青龍神界鏡

次はまた首相してみんかお前。
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三十三面目   愚かさへの侮蔑

2012年08月26日 20時00分00秒 | 投稿

大陸の沈降が目に明らかとなったムーの末期、人々は如何ともし難い不安を身体言語で互いに伝え合います。
高度文法の習得が困難であったムー人の大多数は、意思疎通法を身体言語に大いに依存しており、状況の逼迫につれ真剣な眼差しの両手両足のばたつきが各地で観察されました。
ムー人は社会階級と資本の備蓄度に応じた大きさを大急ぎで船舶に反映させていきます。
大地が海に溶けていくという未経験の恐怖は、知的資源が未成熟なままであった大衆と、異星人技術を有した一握りの特権階級との間の奇形社会を溶かしていきます。
等しく見せる混乱がムーの末期です。
支配階級の意思により、ムー人は食料の備蓄が減れば共同体の外側に追いやられる社会構造になっていました。
食料の備蓄競争の敗北は凶暴な混血種との接触可能性の増大を意味します。
村人への租庸調の厳しい取り立て役を担う官吏役が忌避された他の理由とは、混血種との遭遇の危険性でした。
混血種を避け、食料の備蓄に躍起となる村全体は結果的に支配階級の資本の更なる増資を起こしますが、優先的にその福利厚生に預かるのは社会の上流階級のみに終始していました。
福利厚生の歪な配分は社会資本の成長を阻害し続け、放置されるままの村同士の相互不信状況は恒常的な衝突危険性を内包していました。
そして、異星人技術による突出軍事力は、歪な社会構造のままの村々の軍事的拮抗関係に危うい平穏を齎しつつも、その緊張は同時に知的高度社会への進展を阻害し続けます。
酋長一族を頂点とした励起機器に由来する、権力の流動性に乏しい硬直的支配体系と資本収奪形態は社会の啓蒙意識を未萌芽のままにしていたのです。
未成熟な社会資本、人々の公共意識、それらに起因する未成熟な民度のムーは方々が火薬庫でした。
ムー人は戦の際は、攻撃性の異常亢進、倫理感と苦痛の鈍麻を起こすある植物の煙を吸っていました。
その煙は“戦いに於いては戦士は感情を昂ぶらせるもの”
という不文律と異星人技術に相まり、場合によっては法的上限の存在しない民生への破壊度を最大化する戦場の嗜好品でした。
戦時の無遠慮さの横溢の背景には未成熟な民度の他に、異星人技術といった歴史的なムーの香辛料達があったのです。
異常軍事力を戦場に提供する励起機器は既に回収済みでしたが、ムーの沈降に伴う食料の争奪にはこのような文化的遺伝子が働き、上限の無い残虐行為が大陸奥地へ暫進的に拡大して行きました。
「奥地に追い詰められてもその頃に資本を形成出来ていれば、それから舟を作れば良い。」
「あの伝説の石の舟があれば助かる。
石の舟を探そう。」
「石板のありかは奥の村の少女が知っているらしいぞ。」
「その少女か親を呼び出す為、村中の少女を犯そう。」
「これだけ泣かしても出て来ないから、本当に無いようだ。」
「後で色々面倒となるから、この際みんな殺して食料を奪ってしまおう。」
犯す、奪う、殺すの畜生働きが海中に溶けていくムーの各地で跋扈しました。
事態を重く見たのではなく、自分達が関わった星で出現した修羅が印刷し得る倫理的懲罰処分を恐れ出したゲ星人は“航空兵器による状況混雑化分子の焼灼処理”の実行の裁量を現場に与える事にしました。
異星人へ露見し得る修羅状況の程度をどうにか鎮静化したかったのです。
ゲ星人は大気圏中間圏の宇宙船から大気伝導式爆圧収縮力一瞬照射砲をムー大陸各地に向けて約五十五発発射します。
この兵器によりムー人の体の細胞壁は一瞬で破砕し、大勢が無差別に殺害されていきました。
またゲ星人は大陸の沈降速度を更に速める為、遠隔地層内電子振幅異常亢進電波照射兵器を追加的に四度使用します。
急速に溶解していく大地は舟に乗れなかった社会下層者の阿鼻叫喚で染まります。
地獄の末期の様相を呈したムーを見詰めるモアイ像の原型発音は、ゲァフシュハアフゥ星の言語で“ヌウァーーーイヌ”と言います。
ゲ星人にとっては侮蔑的に分類される発音で、“知恵遅れの愚か者”という意味です。
ムー大陸の呼称は他の異星人の言語に起源を辿ります。
大陸に降臨した異星人の一種、ドゥルゥルゥルァーンキャオウスウェル星人は大陸を
“ゥンーーーーーーーーームゥーーーーーーーーーーーーーーー”
と呼んでいました。

これには“知恵遅れの猿がギャーギャー騒ぐがとどの詰まり、猿なので何も発展的な事は無く、だから猿はまたギャーギャー騒ぐ。”
という侮蔑的意味があります。
そして、この発音をドゥルゥルァルァーンキャオウスウェル星人から通信で聞いたリカペイフンースフゥ星人は“ンムゥー”を用い出します。
リカペイフンースフゥ星人は自身の複層的な政治利益の為、ンムゥーの存在を南米大陸北部から中西部にかけて仄めかし作業を残していきました。
その結果、ンムゥーを伝える六十点もの文化物、及びその派生文化物は地球人の歴史推移の波を耐える知識集積所に確実に漂着するであろうという確信と共に、リカペイフンースフゥ星人は地球を去ります。
ヌウァーーーイヌもンムゥーも共に愚かさへの侮蔑だったのです。

二千五十五青字


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