金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
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映画:『アラビアのロレンス〈後編〉』

2011-01-30 19:37:20 | 映画の感想
映画:『アラビアのロレンス〈後編〉』
★★★★☆

少佐に昇進したロレンスは、イギリスからの兵器の補充を受け、
トルコの鉄道の線路を爆破して襲いかかるという戦法をとる。
ロレンスの活躍は新聞にも載って広く報道されるが、
現地人の服を身に着けてアリとともにデラアに偵察に行ったロレンスは
トルコ軍に見つかり折檻される。
これをきっかけにしてロレンスは配置換えを願い出るが受理されず、
アレンビー将軍は彼をアラビアに送り戻してダマスカス侵攻を指揮させる。
トルコ軍の大量虐殺を経て、アラブ軍はダマスカスをトルコ軍から解放し、
アラブ国民会議を発足させるが、部族間の対立が絶えず、
ダマスカスは荒廃する。
アウダもアリも去り、トルコから解放されたアラビアは、
もはやロレンスを必要としていなかった。
イギリス軍にとってもファイサルにとっても邪魔な存在となった
ロレンスは、イギリスへ去っていくのだった。

**************************************************

後編は88分と短く、あっという間。
後半に描かれているのは、アラブの英雄に祭り上げられ、
やがて現実に壁に突き当たって政治の前に屈し、
イギリスへ去っていくロレンスの栄光と挫折。

アリがいい男すぎる
変わっていくロレンスに繰り返し苦言を呈しながら、
彼の傍らを離れない友情と、別れの場面に涙
ハウェイタット族の首長・アウダもいい味出してたな。

しかし『愛のむきだし』でも思ったけれど、
前・後編に分かれていると、途中で水を差されたようで
いまいち作品世界に入り込めなくなるなあ。
コメント (2)
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映画:『アラビアのロレンス〈前編〉』

2011-01-30 19:36:45 | 映画の感想
映画:『アラビアのロレンス〈前編〉』
★★★☆☆

一次世界大戦が勃発し、トルコはドイツを支援した。
イギリスは、ドイツ連合軍の勢力を分散させるため、
変わり者だがアラブ文化・アラビア語に通じている
ロレンス中尉をアラビアに派遣し、
トルコに対して反乱を起こしたアラブの王族・ファイサル王子の
意向を探らせようとする。
アラブ人の案内人とともに、ファイサル王子のもとへ向かう途中、
無断で他部族の井戸から水を汲んだ案内人は、
井戸の持ち主であるハリト族の首長・アリにいきなり射殺される。
アリに反発するロレンスだが、ファイサル王子のもとで
再びアリと会い、彼とともに、横断できないと言われるネフド砂漠を渡り、
トルコ軍が占拠する港町アカバを内陸から急襲する作戦を決行する。

**************************************************

親が見ていたビデオなのか、テレビでの放送なのか不明だけれど、
昔、この映画の一部分を見てアラブの衣装を着たロレンスを
素敵~と思った記憶があるのでした。
大まかなあらすじは知っていたけれど、
ちゃんと見たことがなかったので、借りて来た次第。

日本での公開は70年前。
冒頭と中盤、真っ黒な画面に音楽だけが流れ続けるのは
当時の映画の一般的なスタイルだったそうで、
DVDの最初に注意書きが。
「DVDに不具合が!映像が出ない!」と誤解されそうだもんね。

前編は、アカバ占領まで。
アラブのために戦おうとするロレンスだけれども、
イギリスは自国の利益のためにアラブを利用するつもりでしかなく、
後半に向けてトラブルを予感させる終わり方になっている。
いつものことだけど、イギリス側の人間の区別がつかず、
場所がアラビアに移るまで話がよくわからなかった
(特典の解説を見てようやく人物関係を理解した)
ロレンスは、アリをはじめとするアラブの戦士たちの信頼を得て、
ハウェイタット族の首長・アウダを味方に引き入れ、
作戦を成功させるのだけど、
「ロレンスすごい!」とならないのはなぜだろう……。
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10:八束澄子 『明日につづくリズム』

2011-01-28 18:48:44 | 11 本の感想
八束澄子『明日につづくリズム (teens’ best selections)』(岩崎書店)
★★★☆☆

因島で生まれ育った中学三年生の千波は、
同じ島に生まれた人気ロックバンド・ポルノグラフィティの
大ファン。
同じくポルノファンの恵とともに、ハルイチの実家に行って
ピンポンダッシュ。
施設から引き取られ、弟となった大地に優しくできないことに
自己嫌悪を感じ、島を出るか残るか、進学先にもこころが揺れる。

**********************************************

今年の読書感想文推薦図書。

うーん。悪くはないけれど、好みではなかったな。
大地に対する感情と、母を巻き込んだ事件を通して
変化していく話の流れは好きだったんだけど、
家族の物語と、因島という舞台設置とポルノグラフィティの
組み合わに必然性を感じられなかったうえに、
(因島とポルノのつながりはもちろんわかるが)
あこがれの対象が実在の、しかも現役で活躍中のバンドだと
いうのが邪魔をして、虚構の世界に入って行けなかった。
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9:草野たき 『ハーブガーデン』

2011-01-28 18:20:33 | 11 本の感想
草野たき『ハーブガーデン (物語の王国 10)』(岩崎書店)
★★★★☆

母親が友人との電話で、
「子どもなんて仕事の邪魔でしかない」
と言っているのを聞いてしまった由美は、母親の仕事に合わせて
好きでもないそろばん塾と学習塾に通い、
文句も自分の気持ちも言わないでいた。
由美のあこがれは、ファッション雑誌のモデルのさくらちゃん。
ある日、さくらちゃんにそっくりな中学生・綾芽と出会った由美は、
彼女に連れられて、すみれという女性が経営するカフェに足を踏み入れる。

**********************************************

ハーブで癒される~
みたいな話かと思っていたのだけど、そこは草野さんで、
癒しとは程遠いシビアな現実が描かれているのでした。
母親の反応を想定して黙ってしまったり、
外見コンプレックスから卑屈になってしまったりする
由美にイラッときつつも、胸が痛くなってしまう。
女子社会のヒエラルキーって、小学校の教室ばかりじゃなく、
母親同士の世界にもあるよね。
『ハッピーノート』『教室の祭り』に共通する読後感。
舞台となっているカフェの綾芽とすみれの存在感が
やや薄くて印象に残らなかったのが残念。

そして草野さんの作品に出てくる男の子には
やっぱりにやにやしてしまう。
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8:重松清 『小学五年生』

2011-01-26 12:06:24 | 11 本の感想
重松清『小学五年生』(文藝春秋)
★★★★☆

【収録作品】
「葉桜」
「おとうと」
「友だちの友だち」
「カンダさん」
「雨やどり」
「もこちん」
「南小、フォーエバー」
「プラネタリウム」
「ケンタのたそがれ」
「バスに乗って」
「ライギョ」
「すねぼんさん」
「川湯にて」
「おこた」
「正」
「どきどき」
「タオル」

転校によるクラスメイトとの別れ、家族との死別や
女の子に対する淡い恋心や性への関心。
小学五年生の少年たちを主人公とした十七編の短編を収録。
今年一年だけでも、模試や問題集、入試問題で
何回見たことだろうか……ってくらい、
中学入試関係の国語では頻出の一冊。
ままならない人生に向かい合う少年のせつなさ、
片想いの女の子のことを考えたときの悶々は、
重松清だなあ!といった感じ。
学級委員選挙のときのそわそわや、
バレンタインデーの絶望は、
すっかり忘れていた小学校の風景でした。
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7:芥川龍之介 『地獄変・邪宗門・好色・薮の中 他七篇』

2011-01-22 21:55:41 | 11 本の感想
芥川龍之介『地獄変・邪宗門・好色・薮の中 他七篇』(岩波文庫)
★★★☆☆

【収録作品】
「運」
「道祖問答」
「袈裟と盛遠」
「地獄変」
「邪宗門」
「竜」
「往生絵巻」
「好色」
「藪の中」
「六の宮の姫君」
「二人小町」

芥川の「王朝もの」を集めた短編集。
やっぱり有名な作品は、それ相応の理由があるよな~。
「地獄変」と「藪の中」の完成度は抜きん出ている。
「袈裟と盛遠」「好色」「六の宮の姫君」は、
古典の世界の登場人物の心理を近代の目で解釈しなおして
詳細に語っているのだけれど、物語としてのおもしろさはいまいち。
「地獄変」の後日談にあたる「邪宗門」は
おもしろそうだったのに未完!
それを収録した芥川の言。

「それを今上梓するのは一には書肆の嘱により、
 二には作者の貧によるのである」

コラ~!!
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映画:『ラスト、コーション』

2011-01-22 09:36:28 | 映画の感想
映画:『ラスト、コーション
★★★★★

日中戦争の中、戦火を逃れ香港に逃れていた女子大生・チアチーは、
同じ大学に通うクァンに勧誘されて、学生劇団に入団。
劇団のリーダーであるクァンは抗日に燃え、
やがて劇団自体も抗日運動に傾倒していくことになる。
そして夏休み、劇団の仲間たちは、特務機関の易(イー)を
売国奴だとして殺害する計画を立てる。
チアチーは貿易商の若妻・マイ夫人として易の身辺に
近づくことに成功するが……

*****************************************************

原題は「色・戒」。
積極的に見たいと思っていたわけではないので、
忙しい時期に入ったこともあり、半月以上放置していたのですが……
よかった!!

チアチーは本当は抗日運動なんてどうでもよかったんじゃないかな。
父が再婚し、取り残されてイギリスに行くこともできない。
そんな中で、好意を抱いているクァンの情熱と劇団員たちのムードに
引きずられて、成り行きでそうなってしまったという感じ。
クァンは情熱だけはあるんだけど、「色男、金と力はなかりけり」
みたいな男。計画が無邪気で、幼稚すぎる。
易を篭絡できるかも!?となったときに、
チアチーの知らないところで方針が決まっていたこと、
クァンが止めずに、しかも「練習」の相手が彼でなかったこと、
さらにそこまでしたのに、思いがけず計画が頓挫してしまったこと。
三年後、チアチーが再び抗日運動に参加することになったのは、
そういうことの積み重ねの結果、
捨て鉢な気持ちになってしまったからだと思う。
チアチーの動じなさ、潔さが悲しい。

易役のトニー・レオンは昔の石坂浩二に見えてしかたなかったし、
中盤では「SM!!」とドン引きしましたが、
職務上、誰にも心を許せず孤独を抱える易に
「信じている」と言われ愛されて、
チアチーの心が揺らぐのはわかる。
ラストがせつない
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6:H.G.ウェルズ 『透明人間』

2011-01-20 21:17:33 | 11 本の感想
H.G.ウェルズ『透明人間』(偕成社文庫)
★★★☆☆

真冬のアイピング村の宿屋に、顔を見せない奇妙な男がやってきた。
宿の部屋にこもって何かの実験をはじめた男の正体は、
からだを透明にすることに成功した科学者・グリフィン。
みずからの体を実験に使い、透明人間になったグリフィンだが、
透明人間の生活はあまりにも不便でつらく、
彼の心はやがて悪意と憎しみに満ちていく。

*******************************************

訳は雨沢泰。
前半が退屈すぎて、途中で挫折していたのだけどようやく読了。
ケンプが登場し、捕獲作戦が始まるところからは
なかなかスリルがあっておもしろかったな。
摂取した食べ物を消化する過程が見えてしまうとすると、
完全に透明になって姿を消すのは無理なんじゃないかなあ。
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5:山本文緒『アカペラ』

2011-01-20 00:10:28 | 11 本の感想
山本文緒『アカペラ』(新潮社)
★★★★☆

「アカペラ」「ソリチュード」「ネロリ」の三篇を収録。

表題作「アカペラ」は、ちょっと勘弁……みたいなところが
あったのだけど、キャラクターはよかったな。
姥山がよい。
そして決してハッピーで終わらない、冷酷な展開と意地悪な視点が
山本文緒という感じ。

三篇の中で最も意地悪でないのが「ソリチュード」なのは、
主人公が男性だからなんだろうか。
女二人の視点で進む「ネロリ」は、結構意地悪い。
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4:川西蘭 『光る汗』

2011-01-19 11:26:36 | 11 本の感想
川西蘭『光る汗』(集英社)
★★★☆☆

【収録作品】

「テニスの時間」
「野球家族」
「決戦は金曜日」
「オン・ザ・グリーン」
「ふたりの相棒」
「家族が走る日」

入試問題や教材によく使用されている川西蘭のスポーツもの。
これはスポーツを題材にした短編集。
完全に初読だったのは「テニスの時間」「オン・ザ・グリーン」
「家族が走る日」の三篇のみ。
いずれもスポーツと恋愛がセットになっているのは、
青春に不可欠な要素だから??

最終話の「家族が走る日」には、それまでの4編の登場人物が
出てくるのだけど、必然性のない登場であるため
ちょっと萎えた。

川西蘭ってスポーツもののイメージが強かったのだけど、
これは最近のことで、昔は恋愛小説を書いていたのか。
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