〔演目〕
・唄入り観音経
・男の花道
「しっかり聴く」という意味では、たぶん生まれて初めて浪曲のCDを聴く。
いやあ、最近はたしかに、(年のせいか)ちょっと講談を聴いてみたり、清元のDVDを見てみたりと何気に日本の伝統芸能に接近しつつあったんだけど、でも浪曲はその中でも一番抵抗感が強かったかも。
その理由は、例えば浪曲といえば広沢虎造、というイメージもあるあの「♪旅行けば~」のダミ声が子どもの頃からものすごく爺むさいイメージがあったり、またその浪曲の題材も清水の次郎長や国定忠治など、ヤクザというか侠客みたいな世界ばかりに映っていたため。せいぜい、落語の長屋ものみたいな世界だったら、もうちょっと早く聴いていたかもしれないんだけど。
でも、こうして日本に暮らしていて毎日音楽ばかり聴いていれば、こういう音源もイヤでも目の端には入ってくるし、いずれは何かしらの興味も出てくるというもの。
で、今回、ディスクユニオンの特価品コーナーに100円で落ちていたこのCDが、浪曲初体験のきっかけになってくれた、という次第です。
それで、2,3日前についに聴いてみたところ、これが予想以上に面白かった。
まず、このCD、もともと廉価版というか、ジャケットも表紙1枚だけで解説一切なしという代物で、何の情報もなく聴き始めたのだが、まずこの三門 博という浪曲師が、広沢虎三とちがって声がちょっとかわいくて愛嬌がある感じ。
それに、全く知らなかったのだが、浪曲って歌(小唄)の部分と語りの部分の組み合わせで出来ているんですねえ。それに、三味線の伴奏の女の人がいるんだけど、その女の人には合の手というか掛け声をかけるという役割もあって、とにかくその「ヨッ!」「ア~ッ!」「ン~!」「ハ~ッ!」とかいう奇声がかなり激しく非常に存在感が強いというか、強烈なインパクトあり。
それに、その掛け声に支えられた小唄の節回しが、すごく軽快で味わい深いというか何というか。
この三門 博、あまり迫力はないんだけど、たぶん愛嬌と軽快さがあって人気があったようなタイプだったんじゃないだろうか。
そしてぼく自身は、浪曲というジャンルに限らず、どちらかというと重厚なタイプよりも、そんなタイプの方が好きなのだ。
あと、この人は語りの部分にもすごく親しみと愛嬌があって、シリアスな筋の部分でも何だか可笑しみがあって面白く聴けてしまう。
いやあ、なかなかの芸達者。今回は、ホントに期せずしてすごくいいCDに当たったという感じです。
唄入り観音経