老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「憲法改正」問題の危うさ

2023-12-29 16:02:37 | 憲法
1.憲法改正問題とは何か

日本の憲法学では法改正論において、大きく二つの見解に分かれる。

① 一つは憲法改正には「限界」があり、現憲法を基本原則(いわゆる、三大原則と言われるものであり、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義の三点である)を改訂して、この基本原則を改廃する憲法改正案はできないという「制限説」である。
② もう一つは憲法改正には限界などはなく、どのような改正案でも可能である、という「無制限説」である。

現在時点では、自民党などの改正案は後者の②の無制限説に依拠していることは否定できない。(具体的な自民党の改正案は省略します。)

2.以上のような憲法学の議論であり、大きくは上記の二つの見解が対立する憲法学会となっている。
欧米諸国の憲法学で日本のような議論があるか、私には分からないが、学者でもない私から言えば、憲法改正の議論において、②の無制限説は「憲法改正」という言葉の意味を逸脱しており、もし自民党の「改正案」が国会の議決と国民投票の「承認」を受けて「憲法典」として制定されるなら、それは「憲法改正」ではなく、「憲法典」の廃棄と新憲法の制定と解釈できると言わねばならない。

その理由として、戦前のドイツの歴史に焦点を当て、現在の自民党の「改憲論」に沿って、私の持論を述べる。

3.日本のアカデミー(憲法学と政治学など)が不適切なのは、戦前のナチスドイツはワイマール体制を「暴力で打倒」したのではなく、国民の信任を受けて成立したナチス党政権:ヒトラー政権であったことをきちんと「教訓」にできていないということである。これは真の学問とは言えない。

以下にその理由を述べる。

自民党政府は、麻生太郎副首相が言ったように、「ナチスのやり方に学べ」であり、ナチスドイツは日本国憲法と類似する内容のワイマール憲法を崩壊させる方法で、ワイマール体制を倒して成立した政権であり、その時に緊急事態宣言を出して、国民の基本的人権を停止させたのである。そのやり方は「全権委任法」という法律に基づいていた。

ナチス党は暴力でワイマール体制を打倒したのではない。民主主義的な議会をナチス党が掌握したのである。これを理解しないと自民党の改憲論の手法も認識できないのである。

「独裁政権」は暴力ではなく、国民の選挙による信任(日本国憲法では「承認」)に拠ったのであり、日本も同じ状況になってきた。これがポイントなのである。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵
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世界沸騰時代に対処するキーワード(3)COPとMultistakeholderism

2023-12-25 20:40:29 | 環境問題
今月13日までUnited Arab Emirate(UAE)のDubaiにおいてCOP28が開催された。
COP28の成果を伝えることを念頭に、妥当な記事を調べていたが、一つの記事だけでは全貌を伝えること・その成果の是非を伝えることが難しそうだと考えている。
従って、幾つかの記事を何回かに分けて紹介していく予定です。

先ずはAlJazeeraからの記事を紹介致します。
この記事はCarola Rackete氏が見たCOP28の総括であり評価ですが、氏の総括と評価には現代国際社会の統治(ガバナンス)が抱えている大きな課題であるMultistakeholderism(多利害主体主義)が各所に見え隠れしており、そういう視点で極めて興味深い読み物になっていると考えます。
Rackete氏の記事をCOP28の紹介の最初に持ってきた由縁です。

このMultistakeholderismというキーワードが、今回のCOPを考えていく上で重要な背景思想の一つであると思っており、そしてこの背景思想が、COPだけに限らず現代の国際社会が抱える一国だけでは解決が困難な諸課題を国際社会が対応していく際、ある特定の有力勢力がこの思想を拠り所にし、国際社会の統治(ガバナンス)が事実この思想に沿って左右されている、と考えると現在の国際社会の流れが良く見えてくる節がある、と思っております。

という訳で、これから何回かに分けてCOP28の総括と評価を紹介していくことと、合わせてMultistakeholderismの是非や問題点をも考えていきたいと思っております。

ではRackete氏の記事を紹介します。

タイトル:気候危機から抜け出す方策・道はある。だがそれはCOPを通じて、ではない。
AlJazeera、2023年12月19日 Carola Rackete氏記す
***
世界最大規模の気候課題サミットが開催されたが、それは一種のマヤカシであり、我々に役立つものではありえない。

気候危機に対する国連締約国会議(UN Conference of Parties:COP)は今回で28回目の開催となる。そして今回の最新のCOP28の会議の最終合意文書に初めて「化石燃料の終結」という文言が載せられた。

確かにCOP28では「化石燃料への依存状態から移行していくこと」を各国に約束させることに成功はしたけれども、気候危機を真に解決できる策が設定できたかどうか、という視点からみると、COP27やそれ以前の合意内容以上の進展はほとんどなかった、と言えるのである。
即ち、2015年のパリ合意の目標である2030年までにGHG(Green House Gas)排出を43%削減すること、に対しては今回の会合出席者間で合意に至らなかった。
そしてCOP27で設立した損失と損害基金(Loss and Damage Fund:この基金は気候危機に最も脆弱な諸国に対して財政支援を行うことを目的とする)の課題に関して言うと、富裕諸国側はいかなる有効な貢献策も打ち出すことはなかったのである。
例えば、ドイツはこの基金に1億ドルの拠出を約束しているが、この額はベルリンのA100高速道路のわずか430mの距離分の建設費用と同等なのである。そしてこの金額は気候変動の結果全世界が被った損失と損害金額に全く見合う額ではないのである。事実2022年のパキスタンで発生した洪水では1739人が死亡し、200万人が避難を強いられたが、この洪水災害損害額は300~400億ドルに達したと見られている。

一方、ウクライナ戦争の結果、化石燃料生産者らは記録的な利益を得ており、そして彼らは更に生産拡大を目論んでいる。今回のCOP28には数千人の化石燃料生産者サイドのロビーストらが会合に参加している。
化石燃料生産者サイドの動向が地球の未来に大いに懸念される所であるとの我々の認識に対して、ロビーストらは化石燃料生産者サイドの動向は人類の賢明な進歩であるかのような認識を植え付ける偽装工作活動を展開していたのである。

そして今回、議長役を務めたUAE国営石油会社社長のスルタン・アル・ジャベル氏の文書が流出するという事態が発生し、その文書においてジャベル氏は化石燃料ビジネスの推進を今回の会合の中で計画していると指摘されているのである。

化石燃料生産者側は、会議の交渉の中心に公正さと正義という思想を据えるのではなく、彼らは誤った方向の解決策を推進しようとしているのである。即ち欧州全域において、企業は炭素捕捉と貯蔵技術(carbon capture and storage:CCS、CO2をその発生源で捕捉し、適切な場所に移送し埋蔵するという方式)の開発を推進しており、この推進の狙いが異常気象が進行する状況下においてさえ、化石燃料の利用を継続し続けたい、ということなのである。
しかしながら、CCS技術の有効性・効率性は不充分なものであり、コスト的にも見合わないと見られている。そして現在の実験室レベルの再現性・有効性を充分大きなスケールまで同等の性能で規模拡大させるにはかなりの時間が掛かるとも見られている技術なのである。

即ちCCSの技術開発の推進は、単に化石燃料の利用を延長し、継続したいが為の方便であり、化石燃料利用の延長による化石燃料の漏出や流失、採掘地の崩壊等の破壊的危険性が継続し続けることになり、そしてその上に権力者らが正しい判断の下でより望ましい対策を採用し、実施していくことを単に遅らせるだけの働きをするものだと言える。CCS技術への過剰な期待と依存は、地球環境を劣化させ続けることに繋がるのである。

CCS技術の推進は、ドイツの緑の党のプログラムにも見られ、Wintershall社のようなドイツ化石燃料企業もがCCS技術を推進している状況がある。
そしてCCS技術は、COP28の最終合意文書中にも組み込まれているのである。

この理由は何なのだろうか?
考えられることは、資本主義を機能し続けるために、そして欧州のGDP成長を継続させるために、化石燃料を燃やし続けることが必要だという思想であり、その思想には多くの人の生命や他の地域に住む人々の生活は含まれていない、無視されているのである。

もう一つ別の企業側の遅延戦略が炭素オフセット(carbon offsets:現在はnature-based solutions、自然に基づく解決策とも呼ばれているようだ)に対して市場を更に拡大しようとする動きである。例えば炭素オフセットの認証を発行したとしても、その80~90%はCO2排出削減に結び付いていない、とされている。かかる状況下において、オーストラリアやUKの様な諸国は、炭素市場を世界に既に拡大している。一方ECは、生物多様性クレジットと水質汚染との取引きを計画中である。

COPは一種のマヤカシであり、年が経過するほど腐敗が進行していると言える。

誰もが考える真の解決策というものは、化石燃料使用の終結であり、企業による政治支配の停止であり、化石燃料依存体質を脱却した産業構造の広範な構築である。
幾つかの国は既にこの方向への道をたどり始めており、化石燃料不拡散条約(a fossil fuel non-proliferation treaty)推進運動を画策することで代替え策を創造している。12カ国、2000以上の団体、そして60万人以上の人々が、このキャンペーンを後押ししている。これら12カ国とは、気候変動の悪影響を最も受けている国々なのである。
ヨーロッパでのこの条約の意味する所は、化石燃料に関する新規インフラへのこれ以上の投資を行わないこと、時代遅れの内燃エンジン自動車の迅速な停止、そして生態系に合致した農業(ecological agriculture)に向けて工業生産型肥料の代わりに天然素材を利用する肥料への転換ということである。
この方向に展開していくには、グローバルノースの各組織や団体や人々が立ちあがり、各国政府が行動に参加するよう圧力をかけていくことが必要とされるのである。

EUは、明らかにその富を共有化することには関心を持ってはいないが、しかしEUは国連が到達した合意よりも先進的な政策パッケージの一つであるグリーンディール政策を少なくとも実行しているのである。ただしこのグリーンパッケージ政策は間違った目標を設定しており、即ち持続可能な方向に発展していくのでなく、経済を発展させていく目的の為に、グリーン化へ転換を図っていくという構図になっている。そして近年、EUの政策は「悪い」状態から「更により悪い」状態へと悪化する方向になって来ている。

最近の数カ月間、欧州では保守勢力と極右勢力が協同してグリーンディールの最も重要な法律(自然保全法と殺虫剤使用削減の為の持続可能な利用規制)のいくつかを葬り去ろうとしている。
この保守と極右勢力の協同体制が強化されたり、6月予定の次期議会選挙の結果、協同体制が多数派となれば、EUの各組織が化石燃料終結に向かう動きを維持することは、ほとんど期待できないものとなるだろう。次期EU議会選挙の結果が最も懸念されるところであり、EUの決定の重要性を人々が深く認識して、投票行動に結びつける必要がある。

結局のところ、変化を推進していくのはCOPやEU委員会からもたらされてくるのではない、ということである。変化というものは下からわき上がって来るものである。

我々は企業による乗っ取り(corporate takeover)に対し、抗議活動に参加が望まれる。そして極右勢力の台頭に対しても抗議活動に加わることが望まれる。我々は、人間中心の生態系に合致したシステムに移行するため、下からの動きを加速化していくことが望まれ、そのための共同行動を構築していく必要がある。
我々はCOPで提示される誤った解決策には慎重に対応していく必要があり、そして化石燃料を終結させるためグローバルサウスの行動の先頭に加わることが求められている。-
***

以上がCarola Rackete氏から見た今回のCOP28の総括議論です。

表題の地球沸騰化時代を考える際、重要なキーワードとしてCOPとMultistakeholderismの二つを挙げました。
COPについては更に説明の必要は無いと思いますが、Multistakeholderismについては最後に少々説明を加えておきます。この言葉の説明も簡単に纏めることが困難なものであるということを、先ずはことわっておく必要があります。
これから数回に分けて今回のCOP28の説明を行いますが、その中の情報等も参考にこのキーワードの存在を意識して考えてもらえれば、と思います。

Multistakeholderismの最初の説明として、京大の久野秀二氏の「持続可能な食農システムへの転換:グローバルヘゲモニーと対抗的実践との相克(農業経済研究94巻91-105、2022年)」中にある部分を引用させていただきます。
***
マルチステークホルダー主義は、1980年代以降に強まった新自由主義的グローバリゼーションの産物である。加盟国からの拠出金に依存する国連システム等の多国間機関が財政難に陥り、多国籍企業の資本力、とりわけBMGF(Bill & Melinda Gates Foundation)等の民間財団の資本力に依存せざるをえない状況が背景にある。更に世界経済フォーラム(World Economy Forum)の影響力が増し、彼らが多国間主義(Multilateralism)から多(利害関係)主体間主義(Multistakeholderism)への転換を構想した「Global Redesign Initiative」が着実に実行に移されてきたという点も重要だ。
マルチステークホルダー主義の問題点としては、
1. 多様なステークホルダーが水平的な関係においてグローバルガバナンスに参加するとはいえ、それが包括的・民主的である保証はなく、むしろ現実に存在するステークホルダー間の構造的な権力格差が曖昧にされてしまう。政府・国際機関を除いてガバナンスのプロセスに積極的・恒常的に参加できるステークホルダーは自ずと多国籍企業・産業団体や主流の国際NGOに限られる。規制する側(政府)とされる側(企業)、権利保持者(人々)と義務履行者(政府)と潜在的権利侵害者(企業)の立場上の違いも、同じカテゴリーに括られることによって曖昧にされてしまう。
2. コンセンサスが前提されており、熟議の末に採決が行われるような意思決定の手続きを要しないガバナンス手法であるため、「すべてのステークホルダーが合意できる合理的な解決策」という名目で、課題解決の方向性や手段を技術的・脱政治的に限定し、より構造的・根本的な転換を要求するような反対意見や少数意見は最初から排除される傾向にある。
3. 総じてグローバルガバナンスの断片化が生じ、透明性と説明責任の欠如も相まって、実際に何が議論され、何が行われているのかが外からは見えづらい、いわばガバナンスの迷宮が出現している。
***

前回のキーワードのAGRAとAFSAに合わせて更に説明すると、マルチステークホルダー主義の具現体組織がAGRAといえる。AGRAの訴求するグローバルガバナンスにおいては、国連機関(そもそも元国連事務総長のアナン氏がAGRA初代代表)や政府間組織、農業研究機関(矮生小麦や矮生コメの開発化とその実践)、国際NGO、農業団体、民間財団(BMGFやロックフェラー財団)、民間企業(多国籍肥料企業や農薬企業そして国際的種苗企業等)などの広範な関係団体を構成員に加えたマルチステークホルダー型のガバナンスプラットフォーム(即ちAGRA)が設置され、特定の考え方や規範に基づく農業改革等の構造化・制度化が進められる、のである。

Multistakeholderismの考え方は、現実の国際社会の諸々の課題に対するガバナンスに既に深く広く浸透しているのが実態と言える。

Rackete氏が危惧するCOPの現状においても、アフリカの食と農のシステムにおいても(充分な「人もの金」に裏付けられたAGRAの考え方が優先的に実態化される一方で、AFSAの動きはやはり鈍いと言える)、そしてSDGsの実態においても(上位に位置している筈の人々や市民ら権利保持者が建前としてはSDGsを主導していくのが、望ましい姿であると考えたいが、やはり実態は大手建設企業らが勝手に主張する論理のもとSDGsが実態化され、推進されているのが現実と感じている)、現代の諸課題のガバナンスはマルチステークホルダー主義の考え方に浸食されている、という見方を意識することが大切ではないかと思っている。

「護憲+BBS」「 新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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映画「ほかげ」

2023-12-21 13:33:00 | 戦争・平和
クリスマス直前の12月20日、渋谷シアターフォーラムで映画「ほかげ」を観ました。
https://eiga.com/movie/99802/

戦後の焼け跡で廃屋の様な居酒屋に住む1人の女性。樹里が演じる彼女は売春をしながら何とか生活しています。そこに家族を失った1人の少年(塚尾桜雅)が来て一緒に暮らすようになります。

この頃のこどもは、映画「ホタルの墓」にも描かれていた様に、大人が生きるのさえもままならない環境で、かっぱらいをしたり悪さをする邪魔な存在でした。

樹里と偶々訪れた元兵隊と少年で、疑似家族の様な日々が続きます。が、それも長くは続かず、元兵士が暴力的に樹里を犯そうとして、少年は花瓶で彼を殴り付け、元兵士は出て行きます。

やがて樹里も長い売春生活から性病に侵され、自分の変わりつつある姿を見せたくないのと、当時性病(梅毒?)は近付いただけで感染すると恐れられていたため、少年を廃屋から遠ざけます。

行き場を失った少年は以前から顔見知りだった、片腕を失った元兵士(森山未來)の下に身を寄せ、2人で旅に出ます。

森山未來のパートまではやや単調な描写が続いていましたが、それも食べる物もなくただ臥せっているしかない国民の姿だったのでしょう。

片腕の元兵士は飄々とした中にも恐ろしい程の恨み憎しみを持ち、ある男に対しある目的を遂げるために、少年が隠し持っている拳銃を使います。この場面が鳥肌が立つほど恐かったです。

樹里が居た廃屋という閉じた空間から確かに見えた戦争の記憶と戦後の荒れ果てた日本の姿、打ち捨てられ心を壊された人達が何とか生き延びようとして蠢く姿。食べる物も無く餓死するしかない人々。これが「戦後」も知れません。

上官に命令されればどんな酷い所業でも実行せざるを得ない兵士達、上官に命令を下し残酷な政策をした国の責任は、何故問われないのか。

この映画は、塚本晋也監督が幼い頃戦争で壊され傷付いた人々を目にして、その記憶から作った映画だと語っていました。私はこれ程静かで心に染み渡る反戦映画を観た事がありません。

この映画の特徴は、登場人物に名前が無い事。女、こども、片腕の無い男、とだけが分かり、お互いが名乗る事もありません。

最後は闇市を歩くこどもの行く先に希望はあるのか?最後の一発の銃声は何を意味しているのか?と、色々謎が残ります。

今もパレスチナ、ウクライナで起きている戦争。塚本監督は、インタビューで「人は追い詰められたら暴力への一歩を踏み越える事は簡単に出来る」と言っていました。

だとしたら、国家も追い詰められ、憎しみに満ちたら、「戦争」という暴力に支配された一歩を踏み越えてしまうのではないでしょうか。

何時も、犠牲になるのは幼い子達、お年寄り、障害者等、戦争では役に立たない人達。

映画館を出て冬枯れの公園を歩きながら、静かで平穏な地に身を置いている私も、世界で起きつつある戦争に心を痛めながら、世界中の「戦場では役に立たない人達」が何とか平穏に生きて行けたらと願わずにはいられませんでした。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
パンドラ
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「一国民として、どんな方向性の政権を望むか」

2023-12-20 14:53:48 | 政治
岸田内閣そして自民党の腐敗ぶりには呆れてしまいますが、その事を話すと「でも野党は頼りない」「民主党政権は酷かった」で、皆さん、話を終わらせようとします。

頼りない野党を育てる気が国民に無くては、「長期政権は腐敗する」ばかりでしょう。これを防ぐには、「こんなことをしていたら、政権交代だ!」の緊張感がある政治体制に持って行くしかないと思うのです。

山崎雅弘氏がこんな提案をしていました。ぜひご覧になってみて下さい。今すぐの実現性はありませんが、国民がこうした方向性つまり「政治理念と倫理観」を持つことが必要だと切に思います。

https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1736646547574788606

「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
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政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑について

2023-12-20 14:07:55 | 自民党政治
2023年も残すところ十日余り。今年を振り返ると、世界に広がる異常気象・大規模自然災害、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるガザ地区への無差別攻撃等、命に関わる深刻な状況が地球のあちこちで起き、また国内では、財政引き締め政策や防衛費大幅増等によって社会保障費は削減され、私たちの暮しは、円安・物価高とも相まって、苦しくなるばかりの一年でした。

そんな辛さの際立つ今年の暮れも押し迫った今になって、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が噴出。東京地検特捜部による本格的な捜索も始まり、日本の政治を根底から揺るがす騒ぎとなっています。

『自民党の派閥が開いた政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部は19日午前、最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)と「志帥会」(二階派)の事務所(いずれも東京都千代田区)に、政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)容疑で家宅捜索に入った。億単位の収入が政治資金収支報告書に記載されていないなどの疑いがあり、政権や党を揺るがす問題は刑事事件に発展した。
 特捜部は安倍派、二階派ともに派閥側の立件を視野に入れて会計責任者らの任意聴取を進めてきたが、指揮系統などの解明には事務所の強制捜査が必要と判断したとみられる。・・・』
朝日新聞12月19日10時02分
https://www.asahi.com/articles/ASRDL7QW7RDJUTIL013.html?iref=comtop_list_01

思い起こせば、10数年にわたり安倍氏が主導してきた自民党政治とは、「国民生活の軽視」「憲法の空洞化」などの「独り善がりの政治」であり、「嘘・隠蔽・改ざん」「旧統一教会との癒着」など、今回の「裏金問題」にも通じる「党利党略の政治」であり、更に、「学術会議」や「検察」など独立性が強く求められる組織への人事介入によって自らの支配下に於こうとする「強権政治」でした。

私の体験を思い返してみると、2017年に明るみにでた「森友問題」では、2019年に大阪地検が財務省職員らの不起訴を決定したのに対し、検察審査会が「不当」とする議決を出して、「(私も参加した)市民の会」が「厳正な再捜査を求める要望書」を提出しに「最高検察庁」に赴いたことがありました。しかし、当時はほとんど門前払いの扱いで、大阪地検の不起訴が覆ることはなく、検察は官邸と一体化した国家権力そのものであると思い知らされたものです。

安倍氏亡きあとの今だったら、どうなっていたでしょう。

12月18日の毎日新聞コラム「風知草」の中で、山田孝男特別編集委員は、「安倍政権と司法の攻防史」というタイトルで、これまでの安倍政権が試みてきた司法への介入とその影響、それに対する検察の必死の抵抗、そして、安倍氏亡きあとの今と今後の動きについての見立てを書いています。

『裏金疑惑に検察のメスが入り、改めて政治資金の規正強化が問われている。
 捜査の背景に政官関係の変質がある。安倍長期政権時代、政治主導が金看板の官邸は、官僚(検察官も司法官僚)の言いなりにはなるまいとして争った。
 勝者は、たいてい安倍晋三首相(当時)だった。いまも安倍政権が続いていれば、検察は安倍派に手を出せなかっただろう。岸田政権にはコワモテの官房長官も副長官もいない。・・・』
https://mainichi.jp/articles/20231218/ddm/002/070/076000c

山田氏はコラムの最後に、
『政治資金規正法改正は重要だが、危機は法律のレベルを超えている。「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉純一郎はいない。野党への期待はさらに低い。
 パー券をめぐる検察と派閥の攻防から何が生まれるのか。派閥ボスの談合政治をぶっ壊す強力な新風を吹かせてほしい』と結んでいます。

確かに、今回の東京地検の動きは評価されるべきだし、最後まで頑張ってモラルなき自民党政治に風穴をあけてもらいたいという期待も大いにあります。

しかし、一方、主権者である私たち自身も、ここ数年、「政治不信」の言葉に逃げて、政治を変えることを諦めてきたのではないかと、自らに問う必要もありそうです。

私たちは、今回の成り行きを傍観者として見守るだけでなく、(「期待が薄い」と山田氏のいう)野党議員らの頑張りを支え、励まし、彼らとも手を携えて、「国民の命と暮らし」を第一義に考える真っ当な政治を再構築する一端を、微力ながら担いたい。その決意を胸に、新たな年を迎えたいと思います。

「護憲+コラム」より
笹井明子
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大谷翔平の活躍、FA、移籍、新契約から 妄想、構想、期待も膨らむ

2023-12-13 10:29:07 | マスコミ報道
今年は春から、大谷翔平には、WBC前から、中から、ハラハラドキドキ含め、日本チームに驚かされた。そして念願の優勝!ぐっと夢が膨らんだ。

メジャーリーグベースボール(MLB)が始まってからも、投打に大活躍。走力も非凡だった。個人成績では、投打2刀流。充実し、ホームラン44号、ア・リーグホームラン王、MVP。投手成績も10勝を挙げた。最終的には、肘を痛めゲームから脱落したけれども。
 
エンゼルスからFAとなり、去就が注目されていた。

「大谷翔平と10年契約」大リーグ ドジャースが正式発表 (NHK NEWS WEB 12月12日 12時13分)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231212/k10014285631000.html
 
〇大リーグのドジャースは11日、大谷翔平選手と10年契約を結んだと正式に発表しました。大谷選手は球団を通じてコメントを発表し「いくつものワールドシリーズの優勝パレードをこの街にもたらしたい」とファンに向けて決意を述べました。
 ドジャースは11日、大谷選手と10年契約を結んだことを発表し、この中で大谷選手のコメントを紹介しました。
 大谷選手は「ドジャースのファンの皆さま、私を歓迎して頂きありがとうございます。あなた方ファンとドジャース、そして私は100%同じ目標を分かち合っていると言えます。それはいくつものワールドシリーズの優勝パレードをロサンゼルスの街にもたらすことです」とつづり、悲願のワールドシリーズ優勝に向けた強い決意を示しました。
 背番号はエンジェルス時代と同じ「17」で、球団によりますと、日本生まれの選手がドジャースに入団するのは沖縄生まれで母親が日本人のロバーツ監督を含めると大谷選手で11人目になるということです。
 一方、今シーズンまで大谷選手が6シーズンを過ごしたエンジェルスは球団のSNSを更新し、大谷選手のいくつもの写真を添えて「この6シーズン、本当にありがとう!」と感謝のメッセージを贈りました。

☆異例の契約の仕組みは
大谷選手が今後10年間、実際に受け取る年俸は200万ドルになる一方で、アメリカのメディアはドジャースの年俸総額の中で大谷選手の年俸は4600万ドルとして計上されるとしています。
その仕組みを説明します。
(※参照:サンスポ 12/11 12:59)https://www.sanspo.com/article/20231211-EGFVDUUKSNIVXHS67BBJJCGPOQ/

 大リーグ機構と選手会が結んだ労使協定によりますと、チームの年俸総額を計算する際、それぞれの選手の年俸は契約の総額を年数で割った1年当たりの平均年俸で計算されます。
 大谷選手の場合、後払いになる6億8000万ドル分の支払いは2034年から10年間、無利子で発生しますが、アメリカ経済のインフレ率を計算に入れると現在の6億8000万ドルは2034年以降では4億4000万ドル分の価値になります。
 そのため、これを10年で割った年平均4400万ドルに、実際に支払われる年俸200万ドルを足した合計4600万ドルが、大谷選手の今後10年の平均年俸としてドジャースの年俸総額の中に組み込まれるということです。
 各球団は大リーグ契約の選手40人の年俸総額が2億3700万ドル(およそ343億円)の基準額を超えると「ぜいたく税」と呼ばれる課徴金を大リーグ機構に支払います。
 資金力が豊富なドジャースはたびたび基準額を超えてぜいたく税を支払っていますが、ぜいたく税は基準額を大きく超えるほど税率が上がるため、なるべく低く抑えたいのが実情です。
 スター選手3人分以上にもなる大谷選手の年俸7000万ドルがそのまま計上されれば年俸総額を大きく圧迫しますが、今回、後払いを選択することで書類上は4600万ドルに軽減されるため、その結果、ドジャースは毎年2400万ドル分(およそ34億8000万円)をほかの選手を獲得するための補強費にまわすことができるという計算です。
 さらに、10年後には大谷選手に対して毎年6800万ドルの支払いが始まるものの、この10年間は実際にドジャースが大谷選手に支払うのは毎年200万ドルのため、補強のためにさらに資金を投入することも可能だという指摘もあります。

 ☆ドジャース 大谷翔平との契約 近く正式発表へ 40人枠に空きで (NHK NEWS WEB 12月12日 11時32分)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231212/k10014285541000.html
 ☆大谷翔平 “7億ドル契約 約97%後払いの見込みに” 米メディア (NHK NEWS WEB12月12日 10時16分)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231212/k10014285491000.html

以下、◎動画2つからは、想像を逞しくされるが、それも楽しい!爾後のお話を膨らせたものなのか、事前の構想に基づくものなのか、興味は尽きない。毎年、ペナントを争う、日本のそれとは相当違う?大谷も含め、選手らもチーム作りに参加、貢献しているかのようだ。ぜいたく税も大きな役割を果たしている?
 ☆大谷翔平がドジャース移籍で首脳陣に”山本由伸”獲得を命じた全貌がヤバい!勝ちにこだわる大谷翔平の本音に一同驚愕!【プロ野球】
https://www.youtube.com/watch?v=2xs4bExRknY
 ☆「100年に1人の選手と言われる理由」大谷翔平の『ストイック伝説』【大谷翔平物語】【海外の反応】
https://www.youtube.com/watch?v=uyFZwRo3W7M

「護憲+コラム」より
蔵龍隠士
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『パレスチナに平和を!日本政府は停戦を実現させろ! #1210国会正門前大行動 』

2023-12-09 21:31:14 | イベント情報
『パレスチナに平和を!日本政府は停戦を実現させろ! #1210国会正門前大行動 』
#1210全国一斉アクション #FreeGaza

攻撃の即時中止!
イスラエルはガザへの軍事攻撃を止めろ!
国際法と国連決議違反の占領と入植をやめろ!

日時:12月10日(日)13:00~
場所:国会議事堂正門前
呼びかけ:パレスチナに平和を!緊急行動
http://sogakari.com/?p=7054

***

束の間の休戦が終わり、私たちの願いも空しく、イスラエルによるガザ地区への攻撃が再開され、再び多くのパレスチナの人々の命が奪われる事態になっています。
こんなことが許されて良いはずがありません。
日本でも連日全国各地で抗議行動が行われていますが、明日の全国一斉アクションの一環、「国会前大行動」に、これまで以上に大勢の人が参加することによって、イスラエルによるジェノサイドへの抗議と、「停戦を!」の強い願いを発信したいと思います。

皆さん、ご都合があえば、是非参加しましょう!

「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子
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世界沸騰時代に対処するキーワード(2)AGRA対AFSA

2023-12-05 09:34:48 | 環境問題
食と農(食糧問題及び農業問題を全体として捉える場合に食農という言い方がある。以降可能な限り食農を使ってみたい)のシステムに関する世界の潮流をまず捉えてみたい。そして、その潮流が世界沸騰時代という今の状況に合致した適切な流れなのかどうかを考えてみたい、と思い調べております。

そんな考えで、前回はC3植物とC4植物というキーワードを取り出し、現在の世界の食農システムの潮流が妥当かどうかを判断するキーワードの1つを提示しました。

今回はアフリカの食農システムに興味があり調べていく過程で、興味深い別のキーワードの存在が出てきましたので紹介したいと思います。「AGRA」と「AFSA」になります。

AGRAとAFSAはいずれもアフリカ大陸における、それぞれの食農システムの普及を目指している組織になります。ただし、AGRAは世界のアグリビジネス業界の提供する科学技術を採用し、そして推進することでアグリビジネスの巨大企業からの支援と後援を受けており、その運用資金は世界の慈善団体(例えばロックフェラー財団やビル・メリンダゲーツ財団)から受けており、その技術力と資金力からアフリカ各国の政府にAGRAの食農システムを採用させる力を持っており、一方のAFSAはこうした支援や後援を現在はほぼ受けることが出来ていない、世界の潮流の脇に置かれた組織だというのが今の現実の状況と思われます。

しかしながら、AGRA とAFSAという2つの組織の活動を調べていくと、2つの組織の動向が、単にアフリカ大陸に留まらない、世界の食農システムの現在と今後の行方を考えていく上で非常に参考になる思想がそれぞれに含まれている、と感じております。

前回のC3植物とC4植物と同様に、今回もAGRAとAFSAという二つの組織を観察していくことで、世界が目指すべき食農システムと、その流れが世界沸騰時代に適っているのかを考える上での参考材料になればと思っております。

結論的にいうと、種子ビジネス・合成肥料・合成農薬販売等の多国籍巨大アグリビジネス事業体の利益が優先的に確保され、そして単一品種栽培の効率化を追求し、規模の拡大を目指すAGRA型システムだけが繁栄している現状を肯定するのでなく、家族労働も含めた小規模事業者のその土地その土地に合わせた自主性・自律性が尊重されるAFSAシステムもが共存する食農システムが構築され、世界から支持を受けるようなことが望ましく、その方向が我々の取るべき道だと考えております。即ち、いずれか一方に偏った食農システムの採用は正解ではない、という考えであります。

私自身は主流になり得ていないAFSA側に身を置きたい気持ちがあるものの、出来る限り、バランスをとりながら話を進めてみたい。

まずAGRAを紹介する。

AGRAの正式名称は、緑の革命アフリカ同盟(Alliance for a Green Revolution in Africa)。
彼らのホームページ中の「我々について」に記載されている内容は次のとおりである。

AGRAはアフリカが主導する組織であり、小規模農家の収入が増え、生活が改善され、そして食料の安全確保の向上に役立つ農業の革新化を図ることに焦点を合わせている組織です。
アフリカの農民らが、直面する環境上のそして農業上の課題に関してアフリカに特有の解決策を求めていることをAGRAは心得ています。AGRAが提供する解決策により、生産拡大が持続可能な形で達成され、そして急激に拡張している農業市場への接続性が向上されることが期待できます。簡単に言うと、AGRAの使命というものは、小規模農家の生活を、そして生存をかけた孤独な戦いの状況から繁栄発展するビジネスへと転換させることであります。
2006年以降、AGRAはパートナーら、各国政府、非政府組織、民間企業体やその他多くの組織機関と連携し活動してきています。そして小規模農家や先住アフリカ農業事業体に対して有効性が実証されている一連の解決策を提供してきています。AGRAは小規模農家を第一に考えており、農業の革新なしには如何なる国も低収入状況から中程度収入状況の国への発展はあり得ないと考えています。

以上が、AGRAのホームページにおける自己紹介です。表面上はAFSAの理念を意識し、取り入れながら存在感の確保を試みているが、利益関与団体の意向を底流では保持した文言と見えます。

繰り返すが、AGRAは、多国籍化学肥料・農薬企業・種子ビジネス企業等からの後援を受け、国際的慈善団体からは資金支援を受け、そしてAGRAの農業システムは行政から優先的に採用され、世界的に主流と認知されている組織であるということが大きな特徴であり、その推進するシステムは、以前に紹介したメキシコの研究所の矮生コムギ(背たけが低い)の品種とフィリピンの研究所の矮生コメの品種という新しい多収量品種の単一栽培をアジアと中米に広めた1960~1980年代の所謂「緑の革命Green Revolution(GR)」システムを、前回のGR拡大路線に乗り損ねたと見られるアフリカに、2006年以降から適用・推進することを念頭に置いた組織だ、ということである。

自身が美辞麗句で飾るAGRAのホームページの情報とは異なる、別の立場の人々が見るAGRAについての情報を次に紹介してみたい。

Tufts大学のTimothy A.Wise氏による「間違った約束:緑の革命アフリカ同盟(False Promises:The Alliance for a Green Revolution in Africa)」の記事がそれである。この記事は題名からわかる通りAGRAに批判的な立場からの見かた・歴史観になります。
更に興味のある方はWise氏の論文「Failing Africa's Farmers:An Impact Assessment of the Alliance for a Green Revolution in Africa」2020年を参照することをお勧めします。

以下に簡単にWise氏の論旨を拾って紹介します。

ビルとメリンダ・ゲーツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation:以下BMGFと略す)及びロックフェラー財団が2006年にAGRAの設立に着手。
多国籍種子企業が販売する高収量(矮生)種子や合成肥料及び合成殺虫剤等農薬を用い、そして灌漑-多水農耕が必要な米・小麦等の単一品種栽培を特徴とする緑の革命(GR)型農耕システムをアフリカ大陸に導入することを目的とする組織の設立である。
そしてAGRAが推進するシステムが、アフリカに存在する飢餓と貧困の削減達成に貢献できる、と主張している。

AGRAは様々なプロジェクトに投資を行っており、そしてアフリカ各国政府にロビー活動(多国籍巨大アグリビジネス団体の力を背景とする)を行い各国政府がAGRA型GR技術を採用することを推進し、アフリカ大陸各国家の食農政策の推進と市場の構造改善を達成する手助けを行っている。
AGRAは発足以来、10億ドルに近い出資・寄付金を主にBMGFから受けており、BMGF以外にはアメリカ、英国、ドイツ等もある。

AGRAは5億ドル以上の助成金をアフリカ農業の現代化を目指して行っている。
そしてアフリカ各国政府は主として、「作物栽培向け投入資材(農薬や肥料や種子に相当する)購入資金助成金プログラム(the form of input subsidy programmes, FISPs)」という形で獲得した助成金を使用している。即ち、農家はハイブリット種子を購入し、合成肥料や合成農薬の力を借りて緑の革命型農業システムを行い、それにより農家の収入と生活の改善及び生産性の向上を図ろうというわけである。

AGRAの初代代表には前国連事務総長のアナン氏が就任しており、その主導のもとAGRAは重点対象国を13カ国に設定して、その内10カ国が事実FISPsを採用している。
AGRAが当初目標としたミッションが2008年年次報告書(2008 annual report)に記されており、2020年までにアフリカの2000万の小規模農家の収入の倍増とアフリカ20カ国の食料不安・栄養不足を半減させることとしていた。

AGRAが主導するシステムの実績は次のようである。
・栄養不足の改善:3ヶ国は15年にわたり改善がみられる。ザンビア(2%改善)、エチオピア(8%改善)ガーナ(36%改善)。反対にケニア(44%の悪化)、ナイジェリア(247%の悪化)。
即ち、過去15年のAGRA型システムの取り組みで全体としては、栄養不足は逆に50%悪化したという。AGRAの目標は完全に破たんしていると言える結果なのである。
・2000万の小規模農家の収入アップ目標:この目標も達成されていない。巨大アグリビジネス企業の利益は常に確保される(それが保証されるシステムであるが故である)ものの小規模農家の収入アップに繋がらない理由は、一つにAGRA型のシステムでは時間と共に土壌の劣化が起こり、生産性の悪化が付随することによるとされている。
よってAGRAは2020年6月に説明なしでこれら目標をホームページから削除しているのが実態である。

このWise氏の提供している情報の中でAGRAの本質を示すものは次の点だろう。
1.2006年ビルとメリンダ・ゲーツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation,BMGF)とロックフェラー財団がAGRAの設立を主導。そして10億ドルに近い出資・寄付金が主にBMGFからのものだったこと。
2.AGRAは5億ドル以上の助成金を、アフリカ農業の現代化達成を目指して行っている。
アフリカ各国政府は獲得した助成金を使用して「作物栽培向け投入資材購入向けの助成金プログラム」を提示。農家がGR型農業のハイブリット種子や合成肥料の購入をするよう誘導する。各国政府に対する多国籍アグロビジネス事業体からのロビー活動により、13カ国中10カ国でFISPsが採用されているというのが実態である。
3.各国政府にFISPsを採用させて、GR型農業行政を行うよう誘導したのが前国連総長だった人物でありAGRA初代代表だったという点も重要なことである。
4.BMGFやロックフェラー財団がバックアップし、種子企業や大手合成肥料会社・農薬企業・農業機械企業といった多国籍企業の資本力・事業化力の後援があり、地元各国政府の思惑が重なった形で、アフリカ大陸の食と農業のガバナンスはAGRAが思い描く方向に進んでいるという実態が厳然と存在している。

即ち、アフリカに留まらずに世界の食農システムのガバナンスを支配しているのはAGRA的工業型農業システムであり、これが現在の主流の体制と間違いなく言える状況である、とも言えるのではないかと見ている。

次にAFSAについて、説明する。

AFSAとは、食料主権アフリカ同盟(Alliance for Food Sovereignty in Africa、AFSA)を指す。
同様に先ずはAFSAホームページの「我々について」を見てみたい。

AFSAはアフリカの小規模農家・牧畜民・漁民・先住民・信仰共同体・消費者・女性そして若者らを統合し、統一して食料主権を声高に訴えることを目指している。

そしてFAO(世界食糧農業機関)がホームページでAFSAを紹介している。それによると、AFSAは2008年に趣旨を共有する関係者らが構想を持ち、2011年の南ア・ダーバンにおける国連気候変動に関する枠組み会合(the UN Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)のCOP17において発足している。発足時の報告において、食料主権主義が地球を冷却する力があり、世界の食を改善し、そして地球環境を再生する力を持つと主張されている。
即ち、AFSAはアフリカにおける食料主権とアグロエコロジー(agroecology)確立のため闘っている様々な市民活動家らの広範な同盟である。同盟に加わっているのは、農民組織団体・NGOネットワーク・専門家NGO団体・消費者運動団体・AFSAの考えに共鳴する国際組織団体及び個人らであり、小規模農家・牧畜民・狩猟採集者ら・先住民の人々らを代表するものである。
AFSAの重要な目標は国の政策に影響を及ぼすこと、そして食料主権に向けてのアフリカが提示する解決策を推進することであるとしている。

アフリカの農民を組織化しネットワーク化するための汎アフリカプラットホームである。
そして共同体の権利・家族型農業・伝統として継承されている農業知識体系の推進そして環境及び天然資源の管理運営等をアフリカ農業政策へと昇華していくように声を強めていくことがAFSAの目標だとしている。

しかし、その実態及び実績は、やはり主流からは脇に置かれた存在という面はぬぐいきれない状況であろう。AGRAの背後の多国籍アグリビジネス巨大企業体組織・国際慈善団体のバックアップとそれになびく地元各国政府の存在という総合力は侮ることはできない力である。

ここにおいて前国連総長がアフリカの食農システムの改善向上を目指す考えを持った時に、多国籍アグリビジネス巨大企業体組織のGR型システムだけを念頭に置く構想だけでなく、AFSA型のシステムの構築と確立も重要だとする構想を持てなかった判断力と見識の不足が残念である。多面的な視野を持って動けば、例えばBMGF等の国際慈善団体基金の投入もバランスの取れたものになっていたのではないかと思う。

かかる現状の課題からAFSAはBMGFも含むAGRAへの出資団体に公開書簡を送っている。その内容を記しておきたい。

AFSAの35の組織ならびに40カ国174に及ぶ団体からの後援を背景に、AFSAはAGRAを支援する団体に対し支援の停止を要望する。そしてアフリカ人が主導するAgroecologyやその他の低い投入物量(合成肥料や合成農業薬剤の使用量の削減化を目指す)を特徴とする農耕システムを支援するように要請する。
アフリカ大陸最大の市民社会団体ネットワークであるAFSAは、2021年5月にAGRA支援団体に対し、AGRAが15年にわたり実施した工業型農業システムが数100万の小規模農家の収入拡大と食糧安全保障に貢献した、という確かな証拠があれば提示して欲しい旨の書簡を送っている。
これに対しわずかな回答はあるものの、信頼できる証拠の情報は提示されていない(2021年9月7日時点)。
AGRAの掲げる使命(生産性と収入を向上し、食料安全保障を改善するという使命)は明らかに破たんし実際にはアフリカ農民に対し広範な悪影響を及ぼしている。
約15年にわたり、10億ドル以上を推奨種子・化学肥料・農薬購入に費やすシステムを13のアフリカ諸国で展開し、その上、毎年10億ドルに及ぶ補助金制度をアフリカ諸国政府が提供するシステムをAGRAが展開したが、持続可能な形で収穫量・農家収入そして食料安全保障を改善するというAGRAの目標が達成されたという明確な証明は為されていない。
AGRAシステムに取りくんだ13カ国では栄養不足の割合が30%拡大し、主食作物の生産量が拡大した国においてさえ田園地域の貧困と飢餓状況の削減にはほとんど効果は出ていない。反対にAGRA推奨の品種の大量採用により、元々かかる地域の食料安全保障に役だっていた気候変動に強い作物が脇に追いやられるという弊害のみが残ったといえる。

AGRAが果たした悪影響に対する理由を挙げると、
1. 持続可能な生活システム、長期にわたる土壌肥沃性や気象等を犠牲にして、良策とは言えない化学的投入物(肥料と農薬)に高度に依存する単一品種栽培を追求している。
2. 高収量種子・肥料・農薬依存へと農民を誘導する戦略は、多国籍アグリビジネス事業体の提供する生産システムへの依存性を農家に植え付けることになる。しかもこのシステムは環境に悪影響を与えることで、気候変動に対する回復性を悪化させ、そして小規模農家の負債リスクを高進させる恐れがある。
3. AGRAはその財政力を梃子にしてアフリカ諸国の農業政策に介入している。そこではアフリカの飢餓と貧困対策は置き去りにされ、アフリカ農民と資源が収奪されるシステムが働いている。

AGRA現代表のKalibata博士が、開催が予定される国連食糧サミット(UN Food Systems Summit、UNFSS)に国連特別代表として参加し、AGRAのシステムを世界に提案し、世界を間違った方向に誘導する可能性が出てきている。このことが現在の我々が抱えている課題の一つであると捉えている。
世界の数百の組織・団体が、開催予定のUNFSSが多国籍企業の主導する工業型農業を世界に拡散する機会になるのでは、という懸念を表明している。
2021年6月500人に近い数のアフリカの各種団体の長がBMGFに書簡を送り、悪影響のある工業型農業への支援停止を要請している。そしてBMGFおよびその他の支援団体は、小規模農家の声を聞くよう求めている。
AFSAはこれらの書簡の内容を支持し、慈善団体が支援を決定する段階で、アフリカ人の声を聞くよう要望する。
世界は人道的に、環境的に、そして異常気象という危機に直面している。従って発展モデルを迅速に転換する必要がある。
アフリカの全ての農民は、それぞれの知識を共有し、科学者らと連携して低い投入量に基づく農業モデルを確立することが更なる望ましい結果を生むということを理解している。即ち農業生産の権利はアフリカ農民の手にあるべきだ、と考えている。
AFSAはBMGF及び他のAGRA支援団体がアフリカ全域にわたる農民の声(健全であり、持続可能であり、公正な食農を目指すシステムの構築、即ちAgroecologyに基づく食農システムの構築)に耳を傾けるよう要請する。

***

世界は主流側、体制側がアドバルーン的に方向を指し示し、その持てる資金力と技術開発力とそして腕力を用いて、その方向への動きを実態化させていくことで、動いていくものだ、とも言える。

まさしく進行中のCOP28で、温暖効果ガス排出削減の手段として、100カ国以上の支持を受け当然ながら再生可能エネルギーの拡大が上程されようとしている。そして20程の国(日本はこちらにも顔を出している)が、原発の3倍化の方針を上程する気配が感じられる。

このCOP28での突然の原発の動向は今後興味深い問題ですが、現時点ではあくまでこういう考え方もある位の受け取り方をする必要が我々市民側には求められると思っております。
事実、DeutcheWelleやAlJazeeraやPakistanDawnらの記事には、20程の国による原発の3倍化方針の情報は取り立ててスポットライトは当てられていない。例え紹介されている場合でも100カ国以上の支持の再生可能エネルギーの3倍化拡大策が強調され、そして原発の動きもある位の報道が現状です。
ここでも日本の報道の突出性がある意味興味深く、また気にかかる所です。

わき道にそれてしまいましたが、今回のテーマの底流として存在していると感じる資金力や腕力による世の潮流作りの功罪ということについて、今後焦点を当てていきたいと思っております。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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単純明快!アベノミクスの正体

2023-12-04 22:50:58 | 自民党政治
鬼籍に入った安倍晋三の功績に「アベノミクス」を掲げる人たちがいます。

それが、どんな人たちなのか。webで見つけた記事をご紹介します。
主張しているのは、立憲民主党・小沢一郎衆議院議員です。

◆小沢一郎議員、アベノミクス『破たん』をイラストで明快に解説/東京中日スポーツ
https://www.chunichi.co.jp/article/803222
◆アベノミクスの「当初説明」と「現在」わかりやすい図
https://www.chunichi.co.jp/article/803224

個人的には当初から「アベノミクス」はシロートの妄言と考えています。
企業の、経営の本質は「利益の追求」です。
そもそも、政府主導によって大企業・投資家が大儲けした後、中小企業へ(儲かる形)=(適正利潤、上乗せマージン)で仕事を発注すると思いますか?
賢い企業は儲けたお金を、さらなる先行投資・内部留保・役員報酬・株主分配に使います。利潤を追求して「株主(+社員)」へ分配するのは当然です。

もし、安倍政権(政府)が大企業に「十分儲けたのだから、下請け・孫請け企業から製品サービスを高めに買い取ってやれ」と指示・強制したら、それは資本主義でも自由経済でもなくなる。

だから、アベノミクスはアベノトモダチだけが潤う仕組みでした。

しかし、安倍晋三だけが悪いわけではありません。無恥で浅知恵な彼をヨイショし、そそのかし、アベノミクスを称賛した輩がいたのでしょう。
結果的として安倍晋三+オトモダチ(黒田総裁?、竹中平蔵?)は、あり得ない妄想を主導して国民を欺いたチョー悪オヤジたちです。

※意見には個人差があります。
私は安倍晋三個人に興味はありません。政治家だった彼を否定し、批判し続けます。

「新聞記事などの紹介」より
猫家五六助
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人間にも強化学習が必要だ

2023-12-03 20:00:31 | 社会問題
世界各地で戦争が勃発している。表向きにはSDGsなどを前面に押し出し、多様性の尊重やら地球環境への配慮を声高らかに叫びながら、実際にしていることは考え方や意見、立場が異なることを理由に同じ人間同士で攻撃し合い、人間以外の動植物の生態系を壊すことに他ならない。

持続可能(sustainable)な社会どころか、同じ種の生物同士で互いに攻撃し破壊しあう行為を続けていれば、未来の世代の人たちに荒廃した地球を手渡すことになる。

戦いに加担するのでも傍観するのでもなく、暴力行為と破壊活動による紛争解決を今すぐにやめるために人々は知恵を出し合い行動すべきだ。人間をはじめ生物の進化は漸進的なのかもしれない。しかし、前世紀に二度の世界大戦を経験した私たち人間は、いい加減に同じことを繰り返さないように過去の惨劇から学習する必要があるのではないか。

このような意見に対し、「どうして私たちが未来の人間のことまで考えなければいけないのだ」「先のことなどわからないから自分たちのことを考えれば十分ではないか」という反論がある。

直近であればともかく、遠い将来に地球がどうなるのかは誰にもわからず、明確な見通しは持てないだろう。しかし、まだ出会っていない将来を生きる人たちへの思いやり、今現在生き延びている自分たちが経験した苦しみを継承せず、少しでも生きやすい世界を手渡したいという意思があったからこそ、これまでも人間はこの地球上で生き延びてきたのではないか。

「未来を生きる人たちのことをなぜ私たちが考えなくてはいけないのか」とChatGPTに質問したところ、意外にも真っ当な内容の文章が生成された。以下に一部省略を挟みながら引用する。

未来の人間を考えることは、持続可能な社会を築き、地球環境を保護するために重要です。以下はその理由です:
1. 道徳的責任: 現代の行動が未来の世代に及ぼす影響を考えることは、倫理的な責任の一環です。私たちは地球上で共に生きている他の人々や将来の世代に対して、最善の選択をする責任があります。
2. 継続可能な発展: 無制限な資源の使用や環境への過剰な負荷は、将来の資源不足や環境破壊を招く可能性があります。未来の人々にも良好な生活環境を提供するためには、持続可能な発展の視点が必要です。
3. 環境保護: 地球環境の悪化は、気候変動や生態系の崩壊などさまざまな問題を引き起こします。これらの問題は未来の人々に深刻な影響を与える可能性があります。
4. 社会の安定: 現在の行動が社会的・経済的な不平等を引き起こし、未来の人々に対する公正な機会を奪う可能性があります。社会の安定と公正な発展を考えることは、未来への貢献です。
5. 技術と知識の進歩: 未来の人々は、現在の技術や知識の進歩を継承し、発展させる役割を果たします。彼らのために持続可能な社会や資源の有効活用を考えることは、持続可能な未来への礎を築くことになります。
未来を考えることは、単なる個人の利益だけでなく、人類全体の長期的な繁栄を追求する一環です。持続可能な選択と行動は、未来の人間の生活と環境に対して肯定的な影響を与える可能性が高まります。

上記の文章が生成されるということは、これまで機械学習してきた文にここに書かれたような主旨の人間によって編み出されたテクストが存在するということだ。そう考えれば今の世界にもまだ希望が持てるのかもしれない。人権尊重も環境保全もまだ十分に通用する概念なのだろう。

人類のこれからに一筋の光が見えたようだが、今を生きる人間はこれまでの経験から何も学んでいないようだ。

COP28においても、2050年までに原子力発電の設備容量を3倍にすることを目指す宣言に、日本が賛同したようだ。福島第一原発の事故もまだ終わったわけではなく、ましてや世界で最初に原爆による被害を受けた国が賛同する内容なのか。

事故が起きたらどうなるのかを身をもって理解しているはずなのに、何も学ぶことなく考え方にも変容がみられない。必死に学習すべきは人工知能よりもこの国の権力を持つ人間たちである。もはや、人工知能から学習したほうが良いのかもしれない。

「護憲+コラム」より
見習い期間
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