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現役乗組員のお仕事〜USS「コンスティチューション」

2016-08-18 | 博物館・資料館・テーマパーク

というわけでやっと帆走船「コンスティチューション」の甲板にあがるわけですが、
その前に、この第1ドックのことをもう少し。



ネイビーシップヤードの第1ドライドックの真横には
「USSコンスティチューション・ミュージアム」があり、ここでは
この歴史的な現役艦についての様々な情報を知ることができます。

彼女の歴史、まつわるものや遺品の展示、海戦を再現した映像が見られるシアター、
そして1812年当時の乗組員たちのリアルな生活・・・。

1日ここにいればおそらくはコンスティチューション博士になれるだろうというくらい
あらゆる角度からのアプローチを試みた大変優れた展示です。

入場料はしかし無料。
ただし、入り口にはチケット売り場のようなカウンターに係員が頑張っていて、

「お志を5ドルから10ドルくらいで寄付してください」

と声をかけているので、大抵の人はそれを無視するわけにいかず、
財布を開いていくばくかのお金を払って入ることになります。

何しろ時間がなかったので、映像を全部見て歩くわけにはいかなかったのですが、
面白かったのがこの第1ドックのアニメーション。

ずっと見ていると、早回しで「コンスティチューション」が組み立てられ
完成するまでが再現されていくのでした。



これは別のところで見つけた「コンスティチューション」進水式の様子。
このころから進水式というのは同じことをしていたのですね。



このビデオも、超早回しの定点撮影で、ドック入渠の様子を見せていました。



進入してきたのは潜水艦です。



それにしてもこれ、海水を全く防いでませんよね?
もしかしたらこれが船台ごと持ち上がる「浮きドック」だったのでしょうか?



何も考えずに写真を撮って立ち去ったので、残念ながらここまでです。
さっきの写真より艦体が浮上している気がするので、やはりもしかしたら
台ごと持ち上がる「浮きドック」の様子だったのかもしれません。

続きがなくてすみませぬ。



ところで艦首のこれ、どうも用途がわかりません。
まさか砲じゃないですよね?



たとえばこれ、「コンスティチューション」とHMS「ジャバ」の海戦ですが、
お互い船腹を向け合って砲を撃っているわけです。



「コンスティチューション」圧倒的。
やっぱりこの白い部分は単に帆を張るだけのものみたいですね。



というわけで「ジャバ」は帆を張るマストも全壊したようです。
この戦闘は3時間にわたって行われ、結果「ジャバ」は廃棄処分になりました。
アメリカ人はこの勝利に喝采し、溜飲を下げたということです。



ドック入渠中の「コンスティチューション」はもちろん帆を張っていません。
帆を張った状態の時、この見張り台は貼られた帆の下端、マストの真ん中になります。

昔の見張りというのは、いちいちこの縄ばしごを登って行って、
この台の上に立って望遠鏡を当てていなければならなかったのです。

ところで、今現在海軍の現役艦である「コンスティチューション」には、
現役の海軍軍人が乗員として勤務しているわけですが、
この人たちももしかしたらこのマストの縄ばしごを毎日登らされたりするのでしょうか。
まさか「見張り」の必要はないと思いますが・・・。



乗艦しようとラッタルに向かうと向こうに艦番号793の

「カシン・ヤング」USS Cassin Young 

が見えます。



このときにはまだ甲板に見学している人がいますね。
この後急いで見に行ったら内部の見学はもう終わっていました。
次に行ったときにもどういうわけか終わっていました。

というわけで今回は「カシン・ヤング」とはご縁がなかったわたしです。



さらにその向こうに、帆船がしかも2隻もうろうろして?いるではないか。
もしかしたらここミスティックリバーって、帆走船の巣みたいなところ?

ボストンという町は河口にあり、まるで大木が伸ばした枝が
内陸に伸びているかのように太い河が切れ込んでいるのですが、
このネイビーシップヤードのあるチャールズタウンも、
全く潮流の影響を受けない湖のような河口に位置しているのです。

それゆえ帆船も安心して航行できるのかもしれません。



向こうの帆船には、よく見ると海賊旗が揚がっています。
調べたところ、これは

「海賊船 フォルミダーブル」

というボストン湾を巡る遊覧船で、定員はわずか49名。
船長は本当に海賊の格好をしていますが、一応
沿岸警備隊の認可も受けているという正しい人たちです(笑)

ツァー料金は大人35〜40ドルで、1時間45分のクルーズ。
この写真を見るとどうも帆を降ろしているようですが、今日は寒いし、
6時半からのサンセットクルーズはやらないつもりかもしれません。



外から見た「コンスティチューション」の船窓。
このガラスの不透明さを見ると、建造当時のものなのかもしれません。



というわけで寄り道ばっかりしていましたが、ようやく
「コンスティチューション」の甲板にたどり着きました。

思っていたより甲板が美しいので驚きました。
実はわたしはこのあと、サンディエゴでやはり帆走船(こちらは現役ではない)
「スター・オブ・インディア」の内部も見学しましたが、木材の状態は
全く比べ物にならないくらいこちらは美しく、さすがに現役艦だと思われました。



艦尾には「わたしを踏みつけるな」の蛇でおなじみ、オールドネイビージャック。
最古現役艦が揚げることになっているこの旗、「コンスティチューション」が揚げずに
どの船が揚げる、って感じですよね。

ちなみにこの旗までもが半旗になっていました。



ここからは砲が外に向けられていたわけですが、ネットの真ん中の
砲身を突き出すための穴までが、子供の転落防止(大人も)のために
塞いでありました。

今修復中だからでしょうか。
それとも「コンスティチューション」に砲は搭載しないのでしょうか。



船腹の内側にあるこの横木はなんだろう、と思ったら、使用例が見つかりました。



下の方で全図を上げてありますが、海戦中の甲板の様子。
この穴にはペグを指し、帆船に必要な大量のもやいを結びつけていたようです。

昔の海戦というのは、下手すると船体をぶつけ合い、隙あらば
相手の船に乗り込んでチャンバラや撃ち合いになったので、
それを防ぐためにマスケット銃で常に相手の移乗を防いだそうですが、
逆に相手の船に乗り込む時にもこれは足台として活用できそう・・・。



マストの周りの手すりのような囲いは、映画などで見た覚えがありますが、
見たところ、これも帆のもやいを結びつけておくところのようですね。



「コンスティチューション」の乗員は現役の海軍軍人です。
この船の勤務はアメリカ海軍の艦隊勤務のなかでも「特別」とされ、
名誉なことということになって(そうじゃないみたいで失礼ですね)います。

「コンスティチューション」の乗員になったら、CICでコンピュータ画面を見たり、
アスロックのボタンをぽちっとしたりといった、普通の軍艦でやることは忘れて、
マストに登ったり、帆を張ったり降ろしたり、観光客相手に説明したり、
このように記念グッズを売る販売の仕事をせねばなりません。

ここでは、記念メダル、おなじみオリジナルキャップ、そして旗が
売られており、横にはちゃんとレジもあって領収書もくれます(T_T)

売り子さんになっているのは女性軍人。
海軍迷彩を着て佇んでいる人たちは、質問に答える係です。



現場ではちゃんと読まなかったのですが、帰ってきてこれを見ると、
どうやらこの旗はアメリカ国旗であり(多分そうだと思うけど)、
買うともれなく付いてくる証明書には、

「これはアメリカの船であり、海軍で最も古い船であり、
世界でも最も古い戦闘艦である”オールド・アイアンサイズ”
『コンスティチューション』に揚げられた国旗です」

つまり、その国旗が買えるってことかい!
多分これ、何かのはずみで売れたら、今揚げている国旗を下ろして
このカードと一緒にまた売るんだと思う。(一つしか売っていない理由)
そして新しく揚げた次の国旗も、一つ売れたらまた売却処分へと。

たとえはものすごく悪いですが、麻原彰晃の入った風呂水を信者に
「聖水」として売っていた商売とちょっと似てますよね。

現地では売り物だとも思わず写真だけ撮ったのですが、
本当にこのマストに揚がった旗と知っていたらわたしも買って・・・ないな絶対(笑)

さらには現艦長である第74司令官のサイン入り。
ちなみに現在の艦長はこんな人です。


OLD IRONSIDES' OFFICERS & CREW



乗員、だれてます。
まあ、こんなことやるために海軍に入ったんじゃないやい!
と内心思っていても不思議ではない(笑)



マストの時点鐘はピカピカですが、よく見ると
磨くことができない字の隙間などに緑青が浮いているので
かなり古いものと思われます。

ただ、刻まれている文字に「オールド・アイアンサイズにプレゼントされ」
というのが読めるので、少なくともこのあだ名が付いた1812年以降です。



マストのもやいを結んだり引っ掛けたりするためのペグを
抜いたり別のところにはめたりして遊んでいた人。



艦首方向を望む。



これは「コンスティチューション」が英国のHMS「ゲリエール」と戦ったときの
この甲板の上の様子を描いたものだそうですが、甲板が血の海に・・。
しかし、士官は指令だけで実働していないせいか、あまり被害を受けていません。

そんなこと言っちゃいけないか。



じつはこの日、階下は見学禁止になっていました。
この次に家族と来たときには見られたので、なぜか理由はわかりません。



甲板だけだとあまり見るものがないので、あっという間に見学は終わってしまいました。
ドックと船体の間には塗装を行うための足場が組まれています。



ラッタルを降りてから見た反対側の艦首。
おそらく艦首の飾り部分も修復中で今どこかにあるのでしょう。
その上の星型の付いた飾りがあります。



こちらも「コンスティチューション」の復元のために制作されたものだそうで、
これは博物館に展示されていました。
尻尾を丸めた龍が赤い舌を出しているモチーフです。

こういうのを”war billethead”(billet+head)というそうですが、
どうしてこの船首飾りが現在付けられていないのかまではわかりませんでした。


続く。