老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

日本軍敗戦の歴史に学ぶ 無責任の構図(組織の腐敗)(1)

2019-08-31 10:29:30 | 戦争・平和
「日本兵の兵役生活」

BSで、インパール作戦の再放送があった。権威に胡坐をかいた組織。その中で権力を持った人間の腐敗堕落は、結局その組織で生きている多くの人間を悲劇に陥れる。その事を、如実に示したのが、インパール作戦の教訓である。

わたしの生家の隣に「インパール作戦」の生き残りのおじさんがいた。夏、半そでシャツになると、そのおじさんの腕に大きな弾痕の跡が見えた。渡河作戦の最中に撃たれたそうだ。わたしの戦争の記憶の原点におじさんの腕に残る傷跡がある。

もう一つ幼い時の戦争の記憶がある。母親の弟(叔父)が戦死しているのだが、その葬儀の記憶が鮮明に残っている。冬の凍てつくような寒さの中で行われた野辺送りの行列の中で、叔父の奥さんの悲しみ方が尋常ではなかった。母親から聞いたその理由は、遺骨だと手渡された箱には石が一つ入っていたそうだ。夫の骨すら帰ってこなかった事に耐えられなかったという話だ。

後年、蔵原惟繕監督の【執炎】という映画を見た時、この時の野辺送りの光景と重なり、胸がふさがれる思いをしたことを鮮明に覚えている。浅丘ルリ子主演。
※ 執炎  https://www.nikkatsu.com/movie/20829.html

えぐられたような傷跡、野辺送りの葬列。わたしにとって戦争の具体的記憶は、この二つに集約される。

わたしの生家は田舎の雑貨屋で、当時は近所のおじさん連中がよく出入りしていた。特に、煙草の葉を専売公社に納入する時期(備中葉として有名)は一年で一番の繁忙期だった。その時は、おじさん連中が親父とよく戦争中の話を店先でしていた。

一番多かったのが、軍隊の話だった。「あの軍曹が偉そうだった」。あの若い少尉が生意気だったので、「ふけ飯をくわしてやった」とか、「後先考えずに突撃、突撃と命令するので、皆が白けていたら、そいつが自分で行かざるを得なくなり、突撃と言いながら真っ先に突進して戦死した」などの話を良くしていた。

ちなみに「ふけ飯」とは、上級士官のご飯の上に頭のふけをかきむしってかけて食わせると言う事。偉そうで生意気な士官の多くは、この「ふけ飯」の洗礼を受けていた。

そして一番印象的だったのは、あの将校は「名誉の戦死」と言う事になっているが、あれは後ろから弾が飛んできて死んだんだ、と言う話だった。兵隊たちに憎まれている上級士官は、突撃している時、兵の誰かが後ろから士官を撃つケースがよくあったそうだ。

戦場では弾が飛び乱れているのだから、誰が撃ったか、どこから撃ったか分からない。戦死者から弾丸を取り出して鑑定にかけるなどという芸当ができるわけもない。結局、死んだら全て【名誉の戦死】になるというわけである。中には、風呂場で名誉の戦死を遂げた将校もかなりいたそうだ。

長々と兵士の話を書いたのには訳がある。軍隊という組織は、将校だけでは動かない。兵士がきちんと任務を果たして初めて軍隊として機能する。前線では、将校と兵士は文字通り「運命共同体」になる。

現在でもそうだが、会社の中で少し出世をすると異様に張り切ったり、威張ったり、パワハラまがいのいじめをしたりする人間がいる。面白いもので、少し出世をすると自分を「万能の神」のように錯覚するのであろう。

特に若い連中ほどその傾向が強い。年功序列制度が壊れた現在の会社制度では、出世しそこなった年配の連中は、自らの居場所をどう見つけるかで苦労しているだろう。

会社なら何とか自分を落ち着かせる場所を探せるかもわからないが、【軍隊】ではそうはいかない。【軍隊】は完全な階級社会。星一つ違えば、完全服従。そうしなければ、秩序は保たれない。上官は、文字通り「全能の神」になる。

このような組織になると、上官の人間性しだいで、部下の運命は左右される。上官が暴力的で問答無用の理不尽な性格の場合は最悪。その時々の気分次第で、訓練が異常にきつくなったり、些細な事でぶん殴られたり、部下は踏んだり蹴ったりの目にあわされる。

まあ、現在でも若い連中には、軍隊教育が必要だとのたまう連中の多くは、有無を言わさず「絶対服従」させる快感を夢見ている。そういう連中は、自分が有無を言わさず「服従」することは、大嫌いな人間が多い。人間「得手勝手」の典型である。

日本軍を考えるとき、上のような上官と兵の関係を基本に考えなければ、認識を間違う。

日本軍隊内部の実態を描いた小説では、野間宏の「真空地帯」が有名だが、軍隊経験者(将校ではなく兵士)の大半が、野間の書いた事を肯定するだろう。

吉田裕氏は、このような、アジア・太平洋戦争中の軍隊における兵士の実態を、数値に基づき、客観的な研究にまとめ上げている。

※吉田 裕(よしだ・ゆたか)
一橋大学大学院特任教授
専門は日本近現代軍事史、日本近現代政治史。主な著書に『昭和天皇の終戦史』『日本人の戦争観』『アジア・太平洋戦争』など

その中に衝撃的な数値があるので、紹介しておく。
・・・
支那駐屯歩兵第一連隊の部隊史を見てみよう 。(中略)日中戦争以降の全戦没者は、「戦没者名簿」によれば、2625人である。このうち (中略)1944年以降の戦没者は、敗戦後の死者も含めて戦死者=533人、戦病死者=1475人、合計2008人である。(後略)(支那駐屯歩兵第一連隊史)(出所:『日本軍兵士』)・・・・

ここで注目しなければならない数字。全戦没者の約76%⇒敗戦前1年に集中。その中、戦病死者数⇒約73%。⇒戦闘ではなく、日々の生活の中で死亡した。「名誉の戦死」という美名のもとで行われていた醜悪な真実である。

これは、もはや軍隊ではない。【軍隊】とは、戦う集団。その戦う集団が、日々の生活の中で7割強死亡している。この数字は、軍隊内での「医療施設・人員・食料・水・日常品など」が如何に欠乏していたか、そういう「兵站」に対する意識が如何に欠落していたかを示している。

吉田氏は、戦病死の中でもっとも多かったのが【飢餓】だと指摘している。

・・・日中戦争以降の軍人・軍属の戦没者数はすでに述べたように約230万人だが、餓死に関する藤原彰の先駆的研究は、このうち栄養失調による餓死者と、栄養失調に伴う体力の消耗の結果、マラリアなどに感染して病死した広義の餓死者の合計は、140万人(全体の61%)に達すると推定している*。(『餓死した英霊たち』)(出所:『日本軍兵士』)*:諸説あり・・・・・

・・・ 飢餓がさらに深刻になると、食糧強奪のための殺害、あるいは、人肉食のための殺害まで横行するようになった。(中略)元陸軍軍医中尉の山田淳一は、日本軍の第1の敵は米軍、第2の敵はフィリピン人のゲリラ部隊、そして第3の敵は「われわれが『ジャパンゲリラ』と呼んだ日本兵の一群だった」として、その第3の敵について次のように説明している。・・・・

・・・彼等は戦局がますます不利となり、食料がいよいよ窮乏を告げるに及んで、戦意を喪失して厭戦的となり守地を離脱していったのである。しかも、自らは食料収集の体力を未だ残しながらも、労せずして友軍他 部隊の食料の窃盗、横領、強奪を敢えてし、遂には殺人強盗、甚だしきに至っては屍肉さえも食らうに至った不逞、非人道的な一部の日本兵だった。(前掲、『比島派遣一軍医の奮戦記』)(出所:『日本軍兵士』)・・・

◎“心頭滅却すれば 火もまた涼し”

『織田勢に武田が攻め滅ぼされた時、禅僧快川が、火をかけられた甲斐の恵林寺山門上で、端坐焼死しようとする際に発した偈。また、唐の杜荀鶴の「夏日題悟空上人院」の詩中に同意の句がある。
無念無想の境地に至れば火さえ涼しく感じられる。どんな苦難に遇っても、その境涯を超越して心頭にとどめなければ、苦難を感じない意。』(広辞苑)

日本軍は、この種の「精神主義」で突っ走ったため、人間「腹が減ると獣になる」という簡単な摂理すら分かっていなかったようだ。人間の生存本能が他の動物と違うはずがない。生きるためには何でもするのが本能というもの。

「衣食足りて礼節を知る」と言う諺がある。【軍規】は、食べる事、飲むこと、住むところ、着るもの、を保証して初めて守らせることができる。上の状況を考えれば、特に戦争末期における日本軍の「軍規」の乱れは、相当ひどいものだと想像がつく。

慰安婦の問題にしろ、戦争中の日本兵の蛮行にしろ、真偽の論議が盛んだが、上記のような慢性的飢餓情況に置かれた兵士たちが、正常な精神状況を保つことができた、と考える方が、どうかしている。わたしは何が行われていたとしても驚かない。

人間死んでしまえば終わり。生きるためには何でもする。まして、軍というある種の「治外法権社会」に生きている連中である。平和な社会の倫理観や常識が通用するはずがない。何事もそこから考えなければ、真実を見誤る。

◎負傷者は自殺を強要される

・・・(前略)戦闘に敗れ戦線が急速に崩壊したときなどに、捕虜になるのを防止するため、自力で後退することのできない多数の傷病兵を軍医や衛生兵などが殺害する、あるいは彼らに自殺を促すことが常態化していったのである。

・・・・その最初の事例は、ガダルカナル島の戦いだろう。(中略)撤収作戦を実施して撤収は成功する。しかし、このとき、動くことのできない傷病兵の殺害が行われた。(中略)
視察するため、ブーゲンビル島エレベンタ泊地に到着していた参謀次長が、東京あて発信した報告電の一節に、次のような箇所がある。

当初より「ガ」島上陸総兵力の約30%は収容可能見込にして特別のものを除きては、ほとんど全部撤収しある状況なり (中略)
単独歩行不可能者は各隊とも最後まで現陣地に残置し、射撃可能者は射撃を以て敵を拒止し、敵至近距離に進撃せば自決する如く各人昇コウ錠[強い毒性を持つ殺菌剤]2錠宛を分配する。 これが撤収にあたっての患者処置の鉄則だったのである。
 (『ガダルカナル作戦の考察(1)』)・・・
    
つまり、すでに、7割の兵士が戦死・戦病死(その多くは餓死)し、3割の兵士が生存しているが、そのうち身動きのできない傷病兵は昇コウ錠で自殺させた上で、単独歩行の可能な者だけを撤退させる方針である。(出所:『日本軍兵士』)
・・・・・・

◎「生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(戦陣訓)

1941年に東条英機が軍人に軍規を徹底させるために示達した一節。⇒この結果、日本軍の間で捕虜になる事を拒否する思想が広まったとされる。これが後に沖縄戦などで民間人を巻き込んだ集団自決をする一因になったとされる。

もう忘れ去られているが、小沢一郎は、民主党の党首になった時、A級戦犯をどう思うか、という毎日新聞のインタビューに答えて以下のように答えた。

・・・「A級戦犯については「日本人に対し、捕虜になるなら死ねと言ったのに、自分たちは生きて捕虜になった。筋道が通らない。戦死者でもなく、靖国神社に祭られる資格がない」との認識を明らかにした。・・・・

ガダルカナル以降、どれほど多くの負傷者が自殺を強要されたか。特に、インパール作戦の死者の多くも自殺者である。

兵士たちには自殺を強要し、おのれはぬくぬくと生き残る。「徴兵制」で、行きたくもない軍隊に行かされ、家族と無理やり引き離され、生きたいのに死ぬことを強要される。こんな経験をした兵士たちが、そんなに簡単に戦争指導者を許せるはずがない。

小沢一郎の発言は、戦争で無惨に散った兵士たちの語れぬ思いを代弁している。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
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新酒を古い皮袋に盛る勿れ

2019-08-27 16:39:40 | 民主主義・人権
西日本新聞8月20日朝刊3面、「君主」引きずる象徴天皇 政治への意見 雄弁 側近、何度もいさめる 宮内庁長官「拝謁記」記事の中で、
・・・・
  ▽国民投票に驚き
  昭和天皇はこうした思い(再軍備)を吉田首相にも訴えようとしていた。しかし、戦後の憲法は「天皇は国政に関する権能を有しない」と規定。田島は許されざる意見だとして繰り返し戒めている。
...「侵略者が人間社会二ある以上...」と述べた3月11日には、即刻「それは禁句」とくぎを刺している。
  田島が憲法改正には国民投票が必要だと指摘すると、昭和天皇が「そんなものが入るのか」(3月8日)と驚きを見せた。天皇が当時、新憲法を十分に理解していなかった様子が浮かぶ。
・・・・
 
私の訴えたいことは、標記の通りである。新酒とは、国民主権の原理と日本国憲法。古い革袋とは、古い人材、戦前を引き摺る官僚制、その上にのる統治、権力制度。この右代表が昭和天皇、...安倍政権。これをトッカエなければならないという、現代化、当たり前の主張である。

思えば、我ら、面白い時代に生きた。敗戦後、焼け跡時代も知らず、貧しいながらも、直ぐに、米国による朝鮮戦争遂行に巡り合った。一部の者には、その自然の成り行きが見えていたのかもしれぬ。吉田茂や岸信介までもが、敗戦の責任を引き受けないで、権力に返り咲いた。勿論、一にも二にも、米軍の都合、思惑に適ったのであろう。
 
朝鮮半島の人にとっては、植民地支配に次ぐ、大災難、破壊と困苦だった。ところが、これが、日本にとっては、朝鮮特需となり、戦後の奇跡の復活を果たすことになった。米国側に就いたお陰で、旧財閥も復活し、富も蓄えた。
 
日韓基本条約を結び、韓国には、「漢江(ハンガン)の奇跡」を齎し、朴正煕・朴槿恵の栄華ももたらした。その後、民主化を果たし、金大中、文在寅政権に至る。
 
他方、北朝鮮(朝鮮人民共和国)は、米政府等から徹底的に除け者にされた。例外は、金大中、文在寅(ムン・ジェイン)政権位。ところが、その君主、人民、隅に置けなかった。除け者の地位を剥ぎ取ろうとしている。安倍自民党政権が、喉から手が出るほど欲しい?核開発を先に果たして。なんてこった!!

日本の戦後賠償問題、残る一つ、北朝鮮へのそれ。例の、日朝平壌宣言(損害賠償のお話)はあるものの、すんなり、賠償とか、経済協力とか、いかない雲行きに見える。非核化要求を絡め、どうなることか。長い道のりが、予見できる。

その間に、日本は、少子高齢化、人口減少を果たし、昔、『NO1』と誇ったのが、朝鮮半島に釣り合い、逆転するかも...戦争等、まさかのことがなければの話。 
 
実に面妖な、東アジア、アジア情勢、世界であることか。

ところで、敗戦前の、大日本帝国はどうだったか、下々はどうだったか。

昭和天皇は、世界恐慌後の、5.15事件(海軍若手将校ら)、2.26事件(陸軍若手将校ら)を拒絶し、断罪に処している。側近が殺されたから?『天皇親政』を待望した事件の下士官や兵卒は、東北出身の貧農の出だと聞くが。
 
当時、天皇家は、日本一の大地主だった。貴族等も、以下同文。その下に、物納の極貧の農民、水飲み百姓家族が喘いでいた...娘、女も売り飛ばし。
 
植民地支配(日本の生命線?)も肯定した侭、これらも反省しなかったのか。
 
そういう意味でも、昭和天皇は、戦前の人材は、人権も、国民主権も、三権分立も、当為をわきまえず、その後継人材も、以下同文に、手前勝手な振る舞いを反省しようとしていない。

替えるしかないのだ、根底から。不徹底では、国民主権・復権はできない。

 ◎添付
日本史資料室 昭和時代年表 https://history.gontawan.com/nenpyo-syowa.html
五・一五事件 - Wikipedia 
二・二六事件 - Wikipedia
農地改革 - Wikipedia ※農地開放 https://ja.wikipedia.org/wiki/農地改革
大韓民国の経済 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/大韓民国の経済
韓国を牛耳る“10大財閥”は日本が育てた  https://president.jp/articles/-/23376

「護憲+コラム」より
蔵龍隠士
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日本の援助 8億ドルの行方

2019-08-24 13:11:14 | 安全・外交
今日阿修羅を見ていたら、室井佑月のブログが載っていました。その中で韓国メディアが素晴らしい報道をしているのを紹介していました。

今、日本のメディアは、嫌韓、報道をすれば視聴率が稼げるとばかり、出所の明らかでない論拠で、韓国悪しの論陣を張っていますが、この韓国メディアの取材力、報道姿勢を少しは見習った方が良いと思います。

まずは動画を見てみてください。

https://www.facebook.com/275833026700169/videos/367581660804833/
https://www.facebook.com/275833026700169/videos/809121129482661/

※室井佑月「知人から観て! と、まわってきた韓国のニュース。衝撃的! みんな観てみて!」 
日本の援助 8億ドルを追跡したら?「経済援助」資金を横領した三菱、新日鉄、岸信介 
http://www.asyura2.com/19/senkyo264/msg/760.html

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
流水
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日韓関係危機 続報

2019-08-23 17:03:00 | 安全・外交
昨晩(8月22日)、重大なニュースが飛び込んだ。

韓国政府が日本と締結している軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると発表したのである。

※軍事情報包括保護協定(GSOMIA) ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8D%E4%BA%8B%E6%83%85%E5%A0%B1%E5%8C%85%E6%8B%AC%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E5%8D%94%E5%AE%9A

大方の予想は、そこまで韓国政府が踏み込むことはない、と考えていた。日本政府も米国への手前、韓国も、そこまでは出来ないと踏んでいたようだ。

解決策を模索するため、光復節で文大統領が演説で「話し合い」解決への呼びかけを行ったにもかかわらず、日本政府は何のアクションも起こさなかった。

日本政府は完全に韓国政府を舐めていたとしか思えない。【協定を延長しない】という韓国政府発表後の日本政府の狼狽ぶりに、如実に表れている。

そもそも、韓国をホワイト国から外した理由を「安全保障上の輸出管理だ」と強弁したのが、世耕経済産業大臣。一言で言えば、韓国を「安全保障上」信用できない国だと言ったに等しい。

となると、韓国を信用していない国と、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)のようなシビアな問題で、緊密な安全保障上の関係性を維持できないと韓国政府が考えても文句は言えない。(🔷先に、手を出したのは日本)

安全保障と経済の問題は別だと日本政府関係者は言っているようだが、そもそも元徴用工問題は、民事訴訟なのに、国の問題として問題にしたのは日本政府。(🔷ここも最初に手を出したのは日本)

前の投稿でも指摘したが、世耕経済産業大臣の当初の発言では、明らかにホワイト国外しと元徴用工問題をリンクさせていた。歴史問題と経済問題をリンクさせたのも日本。(🔷最初に手を出したのは日本)

あまりにお粗末。韓国と事を構えるのなら、もう少し理論武装をして、世界の誰もが納得できる論理を構築しなければならない。いい加減な「出たとこ勝負」の外交をするから、こんな大騒動になる。

日本はアメリカのポチA。韓国はポチB。俺達でもアメリカに逆らえないのに、ポチBが逆らえるはずがないと見くびるから、対処を間違う。

前の投稿でも指摘したが、世界は「地政学的大転換」の時代に入っている。今日の常識が明日の常識とはならない。対米従属で凝り固まった頭では、この大転換の時代を生き抜けない。

前の投稿ではあまり触れなかったが、ここで徴用工問題について多少触れておく。

※徴用工問題についての立場の相違

●日本政府の立場
徴用工の問題では1965年の日韓請求権協定を根拠に、日本に対する請求権は消滅している。

●日本の最高裁判所の判断
日本と中国との間の賠償関係等について外交保護権は放棄されたが、被害者個人の賠償請求権については、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する権能を失わせるにとどまる」としたものである(最高裁判所2007 年4 月27 日判決)。

●韓国大法院の判断
韓国大法院は、元徴用工の慰謝料請求権は日韓請求権協定の対象に含まれていないとして、その権利に関しては、韓国政府の外交保護権も被害者個人の賠償請求権もいずれも消滅していないとした。(2018年10月30日)。

これだけ見ても、日本政府が韓国政府や日本国民に対して説明している論拠があやふやである事は一目瞭然。日本の最高裁判所ですら、被害者個人の賠償請求権については【請求権を実体的に消滅させるまでを意味していない】としている。つまり、賠償請求権はある、と認めている。

ただし、賠償請求権に基づいて訴える権能はない。つまり、日本に対しては出来ないという意味。⇒韓国政府が対応しなさい、と言う事。

韓国大法院の判断は、そもそも元徴用工の慰謝料請求権は「日韓請求権協定」に含まれていない。だから、韓国政府の外交保護権(自国国民の権利を守る)も個人の賠償請求権も消滅していない。あるとしている。

日韓両国政府と日韓両国の最高裁判所(法的権威の象徴)との解釈の微妙な相違が今回の問題の根底にある。

ではこの種の問題を考えるとき、どう考えたら良いのか。闇雲に自国利益を主張するのではなく、国際法基準に照らして冷静に国益を主張するのが、国際性のある国家と考える必要がある。

※元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明

この問題を考えるとき、非常に参考になるのが、「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」である。
http://justice.skr.jp/statement.html

1、韓国大法院判決骨子

・・・本判決は、元徴用工の損害賠償請求権は、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配及び侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権であるとした。

その上で、このような請求権は、1965年に締結された「日本国と大韓民国との間の財産及び請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定」(以下「日韓請求権協定」という。)の対象外であるとして、韓国政府の外交保護権と元徴用工個人の損害賠償請求権のいずれも消滅していないと判示した。・・・

2、同判決に対する安倍総理の答弁⇒日本政府の立場

・・・本判決に対し,安倍首相は、本年10月30日の衆議院本会議において、元徴用工の個人賠償請求権は日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決している」とした上で、本判決は「国際法に照らしてあり得ない判断」であり、「毅然として対応していく」と答弁した。・・・

3、安倍首相答弁に対する弁護士有志の統一見解

・・・しかし、安倍首相の答弁は、下記のとおり、日韓請求権協定と国際法への正確な理解を欠いたものであるし、「毅然として対応」するだけでは元徴用工問題の真の解決を実現することはできない。 ・・・ 

明確に安倍首相や日本政府の立場を否定し、問題解決に向けて以下のような提言をしている。

◎徴用工問題の本質

(1)徴用工問題の本質は【人権問題】

・・・・本訴訟の原告である元徴用工は、賃金が支払われずに、感電死する危険があるなかで溶鉱炉にコークスを投入するなどの過酷で危険な労働を強いられていた。提供される食事もわずかで粗末なものであり、外出も許されず、逃亡を企てたとして体罰を加えられるなど極めて劣悪な環境に置かれていた。これは強制労働(ILO第29号条約)や奴隷制(1926年奴隷条約参照)に当たるものであり、重大な人権侵害であった。・・・

(2) 日韓請求権協定により個人請求権は消滅していない

「裁判における争点」

★元徴用工個人の新日鉄住金に対する賠償請求権が、日韓請求権協定2 条1 項の「完全かつ最終的に解決された」という条項により消滅したのかが重要な争点となった。
 
★【韓国大法院】の解釈
元徴用工の慰謝料請求権は日韓請求権協定の対象に含まれていないとして、その権利に関しては、韓国政府の外交保護権も被害者個人の賠償請求権もいずれも消滅していないと判示した。
 
★【日本の最高裁判所】の解釈
日本と中国との間の賠償関係等について、外交保護権は放棄されたが、被害者個人の賠償請求権については、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する権能を失わせるにとどまる」と判示している(最高裁判所2007 年4 月27 日判決)。この理は日韓請求権協定の「完全かつ最終的に解決」という文言についてもあてはまるとするのが最高裁判所及び日本政府の解釈である。

(3)被害者個人の救済を重視する国際人権法の進展に沿った判決である

・・・重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的に消滅させることはできないという考え方は、国際的には特異なものではなく、個人の人権侵害に対する効果的な救済を図ろうとしている国際人権法の進展に沿うものといえるのであり(世界人権宣言8条参照)、「国際法に照らしてあり得ない判断」であるということもできない。・・・・

(4)日韓両国が相互に非難しあうのではなく、本判決を機に根本的な解決を行うべきである

★本件の問題の本質が人権侵害である以上、なによりも被害者個人の人権が救済されなければならない。それはすなわち、本件においては、新日鉄住金が本件判決を受け入れるとともに、自発的に人権侵害の事実と責任を認め、その証として謝罪と賠償を含めて被害者及び社会が受け入れることができるような行動をとることである。
 
★具体例
例えば中国人強制連行事件である花岡事件、西松事件、三菱マテリアル事件など、訴訟を契機に、日本企業が事実と責任を認めて謝罪し、その証として企業が資金を拠出して基金を設立し、被害者全体の救済を図ることで問題を解決した例がある。

※「企業の戦争責任 三菱マテリアル和解の意義」(時論公論) NHK 
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/246430.html

この弁護士有志の声明は、きわめて冷静で、論理的で解決方法も極めて具体的。問題を元徴用工の【人権問題】として捉えているため、間違っても、ヒートアップしがちな「政治問題」や「歴史認識問題」に傾斜しないように具体的提案まで行っている。

声明の中でも触れているが、安倍首相の「日韓請求権協定」の解釈がこれまでの常識的解釈と異なっているところに今回の問題の淵源がある。声明でも以下のように述べている。

・・・安倍首相は、個人賠償請求権について日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決した」と述べたが、それが被害者個人の賠償請求権も完全に消滅したという意味であれば、日本の最高裁判所の判決への理解を欠いた説明であり誤っている。

他方、日本の最高裁判所が示した内容と同じであるならば、被害者個人の賠償請求権は実体的には消滅しておらず、その扱いは解決されていないのであるから、全ての請求権が消滅したかのように「完全かつ最終的に解決」とのみ説明するのは、ミスリーディング(誤導的)である。
 
そもそも日本政府は、従来から日韓請求権協定により放棄されたのは外交保護権であり、個人の賠償請求権は消滅していないとの見解を表明しているが、安倍首相の上記答弁は、日本政府自らの見解とも整合するのか疑問であると言わざるを得ない。
・・・・・
今日の安倍首相の会見でも、「韓国は約束(日韓請求権協定)を守ってほしい」と繰り返し述べているので、どうやら安倍首相は【個人の賠償請求権】も消滅したと考えているらしい。

韓国政府は「個人の賠償請求権」は消滅していないので、今回の韓国大法院の判決は、新日鐵住金と被害者の間の【民事訴訟】と考えている。決して【国家賠償訴訟】ではない、と考えている。民事訴訟に政府は介入しない。民主国家のイロハである。それを韓国政府の問題だとするのは、無理がある。

この解釈の行き違いで両国の関係が戦後最悪にまでなるのだから、政治と言うものは怖ろしい。

その意味で、メディアの役割は重大。日韓双方の「日韓請求権協定」の解釈の行き違いの問題をきちんと指摘し、間違っても双方の国民を煽るような報道をしてはならない。

その意味でこの【弁護士有志の声明】は、問題の落としどころもきちんと指摘している。

問題を【人権問題】に限定し、解決策を模索する。これ以外にナショナリズムを煽ったり、刺激しない解決法は見当たらない。

日韓双方ともここは大きく深呼吸して、問題の本質を直視し、冷静な判断をして、落としどころを探るべきであろう。

「護憲+BBS」「安全・外交政策を考える」より
流水
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日韓貿易問題激化の陰で進行する北東アジアの地政学的大変化

2019-08-22 14:12:35 | 安全・外交
日韓の貿易対立は激化する一方だが、光復節の文大統領の演説がトーンダウンしたため、日本のメディア論調も多少鎮静化しているようだ。

(1)日本メディアの報道

日本メディアの見立ては、韓国経済の劣化、文大統領の孤立化(北朝鮮からも非難されている)のためだというのが大半である。

わたしはそうは考えていない。

おそらく文大統領は、以下のように考えている。

もし日本が、文大統領の呼びかけに応じなかったら、やはり徴用工の問題への報復だったと世界に公言したのも同じになる。

何故なら、日本は、韓国のホワイト国扱いを停止した理由を、徴用工の問題ではなく、安全保障上の問題と何度も説明している。だから、韓国側が話し合いを呼び掛けてきたら、応じざるを得ないという弱みはある。

文大統領はその辺りの計算はきちんとしている。もし、日本が拒否したら、やはり政治問題を経済問題に絡めているからだ、と日本を批判できる。

日本が、話し合いに応じてきたら、喧嘩両成敗的に妥協できればそれでよい。世界的には、文大統領の姿勢が評価される。

しかも、韓国内の批判の標的は、全て安倍政権に向けられ、日本国民に向けられていない。これもなかなか考えられた戦略で、国民の反日を煽り続けると、感情的対立になり、日韓関係の修復は難しくなる。

この姿勢が日本側に伝えられると、【嫌韓】を叫ぶ勢力の勢いを削ぐ効果がある。韓国人が抑制的に行動しているのに、何だ、という批判を浴びる可能性が高い。現に国内では、嫌韓の声がそれほど高まっていない。

実は、日韓関係悪化の最大の問題は、日本メディアの報道姿勢にある。韓国側の「日本人は悪くないけれど安倍政権が悪い」という姿勢は、このメディアの報道姿勢に多くのインパクトを与えている。

韓国側は、闇雲に【反日】を叫ぶのではなく、問題のありようを冷静に分析しているのに、日本メディアは単に文政権や韓国たたきをしているだけで、嫌韓を煽っていると言われても仕方がない。TBS「ヒルオビ」の矢代弁護士のように、反日、反日とネトウヨそこのけのアジテーションをする始末。

わたしはこのような日本メディアや一部国民のありようを戦前の日本と対比しながら、『感情動員と感情労働の国 ;近代国家失格の日本(NO1)』 で論じた。

今回の騒ぎは、いよいよ、日本国民を根こそぎ【感情動員】しようとする政府・メディア一体となったファッショ体制確立の動きが顕著になった、と読まなければならない。

このようなメディア報道の在り方に対して、韓国側の反対運動は、単なる反日運動に堕する事を極力避けて、安倍政権と日本国民を仕分けしている。日本と比較しても、韓国国民の方がはるかに賢明で民主的だと言わざるを得ない。

今回の文大統領の演説は、韓国内のこのような冷静な反対運動を受けて行われ、これが日本側の報道姿勢に微妙な変化を与えている。

(2)日韓の間に横たわる重大な問題

それより、日韓の間で、きわめて大きな問題がある。

7月23日、中国とロシアの爆撃機などの編隊が、韓国が実効支配している独島(竹島)の領空を侵犯した。韓国空軍がロシア軍機に近づき、猛烈な警告射撃をした。

この事件の政治的意味についての分析は後ほど行うとして、米国のエスパー新国防長官が、事件について語るときに独島(竹島)を「(日韓の係争地でなく)韓国領」であると述べた。

米国は、独島(竹島)が日韓両国が領有権を主張し、両国の係争地になっていることをよく知っている。にもかからわず、よりにもよって米国の国防長官が、独島(竹島)は韓国の領有地だと述べたのである。

当然、日本側は、この発言に対して厳重な抗議をしなければならないのに、何もしていない。エスパー国防長官も発言を訂正していない。と言う事は、日本は竹島の領有権を放棄して、「竹島は韓国領」を認知したと言う事になる。当然、それが国際的合意と言う事になる。

・・・・・
※Trump’s ambiguous attitude on Seoul-Tokyo disputes) (Russia And China Display Strategic Coordination In Asia-Pacific)

※国際的に見て、竹島はもう韓国のものだ。 (Pentagon still trying to sort out Russian violation of allied air space while keeping angry allies from fighting each other) ・・・
田中宇 対米従属と冷戦構造が崩れる日本周辺
https://tanakanews.com/190816japan.htm

いつ、日本は竹島の領有権を放棄したのか。嫌韓を叫び続けている連中にとって、これこそ怒らなければならないはずだが、誰も騒いでいない。

一体全体、どうなっているのか。国粋主義連中にとって領土問題は、それこそレーゾンデートル中のレーゾンデートル。しかし、誰も怒っていない。この事実こそが、現在の日韓関係危機の七不思議。

この問題を考えるとき、TV朝日の昼の報道番組に、元外務官僚の宮家某という男が出て、これから先の日韓関係や北東アジアの見通しを語っていた。わたしは彼をネオコンだと考えているので、彼の発言を反面教師として聞いていた。

彼曰く、韓国は「海洋国家」でもなく、「大陸国家」でもない国家。だから、日本とアメリカとは違うと断定していた。日本とアメリカは海洋国家だから理解し合えるが、韓国はそうはいかないと言うわけだ。たしかに彼の言う通り、韓国はいわゆる「半島国家」で、大陸と陸続きとはいえ、単なる大陸国家ではない。

そして、彼は、いずれ韓国は大陸国家に引き寄せられてゆくと断言していた。だから、彼は日本は韓国と一定の距離を置いた関係になるべきだと言う。

彼の発想は、「マハン」の「地政学理論」を下敷きにしていることは明らかだが、わたしは何故、彼が、今こんな話を持ち出しているかと言う点に注目した。

※地政学 ウィキペディア 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%94%BF%E5%AD%A6

おそらく彼の発言は、水面下で動いている世界潮流にどう乗るか、という官僚組織の考え方が底流にあると考えられる。

宮家流の発想からすると、将来は、北朝鮮・韓国・中国・ロシアが一体になると考えている事は明らか。そして、日本とアメリカはそれから一定の距離を置いた存在になると予想している。

この発想の延長線上に「竹島問題」があると読まなければならない。竹島を韓国領にすることは、織り込み済みというわけだろう。

わたしも、韓半島とロシア、中国は、新たな「北東アジア共栄圏」的な協力関係になるだろうと予測しているので、彼の予測にはあまり違和感はない。

彼の未来予想はある程度当たっているが、これから先も米国と日本は一体という予想は、頂けない。まあ、対米隷属が省是の外務省出身者だから、この辺りが彼の限界だろう。

(3)米国の戦略

トランプ大統領の理念は、【米国は覇権国家から降りる】に尽きる。彼はその目的を達成するために、世界中から米国が嫌われるような言動と強引な政策を採り続けている。

北朝鮮とは、今にも戦争か、という誰が見ても強引で危うい言動を繰り返しながら、結局北朝鮮と話し合いのテーブルに着いた。

現在、イランとも同様な危うい政策を採っているが、おそらく戦争はしないと考えられる。しかも、他国に有志連合へ参加しろと強制し顰蹙を買っている。誰がどう見ても、今回のイラン危機は、アメリカが仕掛けている。ほとんどの国は、アメリカが悪いと思っている。

NATOや韓国、日本に米軍駐留費用を増大しろと無理難題を吹きかけ、同盟国を辟易させている。そんなに金を要求するのなら、もう米軍にはお引き取り願おうと言い出すのを待っているのかもしれない。要するに、俺は手を引くからお前たち(同盟国)は自立しろ、と言っている。

中国には貿易戦争を仕掛けているが、中長期的には、米国は勝てない。トランプはそれが分かっていて、貿易戦争をしかけている。国内の中国脅威論者たちの支持を勝ち取るためだと言ってもよい。来年の選挙で勝利したら、落としどころを探り始めるに違いない。

南米ではベネズエラに対する理不尽なクーデターまがいの圧力をかけ、多くの国の顰蹙をかっている。

※ベネズエラで進行している米国によるあからさまな政府転覆計画

ロシアとはNPT体制を崩壊させ、新たな核競争を再開させ、クリミア危機以来の経済制裁を続行している。ただ、ウクライナでは新たな大統領が選出され、ロシアとの対話が模索されつつある。

※NPT体制 ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E6%8B%A1%E6%95%A3%E9%98%B2%E6%AD%A2%E6%9D%A1%E7%B4%84

中東では、米国はイスラエル支持を明確に打ち出し、エルサレムをイスラエルの首都として認め、大使館を移した。と言う事は、パレスチナ問題に介入する道徳的立場(中立を保つ)を放棄した。これで、米国は、中東和平の仲介役を明確に下りた。

さらにトルコとの関係悪化、サウジアラビアとの関係強化など、これまでの中東政策を大幅に変化させている。このため、中東でのロシアのプレゼンスが大幅に強化され、米国は中東での覇権を失いつつある。

この世界情勢下で極東アジアが静かなわけがない。

つまり、トランプ大統領は、各国の自立を促している。北東アジアで言えば、朝鮮半島の冷戦情況を終わらせ、北朝鮮と韓国の一体化を促進させる。それと呼応して、米軍を韓半島から撤退させる。

同時に、在日米軍も撤退させる。もし、中国と事を構えるような事態になった場合、沖縄などの基地は、中国軍のミサイルの格好の標的。早めに撤退をさせなければ、米軍の被害は甚大になる。朝鮮半島が平和になると、米軍の存在価値がなくなるという理由で撤退に踏み切る可能性が大きい。

問題はこの世界情勢をどう読み、どのように日本の立ち位置を定め、この不確実性の時代をどのように生きていくか、というグランドデザインがないところにある。

(4)日韓危機の最大要因⇒経産省の亡国政策 ⇒これを報道しないメディアの大罪

よく思い出してほしい。福一事故の後、多くの識者の顰蹙を買いながら、日本が原子力発電所を各国にセールスしていた事を。そして、そのセールスがことごとく失敗したことを。

これらの原子力政策の中心人物が、今井尚哉首相秘書官。経産省出身。彼が現在の「原子力村」のボスと言っても過言ではない。

原子力ルネサンス政策の提唱者、柳瀬唯夫元首相秘書官は、東芝だけでなく日立製作所や三菱重工も危うい状況に追い込んだ。彼は加計問題でも中心人物。彼も経産省出身。

※安倍政権が後押しの原発輸出 全て頓挫
 東京新聞 https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/909

※原子力ルネサンス https://atomica.jaea.go.jp/dic/detail/dic_detail_2261.html

※原子力ルネサンスの果て、東芝の苦境/優遇措置での誘いが今は最大の重荷に
https://www.huffingtonpost.jp/shinrinbunka/nuclear-energy-toshiba_b_16812444.html

そして、首相側近の世耕経産相が元徴用工問題を理由に対韓輸出規制を始めた。

※元徴用工訴訟問題 ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%B4%E7%94%A8%E5%B7%A5%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E5%95%8F%E9%A1%8C

※元徴用工問題と「通商」リンクは危険なゲーム。「韓国向け輸出厳格化」が招く日本経済のリスク
https://www.businessinsider.jp/post-194070

本来、徴用工訴訟問題は、日本企業に対する民事訴訟。国家賠償とは違う。国家が関与する問題ではない。韓国政府は、その立場を取り続けている。現に中国では、民事訴訟と言う形で「三菱マテリアル訴訟」も和解した。

※「企業の戦争責任 三菱マテリアル和解の意義」(時論公論) NHK 
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/246430.html

元徴用工問題は民事訴訟で国家賠償問題とは違う、という基本的立場で、日韓両国政府が粘り強く話し合い着地点を見出すべきだった。

それを安倍内閣は、貿易問題と絡めた。しかし、それはWTOルール違反になる可能性が高いと見るや、「安全保障上の輸出管理だ」と主張した。当初の世耕経済産業大臣の発言は、明らかに元徴用工問題に対する報復のニュアンスがあった。それがまずいと見るや、「安全保障」問題にすり替えた。明らかな二枚舌。

現実に日本が韓国に対して行っていることは、サムスンなどの韓国半導体メーカーに対する嫌がらせ以外の何物でもない。

希少性の高いフッ化水素がウランやサリン製造に使われるわけがない。EUVレジストやフッ化ポリイミドが軍用機やレーダーに回されることもあり得ない。と言う事は、この三種の規制に安全保障上の意味はない。

この三種の希少性の高い製品を作っているのが、JSR、東京応化工業、森田化学工業、三菱ケミカル、富士フイルムなど。グローバル化した世界は今や分業の時代。それぞれの国が得意分野に特化して製品を作り、お互いがそれを輸出し合い、相互補完して生きている。上記の会社もサムスンやSKと【水平分業】をして顧客を維持してきた。

※水平分業 (コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E6%B0%B4%E5%B9%B3%E5%88%86%E6%A5%AD-163451

だから、サムスンやSKだけでなく、日本企業にも打撃はある。韓国企業は一年そこらは落ち込む可能性が高いが、いずれ代替えメーカーを確保するに違いない。すでに、中国・ロシアなどが名乗りを上げている。

・・・経産省は半導体素材だけでなく、液晶やディスプレーもぶっ壊している。官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)を通じて3500億円も出資したJDI(ジャパンディスプレイ)は債務超過。JDI主力の白山工場はスマホ向け液晶パネルが振るわずに追加損失を計上し、2019年4~6月期は連結純損益で833億円の赤字だ。・・・

産業を根こそぎ破壊 韓国叩きの本質は経産省の亡国政策だ 金子勝の「天下の逆襲」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/260548

さらに外交関係でも、経済産業省出身の今井尚哉首相秘書官が主導で行ってきたロシアとの領土返還交渉は完全に暗礁に乗り上げている。北朝鮮との拉致被害者返還交渉も一歩も進まない。

米国とのFTA交渉も望み薄。はや、米国農産品の爆買いを迫られている。

こんな二進も三進も行かない状況打破を狙って行われたのが、韓国叩き。選挙前に行う事で、安倍内閣の支持率を何とか現状維持に保とうという狙いが見え見えの政策。

換言すると、日本の国益をどぶに捨てるような経済産業省主導の経済政策や原子力政策、外交政策の失敗を覆い隠すための【日韓危機】の創出だと考えたほうが良い。

結果、韓国の反安倍行動に火を付け、日本製品不買運動は燎原の火のごとく燃え盛っている。韓国からの観光客は激減。九州地方は悲鳴を上げている。

米国メディア 特にワシントンポスト・ブルームバーグなどは明確に日本に非があると報道している。

この状況を踏まえた文演説である。

このように日本も韓国もどちらも得をしない愚策は一日も早く撤回すべきで、メディアは、国民の【感情動員】だけを目的にした煽りは止めるべきである。

金子勝氏が指摘するように、今回の政策は、世界性を完全に喪失した【亡国政策】だと言わざるを得ない。

「護憲+BBS」「安全・外交政策を考える」より
流水
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「人は学ぶことで真の自由を得られる。そして人は自由でなければ学べない!」

2019-08-20 17:10:01 | 社会問題
先週、鬼籍に入ったピーター・フォンダの言葉である。

ピーター・フォンダといえば、「イージー・ライダー」。1970年代前後の若者たちの気分を代表した映画。

若者二人(映画上ではワイアットとビリー・・・ワイアット・アープとビリー・ザ・キッドから取っている。これをピーター・フォンダとデニス・ホッパーが演じた)がただ大型バイクに乗って旅をする話である。

これが爆発的にヒットした。何でヒットしたのか。わたしには、「時代の空気」としか言えない。

先月、高校時代の友人と久しぶりに電話で長話をした。彼は、橋梁設計の専門家で、会社生活の大半を外国で過ごした。彼の代表的仕事は、イスタンブールのボスボラス海峡にかかる橋梁を作った事だと言っていた。

その彼が昨年一人で車を運転して、アメリカのルート66を走破したそうだ。どうしても、死ぬまでに走破したかったと言っていた。

わたしも彼も1970年代前後の若者世代。彼の気分は手に取るように分かる。年も年だから、バイクではなく、車だったというだけである。

「イージー・ライダー」「俺たちに明日はない」「明日に向かって撃て」や「バニシング・ポイント」などを総称して「アメリカン・ニューシネマ」と言うのだが、その代表作である。

「イージー・ライダー」「俺たちに明日はない」「バニシング・ポイント」に共通して言えるのは、衝撃のラストである。

「イージー・ライダー」の二人もただ旅をしてればよいのに、地方の共同体に入り込み、そこでトラブルを起こしてしまい、最後は銃で撃たれる。

「俺たちに明日はない」のラストは、ボニーとクライドが警官たちの待ち伏せに合い、車ごと蜂の巣のように撃たれてしまう。

「バニシング・ポイント」も同様。最後は警官が張ったバリケードに突っ込んで死ぬ。

三作に共通するのは、どう見ても無意味な死を招くのが分かっていても、破局に向かって突っ走らざるを得ない彼らの【抵抗の心情】を描いている点である。

どうやっても、既成の社会や秩序になじめず、NONを叫ばざるを得ない心情を描いていた。それでいて、彼らに次の時代の青写真があったわけではない。青写真はなけれど、どうしても既成の社会秩序は否定せざるを得ない。

「イージー・ライダー」などの「ニューシネマ」は、その切ない抵抗の心情を痛いほど描いていた。最初に「時代の空気」としか言えない、と書いたのは、その意味である。

その代表選手だったピーター・フォンダが死んだ。「ニューシネマ」のように、若死にをせず、天寿を全うし、家族に看取られた穏やかな最後だったと報道されている。

しかし、彼は最後まで「自由の戦士」だったようだ。昨今のアメリカの風潮を憂ったのだろうか、ウェブサイトで【人は学ぶことで真の自由を得られる。そして人は自由でなければ学べない】と言う言葉を残したと報道されている。現在の若者たちに聞いてもらいたい含蓄のある言葉である。

【自由】になるために学び、学ぶために【自由】を希求する。【自由】を決して【金】に換えてはならない。

ピーター・フォンダ世代の爺さん、婆さんたちは、そうやって生きてきたのだ、と言う事をもう一度考えてみてほしいと願う。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
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喪失の遺産を受け継ぐ

2019-08-19 11:09:59 | 戦争・平和
74回目の終戦記念日を迎え、今年も第二次世界大戦に関連した報道やドキュメンタリー番組を目にする時期になった。しかし、今年はこれまでと比べて戦争を扱う記事や番組の数自体が減っているように感じるのは気のせいだろうか。

報道番組内の戦争をテーマにした特集では、いわば「被害者」としての「日本人」を対象としてこれまで以上に恣意的に選択しているように見える。

大戦中、貧しい生活を強いられた市井がいたことも、日本の敗戦後に大陸からの引き揚げ・抑留などで身を引き裂かれるような想いをした人たちが存在することも事実である。

しかし、こうした惨状を生み出したのはいったい誰なのだろうか。誰がいつ、どのような意思決定を行ったから、多くの罪のない人々を巻き込む羽目になったのか。単なる過去に起きた悲劇として戦争を扱うのであれば、過去の遺産と正面から向き合えていないことになるだろう。

国と国との戦争において、日本人は被害者であるとともに、加害者であったことは、なかったことにはできない事実だ。個人が被った悲劇性や感情的な部分にばかり注目していては、先人が何をしてしまったのかは冷静に顧みることはできない。

日本を戦争へと導き、その戦いに国民を巻き込む選択を重ねてきた人々が、戦後に一度は追放されたものの再び表舞台に戻ってきていることなどは、どうして問われないのか。また、過去に行った略奪・侵略行為が現在まで影響を与え続けていることには気が付いていないのだろうか。

日本という国として過去に犯した加害を想起させるものに対し、過剰なまでに反応し、隠蔽を試みる人が目立つことも、昨今の戦争を扱う報道とつながりがあるように見えてしまう。

表面的で漠然とした平和を求めて祈りを繰り返したところで、再び同じことを繰り返してしまうのではないかという不安が募るばかりである。

「護憲+コラム」より
見習い期間
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「あいちトリエンナーレ2019企画展再開」申し入れ・第二次署名

2019-08-18 17:21:43 | 社会問題
「あいちトリエンナーレ2019企画展再開」申し入れ第二次署名について、醍醐聡さんから、以下の協力依頼がきました。

締め切りは8月26日。それに伴い署名用紙も変更されています。第一次署名が未だの方は、ご協力のほどよろしくお願いします。

※第一次署名についての報告は以下をご覧ください。
https://blog.goo.ne.jp/rojinto_goken/e/9a0c7bbca5a44df8a1bf7a78913e96c3

***
◆署名の第二次集約◆
呼びかけ人で相談した結果、次のように決まりました。

「表現の不自由展・その後」の再開を求める署名の第2次集約締切りは8月26日(月)到着分まで
  *用紙署名:署名用紙→ https://app.box.com/s/82vdwsp363s4gm9wa1vokkzrabmzism3
    締め切り日を書き改めただけです。従来の用紙でも構いません
  *ネット署名:署名(入力フォーマット)→ https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc2KXgVVLejfp6EMP2x99rmWk3i2Pe26MMY8hzs5W-sYZNTKw/viewform

◆ご協力のお願い◆
再開といってもまた妨害されるのではないか、と心配される声もあります。
しかし、安全確保、妨害排除は主催者が法律&セキュリティ専門家の助言を得ながら、策を講じる問題です。
私たち市民は言論テロを煽った河村市長や大阪維新の会の幹部らの不当な介入、企画の内容をチェックすると公言した菅官房長官の発言を批判し、妨害を封じる世論、再開を望む世論を盛り上げていくことが役目だと思います。

それには、さまざまな方法がありますが、全国どこからも参加できる署名を大きく積み上げることが大きな力になります。
***

「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子
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「あいちトリエンナーレ2019企画展」再開申し入れ

2019-08-15 22:01:52 | 社会問題
先に署名協力をお願いした「あいちトリエンナーレ2019企画展」再開申し入れについて、呼び掛け人のお一人、醍醐聡さんから、概略以下のとおりの報告がきましたので、お知らせします。

***
呼び掛け人3人で、名古屋市役所、愛知県庁を訪ね、最後に県政記者クラブで記者会見しました。

応対者:
 名古屋市役所(約40分):文化振興室長 上田 剛 氏
 愛知県庁(約45分)  :文化芸術課 トリエンナーレ推進室主幹
                     朝日 真 氏

提出した署名数
 用紙署名: 3509筆
 ネット署名:3182筆
  合 計 :6691筆

報道
「不自由展、再開求め申し入れ 学者ら『屈してはならぬ』」
朝日新聞デジタル(8月15日18時27分)
 https://www.asahi.com/articles/ASM8H578QM8HOIPE012.html
***

なお、当面、明日以降も署名を受け付け、まとめて大村知事宛てに提出する予定とのことです。引き続きのご協力よろしくお願いします。

■署名用紙のダウンロード(プリントしてお使い下さい) → http://bit.ly/2Ynhc9H 
■ネット署名 → http://bit.ly/2YGYeu9 

■ネット署名に添えられたメッセージ一覧 → http://bit.ly/2LZz0RR

「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子
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不服従は時には義務となりうる瞬間がある!

2019-08-15 09:59:44 | 民主主義・人権
今日は8月15日。メディアでは、【終戦記念日】。正確に言うと、【敗戦記念日】。

【終戦記念日】という語感からは、日本が、主体的に戦争を終わらせたのであって、戦争に負けたのではない、というニュアンスがある。本質は、ポツダム宣言を無条件に受諾して、日本が負けた日。

実は、【敗戦記念日】を【終戦記念日】と言い換えたために、何故日本は愚かな戦争に突入し、何故敗けたのかという、原因究明がおろそかになり、戦争責任の追及が疎かになった。

昨年、官僚が、物事の本質を微妙に言い換える「東大文学」という言葉が流行ったが、この日本流言いかえ術は戦前からの伝統だった。

特に酷くなったのが、ミッドウェイ海戦の敗北以降。戦況を伝える【大本営発表】はこの種の言いかえの代表。「転進」と言ったら、敗北して退却をした、と読めば良い。

日本における官僚は、この種の詭弁、言い換え、誤魔化しなどの【言葉】とそれを合理的に説明する【屁理屈】をどうひねり出すかが、優秀かどうかの判断基準になっているふしがある。【一億総懺悔】などと言う言葉に流されて、日本国民の手で戦争責任を追及しなかった。これもまた、見事な【東大文学】である。

現在の戦争前夜のような世相を作り出してきた最大の要因は、国民一人一人が歴史に真摯に向き合わなかった事にある。

※日本と全く対照的に戦後のドイツとドイツ国民は、ナチス・ドイツの戦争責任を追及し、真摯にナチス・ドイツの負の歴史と真正面から向き合った。戦争で多大な損害を与えた欧州各国に対して、謝罪と融和を粘り強く、国家挙げて取り組んできた。

今年、7月20日。そのドイツで、びっくりするような式典が行われた。

第二次大戦末期、ドイツ軍将校による【ヒトラー暗殺未遂事件】が起きてから75年の式典が行われ、民主主義を取り戻すための抵抗としてたたえられている。

・・・
メルケル首相は式典に参列し、花輪を捧げ、以下のように述べた。

「不服従が義務となり得る瞬間がある。75年前に抵抗した人たちは、他の人たちが黙っているときに行動した。状況が完全に異なっているとはいえ、今日の私たちにとっての模範だ」

全体主義の独裁政権に抵抗した事実をたたえることで、民主主義や法の支配を自分たちの力で守り続けていかなければならない、との訴えだ。

メルケル氏は式典に先立つ声明で「右翼過激派には(付け入る)機会がないということをはっきりさせるため、力を合わせよう」とも語った。・・・・
朝日新聞 デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASM7M7L3BM7MUHBI03K.html

ヒトラー暗殺事件は複数回あるが、7月20日のものは、トム・クルーズが主演した映画「ワルキューレ」そのものだ。

暗殺に失敗した将校5人が銃殺された場所にメルケル首相は花輪を捧げ、【他の誰もが沈黙している時に行動した】とその勇気をたたえた。

わたしが注目したのは、【不服従が義務となりうる瞬間がある】という言葉だ。一国の首相が、当時の政権(ナチス・ドイツ)の方針に不服従を示し、暗殺を計画した将校を褒めたたえた。

この言葉、取りようによっては、暗殺者(テロリスト)を賛美していると誤解されるかもしれない。為政者としてはきわめて危険な言辞になりかねない。

しかし、メルケル首相は、【不服従は時には義務になりうる瞬間がある】と語り掛けた。この言葉そのものが、彼女のレーゾンデートルである民主主義を守ろうという強い政治的信念の表現である。

7月2日、ドイツのマース外相は、ポーランドのワルシャワを訪問した。

大戦末期、ナチスドイツの占領下にいたワルシャワ市民が、解放と戦後の独立を求め反乱を起こし、約2カ月間で20万人が犠牲になったいわゆる「ワルシャワ蜂起」から75年を迎え、敬意と追悼の式典が開かれたのである。

マース外相は、「ポーランドに対してドイツ人が行ったこと、ドイツの名の下、ポーランドに対して行われたことを恥じている」とポーランド国民に、語り掛け、許しを請うた。

日本とドイツの戦争に対する向き合い方の差が、このような為政者の言辞の差となって表れている。現在の日韓関係の深刻さの最大の要因は、加害者である日本の姿勢が、ドイツのような真摯さが欠落しているからである。

【不服従は時には義務となりうる瞬間がある】

昨年の国会で、前文部科学省事務次官前川喜平氏が起こした反乱は、まさにこのメルケル首相の言葉そのものである。

「あるものを無いとは言えない」という彼の言葉は、これ以上、国民を騙し、愚弄する事は出来ない、という姿勢の表現である。彼を孤立無援にしてはならない。

わたしは、今日本は戦後最大の危機に立っていると考えている。文字通り、国家として存亡の危機にある、と考えている。

この種の危機に際して国家の舵取りを担っている政治家・官僚たちは、正確に現状を把握しなければならない。見たくない数字も、見たくない現状も真正面から見なければならない。問題解決の方針は、そこからしか見いだせない。

しかし、現在の安倍政権は、都合の悪い数字、都合の悪い現実を決して見ようとはしない。数字は改竄する。時には捏造する。時には、無いことにする。まず身内に利益を誘導する。身内の不祥事は徹底的に擁護する。

国民には、現実と正反対の政策を提示する。公約は破るためにある、と嘯いている。やったふりをする。それで誤魔化せる、と考えている。

これで国家が腐らないはずがない。何度でもいう。【魚は頭から腐る】。日本は国家破滅の瀬戸際に立っている、と認識しなければならない。

こういう状況を見れば、メルケル首相の言葉【不服従は時には義務となりうる瞬間がある】が身に染みてくる。

現在の日本、特に霞が関の官僚やメディア連中は、この言葉を噛みしめなければならない。

前川喜平の生きざまに自らを省みる必要がある。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
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