Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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パーキンソン病友の会新潟県支部 定期総会(薬の飲み方と効果的なリハビリ)

2012年05月21日 | パーキンソン病
パーキンソン病友の会新潟県支部の定期総会に参加しました.例年,個別医療相談や病気に関する講演を担当させてもらっていますが,今年は若年性パーキンソン病の患者さんおふたりとのトークショーでした.初めての試みでどんなことになるのかしらと少し心配でしたが,まさに杞憂で,とても楽しい時間を過ごしました.話題になったのは大きく分けて3点で,抗パーキンソン病薬の飲み方,主治医とのつきあいかた,良いリハビリ方法の3つでした.とても参考になったのでご紹介したいと思います.

1.抗パーキンソン病薬の飲み方
興味深かったのは,内服のタイミングと食べ物の影響についてでした.内服のタイミングは「空腹時に内服すると早く吸収され早く効く一方,効果が切れるのは早い.逆に,食後に内服するとゆっくり吸収されて効き始めには時間がかかるが,効果は長くつづく」傾向があることはよく知られています.でも場合によってはその中間の食事中に内服するという方法もあること(なるほど,両方の中間になるということかな).

また薬との組み合わせで注意する食べ物として例に上がったのは,アボガドとバナナ.知らなかったので調べてみると,アボガドに含まれるビタミンB6(ピリドキシン)はL-DOPAの分解を促すそうで,たくさん食べ過ぎると効果が落ちることもあるようです(アボガドの食べ過ぎに注意).またL-DOPAは酸に溶けて吸収されるので,グレープフルーツやレモン,みかんなど柑橘類とかジュースと一緒に取るのは吸収を促しますが(季節,季節の柑橘類を探すのは楽しいとのこと),バナナやバナナジュースは相互作用のためL-DOPAの血中濃度を下げてしまい,症状を悪くしかねないようです.

2.主治医とのつきあいかた
診察室に入るのは一人が良いか家族と一緒が良いか,診察室で言いたいことをすべて言えずに残念に思うことがあるがどうしたら良いか,いうご質問がありました.前者については病気のことをご家族にも理解していただくことはとても大切なことなので,毎回でなくてもよいので一緒に入っていただくことが良いのでは,後者については主治医に伝えたいことを日頃メモに取っていただいて,それを持参することが良いのではとお伝えしました.その他,主治医とゆっくり話をするには診察予約の最後の順番にしていただくと良いとか,主治医にオフの症状を見ていただくことも時に大切であるというお話もありました.

3.リハビリテーションについて
ノルディックウォーキングとカラオケが良いという話になりました.ウィキペディアによるとノルディックウォーキングは2本のポール(ストック)を使って歩行運動を補助して,運動効果をより増強するフィットネスエクササイズの一種で,もとはクロスカントリーの選手が,夏の間の体力維持・強化トレーニングとして,ストックと靴で積雪のない山野を歩き回ったのがはじまりだそうです.背筋が伸びるし,オフの際にも歩きやすくなるなどの効用があるようです.リハビリ用のポールがあり,ポールの長さの調節が必要であること,肘が90°の角度になるようにすること,着地は踵からつくことなど実演もありました.またカラオケはパーキンソン病の症状のsmall voice(小声)にはとても有効だそうです.とくにAKBやラップなど(!)少し早口の歌も効果が高いとのこと.元気も出そうですしね.

トークショーの後に,腰痛とむずむず脚症候群についての講演とブレインバンクのご案内,そして個別医療相談をさせていただきました.和やかで終始笑顔が絶えない楽しい午後となりました.

最後にとても役に立つ本とホームページをご紹介します.

オン・オフのある暮らし―パーキンソン病をしなやかに生きる
今日のゲストのおひとかたを含む,若年性パーキンソン病の3人の素敵な女性たちがご自分の経験をもとに情報をまとめた本です.病気とのつきあいかた,暮らしの工夫,衣服の工夫,食べ物,書く話す,お出かけ・趣味,運動,薬,介護など情報満載で患者さん,家族,医療関係者にもオススメです.

明るく生きるパーキンソン病患者のホームページ
患者さん,家族の情報スペース.充実しています.

ノルディックウォーキング(happyさんのブログです)
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5 Comments

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興味深いお話 (ゆうゆう)
2012-05-27 23:16:18
摂取する食物の影響はあるなぁと感じていたしたが、バナナとアボガドですか。気を付けます。私はcafe au laitと焼き鳥の皮で薬が効かず酷い目にあったことがあります。

リハビリではダンス系もいいと思います。
目下水泳に取り組んでいますが、水から出たあとヘロヘロになり、ここをクリアするのが課題です。

主治医には私はA4一枚に報告書を書いていってますが、相談の密度は高くなりますね。口では言いづらいお礼だの泣き言も書くと簡単に表現るのがいいですね。
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コメントありがとうございます (下畑 享良)
2012-05-28 04:00:36
ダンスはリズムがあるのでリハビリに良さそうですね.報告書には口で言いにくいことも書けるというのも,確かにそうかもしなれいと思いました.
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アボガドとバナナについて (渡辺 裕)
2012-06-06 22:45:25
静岡の三島に住む渡辺と云います。先生のインターネットでの論文を素人ながら毎回楽しみに読ませて貰っています。今回の、パーキンソン病でのアボガドとバナナについてどの様な観点から薬との因果関係があるのか素人の私には理解が出来ませんでした。私の母親もパーキンソン病症候群で、私自身は「友の会」で活動をしており、色々な先生と関わりを持つ事が多く毎日が勉強です。今回の論文は非常に興味がありましたので、どの様な仕組みで薬と関係をしていくのか?もし良かったら素人の私でも解かる様に教えて貰えませんか、お願いを致します。我儘を申してすみません。
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アボガド,バナナの問題 (下畑 享良)
2012-06-07 03:05:11
お尋ね拝見しました.パーキンソン病の場合,病状の進行に伴い,L-ドーパの消化管からの吸収が悪くなり,L-ドーパの効果がなかなか現れにくくなるdelayed-on現象というものが出現することが知られています.これにはL-DOPAの溶解・吸収に関わる胃酸の量や消化管の運動の程度,そして食べたものの内容が関わることが知られています.L-ドーパを食前に飲んだり,水やレモン水に溶かして飲んだりすると有効であることが知られていますが,食べ物の影響として,今回ご紹介したようなことがあるのだそうです.
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バナナジュースとレボドパの相互作用 (下畑 享良)
2012-06-23 11:06:49
くわのみクリニックの橋爪鈴男先生からバナナのレボドパ(L-DOPA)製剤との相互作用に関する情報をいただきました.バナナジュースにレボドパ製剤を混ぜると溶液は変色し,かつレボドパ含有量が時間とともに低下するそうです.また人体内でも相互作用が起こり,治療効果が減退する可能性が報告されています.これは「バナナジュースはレボドパ製剤のバイオアベイラビリティを低下させる」という論文(小合由紀ら.薬学雑誌125;1009-1011, 2005)に報告されています.バナナを食べる場合は,朝,昼に食べるより,夕食後のほうが良いと言われているようです.
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