【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

お/『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク2(下)』

2008-09-27 18:09:28 | Weblog
 雲がすっかり秋の顔になりました。先日まで遠くに見える山地の上では「上昇気流!」と主張していたのに。やはり暑さ寒さも彼岸までなのかな、と思ってふっと「お彼岸とは書くけれどあまり御彼岸とは書かないな」と気がつきました。お寺だと違うのかもしれませんが。そういえば「お前」と「御前」だと、意味自体が違ってきますね。

【ただいま読書中】
ロスト・ワールド ジュラシック・パーク2(下)』マイケル・クライトン 著、 酒井昭伸 訳、 早川書房、1995年、1553円(税別)

 子どもを登場させるのは、エンターテインメント系の映画では定番の手法ですが、本書でも前作を踏襲したのかちゃんと二人登場します。ただしこちらは、社会的に差別されている天才肌の男女。だから著者としては使い勝手が良いですね。子どもだからパニックの時には保護するべき対象だし、天才だからいろいろ役に立つことをしてくれるし、知識が足りないからそれに対して学者が説明するという形で読者に持論を開陳できる。上手く使っています。
 島には謎があります。そもそも狭い島で恐竜の生態系が確立していること自体が不思議ですが、成長しきった成体が見あたらないこと、肉食恐竜の数が多すぎること、島の周囲で不思議な死骸が見つかるようになったのは最近になってのこと……一体この島では過去に何が起き、そして現在何が進行中なのか。草むらに潜んで時々ひょこっと顔を出す小型恐竜のように、真相はちらりちらりと姿を見せますが、なかなか全容がつかめません。で、人間の側に犠牲者が出始めます。恐竜の側にも犠牲が出ます。営巣地で卵が盗まれ、赤ん坊が怪我をさせられさらには拉致されてしまったのです。親の恐竜は子どもを求めて探索を開始します。
 そういえば『ジュラシック・パーク』では「ティラノサウルスはカエルと同様、動くものは見えるが静止しているものは見えない」という説が紹介されていましたが本書ではその説はコケにされています。前作でもこんなにはっきりコケにしていましたっけ? 読んだのがずいぶん前なので覚えていません。

 本書執筆の少し前に「プリオン」が世界中に知られることになり、本書でも重要な小道具として登場します。それが人間に感染したら「軽い脳炎ですむ」というのは気に入りませんが。それと、人間の悪党があまり“活躍”しません。これもまた不満の一つになります。
 ただ、前作の大ヒットと映画化、そして本作もおそらくは執筆前から映画化されることが前提、という「制約」の中で、ここまで面白い活劇を描いた著者の力量には感心します。あまりケチはつけずに、装飾恐竜に踏みつぶされたり肉食恐竜に追われる悪夢を楽しむことにいたしましょう。



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