映画を超えた!? 日本の裁判の現実をリアルに突きつける
映画「それでもボクはやってない」
編集委員 大門秀幸
社交ダンスブームを巻き起こした「Shall we ダンス?」の周防正行監督が、11年ぶりに世に出した作品が、痴漢冤罪事件をテーマにした映画「それでもボクはやってない」である。
1月の公開以来、現在もロングヒットが続いており、”とことん社会派ムービー“と冠したこの手の邦画作品としては、興行収入十億を超える異例の反響を呼んでいる。
「今回は面白い映画を作りたいとは思ってなかった。ただひたすらに事実を重ねることしか考えてなかった」との監督の言葉にもあるように、作品は非常にリアルに仕上がっている。
よくある裁判モノの映画の主役は、敏腕弁護士や名検事、または被告人の苦悩やそれを支える家族愛などが中心だが、この作品での主役はまぎれもなく”裁判そのもの“である。
史上初となる日本弁護士連合会が自ら主催する試写会の実施など、司法関係者からも「よくぞここまで、ありのままの裁判を描いてくれた!」との絶賛の声が高く、裁判を取り巻く最新の”業界トピック“がふんだんに盛り込まれている。
役所広司扮する弁護士が、「痴漢冤罪事件には、日本の刑事裁判の問題点がハッキリと表れているんだよ」と語るストーリーからは、下手なホラー映画よりも背筋が寒くなるほどに、矛盾と病理を抱えた我が国の刑事裁判の実態が次々あぶりだされてゆく。
海外でのプレビューでは、「これが日本の裁判? 信じられない」として、各地で失笑を買うほどであったが、監督をして「本当に現実ありのままを描くと、『映画だからってオーバーに描き過ぎだよ』として観客に信じてもらえないから、これでも控えめにせざるをえませんでした」とまで言わしめた、実際と物語とが逆転するほどの、笑えない現実がここにある。
前作「Shall we ダンス?」では、日本の実写映画としては、あの黒澤明監督作品を抜いて、全米映画史上最大のヒットとなり、ついにはハリウッドでのリメイク版までが製作される一大ブームとなった。
それにもかかわらず、11年もの長期に渡り映画作りから離れていた周防監督だが、実在の痴漢冤罪事件に出あい、日本の刑事裁判の実態に大きな衝撃を受けたことが、再びメガホンを取るきっかけとなった。
「こんなに酷い現実を知っちゃったからには、黙って知らん顔をして違う映画を撮るなんでできなかった。知っちゃった人はこれを伝えないといけないんです。この映画は“撮らないわけにはいかない”という使命感を持って作った初めての映画です。」
監督のこだわりで映画の冒頭に掲げられたメッセージ、「十人の真犯人を逃すとも、一人の無辜を罰するなかれ」とは、刑事司法における著名な格言であるが、この言葉の持つ重みと、それが空虚に聞こえる現実とを、この作品は容赦なく私たちに突きつけている。
一般市民が裁判に参加する「裁判員制度」導入まで、あと約2年に迫った今こそ、このメッセージの持つ意味を一人でも多くの人に考えて欲しい。
映画「それでもボクはやってない」
編集委員 大門秀幸
社交ダンスブームを巻き起こした「Shall we ダンス?」の周防正行監督が、11年ぶりに世に出した作品が、痴漢冤罪事件をテーマにした映画「それでもボクはやってない」である。
1月の公開以来、現在もロングヒットが続いており、”とことん社会派ムービー“と冠したこの手の邦画作品としては、興行収入十億を超える異例の反響を呼んでいる。
「今回は面白い映画を作りたいとは思ってなかった。ただひたすらに事実を重ねることしか考えてなかった」との監督の言葉にもあるように、作品は非常にリアルに仕上がっている。
よくある裁判モノの映画の主役は、敏腕弁護士や名検事、または被告人の苦悩やそれを支える家族愛などが中心だが、この作品での主役はまぎれもなく”裁判そのもの“である。
史上初となる日本弁護士連合会が自ら主催する試写会の実施など、司法関係者からも「よくぞここまで、ありのままの裁判を描いてくれた!」との絶賛の声が高く、裁判を取り巻く最新の”業界トピック“がふんだんに盛り込まれている。
役所広司扮する弁護士が、「痴漢冤罪事件には、日本の刑事裁判の問題点がハッキリと表れているんだよ」と語るストーリーからは、下手なホラー映画よりも背筋が寒くなるほどに、矛盾と病理を抱えた我が国の刑事裁判の実態が次々あぶりだされてゆく。
海外でのプレビューでは、「これが日本の裁判? 信じられない」として、各地で失笑を買うほどであったが、監督をして「本当に現実ありのままを描くと、『映画だからってオーバーに描き過ぎだよ』として観客に信じてもらえないから、これでも控えめにせざるをえませんでした」とまで言わしめた、実際と物語とが逆転するほどの、笑えない現実がここにある。
前作「Shall we ダンス?」では、日本の実写映画としては、あの黒澤明監督作品を抜いて、全米映画史上最大のヒットとなり、ついにはハリウッドでのリメイク版までが製作される一大ブームとなった。
それにもかかわらず、11年もの長期に渡り映画作りから離れていた周防監督だが、実在の痴漢冤罪事件に出あい、日本の刑事裁判の実態に大きな衝撃を受けたことが、再びメガホンを取るきっかけとなった。
「こんなに酷い現実を知っちゃったからには、黙って知らん顔をして違う映画を撮るなんでできなかった。知っちゃった人はこれを伝えないといけないんです。この映画は“撮らないわけにはいかない”という使命感を持って作った初めての映画です。」
監督のこだわりで映画の冒頭に掲げられたメッセージ、「十人の真犯人を逃すとも、一人の無辜を罰するなかれ」とは、刑事司法における著名な格言であるが、この言葉の持つ重みと、それが空虚に聞こえる現実とを、この作品は容赦なく私たちに突きつけている。
一般市民が裁判に参加する「裁判員制度」導入まで、あと約2年に迫った今こそ、このメッセージの持つ意味を一人でも多くの人に考えて欲しい。
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