金木犀、薔薇、白木蓮

本の感想、ときどき映画。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

160:繁田信一『かぐや姫の結婚』

2020-07-28 18:00:50 | 20 本の感想
繁田信一 『かぐや姫の結婚』(PHP研究所)
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

平安朝をうつす日記『小右記』を綴った藤原実資。
かの藤原道長のライバルと言われた実資には、
“千歳まで生きてほしい”との願いをこめて、
千古と名づけた娘がいた。
王朝貴族として幾多の縁談に翻弄される姫君、
藤原千古の運命とは…。

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実資が歳をとってからできた女の子を溺愛したこと、
モーロクしちゃったこと、遺産の大部分をその子に残したので
結果として小野宮流が衰退しちゃったこと……は知っていた。
でも実資の人生の詳細、そして千古のたどった運命については
知らなかったので非常に興味深く、楽しく読んだ。

道長や彰子、その周辺が、
他の家を辱めるために零落した姫君を出仕させ、
出仕しない者は心身に欠陥があるといって侮辱した……という話、
ほんとうに嫌な気分になる。
(ただ、ここ、「客観的な事実ばかりではなく、著者の描くイメージに沿っての
 記述では?」とも感じられたので、本当にそうだったのかはわからない)
幸いにも千古はそうなることを免れたけれども、
父や夫を失った高貴な姫君が生きていくというのは
大変なことだったにちがいない。

傘下にあった受領国司たちが千古の裳着のために
経済的な負担を強いられたり、
実資の養子やその血縁者まで動員されていたりと、
貴族同士の関係がうかがい知れるのもよかった。

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映画:『グッド・ワイフ』

2020-07-21 15:03:36 | 映画の感想
2020年の映画⑩:『グッド・ワイフ』(アレハンドラ・マルケス・アベジャ監督)
★★★☆☆

【シネマトゥデイの内容紹介】

1982年、メキシコシティの高級住宅街ラスロマスの豪邸に暮らす
ソフィア(イルセ・サラス)は、実業家の妻として
誰もが憧れるゴージャスな生活を謳歌(おうか)していた。
セレブ妻たちのコミュニティーで女王のように振る舞う彼女は、
証券会社の社長を夫に持つ新入りのアナ・パウラのことを
快く思っていない。
そんな中、最悪の経済危機がメキシコを襲ったことで、
ソフィアの日常は一変してしまう。

*****************************

映画館にて。
マウンティング合戦の末、女王様のように振る舞い、
垢抜けない若い女性を見下していたヒロインが、
裕福な彼女に助けを求めればよいものの
プライドが邪魔をしてそれができずに
ダメージを受けていないふりをして強がってしまう。
そんな姿に、共感性羞恥を感じてしまう。

最後、きっちりオチのついた感じがないんだけど、
なりふり構わずパウラの夫に色目を使うんだろうな……
ということが示されていて、またまた恥ずかしくいたたまれない。
自分で稼いでいないからこその浪費だったのだろうし、
だからこそ節制して切り抜ける、なんてことも難しいのだろうな。
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159:奈良文化財研究所 『平城京のごみ図鑑: 最新研究でみえてくる奈良時代の暮らし』

2020-07-12 16:49:26 | 20 本の感想
奈良文化財研究所 『平城京のごみ図鑑: 最新研究でみえてくる奈良時代の暮らし』(河出書房新社)
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

1300年前の“ごみ”からここまで読み解ける!!
大極殿周辺や西大寺食堂院跡、長屋王邸宅跡などより出土したごみから、
奈良時代の暮らしに迫る!!
平城宮跡資料館の大好評企画展、書籍化!!
本で楽しむ博物館。

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これもとても面白かった!
平城宮を建設する際に、古墳を壊してしまっていたこと、
どうやら土地や石材を使うために古墳の破壊が結構
行われていたようであること、
指の関節の長さを記録した定規みたいなのを
IDカードのように本人認証のために使っていたこと……等々、
当時の感覚やシステムに驚く。

酒やサバを無心したり「おかずがまずい」と報告書に書いたり、
「塩が支給されないってどういうこと?」と文句を書きつけたり、
立小便を禁止したり……と木簡がやっぱり面白い。
『続日本紀』では一度しか出てきておらず、
誤記を疑われていた一族名が実在したことや、
『日本書紀』に登場した百済からの使者が
渡来人として日本で代を重ねていたことが
木簡の削りくずからわかったりするのもロマンがある。

何となく絵の技法って時代が下るにしたがって
洗練されていく印象があるんだけど、
当時の土器や人型に書かれた人の顔は、今とそれほど変わらない。
漫画にありそう。

そして、化学分析って本当にすごい。
酸素とストロンチウムの同位体の存在割合が地域によって異なっており、
平城宮跡から出てきた馬の歯や骨を調べれば、
その馬が国内のどの地方の出身だったかわかるそうだ。

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158:鵜飼秀徳『仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか』

2020-07-11 21:40:41 | 20 本の感想
鵜飼秀徳『仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか』(文春新書)
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

明治百五十年でも語られない闇の部分、それが廃仏毀釈だ。
神社と寺院を分離する政策が、
なぜ史上稀な宗教攻撃、文化財破壊にエスカレートしたのか?
日本各地に足を運び、埋もれた歴史を掘り起こす近代史ルポルタージュ。

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知らないことだらけでめちゃ面白かった!
明治政府の政策としては「神仏分離」を目的をしただけで
寺や仏像を破壊することを目的としていなかったのに、
それを人々が拡大解釈して廃仏毀釈が起こった……というのは
聞いたことがあったけど、

・富国政策のため為政者が寺にある金属を狙った
・新政府にたいして引け目を持った藩知事が忠誠を示すために行った

というのは知らなかった。
霊的なものを信じておらず、信心深いとは決して言えない自分ですら、
仏像を破壊したりそれを叩き割って薪にしたり、
先祖の位牌を川に投げ捨てたりなんてできない。
つい最近まで寺と密接なかかわりを持っていたはずの
当時の人々の思いきりの良さが怖い。
それだけ寺の押さえつけだったり権力だったりが
強かったのかもしれないが。

有力な藩校のある地方のほうが破壊が激しい、
天領にあった寺は破壊を免れた、などの傾向も、
廃仏毀釈の要因との関わりを考えるとなるほどと思える。

歴史好きにはおすすめ。

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映画:『一度も撃ってません』

2020-07-11 12:38:31 | 映画の感想
2020年の映画⑨:『一度も撃ってません』(阪本順治監督)
★★★★☆3.5

【シネマトゥデイの内容紹介】

ハードボイルドな男を気取る小説家の市川(石橋蓮司)には、
旧友の石田(岸部一徳)からの依頼で殺し屋・今西が狙う
標的の行動を調査する、サイレントキラーという別の顔があった。
あるとき石田がヒットマンに命を狙われ、市川も危険にさらされる。
市川はヒットマンを倒そうと今西を捜すが、
一連の行動を妻の弥生(大楠道代)は浮気だと勘違いしてかぎ回る。
やがて市川行きつけのバーを訪ねた弥生は、
そこにいたひかる(桃井かおり)に夫との浮気を問いただす。

*****************************

映画館にて。
登場人物の平均年齢がえらく高い映画。
そして俳優の無駄遣いといってもいいほどの豪華キャスト。
主役になってもおかしくない俳優をチョイ役で使い捨てる贅沢さ。
エンドロールでトヨエツの名前を見て、
「えっ、どこに出てた!?」と驚いてしまった。
敵のヒットマンだったのか。
ずいぶんイメージ変わったな。

声を出して笑うようなところはないし、すっきりしないところも多いけれど、
なんとなく愉快な雰囲気が全体にあって嫌いじゃない。
じいさん・ばあさんというほど老けてはいないけれど
結構なお歳の人々がはしゃいだり好き勝手やったりしてるの、
フィクションだとなんか楽しいよね。
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映画:『水曜日が消えた』

2020-07-05 18:09:04 | 映画の感想
2020年の映画⑧:『水曜日が消えた』(吉野耕平監督)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

幼少期の交通事故が原因で、曜日ごとに7人の人格が入れ替わる青年は、
思考や性格はバラバラだが、各曜日の名前で呼び合いながら
平穏な毎日を過ごしていた。
その中でも地味な火曜日(中村倫也)は、ほかの曜日から家の掃除、
荷物の受け取り、通院といった面倒な用事を押し付けられていた。
ある日の朝、目を覚ました火曜日が
水曜日がいなくなっていることに気づく。
火曜日は、見慣れないテレビ番組などに戸惑いながらも水曜日を満喫する。

*****************************

久々に映画館で。

主役の俳優さんが好みではないとか、
設定がふんわりしていて雰囲気で流している感があるとか、
個人的にひっかかるところはいくつもあったのだけど、
おもしろかった。
一人の体に同居する七人がわりと楽しげに暮らしていたり
互いの性格にうんざりしているという生活の描き方、
人格の数の変化を割れた鏡に映る鳥で表す演出が好き。
「水曜日が消えた」というところがから始まる謎と
後半のハラハラする展開で、最後まで飽きずに楽しめた。
新感覚の物語だった。

あと、一ノ瀬ちゃんが何者だったのか、というのも
ベタだけどいいよね。
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最近見たもの

2020-07-03 21:33:51 | その他(ドラマ・アニメ・落語)レビュー
最近といっても、5~6月の間。
エンタメを日常的に摂取する習慣をつけたいのだけど、難しい。
30分なり1時間なり、テレビの前に座ってるのが、自分に合ってない気がする。
週に1~2時間が限度。

アニメ『別冊オリンピア・キュクロス』

友だちに教えてもらったもの。
原作は『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリ。
クレイアニメとふつうのアニメが融合しているうえ、
エンディングが毎回違い、
古代ギリシャの勉強になる。
短くまとまっているのもうれしいところ。
エピソード4まで視聴。

朗読劇『五郎八航空』

白石加代子の「百物語」シリーズの一編らしい。
原作は筒井康隆。
ユーモラスだが、死人が出たのにはびっくり!

アニメ『鬼滅の刃』

わたしは本当にテレビを見なくて、
興味はあるのにアマプラの映画も全然消化できていないので、
小学生に人気だったこれをアマプラで見ることで
「テレビを見る習慣」をつけようとした。
結果、やっぱり習慣づけられず、
全26話を見るのに2か月かかってしまった。
善逸が出てきたあたりからちょっと面白くなった気がするけど、
残念ながらハマれず。
最後の方で柱が出てきて、ああ、ジャンプっぽい……と思った。
ここから面白くなるのかもね。

主人公の炭次郎の「いい子」っぷりに嫌味がなく、
作者が女性だと聞いてちょっと納得。
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157:穂村弘 『世界音痴』

2020-07-03 21:14:16 | 20 本の感想
穂村弘『世界音痴』(小学館)
★★★★☆

蔵書整理のために再々読
十年ぶりに読んでも結構内容を覚えているもので、
どうしても本に書かれていることを読むというより、
以前読んだときの記憶をトレースしてしまう。
そのためやっぱり初読時ほどの衝撃は受けないのだけど、
やっぱり面白くて笑ってしまった。
 
最近、短歌とか俳句をいいなあ、と思うようになった。
鑑賞する目で見ての「いいなあ」は以前からあったのだけど、
今は短歌とか俳句の創作が生活に溶け込んでいることを
「いいなあ」と思う。

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156:勝間和代『勝間式食事ハック』

2020-07-03 21:02:25 | 20 本の感想
勝間和代『勝間式食事ハック
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

時短・安い・おいしい!加工食品と外食の罠にはまらない究極の料理術。
食事を整えれば「人生が豊か」になる!

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半分仕事のために購入。

これも著者の別の本と内容が重複していて、
買わなくてよかったな……と思ったんだけど、
よく考えたら、創作や研究なら別だろうけども、
ひとりの人の生活から出て来るものなのだから、
ひとつのテーマでそこまで多くのネタがあるわけないか。
それに気づかなかった自分が悪い。

実際にライフスタイルを変えたところはすごい。
世の中の多くの人は「こうすればいい」とわかっていても
実行できないもの。


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