【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

改名奨励

2013-02-26 18:51:47 | Weblog

 暴力団は、体罰団と名前を変えたら、一部の人からは受けが良くなるかもしれません。「我々はすでに知的労働にシフトしている」と怒られるかもしれませんが。

【ただいま読書中】『ある心臓外科医の裁判 ──医療訴訟の教訓』大川真郎 著、 日本評論社、2012年、1700円(税別)

 著者が弁護士として関わったある医療裁判の記録です。
 平成13年、「関西のある大学病院で、心臓の大動脈弁置換手術で、教授の執刀ミスで患者が死亡した」という“事件”が起きました。この“事件”で特異だったのは、“告発側”に「患者の主治医」がいたことです。マスコミは大喜びでそれを取り上げました。ただし、取り上げたのは、“告発側”の言い分だけで、教授の側の言い分はまったく黙殺。
 民事裁判が起きますが、患者側とマスコミにとって意外なことに、教授のミスは一切認められませんでした。結局裁判は最高裁まで行きますが、結論は「教授の完全勝利」。
 患者側は刑事告発も行ないますが、検察は不起訴とします。(日本では、書類が揃えば誰でも「告発」を行なうことができます) マスコミは「刑事告発」は大々的に報道しましたが、それが不起訴になったこと(事件性がないと検察が判断したこと)は黙殺しました。
 医療の話はややこしいし、裁判の話もややこしいものです。ただ、本書は、時系列と裁判別(民事刑事複数の裁判が起こされています)を上手く組み合わせて、きわめて見通しの良い記述となっていて、素人でも読みやすいものとなっています。
 いくつもの裁判を経てやがて浮かび上がってきたのは、「患者の死の、真の原因(の蓋然性が高いもの)」でした。しかし「教授を罰すること」に夢中になっている人たちは、そのことを看過し、原因が明らかになりかけてもそのことを無視しました。どうも「教授を罰することに役に立たないもの」には興味がなかったようです。
 本書は「告発本」ではありません。真実を少しでも明らかにし、そこから何らかの教訓を得ることを目的として執筆されているようです。だから特定個人の名前を明示して攻撃したりその名誉を毀損したりするおそれのある記述は慎重に避けられています。とにかく誰かを攻撃すればいい、というマスコミや掲示板の常連には無意味な本かもしれませんが、私には有益でした。少なくとも、マスゴミがマスゴミである所以は、きわめて明瞭に分かります。




コメントを投稿