老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「ガザ地区停戦緊急行動」11/4

2023-10-31 10:23:08 | イベント情報
今朝(10/31)の東京新聞「本音のコラム」で鎌田慧さんが、「ガザ地区停戦緊急行動」の告知をしています。

詳細は以下のとおり。
***
『殺すな、ガザ地区停戦緊急行動』
11月4日(土)午後2時~
千代田区二番町 イスラエル大使館前
(地下鉄有楽町線麹町駅、6番出口徒歩1分)
呼び掛け人:
雨宮処凛、上野千鶴子、落合恵子、神田香織、佐高信、田中優子、永田浩三、前川喜平、鎌田慧
***

記事の中で、鎌田さんは、「遠く離れたアジアからの、かぼそい少数の声であっても、国際的にはつながっている。一日でもはやく殺し合いが止まれば、ひとりの子どもの命でも救えるかもしれない」と言っています。

日々流れてくる人々、とりわけ子供たちの痛ましい姿に、居た堪れない思いをしている私たちの、せめてもの意思表示として、参加されてはいかがでしょうか。

「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子
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弱いままで生きられる世界は実現するのか

2023-10-23 09:02:04 | 社会問題
時間と空間だけでなく、精神的にも遊びのない世の中だと感じるようになったのはいつからだろうか。
 
あくまでも個人の自由意志の範疇に属するはずの主体性や自主性までもが評価の対象とされ、誰かから常に見張られている感覚さえ生じる。常に評価されることによって、休むことも逃げることも容易にできなくなっている。常に努力することが求められ、評価にさらされている現状に息苦しさを感じずにはいられない。

一見すると「多様性」や「選択の自由」を掲げ、包括的な社会を作ろうとしているが、実際には体制の一員となり社会の役に立つことを目指している構図も昨今目にすることが多くなってきた。
 
保守と対峙し是々非々で意見を述べて対抗しているはずの人たちが、いつの間にか現状の体制に親和的になり、結果として社会の公共性や共同性を損なってしまう。そして、格差をも多様性や自由な選択の結果として容認し、生じた格差を拡大することに寄与してしまう。
 
かつては弱者の立場にいた人たちが、強者に断固として立ち向かうつもりでいたのに最終的に既存の市場や権力に取り込まれて広告塔のように使われる様子は、何度見ても耐え難いものである。

能力がなくても、エリートでなくても、権利が保障され最低限の生活ができる社会は実現するのだろうか。マイノリティ性を有していても社会に貢献できる人だけが仲間に入ることを認められる社会は、公共性を有する社会とは言えないはずだ。

市民を絶えず監視して評価しようとする者と距離を保ち、忖度することなく意見を伝えることが強く求められているように思える。他人の評価にさらされていないと感じている人ほど、無自覚のうちに評価者が望む行動をとっているようだ。そもそも、一方的に評価する/される構造をなくすことが目的ではなかったのか。

気が付いたら得体のしれないものに何もかも全てが管理されている世の中になってしまわないよう、抵抗し続ける必要がある。

「護憲+コラム」より
見習い期間
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「庶民に相談の必要は無い」と事業が始まり、「金儲け」の本音は隠し、夢を振りまき既成事実化に邁進し、傍観せざるを得ない庶民に大枚の金は求めるという不可思議さがある社会

2023-10-22 17:17:54 | TPP
「庶民に相談の必要は無い」と事業が始まり、「金儲け」の本音は隠し、夢を振りまき既成事実化に邁進し、傍観せざるを得ない庶民に大枚の金は求めるという不可思議さがある社会。

そんなことを考えさせられる報道が最近続いている。

一つは大阪万博に500億円を追加するという話題である(10月20日朝日新聞デジタル記事より)。これまでの1850億円から500億増の最大2350億円となる見通しを日本国際博覧会協会が正式発表し、各方面から批判が噴出、という内容である。

2020年ごろからのこの話題に関する、主な利害関係者の話を拾っておくと、
・日本国際博覧会協会 石毛博行事務総長
「1850億円(そもそも1850億円自体が2020年12月に当初の1250億円から600億円引き上げられていた)の範囲内で建設を行うミッションを与えられ努力してきたが、不充分ということで苦渋の決断をしてお願いしている」
・2020年12月1250億円が1850億円に拡大した当時の井上信治万博担当大臣
「新型コロナウイルス禍で負担を強いられている中だが、国民が盛り上がる万博にするのがわれわれの責任」
・政府と大阪府・市そして経済界の3者が均等に負担する図式の一当事者の吉村洋文知事は、2020年末の建設費拡大時点で「コストを上げるのはこれが最後」として当時は容認したが、今回は「説明は不充分。改めて質問し、回答を踏まえて判断したい」と発言している。
・推進団体である関西経済連合会松本正義会長
「以前から1850億円で足りるのか、と何度も言ってきた。協会は土壇場で1850億円では出来ないと言ってきた。負担する国民に対する説明が不足しているし、不誠実な態度だ」

もう一つの話題は冬季五輪を画策する札幌市長の発言である。

市長は、1964年東京五輪を我が国が成功して以降、複数回にわたり夏冬五輪で繋いできたオリンピック開催国という我が国の伝統(?)の火を消すことなく、冬季五輪開催を達成することで伝統を繋いでいきたい、等々とマスコミを利用して主張しているようだ。

この市長の主張は、表面的には「善きイメージの理念」を振りまいており一応は市民やスポーツ界の期待を背負った志のある発言であり、行動のように見えてしまう。かかる「善きイメージの理念」の正論と見えてしまう発言に対して、反論するのは勇気がいるし、そもそもおとな気ないのではと、尻込みしたくなる気分にもなるところである。

がしかし、開催が1年遅れ、しかもコロナ禍の混乱の中、そして以前の真夏をはるかに超える異常気象の最中にも関わらずに強行してしまった先の2020東京五輪の実体験(言うまでもなく当初予算をはるかに超えた形で行われていた)のことを思い出せば、「金儲けが主たる目的の」という裏に隠れた深い想いが当時の2020オリンピック招致活動にも働いていただろうし、今回の市長の発言の裏に隠されていると想像することは、容易なことであろう。

敢えて、これ以上は万博やオリンピック絡みの彼ら利害関係者らの発言には触れないが、こういう報道を読むにつけ、始めに記した考えに危機感を抱くものである。

繰り返すが、「庶民に相談する必要は無い」と事業が決まり、傍観せざるを得ない庶民に金は求める社会。「金儲けの為」という本音は隠し、夢は限りなく振りまき既成事実化に邁進し、やがて傍観させられていた庶民に対して、更に膨らみに膨らませた金を要求する社会。それが許されるという不可思議さがある社会。この課題を考えてみたい。

この問題を更に考えていく上で、興味深い一つの視点が、10月10日現代ビジネス掲載の[大阪・関西万博や東京オリンピックがうやむやに始まりグダグダなまま進む。。。「ダメな日本」の致命的な弱点]に述べられている。少し長くなるが現代ビジネスの記事を引用して慶応大学栗田氏の考えを紹介したい。

まずは「ダメな日本」にならないためには、として以下の点を挙げている。
(1) 誰かが何かを主張している場合、了解して受け入れる前に「その主張が論理的なモデルになっているか?入手できる現実のデータをきちんと用いて組み立てているか?」
 この部分で納得できなければ、その主張を信じるべきではない、とし、その上で検証可能なモデル分析をしている情報には興味を持ち、主張される結論が自分にとって大切と思えば、その主張に関連する書物や文献に当たって自らその真偽を判定する習慣を身につけることが、現代の情報氾濫時代に自分を守る上で大切と勧めている。
(2) 学者や研究者は自身の研究を専門学術誌に掲載を希望する時には、前段に必ずその分野の他の専門家の「事前査読」による関門が設定されているシステムが存在している。それに合格しない限り学術誌に掲載はされない仕組みが出来上がっている。
 一方、政府や地方公共団体が進める各種計画においては、事前の報告書作成は官僚らが依頼した当該分野の識者や専門家らが関与する。しかし出来上がった報告書を他の別の識者や専門家が内容の論理的妥当性を確認するといった計画実施前の「査読」に相当するシステムが存在していない、とされる。
 そして、事前査読制度が無い状況で、あえて他の研究者がそうしたチェックを自主的に行っても、学界内で評価されないという土壌が日本社会には存在しており、これが相当大きな問題・課題だと、栗田氏は指摘している。

それらを踏まえて、栗田氏は近年の万博やオリンピックの様子を次のように捉えている。
1. 収支のモデルが粗雑である。入場予定者人数や入場料単価設定が私企業の行うような幅を持たせての予測となっていない。
2. 誰を満足させるためのプロジェクトなのかが常に曖昧にされている。
3. 公共事業の常で業者の定価(言われるままの価格)で組み立てられている。即ち、必ず支出が大幅に膨らむシステムになっている。
4. 利害関係者の利益はシッカリと事前に確定・確保している。プロジェクトが成功しても失敗しても業者は必ずもうかる仕組みになっている。口銭利益の存在とその確保もされているのであろう。
5. 特に、スポーツと文化を背景のプロジェクトは関連利益団体や圧力団体の力が強く、またマスコミも基本的に後押しすることで、市民の疑念やサイレントマジョリティの反対意思を反映させる術もなく、あれよあれよという間に計画が既成事実化していき、そして実行されていく。

国民も国会議員も誰ひとり明確に賛成していないのに「日独伊三国同盟」が締結されてしまった、という日本の恐ろしい特質は今も変わっていないと思える、と指摘している。

もう一つの視点が、昨年(2022年1月25日付け)の東京新聞の「こちら特報部」に「五輪中毒」と題して、坂上康博一橋大教授が触れている。坂上氏もそこで「怖いのは招致が決まると、異論が封じられ、国際公約を錦の御旗に有無を言わせずに物事が進行してしまう」と五輪招致活動に前のめりになる我が国の体質を指摘している。

坂上氏によると、戦後主権回復の1952年に東京が立候補し、2021年2度目の東京大会が終わった9月までの69年4カ月の期間、未決定の現在の札幌市の活動を除いても、複数の都市が重なった時期を含めて延べ58年11カ月が招致や開催準備に費やされていた。東京・札幌・名古屋・長野・大阪がひっきりなしに運動しており、空白期間は最長でも1972年札幌五輪後の5年半程度としている。この状況は正に五輪に絡む動きが無いと済まない、という依存症や中毒症状と言える。

そして五輪中毒をもたらしている原因を、スポーツ界、開催都市、地元財界、政治家など複数の活動者の存在だとし、その活動者らが複合的に引き起こしているとしている。

複数の活動者らを突き動かす動因として、一旦招致が決まると、異論が封じられ、施設建設やインフラ整備、そのための立ち退きもスピーディに出来るという例外扱いが通用することを挙げ、この使い勝手の良さが中毒の要因の一つとしている。この五輪圧力が市民側の智恵や創意工夫を封殺し、思考停止状態を引き起こしている、と懸念を述べている。

一つは大阪万博に500億円を追加するという話題、ならびに、もう一つの話題の冬季五輪を画策する札幌市長の発言を基にして、日本の抱えている永く続く、深い致命的弱点そして中毒症状を見てきたが、栗田氏が指摘しているように計画が一方的に決められ、市民は当然のこと、計画検討作成に携わった専門家・識者とは別の専門家・識者すらも排除して計画が決められ、既成事実化が進められていく所に大きな問題が存在していると思う。

合わせてもう1点気になっていることがある。

それは、かかる案件の世の中での「見え方」、または別の言い方からすると我が国特有の「見せ方」もまた大きな課題であると思っている。

即ち、利害関係者らは、「金儲けの手段としての」万博、「金儲けの手段としての」オリンピックという本音を間違いなく常に心に抱いているだろう。しかし傍観させられている一般市民には、決してそのような「見え方」で捉えられないような仕組みも開催都市、地元財界、政治家など複数の活動者は合わせ作っているといえる。

反対に如何に「夢ある」「人類の進歩の印」等々の美辞麗句で塗り固め、表面上は一般市民には付け入る隙がない「見せ方」をも彼らは見事に行っているのである。彼らは奸智に長けている上に力を持っているのである。そして閣議決定される直前までは彼らは本音を隠し通し続けるのである。

そして閣議決定がされた後は、彼らは本音を隠す必要はなくなり、そして市民はそれまでの既定事実の積み重ねや国際公約という錦の御旗の前に、為す術なく予算の可能な限りの彼らの膨張作業を見つめるだけの存在になっているのである。

この悪しき連鎖のなかでは、我々には閉塞感が絶えずただよい、晴れることはない。そしてそれを困ったことだと嘆息をつく位が、取り得る我々の関の山の行動だったとも言える。しかも庶民には大枚の奉加帳が回されてくるのである。

残念ながらこの不可思議さは、今後も延々と続くだろうと容易に想像されるのである。

だが、この悪しき連鎖を断ち切れないものだろうか。

この悪しき連鎖を断ち切るには、閣議決定される前に、「金儲けの手段としての」や「金儲けが主たる目的の」という本音が必ず隠れ潜んでいるという認識を市民が常にハッキリと持つこと、それを意識した行動を組み立てていく習慣を市民が持つことが大切だ、と考えている。

更に過去の悪しき実体験を忘れないで持ち続けること、そして別の識者や専門家らの冷徹な査読システムを万博やオリンピックや他の公共事業の閣議決定以前にシステムとして組み込むという市民の智恵と力を持つこととが大切と考えている。

このシステムを上手く構築でき機能させることが出来れば、無駄だった「死に金」を「生き金」に替えて使っていくことが、次に考える必要のある事柄になる。

例えば放棄され半分死んでいる日本の森林に人の手を入れていく際の資金にも使いたいし、人新世時代を通じて世界平均以上に日本が排出してきた温暖効果ガスの結果、疲弊してしまっているグローバルサウスへの「Loss&Damage」対策資金向けの貢献費用に充てるも善しと思う。日本でも世界でも雇用の拡大に繋がるテーマと考える。

「生き金」の使い方の思索ほど楽しいことはないのでは、と思う。

「護憲+BBS」「 新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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“窮鼠猫を噛む”のことわざ

2023-10-16 10:43:19 | マスコミ報道
仕事場に山積した東京新聞。時間をつくり、少しずつ減らしている。今は2021年後半から2022年末の日付が入り混じった朝刊・夕刊を端折り読みしていると、ふと気づく。あの重大事件・事故はその後、どうなったのだろうか。

特に気になったのは「安倍元首相国葬の是非」「幹部を乗せた陸自ヘリの墜落」、この2案件。前者は確たる基準も十分な議論もないまま、コロナ禍の中で民意を無視して2.5億円の国費を注ぎ込んで強行された。その後、国葬に関する検証や基準作りはどうなったのか。安倍晋三や自民党の重鎮議員が統一教会と長年ズブズブの仲だった詳報や総括もされていない。安倍晋三を射殺した犯行は許されないが、犯人の心理は“窮鼠猫を噛む”だったように思う。

また、後者は墜落したヘリが当初行方不明で消息を絶った地点が宮古島周辺だったため、「中国(軍)に撃墜された」等の陰謀説が飛び交った。赴任した幹部の接待(遊覧飛行)だったとの疑惑もある。あり得ない海面上の低空飛行で陸自幹部8名が犠牲になった重大インシデントかつフライトレコーダーが回収されているにも関わらず、いまだ事故の真相が公表されていない。

それは日本のメディアがウクライナ紛争という第3次世界大戦に発展しかねない事案を優先してきた結果なのか。それともジャニー喜多川氏の性加害事案がネタにしやすいのか。さらにイスラエルが奇襲テロに遭った事案によって見過ごされてしまうのか・・・私には政府与党がそれらを隠れ蓑にし、メディアが忖度しているように思える。

さて、イスラエルがパレスチナ(ハマス)に急襲された事案は衝撃的だったためか、「イスラムのテロ組織がイスラエルの平和を奪った」と非難する声が大きい。

この事案だけみれば、テロによる民間人殺害は言語道断。パレスチナ勢力が悪(加害者)でイスラエルが正義(被害者)という見方になる。ユダヤ教の安息日に若者が歌い踊って楽しむイベントをハマス戦闘員が急襲し、200名以上の民間人を殺害したことを含めてイスラエル政府は激怒。圧倒的な武力でガザ地区を壊滅させる勢いで攻撃準備をしている。

しかし、問題はもっと複雑ではないのか。なぜ、ハマス(パレスチナ側)は2,000発以上のロケット弾を発射し、障壁を突破して多数のイスラエル人を殺害したのか。

イスラエルは長年、障壁と武力によってガザ地区の人や物資の出入りを制限してきた。それにより民間人の生活は困窮し、若者の6割が失業状態にあるという。彼らがイスラエルに抗議や抵抗をすれば圧倒的な武力で弾圧され、問答無用で銃殺される。つまり、イスラエルは必要以上にガザ住民を囲い込んで抑圧し、飼い殺しのように扱ってきた。ガザ地区が「天井のない監獄」と呼ばれる所以である。

そんな日常の傍ら、障壁から遠くないイスラエル側で若者たちがイベントを開き、歌い踊って自由と平和を満喫している。私にはパレスチナ側の怒りが頂点に達し、先の見えない復讐の連鎖が一気に爆発したように見えた。これも“窮鼠猫を噛む”。賢明なイスラエル政府は、それに気づかないのか。

かつて「命のビザ」を発行した外交官を輩出し、イスラエルの人々に感謝されている日本。今こそ、イスラエル政府へ「憎しみの連鎖を収める提言」ができないものだろうか。

「護憲+コラム」より
猫家五六助
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「世界で最初に飢えるのは日本」鈴木宣弘著

2023-10-10 16:15:38 | 社会問題
以前、名無しの探偵さんに「その1」「その2」と二回にわたってご紹介頂いた「世界で最初に飢えるのは日本」(鈴木宣弘著)を読みました。

名無しの探偵さんが書かれていた事の重複になるかも知れませんがお許しください。今のこの時期に良くこの本ご紹介くださいました。

日本の食料自給率は37パーセントと言われていますが、「種、エサ、肥料等を輸入に頼っている日本の真の自給率は11%しかない」と著者は言っています。

更に日本は、ここの所の円安で世界の穀物争奪戦に負けつつあるのです。ウクライナで戦争が起きてロシアが穀物輸出を制限したために(それ以外の理由もあるのでしょうが)パンやケーキ、小麦粉等の値段が日本でも上がりました。こんな風に食卓にあっという間に影響を及ぼすのです。

ここの所の「異常気象」が「通常気象」になってしまい、様々なリスクに見舞われ、穀物、牛・豚・鶏等のエサの争奪戦がアメリカ、カナダ、オーストラリアから輸入している国の間で起こっています。此等の国はEU諸国を含めて自国の食料はしっかり確保した上で輸出をしているそうです。アメリカは独自の食料戦略を持っていて、「食料は武器より安い武器」と言っているのです。

振り返って日本はどうでしょうか。

日本には「全国農業協同組合連合会」という組織があります。世界には国境を超えて活動する多国籍企業が有り、多国籍企業にとってはこの「全農」が目障りで、世界一の船積み施設を持っている「全農」の子会社を買収しょうとしました。農業組合のままでは「全農」を買収出来ないから「日米合同委員会」に働き掛けて。その決着は未だ付いていません。

「全農」は不祥事も起こし、「いっそ株式会社にしてしまえ!」という議論が多くなって来た時は、陰で何かが起きていると思った方が良いかも知れません。

嘗ては自民党の農水族、農林水産省、全中(農業中央組合中央会)で日本の農業政策を進めていたそうです。そのための弊害もありましたが。それが小選選挙区制に変わり、農地を持たない選挙区、農業の割合が低い選挙区が増え、農家の数も減り、票田としての価値が下がってしまったそうです。結果、日本の農業政策は財務省、経産省に牛耳られるようになり様々な歪みが生じているそうです。「金だけ今だけ自分だけ」の新自由主義的農業政策が日本の農業を破壊させるのです。

日本の政治家はアメリカの意向に逆らえません。逆らったらスキャンダルで失脚させられ政治生命を断たれる、と著者は言っています。何故農水省が力関係において負けてしまったかと言えば、「内閣人事局」が誕生し当時の官房長官の下、人事権を握られてしまったというのが大きいそうです。アメリカは日本の自給率を上げて輸入を抑える事を望んではいません。

でも、現在は各地で新しい食料自給率を上げる取り組みが起きているそうです。(「ママエンジェルス」という団体が母親達を中心とした消費者達の声を行政に働き掛け、生産者と消費者が一体となった食料供給に取り組む、等。)

著者は元農林水産省の官僚。日本の食糧事情については深謀遠慮しています。食の安全等についても知識が深く参考になります。

私は日常の生活では、安価な何処で作られたか分からない食料品を買うより、出来るだけ地産地消で作られた食品を買おうと思っています。小さな希望ではありますが、見逃さず耳を澄ませて行こうと思っています。食料自給率が脆弱な国に生きてる人間の一人としてこれからも見守っていきたいのです。

「護憲+BBS」「コラムの感想」より
パンドラ
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「未明の砦」(太田愛)

2023-10-09 09:45:05 | 民主主義・人権
世界的グローバル企業「ユシマ」の自働車工場で働く非正規の4人の若者達。彼等はテロを企てたとして「テロ等準備罪」を適用され、指名手配になる。

彼等は本当にテロを企だてていたのか?
それはグローバル企業、警察、政治家も絡んで巧妙に企てられた罠であり、濡れ衣だった。

彼等は指名手配される少し前、夏休みに自動車工場で本職の工員から彼が所有する千葉県の実家「夏の家」に招待される。
それが全ての始まりだった。

4人は海岸で遊び、個人文庫で様々な書籍を読み、今まで知らなかった世界と知識を取り込んで行く。
この「夏の家」の場面が、海と自然を背景に4人の生い立ちも絡めて青春群像劇になっている。

しかし夏の一時を過ごした4人を待っていたのは、「夏の家」に招待してくれ父のように慕っていた工員の過労死。
それも労災隠しのために何時間も医務室に放置されていた。

その時何があったのか?
事実を突き止めようとする4人は、本工の死を解明すると同時に、従業員を奴隷の様に働かせ人件費を削減しようとするグローバル企業の実態を掴む。

4人は新しい労働組合を作り闘いを挑む。自分達は人間であるという尊厳を掛けて。 
彼等の行動に賛同した本工、季節工、派遣労働者達が次々と集まってくる。今まで「分断して統治せよ」と言われバラバラだった人達が。

彼等の周囲に居る大人達、文庫の姉さんと呼ばれる腹を括った老女、この事件には裏があると独自の調査を進める所轄の平刑事、ユニオンの老活動家、腐った政治家を葬るために動く官僚、過去の自分にけりを付ける為に通報する警察官僚。
様々な人達の矜持、怒り、思惑、苦しみが絡み合い、結果として4人を助ける事になる。

果たして4人は、グローバル企業、国家権力、公安機構から逃げ切る事が出来るのか。 
 
現実の世界でも、「共謀罪」+「特定秘密保護法」が始動されたら恐ろしい事になる。この小説の様にターゲットと見なした人達をマスコミ、SNSを走狗して「恐ろしいテロ集団」というイメージを作り流布させるだろう。社会はマスコミも含めて「警察に事情徴収された」というだけで犯罪者扱いする。 
 
この小説の巻末に、もの凄い量の書籍が資料として記載されていた。太田愛の並々ならぬ覚悟と決意を感じた。

以前、「共謀罪」が成立しようとした時、ある年配の男性が「法律が出来ても乱用できるはずがない。騒乱罪だって適用されたのは1件だけだった」と言っていた。

今ならなら分かる。「騒乱罪」が過去に1件しか適用されなかったのは偶然ではない。まだ反対する人達が声をあげ為政者やその仲間達が慎重に成らざるを得なかったという事を。

天下の妖刀を抜かせてはならない。それは私達国民が深い傷を負い、子どもや孫の世代まで悔いを残す事になるだろう。

現実の世界では、西武池袋本店の労組が61年振りのストライキを決行した。ストライキ採決の時は90%以上の採決で可決されたという。

SNSでは「ストライキなんて迷惑」「世界に恥ずかしい」等という心ない投稿も見られたが、「頑張って!」「ストライキは労働者の権利!」という意見も多数寄せられたという。ユニオンや他労組からも応援のメッセージが送られた。

これから小説の中の新労組や、現実の西武労組が、労働者や国民の希望の「砦」となるのか。夜が明けた先に何があるのか見守って行きたい。

「護憲+コラム」より
パンドラ
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「総力戦体制論」の批判的検証ー戦後史の「謎」を解く

2023-10-05 13:01:01 | 政治
1.はじめに

日本の戦後史において、最近の学説でも、他国と異なり日本では未だに「戦後史」と称していると、古関彰一氏は「集団的自衛権と安全保障」の中で述べている。

だが、ここに来て、政府自民党は、この終わらない「戦後」を終わらせる政治改革を断行してきた。安倍晋三元首相の「戦後レジームからの脱却」という宣言と、これまでの内閣法制局の通説を一蹴して、集団的自衛権の行使容認を閣議で決定した。安保関連法案は、この閣議決定に基づき国会審議で制定された。憲法で、集団的自衛権までは認められないという従来の政府見解を否定しての、閣議決定である。憲法と国会審議を無視する暴挙という非難は免れないことであった。

また、安倍政権以降も、戦後レジームを終わらせる政府の閣議決定と憲法規定に反する法案は矢継ぎ早に制定されている。任意とされているマイナンバーカードの「紐づけ」強制などである。

このような現在の岸田政権であるが、安倍元首相が宣言した「戦後レジームからの脱却」という時の「戦後」とはいかなる時代であり、いかなる政治運営の時代であったのか、実は敗戦直後という混乱を極めていた占領下でもあった時代であり、従来の「図式的な説明」では「謎」が多く、この図式に納得できる戦後世代の私たちとは思えない。この疑問がライトモチーフである。

2.戦後史の見直しが通説となっている現在

戦後改革の従来の通説を見直して、戦中の政治改革が戦後も継続したという見解が登場して、歴史学のパラダイム転換が成立している。

山之内靖氏の「総力戦体制」がその嚆矢であり、現代史の研究者も山之内説に依拠する見解が多くなっていて、今や通説の塗り替えが成立したような現在となっている。

ここでは、山之内説を端的に整理した山本義隆氏の「近代日本150年」(岩波新書)の見解を引用する。

「しかし、ソ連が崩壊した1990年代になって、第二次世界大戦とその後の歴史について、その機軸をファシズム体制に対する民主主義の勝利とする歴史観に変わり、総力戦体制による社会の構造的変動とその戦後への継承と見る歴史観が、勃勃と語られ始めた。占領軍による「全般の構造改革」なるものの存在が疑問視され始めたのである。その発端を山之内靖の一連の論稿に見ることが出来る。』として、その具体的な「総力戦体制」の内実を、次のように言及する。

『山之内に言う「総力戦体制」の下での「構造変動」の一例として、前章で見た1942年の食料管理制度の導入がある。戦後の(中略)農地改革が占領下の最大のものと言われている。しかし、小作制度は戦時下になされた食料管理制度の改革でもってすでに相当程度形骸化し、戦後の農地改革はなし崩しに準備されている。あるいは国民の健康管理制度がある。』

この後の記述で、山本義隆氏は、科学技術の面では、広重徹氏が既に指摘されているとして、次のように述べる。

「その内実を詳しく展開したのが「研究資金をはじめ今日の科学研究体制は、すべて戦争を本質的な契機として形成されてきた」と言い切った1972年の広重の「科学の社会史」であった。』

かくして、従来の戦後改革の図式的な見解は、その後の検証で、視座の転回を余儀なくされたのである。

戦前、戦中の戦争を契機にした「総力戦体制」の中で戦後政治に継承されていく改革がなされていったのであるが、その人民の平等を実現する「社会政策が軍事政権下でしかおこなえなかった日本の資本主義の問題性にある」(山本義隆氏)ということなのである。

3.以上の近・現代史の視座の転換を踏まえて、戦後史の「謎解き」を考えており、その具体的な検証は次回に譲る。

(次回は、総力戦体制論を批判的に検討して、現在の岸田政権が陥った憲法政治からの撤退とその問題点を、戦後政治の負の遺産として暴き出す提言を予定している。)

「護憲+コラム」より
名無しの探偵
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