市民活動総合情報誌『ウォロ』(2013年度までブログ掲載)

ボランティア・NPOをもう一歩深く! 大阪ボランティア協会が発行する市民活動総合情報誌です。

2007年3月号(通巻423号):レポートL

2007-03-01 14:28:33 | ├ レポート
国民投票法(憲法改正手続法)と「メディア」を考える

編集委員 近藤鞠子

 日本で国民投票を体験した人はいない。おそらく総ての日本人にとって初体験。日本国憲法96条に憲法を改正するには国民投票を実施して過半数を得なければならないと規定されている。安倍首相は、祖父の岸元首相が果たせなかったことを孫の自分が…と改憲を切望し、国民投票法の細則は憲法調査会で審議が進む。国民投票の実施は政権交代以外には避けられないらしい。それならきちんと向き合いたい。憲法のどこをどう変えると、現実として何がどう変わるのか。「イエスかノーか」ちゃんと判断するには多くの正しい情報が必要だ。政府が中立の立場で、それぞれを比較した詳細な資料を国民に提示することは当然であるが、情報といえばメディア(新聞・TV・ラジオ)の影響を無視できない。
 1月21日(日)新宿カタログハウス本社セミナーホールで公開討論会が開かれた。参加者は約80人。パネラーは毎日新聞東京本社編集局次長の河野俊史、「週刊金曜日」編集長の北村肇、日本民間放送労働組合連合会中央執行委員長の碓氷和哉、毎日放送ラジオ制作部プロデューサーの坂井克行、フリーランスの番組ディレクター山口栄一、カタログハウス社長の斎藤駿、元「吉野川第十堰住民投票の会」代表世話人の住友達也とそうそうたる顔ぶれ7名、コーディネーターはジャーナリストで「国民投票/住民投票情報室」事務局長の今井一。1時から5時まで会場も交えて活発な意見が交わされた。
 メディア、特にTV広告の規制については「広告は言論の自由、メディアに法はなじまない、司法権力・政治権力の介入をするべきではない、CMにそれほど洗脳力はない、表現の自由は公正な投票行動を律する、自主規制」など反対意見がでた。法規制が必要という人はメディアへの不信感が強かった。「メディアは権力より広告料欲しさに走る、信頼できない、監視するNGOが必要」など。また、「資金量の差を放置して良いのか、権力と資金力で圧倒的なキャンペーンができる」「新聞の広告料は一定で全面でも2000万くらい。上限の単価もわかるから市民にも意見広告を出すことは可能だが、TVスポットは何十億の世界で相手によって値段は違うし上限もない。10秒か15秒で何十回と流すのはマインドコントロールだ。全面禁止」など。「TVは法規制、新聞は自主規制」という意見が多かった。
 一方が出した広告と同じ量の広告をだせなければ公平といえない。「護憲派は手も足もでませんよ。自主規制された広告に一人ひとりが金を出す覚悟がいる。何十億、何百億もっていなければTV広告なんかできません。改憲派は自分の金を出すという覚悟がいらない。企業や経団連、政党がついてるから」。戦争体験のある論客はこの斎藤氏ひとり。護憲を信条とする言葉には、机上の空論ではない迫力と緊迫感があった。戦争を現実として知っている!
 この公開討論会には新聞社、テレビ・ラジオ局の取材がなかった。唖然。これではメディアへの不信感は払拭できそうにない。国民の自由闊達な憲法論議が大切というなら報道すべきである。本日の論客が良質なメディア関係者であったことはいうまでもない。機会を逃さず参加して、聞きたい知りたい学びたい。自分の意見をしっかり持ちたいと思った。

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