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今年の「入梅」は6月10日、梅雨時の健康法は「湿熱」疾病と「冷たい物中毒」の合併症からの脱却

2024年06月09日 | 漢方五季の食養

今年の「入梅」は6月10日、梅雨時の健康法は「湿熱」疾病と「冷たい物中毒」の合併症からの脱却

 主として農業歴となる24節気は中国で作られ、日本でもそのまま使われているのですが、これだけではイマイチ不十分であるがゆえ、雑節が幾つか設けられています。「八十八夜」と「二百十日」がよく知られていますが、「入梅(にゅうばい)」もその一つです。
 「入梅」は、太陽の視黄経が80度に達した日とされ、太陽暦の6月11日頃にあたり、2024年は6月10日です。今年はけっこう遅れるようですが、毎年、概ね「入梅」の頃に梅雨入りします。

 中国大陸の中心部は梅雨がないですから、中医学(漢方)には「梅雨」の季節の健康法なるものは基本的には登場しません。せいぜい「湿熱」による疾病への対処の仕方が書かれているだけです。もっとも、小生は漢方にからきし弱くて、よう見つけないだけかも分かりませんが。
 何にしても、「5」にこだわる中国人ですから、漢方の季節区分も「春夏秋冬と土用」の5つです。これは間違いないです。でも、土用は四季の間に毎回入りますから、実質は8区分。「夏」は5月5日頃の立夏から始まって7月18、19日頃まで、「夏の土用」は7月19、20日頃に始まって8月7日頃の立秋の前日まで、といったぐあいです。
 でも、日本には、6月上旬から7月中旬まで約1か月半の「梅雨」があります。「梅雨」が明けるのは、だいたい「夏の土用」入りの頃。そうなれば、細かく季節を区分すれば、9つになります。何もかも複雑に分類する傾向が強いインド哲学が日常生活に深く浸透しているインド人、彼らであれば、日本の気候は9区分にすべきだ、と言うでしょうね。
 インド哲学を少々かじり、百姓仕事に精を出している小生ですから、インド人の主張に賛成したいです。のちほど述べますが、身をもって体験していますからね。

 さて、漢方の世界での「夏」は「心(しん)」の季節で、夏至を中心として昼間の時間帯が非常に長くなり、原始時代からつい最近まで、ずっと、毎日長時間活発に動き回ったことでしょうから、この季節には「心=心臓」が活動的となるのは理解できます。
 そして、夏の食事は、「心」が求める「苦味」を主体にして「辛味」と「甘味」を添えると良い、「酸味」はほどほど、避けるのは「塩味」、ということを
過去記事(「 立夏は夏の入り、五味を「上手に夏食に 」)で述べました。
 日本においても、梅雨入りまでは、これで良いでしょう。
 しかし、梅雨入り後においては、その気候は、中国大陸中心部とは全く様相を異にします。雨や曇天で気温は真夏ほどには上がらないものの、やたらと蒸します。
 
「湿熱」地帯と化します。
 
「湿」と言えば「土用」で、これは、土を掘り返すことが多くなる時期であって、土中の湿気に中(あた)ることが多くなり、この季節に対応する臓器は「脾=胃」です。
 「土用」は農作業が忙しい時期ですから、高カロリー食を摂ることになり、「脾=胃」が活動的になるのはうなづけますし、「湿」に対して「脾=胃」を労(いた)わらねばならないのも分かります。

 「梅雨」入り後の農作業は田植えは別にして、それ以外はさほど多くないですから、「脾=胃」がさほど活動的になることはないでしょうが、明るい時間帯が1年で一番長くなり、「心」は活動的と考えて良いでしょう。
 つまり、心臓は毎日長時間、元気に働こうとし、その結果、汗もかきます。空気が乾燥していれば、少しの汗で体熱を十分に放散してくれますから、水分補給はたいして必要ないですが、「湿熱」地帯にあっては、気化熱の放散がままならず、たらたらと汗をかくことになり、水分補給がたっぷり必要です。
 しかし、汗を大量にかいたとしても、どれだけの効果も上がらず、「湿熱」が体内にこもってしまい、冷蔵庫が普及した今日にあっては、「冷たい物」でもってダイレクトに体の芯を冷やしたくなります。
 さあ、こうなると大変。「脾=胃」がビックリ仰天!
 
「脾=胃」は「湿」の季節に対応していますから、水分代謝の機能もどれだけか備えているのですが、その「土用」の期間は半月ちょっとです。ですが、「湿」が1か月半も延々と続く「梅雨」ですし、限度を超えて水分が体内に入ってくるのですから、「脾=胃」の処理能力を超えてしまい、何ともなりません。ましてや、昭和の高度成長以降は、異常に「冷たい物」が「胃の腑」にじゃんじゃん入ってくるようになったのですから、大変なことになります。つまり、梅雨時の日本人の体内は、「冷たい物の大洪水」で、ギブアップの状態になってしまいます。
 「湿熱」の疾病と「冷たい物中毒」の合併症です。
 中医学においては、大陸南部に「湿熱」地帯を抱えていますから、「湿熱」の疾病にも十分に対応できましょうが、「冷蔵庫文化」が普及しきった今日情勢は想定外のことですから、「冷たい物中毒」には対応できていません。もっとも、「冷たい物中毒」が高ずれば「冷え症」となり、これは昔からありましたので、「湿熱を伴う冷え」として、複合的に対応する処方を用いることができ、症状の改善を図ることはできます。
 でも、残念ながら中医学においても、「冷たい物中毒」がいかに恐ろしいものであるかは、まだ十分には認識されていないようです。もっとも、中国人は冷蔵庫文化が広まっている大都市にあっても、夏に日本人のように氷を浮かべた冷たい飲み物を飲むのはまれで、特に女性は暑くても水分補給はお湯で済ませる習慣が定着していますから、「冷たい物中毒」とは無縁かもしれません。
(参照→暑くなった5月半ば、“冷たい物中毒”から脱却するチャンス!

 さて、どうしたらいいものか、日本の「梅雨」ほど厄介なものはないですね。
 最優先せねばならないのが、何と言っても「冷たい物中毒」からの脱却でしょう。暑くっても「冷たい物」を絶対に摂らないことです。先に中国人のことを書きましたが、40度を超すアラビアでは皆さん「熱い物」をチビチビ飲んで水分補給しています。カラッカラに乾燥していますから、汗の蒸散効果が高く、この方法がベストとのことでして、少しは見習いたいですね。
 でも、
湿度が異常に高い日本では、しっとり汗では済まず、たらたらと汗をかくことが多くなります。そんなときは、大量に水分補給せねばなりませんが、たいていは、飽食によって体の中が洪水を起こしていますから、「汗」即「水」とせず、「のどがカラカラ」となってから、チビチビと小まめに水分補給するだけで良いでしょう。
 これであっても、「脱水症状」を起こすことはないと思います。
 次に「湿熱」の除去です。可能であれば、日中に「水風呂」に入ることですし、夜の入浴時には、前後にたっぷりと冷水シャワーを浴びることです。

 ここで、さきほど日本の気候を9区分すべきと言った訳を述べましょう。
 だいぶ前のことになってしまいますが、
小生が2011年6月19日に梅雨の合間に行なった農作業。午後3時から6時過ぎまでの3時間強でしたが、土が湿っていて鍬を動かすのにその重かったこと。汗たらたら。
 終了後に冷水シャワーをたっぷり浴びたものの、湿気に中(あた)って「湿熱」のこもりが抜け切っていなかったようでして、軽めの晩酌(焼酎の湯割り)が回りに回り、夕食はいつもの半分しか喉を通り
ませんでした。
 これは、軽い熱中症にかかっていたところへ、アルコールで追い討ちをかけたものですから、「脾=胃」が拒否反応を示したからと思われます。
 小生のこんな経験は、記憶になかったのですが、このとき63歳の老体であったがゆえとも思えず、これはやはり「湿熱」が原因でしょう。

 このように、日本の梅雨は、暑い上に異常な湿り気がありますから、尋常な方法では健康を維持するのが困難になります。
 今はエアコンが普及し、これでもって体熱を放散させれば良いと、安易な方法に頼るのは考え物です。先の小生の例では、これが有効な手段となるでしょうが、熱中症でもないのにエアコンを恒常的に使うと、体内温度が下がってしまい、「冷え症」と同じ状態になって様々なトラブルを引き起こすのは、皆さん経験済みのことでしょう。
 よって、エアコンの使用は、我慢の限界を超えたときに、やむを得ず使うといった気構えで当たっていただきたいものです。お勧め法は、しっとり汗をかきつつ扇風機で涼を取り、その風が苦になりだしたら切り、また付けるという方法です。
 この時期は、やはりどれだけかは汗をかきたいですからね。尿としては出ない老廃物は汗として出るのですから。

 最後になりましたが、梅雨時の食事を漢方栄養学から説明しましょう。
 と言ったものの、冒頭で言いましたように、小生ただいま漢方を勉強中でして、手元にある書物には、これが書いてありません。書いてあるのは、次の2つ。

 夏の食事は、先に述べましたように、「心」が求める「苦味」を主体にして「辛味」と「甘味」を添えると良い、「酸味」はほどほど、避けるのは「塩味」、これが基本です。なぜ夏に「塩味」を控えるかといえば、「塩味」の強い物を摂ると、塩は体を温める最たるものですから体に熱がこもってしまうからです。
 土用、これは各季共通ですが、「脾=胃」が求める「甘味」を主体にして「塩味」と「辛味」を添えると良い、「苦味」はほどほど、避けるのは「酸味」、これが基本です。
ここで注意すべきは、「甘味」は、砂糖など甘い物だけを指すのではなく、主として「よく噛むと、ほのかな甘味が出てくる物」を言うのでして、ご飯(米)や肉のようにエネルギー源となるものを言います。

 単純に考えれば、「梅雨」は「湿」ですから、「土用」と同じで良いとなります。
 なお、季節は「夏」ですから、「心」を考慮して、避けるべきものは「塩味」となりますが、大汗をかけば「ミネラル=塩分」が失われますから、これを補給せねばならず、敢えて「塩味」避ける必要はないと考えて良いです。
 こうしたことを総合的に考えてみますと、「湿熱」で「脾=胃」が弱っていますから、胃に負担がかからないよう、よく噛んで食べるのが第一となり、この時期にはエネルギー消耗が少ないですから腹八分とし、五味の使い分けは土用を基本としつつも、さほどこだわる必要はないということになります。食欲も落ちていますから、美味しく食べられるものを少しずつあれこれ食べるのが良いということになりましょう。

 以上、中医学(漢方)に基づき、栄養学を説明しましたが、先に述べましたように「冷たい物中毒」は、中医学でも想定外の出来事でして、「梅雨」の時期の食事の摂り方で注意すべきは、繰り返しになりますが、決して「冷たい物」を摂らないことです。
 その昔には、「冷(さ)めた物」も摂りすぎは要注意、と言われました。つまり、「常温」であっても胃腸に差しさわりがあると言っていたのでして、ましてや「冷(つめ)たい物」となったら論外なのです。

 梅雨時には、うちでは「むしシャブ」をやることが多いです。様々な野菜と茸を中心にして、豚肉を少々乗せます。「胃」に負担を掛けず、「胃」を温めるという、「胃」に優しい料理です。食事中に汗をかきましょうが、日中に汗をほとんどかくことがない女性にとっては、こうでもして汗をかかねば健康を維持できませんから、おすすめです。
 ところで、「酸味」は避けるべしですが、「むしシャブ」に「ポン酢」は付き物、これなしでは美味しくありません。顔から汗が噴出すほどに濃いポン酢
は胃にもよくないでしょうが、ほどほどであれば、気にする必要はないと思われます。ただし、食事の最後に、漬物は「酸味」が強い梅干とするのは避けるべきでしょうね。梅干は朝に1粒で十分です。  


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2 コメント

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Unknown (mimi)
2014-07-29 16:00:41
体質的に脾・腎が弱く血虚・気虚と漢方医に診断されたのが20年前、毎年梅雨時に湿熱でお腹の調子が悪くなります。
勝湿顆粒を飲んで凌いでいましたが今年はクラシエの物のせいか、中々治らず悶々としていてこちらに辿りつきました。かっ香正気散もクラシエで、イスクラみたいに効かないような気がします。
漢方薬局のHPの説明はシンプルで、商品購入誘導?が多くあまり参考にならなかったので、こちらを読んで納得!自分のことが書いてあるようです。
今年知ったのが、湿濁の時はぬるい温度で短時間の入浴、ということでした。知らずに温泉に行き高い温度に長く入ったりして免疫力をあげて治そうとしてました。
梅雨に入ってからは、当然なのでしょうがだるくて翌日はかえってお腹の調子も水っぽかったので不思議でした。
早速今日から水シャワー(温泉でも何故か水風呂がとても気持ち良く感じていました)を習慣にしてみます。
食べ物も中国の食材ばかり薦めているところが当然多かったので、毎日の食事の参考にはなりませんでした。
その点も、日本人の食事に取り入れられることが書いてありとても助かります。
水分を沢山摂らないと血液がドロドロになる、とよく言うので、無理してスポーツドリンクやどくだみ茶など飲んでいましたが、この時期はあまり沢山飲まない方が良いようですね。体はそう訴えているように感じてはいました。
他の記事も読んで、体調がストレスになっている現状が改善できるようになりたいと思います。

それでも良くならなかったら仕方なく。。かかりつけの内科に行こうかと思っています。5分診療、ツムラの漢方。それで良くならないといきなり内視鏡、になりそうで足が向きません。
頭が悶々としていてまとまりなくすみません。
こちらのブログに感謝いたします。
mimi様へ (薬屋のおやじ)
2014-07-29 16:44:45
この記事がどれだけかお役に立てれば幸いです。
この時期、脾胃を守ってくれる良い漢方薬があります。
体に溜まった余分な「水抜き」と、体に溜まった余分な「熱抜き」の両方をなさるといいでしょう。
前者は「五レイ散」(レイは草冠に令)(ゴレイサン)、後者は「黄蓮解毒湯」(オウレンゲドクトウ)です。ご指摘のように、同じ漢方薬でもメーカーによって生薬の良し悪しに差がありますから、効いたり効かなかったりすることがあり、これで脾胃が良くなると保証はできませんが。
なお、この2種類の漢方薬を混ぜ合わせた液剤「五レイ黄解」(ゴレイオイゲ)があります。少々値がはり、1本500円(1日1~3本)ですが、これはけっこう効きます。発売元はJPS製薬で、取扱店は少なく、この会社へ電話して取扱店を教えてもらうしかないですが、2種類の漢方薬の合わせ飲みで効き目が悪いようでしたら、お試しください。

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