goo

『茶の本』(読書メモ)

岡倉覚三(村岡博訳)『茶の本』岩波文庫

本書は、岡倉覚三(天心)が、英語で書いた「The Book of Tea」の邦訳である。欧米に茶道の考えを広めるため、1906年に出版されたものだ。

冒頭に書かれた次の一文が、茶道の歴史を簡潔に説明している。

「茶は薬用として始まり後飲料となる。シナにおいては八世紀に高雅な遊びの一つとして詩歌の域に達した。十五世紀に至り日本はこれを高めて一種の審美的宗教、すなわち茶道にまで進めた」(p.21)

では、茶道とはどんな性質を持つのか?

「茶道は日常生活の俗事の中に存する美しきものを崇拝することに基づく一種の儀式であって、純粋と調和、相互愛の神秘、社会秩序のローマン主義を諄々と教えるものである」(p.21)

日常生活のつまらないものに美しさを見いだす、という説明がわかりやすい。では、なぜ日本は茶道を生み出すことができたのか?

そこには鎖国が関係している。

「日本が長い間世界から孤立していたのは、自省をする一助となって茶道の発達に非常に好都合であった」(p.22)

戦国から江戸時代にかけて、自国に閉じこもっていた日本人は「自省」つまり「内省」することで、独自の文化を造り上げたという。

なお、茶道は禅とも深い関係にある。

「茶道いっさいの理想は、人生の些事の中にでも偉大を考えるというこの禅の教えから出たものである」(p.53)

禅にしろ、茶道にしろ、武士道にしろ、「日本らしい文化」が生まれたのは、鎖国していた徳川時代のおかげ、ということになる。この本を読んで、自分のオリジナリティを醸成する上で「引きこもること」も大事かもしれない、と思った。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 慕われる理由 わたしは自分... »