市民活動総合情報誌『ウォロ』(2013年度までブログ掲載)

ボランティア・NPOをもう一歩深く! 大阪ボランティア協会が発行する市民活動総合情報誌です。

2011年12月号(通巻471号):目次

2011-12-01 00:00:03 | 2011 バックナンバー:目次
《V時評》
無自覚な嘆きより、責任ある楽観を


《特集》
「障害者基本法」改定とこれからの障害者運動の課題



《リレーエッセイ 昼の月》
大阪の新しい玄関が車いすを拒んで、どうするん?

《うぉろ君の気にな~る☆ゼミナール》
コーポレート・コミュニケーションって?

《語り下ろし市民活動》
便利さに 未来も捨てる 使い捨て②
槌田 劭さん(NPO法人使い捨て時代を考える会 相談役)

≪私のボランティア初体験≫
ありふれた日常から芽が育つ?
永井 佳子さん(NPO法人高齢者外出介助の会理事長)

《ゆき@》
いつか、どこかで、また(^-^)ノ~~~~~。
・・・大熊由紀子(福祉と医療、現場と政策をつなぐ「えにし」ネット)

《この人に》
小出 裕章さん(科学者)

《現場は語る》
東日本大震災 気仙沼市での復興活動におけるNPO/NGO、社会福祉協会、行政の連携の動き
大阪ボランティア協会 岡村こず恵

《私の未来予想図》
一世代後に、日本型ベストミックスが生まれている
湯浅 誠(反貧困ネットワーク事務局長)

《わたしのライブラリー》
「自立した個人」という幻想
『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』

≪おしゃべりアゴラ≫
カウニス・マーラ(京都市)

≪VOLO TOPICS≫
「聞き書き甲子園」10周年
代田 七瀬(NPO法人共存の森ネットワーク理事)

《パラボラ・ニュース》

《某覧提案》&《特集こぼらばなし》

2011年12月号(通巻471号):V時評

2011-12-01 00:00:02 | ├ V時評

無自覚な嘆きより、責任ある楽観を



編集委員 水谷 綾

■ブータン国王のスピーチに気づかされたもの
 2011年もそろそろ終盤を迎えるこの11月。ワールドカップで奮闘した女子バレーボールや、プロ野球の日本シリーズで盛り上がったが、何といっても心温まるニュースはブータン国王・王妃の来日であった。あの国会におけるスピーチには国王のお人柄が滲に じみ出ており、感激した人も多かったに違いない。
 日本人の大震災への対応について触れ、「他の国であれば国家を打ち砕き、無秩序、大混乱、そして悲嘆をもたらしたであろう事態に、日本国民の皆様は最悪の状況下でさえ静かな尊厳、自信、規律、心の強さを持って対処されました。文化、伝統および価値にしっかりと根付いたこのような卓越した資質の組み合わせは、我々の現代の世界で見出すことはほぼ不可能です」と述べられた。続いて、「このような価値観や資質が、昨日生まれたものではなく、何世紀もの歴史から生まれてきたものなのです。それは数年、数十年で失われることはありません」という言及がなされた。
 確かに、私たち日本人が持っている資質や価値観の多くは歴史的営みの蓄積から培われたものであり、それを土台に日々の生活を営んでいる。これらは現在までも、海外メディア等を通じて数多く発信されてきたが、日本の未来を語るべき国会で、「国民総幸福量(GNH)」を提唱するブータン国王が論及したことに、私は感動した。また、それと同時に私たち自身が自分たちの「美質」について語ることが、最近ほとんどないことにも気づかされた。私たちはあまりにも自分たちの欠点や現状への不満、嘆きを語りすぎる傾向が強いと思う。しかし、はたしてそれでよいのだろうか……。

■〝嘆き〟の蔓延がもたらすもの
 ここ数年、とりわけ東日本大震災以降においては、少子高齢化や年金問題、家庭内暴力や経済格差の問題など、シビアな課題が山積し、閉塞感が地域社会を覆っている。また、元気な女子と対比させるあまり、草食系男子を不甲斐ないと嘆いたり、政治家の不始末をあげつらう風潮などもあり、「このままで、日本の将来は大丈夫なのかね?」という私たちの不安や嘆きを生み、失望ばかりを蔓延させているようだ。
 実際、私たちが地域で日々の生活を営むなかでも、いろいろな生活課題に直面する。だからこそ、多くの市民活動は、今ある現実に何かしらの「変化」を見出そうと、それら様々な課題に向き合って動いているのだ。個々人はそれぞれの思いをもって立ち上がり、真
摯に課題解決に取り組んできた。市民活動というと、大きな変革やインパクトを与える側面が評価されがちだが、そればかりではない。一つひとつの活動は、日々の暮らしの延長であり、個人の尊厳を重視して、静かに進んできたのだ。
 また、当事者だから、地域で暮らす主体だからこそ、目に見える実感や問題意識をベースにして、新しい「価値」も押し広げている。放射能から地域や子どもを守る運動などは、全国的な広域避難という成果を生み、受け入れた地域も「当事者」として、被災当事者に寄り添う活動を模索する広がりを見せている。「閉塞感漂う」とされる今においても、「自分たちでもできること」を探し続ける姿勢は、まさに、私たちの〝卓越した資質〟なのかもしれない。

■今必要なのは、責任ある楽観と、それを励ます姿勢
 ところで、2012年は市民活動にとって大きな節目の年となろうとしている。2001年にスタートした認定NPO法人の要件が緩和され、「市民(民間)による寄付が市民活動を支える社会」の実現に近づくための環境が整いつつあるのだ。認定NPO法人への寄付で税額控除を受けられるというメリットの拡充は、私たち市民それぞれが共感した「価値」を支える動機付けにもなる。「3000円×100人」の寄付を集めるという基準は、組織の姿勢を示すものとしてもわかりやすい。この劇的変化には感慨深いものがある。
 しかし、環境が整ったからと言って、寄付や支援が自動的に集まるものではない。積み上げてきた活動から生み出された「価値」をどのように社会に発信し、それを新たな市民的営為へと導いていくか……。こういった不断の努力がなければ、用意された環境を生かしきることはできない。そして、不断の努力を支えるのは、時代にあった発展に対する責任ある楽観であり、それを励ます姿勢なのではないかと思う。一人ひとりが創りだそう、推し進めようとする努力を無意味化してしまうような言説を流すのではなく、自分なりに愛し信じるものを大事にしながら、一人ひとりがまわりに、そして社会に発信し続けていくことが重要ではないか……と。
 先月の本欄でも、「悲しいことだが、今の政治に震災の重さと被災者の痛みを受け止める力はない」とあった。これは本当に事実だと思う。だからこそ、国に頼るのではなく、一人ひとりができる関わりを持ち続けたい。 
 冒頭で述べたスピーチの中には、さらに「他の国々の模範となるこの国から、世界は大きな恩恵を受けるでしょう」ともあった。一つひとつの積み上げと実践、そして努力によって生み出される価値は、自分たちの知らないところで別なる影響を与え、それらが誇りとなって自分たちに戻ってくるのだ、と信じたい。今こそ、「嘆き」を越えて、希望を見出すための努力を後押しする……その時機なのである。

2011年12月号(通巻471号):特集

2011-12-01 00:00:01 | ├ 特集(表紙)
《特集》「障害者基本法」改定とこれからの障害者運動の課題



■特集「こぼらばなし」 ウォロ編集委員・談

▶今回の特集では、この7月に改定された「障害者基本法」のことを中心に、現在制定準備が進められている、「障害者総合福祉法」や「障害者差別禁止法」などをテーマに、3人の方に話し合っていただいた。他に、「きょうされん」の方にもお声をかけさせていただいたが、ご出席いただけなかったのは残念だった。
 本文にも語られているように、2003年の支援費制度導入後の障害者施策の変動はめまぐるしく、改めて勉強してみて、いろいろな発見があった。小尾さんは「そんなにきれいな状態ではない」とおっしゃっていたが、第2次大戦後の障害者施策、障害者運動の歴史の中で大きな転換点であるのは間違いないように思える。今後しばらくは、障害者制度の動きを注視する必要がありそうだ。(枕流)