロイカがギリシャに貸した資金の「すべて」が、ギリシャを救済するふりをして借金地獄におとしいれるためにトロイカが仕掛け、金融界の傀儡だったギリシャの前政権がそれを鵜呑みにした結果の違法なものであるという結論を発表した。⇒ギリシャが02年にユーロに加盟した後、欧州から大量の資金がギリシャ市場に流入してバブルが扇動され、その後11年に投機筋が先物取引でギリシャ国債市場を崩壊させてバブルを潰し、IMFなどトロイカがギリシャを救済するといって借金漬けにした。そうした経緯が、この報告書に書かれている。
『5』チプラス首相⇒真相究明委員会の調査結果を全面的に受け入れ⇒「IMFは犯罪者だ。ギリシャの債務危機を起こした責任はIMFにある」と議会で演説⇒この前後から、ギリシャ政府は三者との交渉で態度を硬化⇒三者が要求する、公的年金の支給開始年齢の引き上げや、消費増税などの財政再建策を拒否⇒三者の借金取り戦略を強く非難⇒交渉は決裂状態⇒6月30日にギリシャがIMFに債務を返さずデフォルトする可能性が高まった
・・・田中宇 「革命に向かうEU 」
上記の彼の解説を読むと、メディアで喧伝されているギリシャ危機の姿とは全く違う姿が見えてくる。たしかに、ギリシャのチプラス首相のやり口はかなり乱暴だが、これくらいやらないとギリシャはIMFなどの支配から自由になれないというのも理解できる。
田中は、次のように書いている。
「ギリシャのチプラス政権は、自国をユーロ圏内にとどめたまま、IMFなどから強制される緊縮策をせずに自国を金融財政危機から離脱させる策をめざしている。」と。・・前掲書・・
IMFの借金取り政策プロパガンダを疑いなく受け入れている人々から言わせれば、そんな甘い事が出来るはずがない。チプラス首相は、大馬鹿者だ、という事になる。
しかし、IMFの本質が『借金取り政策I』である事は間違いない。(アジア通貨危機を想起すれば分かる)であるならば、IMFの政策=緊縮策の逆=経済成長による財政再建をやる方が、政策としては正しい。その視点で見るならば、チプラス首相の方針は正しいのかも知れない。ただ、チプラス首相は若い。だから、EUなどの老獪な連中から見れば、若造の左翼が何を言うか、と言う事になる。
しかし、ギリシャ政権(シリザ党)は、かなり強かで、そんなに馬鹿にしたものではない。彼らの狙いは、・・「ユーロ圏にとどまることで、スペインやイタリア、ポルトガル、フランス、東欧諸国などを巻き込んで、IMFや米金融界の借金取り策(と、その裏返しであるQE)に牛耳られているEU(ユーロ圏)の戦略を、下から(欧州議会などで、民主的に数の力で)乗っ取り、ドル延命のためにユーロやEU統合を破壊しようとする米国の覇権策から欧州を自立させることを目標にしている」・・(田中宇 前掲書)というところにある。この狙いは、ギリシャだけでは達成できないが、EU指導部の中にも、ドル支配からの脱却を目指している勢力は確実に存在する。
その意味で、今回のギリシャ危機。世界を巻き込んだ通貨の覇権争いの一環であり、覇権の移行期に起きる予測できない様々な事態が起きる可能性が高い。現在の日本メディアは、世界金融マフィアや産軍複合体マフィアのまき散らす情報統制の下にあり、あまり信用できない。全てを疑ってかかる覚悟が必要だろう。
「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
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