都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。論文や講演も。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

年収は「住むところ」で決まる (エンリコ・モレッティ) :新しいクラスター形成理論

2014-09-18 05:04:52 | マクロ経済
 The New Geography of Jobs: Enrico Moretti が原題であり、「職の地理分析」が正確な訳だ。

イタリア系の経済学というとLife Cycle HypothsisのFranco Modigliani ( http://en.wikipedia.org/wiki/Franco_Modigliani  http://en.wikipedia.org/wiki/Life-cycle_hypothesis )を思いだす。(MITで記念講演をよく読んだものだ)
 
 似た観点で、牽強付会な「誘引理論」の印象があるクリエイティブ資本論 リチャード・フロリダがあるが、モレッティの分析は統計的で納得感がある。特に、「何でクラスターなど産業集積ができるのか」という「原因の観点」は、ポーターなどの既存クラスター(「結果」)の分析と違い新しい。

 クリエイディブ資本論への反論として、クリエイティブ・クラスが魅力的と思う、クールな都市文化のあるベルリンは観光産業のみ発達しているが、ハイテク雇用は未発達でイノベーション・ハブになってはいない。

 知見は:
・繁栄の新しいエンジンはイノベーション、イノベーション産業は一極集中、その集積がイノベーション・ハブ
・国の豊かさは生産性の向上→イノベーションと技術革新
・ハイテク産業は5倍の乗数効果、製造業は1.6倍のため3倍
・発展が発展を招く、多重平衡
・高技能と低技能労働者の賃金は相関:相互補完関係がある、テクノロジー導入の容易性、人的資本の外部性(公式・非公式の人事交流による知識の伝播の促進)
・大卒者の多い都市は更に割合が増加し年収も増加、その反対もしかり
・友人やコミュニティで健康が影響される:喫煙者は伝播する
・集積効果:厚みのある労働市場、多くの専門サービス、知識の伝播
・地域単位の規模の経済:個人や企業の集団が創造のための共有地、集積がマグネット
・労働市場の改善と生活コスト上昇のジレンマ(アメリカでは収入の40%が住宅コスト)賃貸が高騰、資産価値は上昇し持つものと持たないものの格差
・イノベーション・ハブでは都心に住宅と商業再開発したシアトル型(「インフィル開発」)が有効、制限したボストン、バークレーは失敗
・スター研究者は集積を呼ぶ、「Big Push」は貧困の罠を破る
・貧困地区の改善にむけたエンパワーメント・ゾーン・プログラムはクリントン政権で成功:改善の利益教授のインセンティブ、分け隔てない補助金の支給、民間開発の誘発効果(3.5倍の乗数効果)
・人的資本:教育は収入に結び付く、大学への10万ドルの投資は15%以上のリターン
・移民は教育水準で選定、日本は高学歴の移民が少なくハイテクが停滞
・ジェイコブスのコミュニティ理論は多彩く、人的なシステムはイノベーションにより変化が続く、ニューワークが生まれる、知人からの知識など直接のふれあいがより重要、結局大事なのは人間

参考レビュー https://www.aeaweb.org/articles.php?doi=10.1257/jel.51.3.825 

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