Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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NMO-IgGが血清で陰性,髄液で陽性というケース

2009年03月29日 | 脱髄疾患
 NMO spectrum disorderが疑われたものの,血清NMO-IgGが陰性で,髄液NMO-IgGのみ陽性であった3症例のcase seriesが報告されている(Washington Universityからの報告).いずれの症例も急性に発症する縦長の横断性脊髄病変を呈したが,頭部MRIは正常で,視神経炎の合併も認めなかった.いずれも発症2年以内で,初発から数か月以内に生じた2度目の再発は重症であった.血清では3例とも120倍希釈で陰性であったが,同時に施行した髄液の測定では陽性であった(いずれもMayo Medical Laboratoriesで行った).いずれも症例もAlb indexは正常で,血液脳関門は保たれていると考えられた.

 Discussionの中で,もし血清NMO-IgGが陰性であっても,臨床的にNMO spectrum disorderを疑う以下のような病態を呈した症例では,髄液NMO-IgG検査も追加すべきと指摘している.そのような病態として以下の5つを挙げている.
① 3椎体以上縦長の横断性脊髄炎
② 再発性横断性脊髄炎
③ 重症かつ両側性視神経炎
④ 回復不良な視神経炎
⑤ 急速再発性視神経炎

 なぜ髄液のNMO-IgGが陽性であった3例が,血清で陰性となったかについて不明である.「多発性硬化症の診断と治療」という多発性硬化症の知識の整理にお勧めの本があるが,このなかの東北大によるNMOの解説のなかに,血清と髄液の抗体価の比較に関する記載があり,「血清抗体価が512倍以上の症例でのみ髄液中の抗体が検出され,それらはほぼIgGの血清/髄液比に相当することから,中枢神経内での抗体産生はほとんどなく血中から髄液に移行していると推測」しているが,今回の報告はその推測に反する症例である.論文の著者らはこの原因として,血清中に何らかの阻害因子(抗体)が共存する可能性について述べているが,その根拠は示していない.

 いずれにしても症例数が3例と少ないので,このような髄液のみNMO-IgG陽性になる症例が特徴的な臨床像を呈するのか,今後さらに症例を蓄積する必要がある.

Neurology 72; 1101-1103, 2009 
多発性硬化症の診断と治療(新興医学出版社) 
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