The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『ウッドストック行き最終バス』コリン・デクスター著

2019-07-28 | ブックレヴュー&情報
『ウッドストック行最終バス』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)‐ 1988/11
”Last Bus to Woodstock”

コリン・デクスター(著)、大庭忠男(訳)
1975年原作初版

内容(「BOOK」データベースより)
夕闇のせまるオックスフォード。なかなか来ないウッドストック行きのバスにしびれを切らして、
二人の娘がヒッチハイクを始めた。「明日の朝には笑い話になるわ」と言いながら。―その晩、ウッ
ドストツクの酒場の中庭で、ヒッチハイクをした娘の一人が死体となって発見された。もう一人の
娘はどこに消えたのか、なぜ乗名り出ないのか?次々と生じる謎にとりくむテムズ・バレイ警察の
モース主任警部の推理が導き出した解答とは…。 魅力的な謎、天才肌の探偵、論理のアクロバッ
トが華麗な謎解きの世界を構築する、現代本格ミステリの最高傑作。

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 

とんでもなく今更なのですが、突然思い付きまして”モース”の原点に戻ってみようと思いつき
ました。
『ウッドストック行き最終バス』”Last Bus to Woodstock” はコリン・デクスターによる
”Inspector Morse”『主任警部モース』の第一作です。
「読んだんだけど詳細は覚えていない」が得意のフレーズなのですが、この作品に限っては全
く覚えていないんです。読んだのは間違いないのですが 兎に角大昔の事で。
なので、初心に帰っての読み直しです。

ドラマ版では、第一作目ではなく、S2のE4(1988年3月初放送)になっています。

このエピソードも全く覚えていないんですね。見た筈ではあるものの随分昔の事ですから・・・
(又言い訳)



因みに、ドラマは1987年から2000年まで全8シリーズ(33エピソード)構成で放送され、シャー
ロック・ホームズを凌ぐと言われた国民的人気ドラマでした。
日本でも何度も再放送されてました。
言わずもがなですが、
モース主任警部をジョン・ソウ
ルイス部長刑事をケヴィン・ウェイトリー
が演じています。 (ルイス若いです)

原作でのこの作品はモース主任警部がルイス部長刑事と相棒として初めて行動を共にする物語
でもあります。
それにしても、ルイスがモースより年上であったんですね。 ドラマの印象が強かったので 
ジョン・ソウとケヴィン・ウェイトリーの姿を重ねてしまうので、ルイスの方が若干年下であ
ると思い込んでいました。
もう一点、この作品では ドラマでもモースの代名詞であった”真っ赤なジャガー”ではなく、
愛車はランチアでした。 これも意外でしたね。

一癖もふた癖もあるモースが机上の論理を組み立て、仮説と検証を繰り返す。 数学やクロス
ワードの手掛かりや、文法の誤り等様々な手がかりを元に試行錯誤を繰り返すモースとルイス
の絶妙な掛け合い。2人の仮説、推理、論理の展開が実に細やかに描かれています。

科学捜査ではなく、大胆な仮説を元に推理し、挫折を繰り返し二転三転しながら次第に結末に
辿り着くというのがデクスター独特の魅力になっていると感じます。

モースは一癖も二癖もある一風変わった性格ではあるものの、捜査力に関しては一目置かれ
ており、それであるからこそ相棒となったルイスも引っ張り回され時に戸惑いながらモース
と共に行動する。
そして、質疑応答を繰り返す2人の会話に笑わされ、暴走にも思えるモースが最後に辿り着
く結末に驚き、哀しみも感じさせられることになります。

この作品でモースは自宅で脚立から転落し足を挫き自宅静養を余儀なくされます。
そんな一人暮らしのモースをルイスは日に何度も様子を見に訪れ何くれとなく世話をする
姿が微笑ましいし、ルイスの良い人振りも好ましいのです。
良き家庭人であり、常識人でありながら決して凡庸ではなく モースとは全く異なるある
種の天才でもあるルイスのキャラクターが魅力的で、この作品を見る限りルイスの方がお
気に入りになりそう。
スピンオフドラマの「ルイス警部」は本当に大好きで、もう繰り返し何度観る事か。
(尤も、この場合はハサウェイが大好きだからって事もあり・・・)

生涯独身を通したモースもこの時既に後頭部を気にする中年に差し掛かっています。
それにもかかわらず、女性に惚れっぽいし又若い女性にもモテるのです。
他の作品も読み直してみなければ分かりませんが、ドラマを観る限りにおいてもこの傾向が
続きますね。

そして、エピローグでのスウの言葉、「とうとう貴方のクリスチャンネームを教えて下さい
ませんでしたね」。
これが最初ですね。 モースはドラマでもずっとクリスチャン・ネームの”エンデバー”を
誰にも教えたがりませんでした。 
「貴方のクリスチャン・ネームは?」とか、「何とお呼びしたら良いの?」とか問われる
と何時も、”Just Morse” で通していました。
何たって、”Endeavour” は気恥ずかしくて言いたくないでしょうからねぇ。
それが、スピンオフの若いモースでのタイトルになった時は感無量というか複雑な感じを
抱いたもんでした。

これを機会に、モースの原作を続けて読み直しするつもりですし、ドラマも何時も途中が
抜けて居たり忘れたりしているので、機会を見つけてじっくり観直そうと思っている所で
す。
(但し、最終話のモースが亡くなるエピソードだけは何度も観た事があり、その都度胸が
痛くなるのですが・・・)

現在大人気の若モースも大好きですが、モースの原点(時代的には逆ですが)に触れて観る
事もお薦めします。

尚DVDも出ていますので、こちらも参考になさって下さい。

Box1 & 2 






『ミセス・ウィルソン』実話に基づく衝撃のミステリドラマ

2019-07-24 | 海外ドラマ
”Mrs. Wilson” 

2018年11月 BBC Oneにて初放送全3エピソード

2018年11月英国BBC Oneにて初放送され 英国アカデミー賞(BAFTA)にもノミネートされたミ
ステリードラマがスーパードラマTVで日本初放送開始されました。

以前チラッと予告を見て以来興味があったドラマにも拘らず、その後注意を怠り 放送日も概要も
調べずに居りましたところ 先日何気なくチャンネルを変えたら何というタイミングでしょうか 
丁度放送が始まるところでした。 ナイスタイミング。
(初回放送は7月17日の再放送だったようですが・・・。)
取りあえず初回を観た感想、概略です。

↓ スーパードラマTVの公式案内
http://www.superdramatv.com/lineup/SN0000001162.html

先ず、キャストですが、
製作総指揮 : ルース・ウィルソン、ルース・ケンリー=レッツ、ニール・ブレア

アリソン・ウィルソン : ルース・ウィルソン(『アフェアー 情事の行方』、『刑事ジョン・ルーサー』等)
アレック・ウィルソン : イアン・グレン(『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョラー・モーモント等)
コールマン : フィオナ・ショー(『キリング・イヴ』等)
ドロシー・ウィック : キーリー・ホーズ(『ボディー・ガード』等)
ジャフバズ・カリム : アヌパム・カー
その他











そして、このドラマは、主演のアリソンを演じているルース・ウィルソンの祖母アリソン・ウィルソン
の実話をもとに アリソンとその家族の回顧録から作られたドラマだそうです。
ルース・ウィルソンは製作総指揮も兼ねています。

ネタバレしない様に概要だけですが、
1940~1960年代のロンドン、そして1930年代のインドが舞台になっています。
イギリスの秘密情報部で働いていたアリソンが出会ったアレクサンダーは著名な小説家であり、元秘密諜
報員であった。 そんな夫と2人の息子にも恵まれた幸せな結婚生活を送っていたがアレックは突然の心
臓発作で亡くなってしまった。
茫然自失しているアリソンの元に自分がアレックの本当の妻である主張する女性が訪れる。
(離婚はしていないと)
実際離婚していないとなれば重婚罪にも問われることになるし、アリソンは夫の真の姿を探るために動き
始める。

アレックの埋葬式に現れたカリムと名乗る男性はインド時代の秘密を知っているらしいし、その後現
れた男は喪主であるアリソンをドロシーと呼ぶ(アリソンを”妻”のドロシーと間違える?)
アレックは何人の妻を持っていた? 

アレックの本当の姿は? そして本当の妻は? ドロシーとは誰か?
第一話から早速ミステリアスな展開になって のめり込みました。
その後が気になり目が離せないドラマです。
しかも、これが実話であったとは。

取りあえず最初のエピソードを観ただけですが、英国ドラマらしいミステリアスなストーリーで続き
が楽しみです。

しかし、イアン・グレン老けた?(独断と偏見?) ヒゲのせいでしょうか?

↓ trailerはこちら
https://youtu.be/ffrL2rPCc_k

DVDは既に発売されています

が、PAL版(Region 2)のみです。
£ 12.99(現在価格)






『Born a King』2019 : 情報少し 

2019-07-20 | 映画
“Born a King”(原題)2019年4月初公開


この作品は2019年4月 バルセロナ・フィルム・フェスティバルで初公開され この度公式
ポスターが発表されました。

英国、スペイン合作の史実に基づいた歴史劇です。

監督:アグスティー・ビジャロンガ
脚本:ヘンリー・フィッツハーバード

出演;
エド・クスレイン
ハーマイオニー・コーフィールド
ローレンス・フォックス
ジェームズ・フリート
アブドゥラ・アリエル

この作品は2017年製作開始されたのですが、あまり情報も出ていなかったところようやく今年4
月に公開になった様です。

概要は、
1919年 当時13歳のサウジ・アラビアのファイサル王子が外交使節として英国を訪問した時の
状況を描いている様です。
兎に角細かい情報があまり出ていないので詳細は分からないのですが、当時のメアリ王女との
友好関係やウィンストン・チャーチル等も登場している様です。





そして、何と言ってもローレンス・フォックスがアラビアのロレンス役で出演しているという
点が目玉でして(個人的に)。



この情報は2年程前に得ていたのですが、その後全く続報が出なかった為どうなっているのか気
になっていた作品でした。

ローレンスが”アラビアのロレンス”って、これ以上のハマリ役は無いんじゃないでしょうか?
とは言え出番は少ない様ですが・・・残念!

↓ official trailerはこちら(残念ながらローレンスの場面はありません)
https://youtu.be/sqoRXLAq9J8

『アラビアのロレンス』の場面を彷彿とさせる砂漠のシーンありますね。
(リアドで撮影されたそうです)

『アラビアのロレンス』は何度観た事か。 大好きな作品でした。
モデルとなった T.E.Lawrence の “Seven Pillers of Wisdom” (知恵の7柱)も頑張って読ん
だもんですが全く記憶にありません(大昔の事ですから←言い訳)

あの映画に登場していたのは 当時のファイサル王子(ファイサル一世?)でアレック・ギネス
が演じていました。 今回の映画のファイサル王子の父王に当るのかな?(違うかも知れません) 


↓ これは2年程前にツイッターに載っていた画像で、拙ブログにも載せたのですが、当時何の
為だか分からず もしかしてアラビアのロレンスのコスプレかと思ってしまいました。
それにしても似合い過ぎる。



先輩から”Born a King”で本当にアラビアのロレンスを演じているのだと教えて頂いた事を思
い出しました。
撮影合間の画像でしょうね。

ようやく公開となったのですが、日本での公開はどうなりますでしょうねぇ。
ローレンスの”アラビアのロレンス”見たいんですけどね~。
現時点では残念ながらDVDの情報も出ていません。






『暗号探偵クラブ~女たちの殺人捜査』初放送 & アラン・チューリング

2019-07-16 | 海外ドラマ
”The Bletcheley Circle”

2012年9月 英国ITVにて初放送 : 3エピソード

『暗号探偵クラブ~女たちの殺人捜査』”The Bletcheley Circle”がシネフィルWOWOWで初放送
されます。


概要は、
「エニグマ」を解読した政府暗号学校・通称“ブレッチリー・パーク”。そこで任務にあたった元解
読員の女性たちが戦後再び集結し、連続殺人の謎に迫る英国ミステリー。 第二次世界大戦中、政
府の暗号学校で働いていたスーザンら4人の女性たち。彼女らはドイツ軍の派兵情報や戦闘命令を
示す暗号を解読し、イギリス軍の戦況に貢献した。9年後、大戦が終結した後に普通の主婦となって
いたスーザンは、ロンドンで起きたとある殺人事件に関して、犯人には行動パターンがあると気付く。
犯人の手がかりを求め、かつての仲間に協力してもらおうと声をかけてまわるスーザンだったが……

平凡な主婦、実は元暗号解読員。第二次世界大戦中敵国ドイツ軍の暗号解読で活躍した女たちが、
今度はロンドンで連続猟奇殺人の解読に挑む。
第二次世界大戦世界大戦中、英国政府の暗号学校が置かれた“ブレッチリー・パーク”で暗号解読の
任に当たった4人の女たち。戦後、それぞれの道を進み平凡な人生を送る彼女たちが、女性を標的
にした連続猟奇殺人犯を捕えるために再結集。それぞれの得意分野を活かして犯人を追い詰める―。
英国発の正統派探偵ミステリーを、日本初放送。
『番組案内から』



監督:アンディー・デ=エモニ―
出演:アンナ・マックスウェル・マーティン、レイチェル・スターリング


アンナ・マックスウェル・マーティンは、以前拙記事にも書きました『高慢と偏見そして殺人』
そして、今大人気の『グッド・オーメンズ』その他多くのドラマに出演している 華やかな美人では
ないけど堅実な演技で人気のある女優さんです。(『グッド・オーメンズ』ではベルゼブブ役でした
が最初は気付きませんでしたよ、凄いメークでしたし・・・)
レイチェル・スターリングも多くのドラマに出演しています(『名探偵ポアロ』、『ミス・マープル』、
『ルイス警部』、『ドクター・フー』、映画『砂漠でサーモンフィッシング』等)

派手さは無いけど、英国らしい見応えのあるドラマになっている様で評価も高い作品です。

↓ シネフィルWOWOW番組案内はこちら
https://www.cinefilwowow.com/program/index.php?prg_cd=CIIDTHBC01

↓ trailerはこちら
https://youtu.be/t4UqVWVFm3g

”ブレッチェリー・パーク”と聞くと映画『イミテーション・ゲーム』を思い出したのですが、丁度この
映画のスピン・オフの様な感じの作品になっている様です。

で、久々に『イミテーション・ゲーム』を思い出したのですが、この作品でアラン・チューリングを演
じたベネディクトは好演でしたね。 2015年日本公開だったと思います。



『イミテーション・ゲーム』”The Imitation Game”は2014年初公開
出演は、
ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グッド、アレン・リーチ、マーク・
ストロング、チャールズ・ダンス他という豪華な配役でした。

アラン・チューリングについてはご存知の方も多いでしょうし、この映画も思い出される方も多いか
と思います。
念のためWikipediaをご参照下さい。
私自身もこの映画を見る前に、アラン・チューリングについては少し予習をしたのですが、不遇な
天才数学者の生涯は胸が痛くなったことを思い出します。

と、そんな事を思い出しながらこの記事の下書きを書いていた昨日(7月15日)にツイッターで第
一報が流れ、英国の50ポンド紙幣にアラン・チューリングが描かれることになったとの事でした。
もう、ビックリでしたね、この偶然! 何というタイミング!





その後詳細ニュースも出て、本日(7月16日)BBC News Japanの記事でも発表されています。

何故今?と遅かりしの感もありますが、やっとアラン・チューリングさんの功績が認められた訳で
何となく我が事の様に嬉しい事です。

ドラマの感想は観終わった後書ければ・・・と思っています。

因みに、このドラマはシーズン2(4エピソード)も製作されていますが、今回放送されるかどうか
は不明です。


↓ 関連記事はコチラ

『暗号探偵クラブ~女たちの殺人捜査』S1 : 感想少し
『暗号探偵クラブ~アメリカ殺人旅行』初放送




『償いの雪が降る』 アレン・エスケンス著

2019-07-14 | ブックレヴュー&情報
『償いの雪が降る』(創元推理文庫)-2018/12/20

”The Life We Bury”
アレン・エスケンス(著)、務台夏子(翻訳)

内容(「BOOK」データベースより)
授業で身近な年長者の伝記を書くことになった大学生のジョーは、訪れた介護施設で、末期がん
患者のカールを紹介される。カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、仮釈放さ
れ施設で最後の時を過ごしていた。カールは臨終の供述をしたいとインタビューに応じる。話を
聴いてジョーは事件に疑問を抱き、真相を探り始めるが…。バリー賞など三冠の鮮烈なデビュー作!

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

抄録を読んで何となく手に取った初読みの作家作品です。

主人公のジョー・タルバートは躁鬱病でアル中の母と自閉症の弟を持つ大学生。 父親は誰か、何
処にいるのかも知らない。
アルバイトをしながら大学に通い、課題として年長者の伝記を書くことになったが身近に心当たり
も無く、殺人犯で終身刑を受けながら末期がんの為介護施設で残り短い時間をすごすカール・アイ
ヴァソンを紹介され話を聞くことになる。

余命三ヶ月と言われながら、達観した静かな時間を過ごすカールと話すうちに、30年前に婦女暴行
殺人、放火で服役していた犯人と言われている事に違和感を持つジョーが 彼の過去、事件を改め
て調査し直したいという衝動に駆られて行く。

カールは犯人ではなく真犯人は別に居ると確信したジョーだが、何故カールが無実でありながら自
ら望んだかのように刑を受けるようになったのか。
過去の裁判記録を探し出し、当時の弁護士に話を聞こうとする中、徐々に明らかになる真実。

アルバイトの時間に縛られ、又弟の世話もせず男友達と遊び回る飲んだくれの母親に翻弄されなが
ら弟を気遣い懸命に頑張るジョーが健気です。
隣室に住む大学生のライラが気になりながらも話しかける事も出来なかったジョーですが、期せず
して弟のジェレミーを介して親しくなる機会を得(その時ジェレミーに少し嫉妬したり)、そのラ
イラの協力も得ながら過去の事実を探し回る。

素人の大学生でありながら、探偵の様な無鉄砲な行動にでるジョー。
1人突っ走るジョーにはハラハラさせられながら、吹雪の山小屋でのサバイバルには目を見張る様な
生命力も感じます。
次第に心を開くカールはベトナム戦争の勇敢な兵士であり、友人の命も救った過去がありながら当
時自分が犯した罪、秘密も抱えていた。 
ジョー自身が心深くに抱え込んでいた祖父に対する贖罪の気持ちが虚無の中で生きるカールと重なり、
過去の自分に向き合う為にも事件を解明しなくてはならないという試練に果敢に立ち向かいます。

兎に角キャラクターがそれぞれ魅力的で、
ジョーの弟に対する深い愛情、自閉症である弟ジェレミーの癒しの様な存在、過去に傷を抱えな
がらジェレミーやジョーの存在と行動を共にする事で自身も再生しようとするライラ。
何より、カールの静かな存在。
後半で登場する刑事マックス・ルパート
等々
カールの隠してきた事実とは何であったのか、真犯人は誰なのかというミステリでありながら
ジョーやライラの冒険小説でもあり、ジョーの成長記録でもあります。

最後は胸が痛くなる様な、心に染みわたる様な優しさや温もりをを感じさせられる結末となってい
ます。
ただ、ラストはハッピー過ぎるんじゃない?と思わせられるエンディング。 

原作タイトルは”The Life We Bury” なのですが、日本語タイトルの『償いの雪が降る』は最後の
雪のシーンを彷彿とさせる余韻のあるピタリとはまる素敵なタイトルになって居ると感じます。

兎に角、
初めて出会った作家さんの作品でもあり、予断も過度な期待もせず手に取りましたが、この作品は当
たりでした。 
この作品がデビュー作であるという アレン・エスケンスのストーリー・テリングには心を掴まれま
した。 是非次回作も読んでみたいと思わせられます。

この作品で登場した刑事マックス・ルパートが登場する作品や、今作のジョー・タルバートが主役の
第二弾も刊行予定されているとか。
楽しみに翻訳を待ちたいと思います。








『All is True』2018

2019-07-10 | 映画
”All is True” (原題)

Sony Pictures
2018年12月米国公開

監督 : ケネス・ブラナー
脚本 : ベン・エルトン
キャスト:
ウィリアム・シェイクスピア : ケネス・ブラナー
アン・ハサウェイ : ジュディ・デンチ
サウサンプトン伯爵 : イアン・マッケラン



シェイクスピア俳優としても有名なケネス・ブラナーが監督兼シェイクスピアを演じた作品です。
何と言っても、出演者が豪華で贅沢でビックリします。



ケネス・ブラナー、イアン・マッケランと2人の ”Sir” に、 ”Dame” のジュディ・デンチですよ!
そして、3人共にシェイクスピア俳優であり、アカデミー賞でも受賞、ノミネート経験のある これ
以上望めない様な豪華配役です。

タイトルの”All is True”(全ては真実)はシェイクスピア作の「ヘンリー8世」の最初の題名に使わ
れていたものです。
この「ヘンリー8世」は1613年発表された歴史劇で後継者であるジョン・フレッチャーとの共作と
も言われています。


ケネス・ブラナーのメイクでビックリですね。
別人の様です。
シェイクスピアの肖像画にとても良く似ています。

この作品の概要は、
シェイクスピアの晩年を描いた作品で コメディーの要素もあるドラマに仕上がっているとか。

1613年 「ヘンリー8世」の上演中グローブ座が火事で全焼してしまい、シェイクスピアは故郷の
ストラットフォードの家族の元に戻る事になる。
そこで彼は問題を抱えた家族と直面。 唯一の息子ハネットの死。妻や娘との関係修復、夫とし
て父親としての立場に立ち返り考えを改める事に直面する。
文豪としてではなく、1人の悩める人間としてのジェイクスピアを描いている。
という事ですね。







アン・ハサウェイは26歳の時18歳のシェイクスピアと結婚したと言われています。 8歳年上女房
な訳ですが、今回の作品ではジュディ・デンチはケネス・ブラナーより26歳年上。 なので、む
しろ母親とも言える年齢差なのですが、そこは名女優ですから演技力で違和感は感じさせないの
ではないかと。


内容評価は見応えある高得点評価です。
何と言っても、このキャストですもの。 間違いないでしょうね。

とは言え、日本での公開があるのかどうかは今現在不明です。
こういうタイプの作品は日本での一般公開は難しいのかも知れませんが、是非観たいと思ってい
るところです。 どうなりますでしょうか?

↓ trailerはこちら
https://youtu.be/1I5cKmiONDI

取りあえずDVDの情報は、

2019年6月10日にリリースされています。
但し、PAL版(Region 2) 
£9.99(現在価格)

又DVD頼みになるかな~?

ところで、この作品にも出演しているサー・イアンが今年2019年5月25日に80歳の誕生日を迎
えられ、各方面から多くの祝辞とメッセージが送られていました。

↓ ツイッターにこんなキュートな画像をアップされていました

益々のご活躍と健康をお祈りします。
硬軟取り混ぜた作品に欠くべからざる方ですから。





『薔薇の名前』TV ミニシリーズ

2019-07-07 | 海外ドラマ
”The Name of the Rose”(“Il Nome de la Rose”)

2019年3月初放送 8エピソード

あの『薔薇の名前』がドラマ化され、10月からAXNミステリーにて日本初放送となるそうです。 

『薔薇の名前』はウンベルト・エーコにより1980年に発表され、世界的なベストセラーとなった小
説です。
1986年にはショーン・コネリー主演で映画化もされています。

ショーン・コネリー好きだし、観ました。 なのですが、かなり昔の事で詳細は朧気です(もう、何
でも良く忘れる事ったら、怖ろしい位で)

原作本も読んだ記憶があるのですが、かなり昔の事とて細部はよく覚えていない点もある、という何時
ものフレーズですが、これを機会に又再読しようと思っているところ。

多くの方がご存知の事とは思いますが、概要は、
1327年 教皇ヨハネス22世時代の北イタリアのカトリック修道院を舞台に起きる怪事件の謎をフラン
シスコ会修道院バスカヴィルのウィリアムとベネディクト会の見習い修道士メルクのアドソが解き明
かしていくミステリー。

今回のドラマのキャストは、

監督 : ジャコモ・パティアート
出演:
ジョン・タトゥ―ロ : バスカヴィルのウィリアム
ルパート・エヴェレット : 異端審問官ベルナール・ギー
マイケル・エマーソン : 修道院長
ダミアン・ハーダング : アドソ


なかなか贅沢な配役です。

『薔薇の名前』の登場人物であるバスカヴィルのウィリアムはコナン・ドイルの正典シャーロック・
ホームズをモデルにしているのは明らかだと言われています。(ホームズのフルネーム、ウィリア
ム・シャーロック・スコット・ホームズと正典『バスカヴィル家の犬』からだと)。又、弟子の名前
もワトソンに似たアドソとしている点とか・・・・。

そして、鮮やかな推理をみせるウィリアムとその弟子アドソはホームズとワトソンであり、内容も
ホームズ的な探偵小説という形を借りながら言語や記号の解明に挑む人間の姿が鮮やかに描かれて
いきます。
壮大な歴史を組み込んだパスティーシュだとも言われています。

今回ドラマ版は8エピソードありますので、映画版より丁寧に描かれているのではないかと期待して
いる所です。

10月放送という事でまだ少し先の事ですので放送日などの詳細は出ていません。

↓ 短いですが trailerはこちらから
https://youtu.be/nIqwKQRTBmA


ところで、少し話が逸れますが
ルパート・エヴェレット、シャーロック・ホームズ等と書いていたら突然思い出しました。
もう5,6年以上前になるでしょうか、TVで放送されていたBBC版『シャーロック・ホームズ 淑女
殺人事件』でルパート・エヴェレットがホームズを演じていました。


2004年製作の”Sherlock Holmes : The Case of the Silk Stocking”
ルパート・エヴェレットのホームズは何となく気だるげで物憂げな、そして何故か白塗り(みたい
な)でしたが、
結構面白かったと記憶しています。
他にワトソンにはイアン・ハート、そしてマイケル・ファスペンダ―が悪役で出演していましたっけ。


放送迄大分時間がありますので、この際改めて原作を読み直します。


『薔薇の名前』上&下 ー東京創元社 (1990/2/18)
ウンベルト・エーコ(著)、河島英昭(翻訳)








『ENORA HOLMES』映画化情報

2019-07-04 | 映画
”Enola Holmes” Movie

ナンシー・スプリンガー(Nancy Springer)原作の『エノーラ・ホームズの事件簿』の原作を元にし
た作品がレジェンダリー・エンターテインメントにより映像化される事が発表されていました。

『エノーラ・ホームズの事件簿』は2006年から2010年にかけてアメリカの小説家ナンシー・スプ
リンガーが発表した全6巻のティーンエイジ向けミステリです。
ホームズ関連のパスティーシュは殆ど読んだつもりでしたが この原作は読んでいませんでした。
(ティーン向けだし)

日本でも翻訳本が出ている様で、
小学館ルルル文庫から5巻が出版されているとの事です。
「エノーラ・ホームズの事件簿 ‐ 消えた公爵家の子息 ”The Case of the Missing Marquess”
「エノーラ・ホームズの事件簿 ‐ ふたつの顔を持令嬢 ”The Case of the Left-Handed Lady”
「エノーラ・ホームズの事件簿 ‐ ワトスン博士と奇妙な花束 ”The Case of the Bizarre Bouquets”
「エノーラ・ホームズの事件簿 ‐ 令嬢の結婚 ”The Case of the Peculiar Ping Fan”
「エノーラ・ホームズの事件簿 ‐ 届かなかった暗号 ”The Case of the Cryptic Crinoline”
(原作は6作品あるのですが、翻訳本は5作品しか出ていない様です)

↓ こんな具合の表紙なので、手に取るのが少々お恥ずかしいんですが、一応読んでおこうかしら。

(取りあえず図書館で見つけましたので、こっそり一冊借りてみました)

↓ 原作本はこんな感じ。

中身をチラ見したところ、かなり平易な文章の様ですので、この際原作本を読んでみるのも良い機会
かと(他人事)
私自身はもう4年以上前になりますが、当時翻訳本が出ていなかった為「Mr.Holmes」の原作本”A Slight
Trick of the Mind” を読み始めたものの、3分の2位で挫折してそのままになっていたという軟弱モノで
した(その後翻訳本も出た為←言い訳) それ以来英語原作本には手が付けられず・・・。

↓ こんなヴァージョン表紙も


それは兎も角、
内容は、シャーロック・ホームズの20歳年下の妹である14歳のお転婆少女エノーラが兄のシャーロック、
マイクロフトやワトソン博士と共に幾つかの事件に挑むといったストーリーになっているとの事です。

シャーロック・ホームズに妹が居てもおかしくない節は随分昔から出ていて、その節に基づき(か
どうか分かりませんが)某BBC版では妹登場となった訳ですが、この作品のエノーラはあのユーラス
の様に怖ろしい妹ではなさそうだし、ここまでぶっ飛んだ(?)作品であれば 正典へのレスペクト
云々とグダグダ重箱の隅をつつく様な硬い事は言わず、割り切って単なるエンターテインメントとし
て楽しい作品になれば良いのではないかと(私見)

そして、今回の映画化ですが、どの原作を元に製作されているのかは現時点では不明ですが取りあえ
ずキャストが発表されました。

なんてったって、”ホームズ物”は一応抑えておかなければ・・・ですからね。

監督は、ハリー・ブラッドピアー
脚本は、ジャック・ソーン


エノーラ・ホームズには、現在15歳のミリ―・ボビー・ブラウン(”ストレンジャー・シングス”等)が
キャスティングされていたのですが、彼女はこの作品でプロデュ―スも兼ねるとの事。恐るべしです。

そして、先日兄のシャーロック役にヘンリー・カヴィルが決まったと発表されました。

ヘンリー・カヴィルは”スーパーマン”でお馴染みですが、シャーロック・ホームズには少々マッチョ
過ぎの様にも感じます(私見)

又、母親には、”ハリー・ポッター”、”シンデレラ”、”アリス・イン・ワンダーランド”等に出演してい
たヘレナ・ボナム=カーターが決まっています。


その後、”キリング・イヴ”のフィオナ・ショウ(”キリング・イヴ”で2019年度BAFTA-British
Academy Television Awards-の助演女優賞受賞しています)、サム・クラフキン、アディール・
アクタルの参加も発表されていますが、それぞれ役柄は未発表です。
そして、現時点では、マイクロフト、ワトソンの配役も未発表です。

原作を読んでいないので分かりませんが、エノーラとシャーロックが20歳違い。 マイクロフトは
シャーロックより7歳年上(となっています)なので、エノーラとマイクロフトは殆ど親子。
エノーラの母はもしかして後妻?(余計な心配)

今後順次情報が出ると思いますので、又追って。

公開は2020年の予定です。